ちょっと独特な書き方してるから苦手だったらごめんね。
辺り一面花畑。
──たのしいか
周りに霧が沢山だ。
──たのしいな
森の空気が潤しい。
──みんなはいやがる
一人の雰囲気を楽しむ。
──じゃまはふたり
今日もお客がやってくる。
──あれ? ひとり
友達が見ている。
──ここうのうさぎごあんない
何が楽しいか聞いてみよう。
──ひとりでいるとしんじゃうよ?
剣は振りすぎると疲れてしまう。
──うさぎにあてたらたいへんだ!
食事を摂ろうと一休み。
──てごろなうさぎがそこにいる
今日もご飯が美味いこと。
──ひとの■■■はおいしいです
霧が充満するその花畑にはいつもラクリモサという花が咲いていて、そこを少し曲がればいつもの切り株があるんだ。
………………?
………………………………………………、
何だこれは?
──しってるでしょ?
知らない。
──うそつき
いつもそこで剣を振ってる。辛くないのかって? へっちゃらさ。いや……へっちゃらでもないのかな? 疲れているからな。
ふふん。どうだ、詳しいだろ? 伊達に毎日■ていないさ。なに? どうして毎日■ているのかって? それはー……うーん……えと……。あ、暇じゃない! 別に暇だから行ってるわけじゃないからな! え、じゃあ何でって……そう言われても……。
見てても楽しくは無いな……オススメはしないよ。ますます謎だな私は……。なぁ、コーリス?
誰の記おごはん
あ、コーリスはいないのか。島に行っちゃったからなぁ。フィラは? あれ? あ、ああ……そうだ……ガロンゾに行ったんだ。月日は経ってるんだもんな……何だかここ最近現実と夢ってあんまり変わらないって思えてきたよ。
─────────え
─────────────────────
「……イカれてるな」
自分は頭がおかしい。
それは最近分かった。自身への犠牲、苦痛を我慢するのでは無く諦められる異常性。それは
しかし、数年前に途絶えた友人の──現在。
今生きているであろうあいつの思考を
それはあいつへの侮辱だ。
俺や妹を頼っていた事はあっても、依存していた訳ではない。ましてや現実から目を背ける事は絶対にしなかった。それを睡眠間の一時的な状態で否定し捻じ曲げたのだ。
我ながらあの光景を作り出した頭をかち割りたくなる。
トラモントは今──うるさい。
霧だって自然の一部だ。常識的な循環だから。心配はいらない。また霧が晴れたら、フィラと一緒に帰る。それでいいんだ。だから、今はただ人の為に生きるのだ。
色々な島に行って経験を積んだ。その上で理解したのは、この世界がまだまだ救いを必要としているという事。
簡単に言えば、平和とは言えないということだ。
それを解決するのは俺じゃないだろうし、もしかしたら聖騎士団すらも及ぶ範囲では無いのかもしれない。だけど、がむしゃらに助けようとして努力をする事は醜い事とは言えないのではないのだろうか?
