「──ふっ! てやァ!!」
寮の庭。草木が覆い茂る自然、緑。木々はゆらゆらと踊り、小鳥達は声を揃えて囀り飛ぶ。
……なんて事は無く、そこに居るのはひたすら汗を振り撒きながら木剣を振るう青年。
そんな彼の努力を、明日騎士団の研修を迎えるゾーイは笑顔で見ていた。
ガチャガチャと音が鳴る義手に苦戦しながらも、療養中に失った筋力と体幹を戻す為、コーリスは奮闘している。
「いい声だ……やはり人の努力は素晴らしい」
お供の竜2匹と戯れながら、彼女はコーリスの挙動をじっと見ている。そしてその視線を気にすることなく、コーリスは剣を振り続ける。
(やはり握り直しにズレが生じる……目でいちいち追ってては義手の動きが遅くなる……いっその事位置を覚えて慣れておくか)
触覚のない新たな左手は、剣を握っている感覚が存在しない為、目で確認しないと剣を構え直す際に空振りが多発してしまう。だが、その確認作業は戦闘での行動に遅延が発生し、隙となって相手の有利を誘発する。
そこで彼は、構え毎の左手の位置を把握し、毎回同じ位置に左手を置いておくことで動きを最適化しようと考えた。
「これならいける──ハァッ!!」
両手で構え振り下ろす。
彼の剛力と合わさった剣圧は草木を軽く揺らし、静寂と共に動きを止めた。
歯車が噛み合った様に、コーリスの剣技は整った。
そして、その事を確認したゾーイは声高らかに宣言する。
「よし。剣を抜いてくれコーリス!」
「……金属のをか?」
「ああ──次は私が相手になろう。君の盾を使っても構わない」
「分かった。宜しく」
コーリスが抜剣した後、ゾーイは左手に盾、右手に剣を出現させ仁王立ちの体系を取る。これが自然体からなる彼女の構えだ。
彼は感じた。"やりづらい"と。
コーリスの剣術は待ち。相手の攻撃を防ぎ切りカウンターを狙うもの。だが、ゾーイは自ら攻める気は無いのか、こちらを見据えるのみ。自動的にコーリスが攻めねばならない。
思えばゾーイの力の一端を見るのは、彼にとって初めての事だった。
「──!」
「む……中々に重い」
剛力による急接近に横薙ぎ。
想定よりも素早く感じたゾーイは剣での受けを諦め、盾で防いだ。だが、防がれた現状に反して、コーリスは彼女に対し意外な考えを持っていた。
(反応は鈍い……? もしやゾーイは単純な剣での応酬は不得手か)
彼が知る中で最も武力に秀でているナタクよりも高位の実力を持つ彼女が、反応速度に遅れを取る事が不可解であり、彼は一つの考えが過る。
それは、ゾーイが魔法剣士に近い戦闘スタイルの可能性があるという事。先日語られた、彼女がよく使うと言った"ガンマ・レイ"と呼ばれる光線、そして戦闘を見守る2匹の竜。恐らくは、本来の戦闘スタイルはその竜達をサポートに回しながら圧倒的な魔力の奔流で以て敵を駆逐するものだろうと、コーリスは考察した。
それならば剣だけの今が人間の範囲内の反応である事に違和感が無い。
「ならば─」
「ふむ」
コーリスは左手でゾーイの手首を掴み取り、右足で彼女の主軸をずらそうと払った。
だがしかし足が払われる間際、彼女は──浮いた。
「なっ!?」
「何を驚く」
彼女の足は地を踏みしめておらず、軽く浮遊している。
不発の足払いは大振りの隙となってコーリスの危険を作る。直ぐに軸の足に対し逆に力を入れ彼女の剣の範囲から逃れようとするが、意趣返しと言うべきか、ゾーイがコーリスの剣先に盾を引っ掛け、そのまま身体を捻じり回転切りを繰り出した。
間一髪義手から盾を形成して斬撃を防いだが、彼は改めてゾーイが常識の埒外の存在であると理解した。
「よく防いだ。一応刃は収めたが、そのままでも良かったようだ」
「……──フゥ」
「まだまだ行くぞ!」
ゾーイは浮いたまま剣を振るう。飛んでいる訳では無い。だがしかし空に留まった状態で水平移動が可能であり、足先の重心を無視できる程の自由な動きを見せた。
(突き、そのまま払い……盾突き、縦──今!!)