助けた人間にお礼を言われたとき、確かな満足感と暖かみを感じた。
これを真に感じられない程に腐ってしまうのならば、それはもう救い難い存在だろう。誰もが避け、忌避し、放逐した後に忘れ去る──トラモントの様に。
邪な感情。憎しみは、事象そのものに。
俺は
俺はトラモントを忘れようとしている人間を……憎んでいる。逆恨みの様に。
憎んでいるからと言って、別に邪険にする訳もなし。かと言って肯定するつもりもなし。とにかく忌々しい感情が残っているだけだ。
今思うと、その薄ら恥ずかしい感情から逃れようと構築した世界があの夢だったのかもしれない。
島でのんびりと日々を過ごし、アイツ等と一緒に何かをする。そんな日を夢見ていた。
依存していたのは俺だったらしい。
そして、変えもできない現状に心が喚く。
俺は順調過ぎる程に──腐ってきている。
腐ってもいいから──せめて機械的に。
人を救うだけの──理想型に。
でも最後に少し──ちょっとだけでもいいから
───楽しい日々を返してほしい。
─────────────────
──リュミエール聖国中央地区。
そこには聖騎士団の本拠地があり、その中のとある一室に俺は招かれた。
「アウギュステ……ですか」
「ああ、観光地故な。最近犯罪が増えている。具体的な解決は自治体が対応しているが、根本的な原因の捜査を行ってもらいたい」
「了解しました。しかし自分一人では少し広く感じます。突然霧を発生させても困るでしょうし、二人での同行の許可をお願いしたいのですが……」
「一理ある。もう一人の手配もしておこうか。文書を作成しておくから渡しておくように」
「貴方から声を掛けないのですか?」
「無駄な詮索は止めておけ。何の為に私がお前に声をかけたと思っている」
「……申し訳ありません」
「行け」
「はっ」
目の前の人物に対し敬礼をし、その部屋から出る。
隠密部隊でもある遊撃隊は、本隊の援護以外は遊撃隊隊長からの文書で任務に当たる。
その為か隊長の姿を見た事がある人間はいない。国の裏の顔として動く隊長が、安易に情報を漏らされる可能性を少しでも減らすためだ。顔や素行、言動など、少しの行動でさえも漏らす事はできない。
しかし、そんな行為でさえも。
やろうとすればの話しだが、俺の霧で探れる。ある意味釘を刺されたのかもしれない。わざわざ俺にコンタクトを取り、任務の情報を教えるという事。
つまり、俺を監視していると同義。
俺が変な勘繰りを持たないように。霧の危険性を見極めるために。
隊長である彼は俺を睨むのだ。
隊長の姿は理解したが、心の奥底──国への思いや名前は知らない。しかし隊長は俺の全てを知ろうとしている。
聖騎士になって五年。年にして十八の若僧は、まだ信用するに値しないという事だ。
─────────────────────
「二日だ」
「はい、二日です」
「……アウギュステは、全空の中でもかなりの大きさを誇る島。その全域の調査を二日で終わらせ、事件を起こしていた奴等の捕縛を終えたと?」
「仰る通りです」
「……ここに」
「?」
「ここにお前と同行した者からの報告書がある。無論私がお前を監視するよう頼んだわけでも無い。ただどの様な事をしてどの様な人物が黒幕で、どの様な解決法を取ったかを記録してもらっているだけだ」
「ええ……」
「こう書いてあるな……【霧を水に混ぜて使用した】と。さて、どんな魔法だ? お前の霧は独立した存在だった筈だが?」
「時間さえあれば水と共存可能なレベルに霧を調節し、アウギュステの水分を含んだ
「なるほど。私の認識不足だったな。お前の霧は中々に応用が利くと見た。他の属性ではどうなる?」
「火に混じれば
「なる程。あくまでも自然的な霧の体系が望ましいと」
「はい」
「ご苦労。下がれ」
「はっ」
重苦しい場が空気を支配する。
遊撃隊は道具。任務をこなすならば迅速かつ確実に遂行する事が最善。
実際暗殺任務は滅多に降りてこないが、国を脅かす可能性のある疑わしき者への監視などは行なわなければならないので、隠密行動や感情を隠す