「ハァ!」
ゾーイが繰り出した一連の自然な流れはリュミエールの剣術にも精通する動作。剣の動きだけ見れば、ロイスの攻撃と似ている。突きを躱されたなら払い、盾突きで視界の塞ぎも兼ねてその後に上から両断。コーリスはその後の隙を狙う為にスレスレで横に回避し、その回避動作と共に剣を振るう。
しかし。
「甘い!!」
ゾーイは振り下ろした剣を逆手に持ち、下から上へ身体ごと回転させる事でコーリスの剣を弾いた。人間の挙動を超えた身技であったが、それを予期せぬコーリスでは無い。
「本命はこっちィ……!!」
弾かれた右側の反動を利用し振るわれた左手に多重の盾を構成、纏わせる。その腕は大質量の鉄槌となってゾーイの身体を地面に押し付けた。
「とどめ」
盾で拳を防いだものの身動きが取れないゾーイに対して右手の剣が襲いかかる。
だが、彼女は今度は剣ですら防がず、逆に地面に剣を突き刺した。
「……まさか!」
コーリスは思わず飛びのいた。
すると、地面から蒼色の光が
出力は抑えられているものの、大地に魔力を通すという力技はコーリスにとって目新しい物だった。
「常識では測れん……」
「そうか? 初見で見切っているじゃないか。だから攻め手を変えてみるよ」
「……!」
全ての攻撃を何とか回避したコーリスを褒め称えつつも、未だ戦いを終えるつもりは無い様だ。ゾーイは剣を盾に収納し、それを構えた。やがて、光と共に剣の柄と盾に収納された刀身が巨大化していく。
それは彼女の背丈に近い大きさの大剣である。
「私の盾は失くなったが、君の盾も使えなくしてやろう」
「…………来い」
「了解した」
今度はゾーイが先に仕掛ける。
コーリスは自ら構成する盾で耐えられる威力かどうかは分からないが、彼女の発言から、受けるべきでないと判断した。
(だが、それは恐らく高密度の魔力媒体……本来ならばゾーイの言うビームの出力を上げるための巨大化だろう。重さを扱うには踏み込みが必要だ。宙に浮いている今、その剣に振り回されるのは……)
そう。ゾーイは試したのだ。
恐ろしい破壊力を持つ武器を急に用意しても、彼が正しく反応出来るかを。だからこそ、彼女は
彼女はその大剣を振りかぶる直前に──伸ばしたのだ。
「な───槍かッ!!」
「盾を消したね、コーリス」
(しまった……!)
大剣を変化させ三又の槍へ。
急速に突きへと移行した動作の前には彼も後退るしか無い。
「悪手だ」
「くっ!」
その槍は斬る事にも秀でており、後ろに逃げただけでは薙がれて完封されてしまう。
そこでコーリスは地面に剣を突き刺し固定する事で槍の横薙ぎを止めた。そこからはスピード勝負だ。彼は武器を捨てた状態でゾーイの懐へ駆け抜け、左脇で槍の持ち手を捕まえて彼女の動きを止める。
槍から手を離せばゾーイの勝ちは確定したが、彼女はコーリスの技を見る為に敢えて受け入れた。これは勝負ではない。コーリスの戦闘への慣れの一助だからだ。
そのまま右手でゾーイの腹へ剛力の一撃を狙う体制で寸止めし、この鍛錬は終了した。
一息ついて、座り込んだコーリスがタオルで汗を拭った。
「初見殺しが過ぎる」
「よく反応したよ。次からはこの子達も参加させよう」
「勘弁してくれ……」
快活に吠える2頭の竜を腕に乗せながらゾーイは彼の手を掴んで立ち上がらせた。
「君は基本的に左手を盾を作る為に使っているから初見への対応が出来ている。この調子で行けばルクスの許しも得られるだろう。頑張ったな」
「……ありがとう」
「ふふ、どうしたしましてだな」
傍から見れば、姉と弟であった。
自分よりも背の伸びた弟を、昔と変わらず褒めるような光景を想起させる、そんな暖かい暇だった。
ゾーイはとても気持ちの良い笑顔で口を開いた。
だが──
「じゃあ、次だ」
「……つぎ?」
「ああ。待望の──」
「ま、まさか」
「──ビームだ」
ビームである。