今回の任務も何時ものように隠蔽工作を行い、人々に混乱を招く可能性を潰し遂行した。
期間は指定されていなかったが、今回気合を入れて終わらせたのには理由がある。
それは、俺に課せられたもう一つの任務がある故だ。その確実性を調べるために、この任務を終わらせたと言ってもいい。
任務の内容は、
依頼者は──国王及び聖騎士団団長。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
遊撃隊隊長の部屋を出て、任務の経過を報告する為に聖騎士長の私室へ向かった。
……何だか若いうちにエラく働いてる気が。扉を開け、その始終を話す。
「……コーリス」
「はい」
「無理してないか?」
「この任務についての心配ならお構いなく。俺と隊長の間に友好的関係は皆無です。寧ろあちら側が俺を警戒しすぎている節が見えます」
「まぁ、お前の能力は人によれば恐るべきものだ。万物に作用する探知能力なんて都合が良すぎるからな」
「聖騎士長は……」
「ん? 俺がどうした」
いくら俺が都合良い能力を持っているとしても、俺に上司を疑えと命令した事に負い目を感じているらしい。また、国王も同じお気持ちだと言っていた。
とても優しい人々で作られた国だと心底感じる。
だから、これは俺がやるべくしてやっている事だから。
「裏方の仕事なんてやらなくても良いと思います」
「──何故だ?」
「俺が報告する必要はあっても、貴方や陛下が私に気を使う必要は無いのです。遊撃隊は聖騎士団の正義を確かにする物。俺はその遊撃隊自体の組織性を保つ為にこの任務を受けました。人を欺いている訳でもありません。そこまで精神的苦痛を感じていませんよ」
「……あの時、ロイスとお前が俺と戦っていたとき。その後、休日にも関わらず盗賊を捕縛してきたときは……
「…………」
「仲間との数少ない交流はお前にとって楽しみなのか、遊撃隊によって既に感情の操作を仕込まれ、それを使って以前のお前との違和感を消しているのか……。俺にはどちらが正しいか判断できない。その現状が、若者に無理を強いている今が……俺は気に入らない」
「俺が取り繕っていると……そう仰るのですね」
「何れにせよ、お前は変わったよ。変わってしまった。変わらざるを得なかった。そして変えたのは俺達大人だ」
お見通し。
隠しているつもりも無かったが、聖騎士長にとっては皮を被っているように見えていたか。
既に俺は人を疑う癖が染み付いてしまっている。人間の些細な行動に疑問を覚えてしまっている。それは、良くない事だと分かっているのだが、それでも人を万遍なく信じる事なんてもう出来ないだろう。
森では隠れ家を作り、徒党を組んで人を襲う盗賊もいる。
海を穢し、環境を破壊し寄生する人間も少なくない。
如何にスルトが猛ろうと、ロイスが笑おうと。その裏に何があるのかと探ってしまう。俺の霧は、人の内面を映してはくれなかった。
「その霧は、外面なら何でも感じ取れる。だからお前は家屋に干渉しないよう最低限の範囲で絞っている。だが、霧は大気。触れてしまえば否応無しに感じ取れてしまう」
人の醜さも。世界の残酷さも。幸せの尊さも。不幸の冷徹さも。全部知ってしまった。
「───人は死にます。捨てられれば腐り落ちます。刺されれば血の
「…………」
「そうやって人は、死ぬのです」
任務に向かうたび、誰かが死んでいる気がしていた。
霧を出すたび、誰かが殺されていた。
その場へ向かうたび、亡骸を回収していた。
死人に口なし。気付かれない殺人は只のゴミ掃除。そんな現実、どう変えろと言うのだ。
世界中で少しづつ、ほんの少しづつ進み、されど止まらない悪意をこのちっぽけな感知能力でどう止めるのか。
──俺に、人が死ぬのを感じるだけでいろというのか。
現実を吐露し、間もなくして聖騎士長が口を開く。
「俺達聖騎士は、求められても求められなくても視界に入れば助けに向かうことが出来る。逆に、知らない事にはとことん無干渉を強いられる」
「だから俺が……」
「そう。だから全てを見通せるお前が期待された。そして期待通り、いや期待以上の成果を挙げたお前は聖騎士の鑑と言っても過言では無かった」
「そんなものではありません」
「そんなものだから、だ。正しく能力を使って欲しいと遊撃隊に入れたら、お前は道具として使われていた。遊撃隊にとっては、
「……」
「お前自身上手く動いていたおかげで、ここ最近の事件解決数は段違いだ」
「……解決はできても、未然に防ぐ事ができていないのです」
「ファータ・グランデにも犯罪は数多く存在している。このリュミエールだって例外ではない。人目につかない場所さえあれば何時だって人が殺される。その瞬間をお前は感じられない訳がないのに」
「ええ」
「──全て俺のミスだ。お前の能力を活かそうと資料を読み込み、遊撃隊にも然るべき指導を行えと通達した結果がこのザマだ。周りの状況を整えるばかりで、お前の精神状況を考える事ができなかった」
ああ、何か聞き覚えのある。
『コーリスや。お前は特別な事をしようとしなくていいんじゃぞ。周りはお前を誰でもない只のお前として見ている。自分の考えが他人と違うのも良し。周りと違うのが嫌なら合わせても良し。悪いのはお前を哀れと生意気に感じていた……この死にかけの老骨じゃ』
『爺ちゃんが悪いだなんて、思ってない』
義父、かな。
あの時と同じ答えでいいか。
「俺は失敗だと思っていませんよ」
聖騎士長は知っているとばかりに口を噛み締め、その上で真摯に俺に公言する。
「お前は絶対に、誰に対してもそう言う。だから、俺は──狂ったお前に……狂わせたお前に言わなければならない」
「……は」
「数十年前に就任した遊撃隊隊長は、遊撃隊の体勢を変えてしまった。それは聖騎士の顔を立てるために行っている行為としては、余りにも残酷だ。だから、【清く、正しく、高潔に】という精神を軽視していないか確かめ、彼等に誇りを取り戻してもらいたい。考えたくも無いが、本隊への連絡も断ってしまった遊撃隊隊長は、誰も姿を知らないという形式上まったく正体を知られていない。陛下からも数十年前に就任したという事実しか聞かされていないし、陛下自身もどんな行動を行っているか把握しきれていない。だから、裏切りをしやすい身分ではある」
「だから、コーリス。自分を殺して、聖騎士団の駒になってくれるか?」
……なぜ、泣きそうな顔で懇願する。
貴方は何故聖騎士団に入って、聖騎士長に登り詰めるに至ったのか。俺は、貴方を筆頭とするこの勇ましい軍団に憧れたというのに。
そんな勇ましい人が、何故俺を捨てる事に苦痛を感じている。
勝手に憧れて、勝手に壊れて、勝手に絶望している俺に同情する必要無いはずなのに。
俺の内面は、何時だって純粋で狂っている。
だから、貴方が何を思おうと。
誰が何を言おうと。リュミエール聖騎士団の恩に報いて、その為ならば。
いくらでも言い返してやろう。
「──喜んで」
コーリスの覚悟がキマった回です。以下説明。
遊撃隊に入った直後、捕縛した名も知らない犯罪者との会話で、自分が狂っている事に気が付いたコーリスは、影でもいいから聖騎士団を支えようと決意しました。
しかし、犯罪者が甘いと言っていた様に、人間の悪意は底知れないものです。どんな環境だろうと、少しのキッカケで人は死に殺されるのです。コーリスは丁度そんな場面を霧で感じ取っていく内に疲れてしまいます。
人が目の前で、尚かつ色々な方法で無残に死んでいく様なものですから、人を助ける行為に憧れたコーリスには効きました。
そして今回、精神の支柱になっていた聖騎士団すらも疑わなければならない状況で、初めて自分が道具として最適だと理解します。だから、今回の決意は光を見出した訳でもなく、絶望を突き抜けた訳でもありません。ただ単に、死ぬまで駒として身を捧げてやろうと意固地になっているような物です。
聖騎士長も、彼の内面を知っているし理解しています。それでも、『駒になってくれ』と頼んだ時、断ってほしかったと思っていました。
しかし、もはや駒として動くコーリスにとっては断る理由はありません。何か、彼を変える特別な物がない限り、彼は止まらないでしょう。