────────────
「ほ、本当にやるのか……?」
「ああ」
「これで、ビームが出るんだな……!?」
「そうとも」
「本当に本当だな!?」
「君には嘘をつかないよ」
剣を置き、コーリスは義手でガッチリ右手を掴んで空へ向ける。魔力を滾らせた事により彼の傷が青黒く発光し始めたところで……そのまま口を大きく開き──
「うおおおおおおおお!!!!」
彼は手からドス黒──否、ドス青いと言える光を放った。
だが、それはビームとは程遠い煙の様な物だった。直ぐにゾーイはそれを止めさせた。
「駄目だ! 速度と凝縮が足りない! あれではガスに等しい!」
「だって……お前、勢いが大事だって……」
「ならばその勢いが足りなかったという事だ!!」
「うう……」
剣での応酬ですら慈愛の心を持っていたゾーイが、ビーム一つで鬼教官と成り果てた。生まれつき当たり前の様にビームを撃てたゾーイは、人の苦労が分からないのである。
「もう一度!」
「くっ……うおおおおお!!!」
今度は一瞬だけ細く光り、また直ぐにガス状に戻った。
「どうしてだ!!」
「知らない……」
「コーリス! 何か隠しているんじゃないか……? 後ろめたい事があるんじゃないか!? 真っ直ぐな心じゃないとビームは撃てないぞ!」
「ごめんなさい……」
「ああ、いや……そういうつもりじゃ、ないんだが……」
普通ビームを撃てる筈が無いのに、コーリスは急に自分が悪いのでは無いかと惨めに思い始め、自己肯定力が著しく低下した。
ゾーイがどうしたものかと唸っていると、そこに一人の人間が現れた。
「うるさいぞお前達! 今何時だと思ってるんだ!」
「正午」
「ナニィ!? 俺は昼まで寝ていたのか!?」
「生活習慣の乱れは良くないぞ」
ハーヴィン、スルトである。
コーリスのビーム練習の音で目覚めた彼は、苦情を入れるべく文句を言いに来たが、ゾーイから残酷な真実を告げられた。
「それよりも聞いてくれ。コーリスがビームを撃てないんだ」
「そんなもの撃てるわけ無いだろ」
「コーリスなら出来るんだ!!」
「お、おお……そうか。確かにロイスは水で撃ってたしな……」
「何かいい案はないか!? スルトは大火力が得意だろう!」
「……ん、お前なんで知って──」
「──あ」
ゾーイは試験の後、迂闊な言動を避ける様にコーリスに説教されたので、言葉には気をつけていたが、つい口走ってしまった。
「……まぁいいか。腕の立つ傭兵だったのだろう? 俺の力くらい見抜くか」
「そ、そうだ」
スルトの一方的な理解で事が済んだ。
思わずゾーイの頬に汗が滲む。
そして、コーリスの力の可能性を理解している彼は、一先ず口添えをする事にした。
「コーリス、よく聞け。ビームかどうかは分からんが、大火力の出し方を教えてやる」
「スルト……助かる」
「先ずはイメージだ。身体の底からエネルギーを絞って手から一気に放出」
「……ゾーイからも、同じ様なことを言われた」
「そうなのか」
「……何か、具体的な技術の様なものは無いのか?」
「気合だ」
「…………」
クソボケが、とコーリスは思った。
天然気質と感覚派が二人もいるとこうもストレスが溜まるのかと、彼は思い知った。
「あ、もうひとつある。技名だ」
「技名……?」
「名前があるとその技のイメージがしやすい」
「……俺、リュミエールの技使ってるから名付けとかできない」
勿論嘘である。
この男、ちゃっかり自身の霧に段階別で名前を付けている。
だが、ゾーイはコーリスの心までは分からない。バレずに済んでいる。
「なら、私達が付けよう。数分待ってくれ。スルトと二人で案を出し合ってみる」
「……」
画して、シンキングタイムが始まった。
─────────────
──10分後。
「そろそろいいか?」
「ああ。完璧だ」
「俺のネーミングセンスは良いぞコーリス」
「じゃあ聞かせてくれ」
「では、私からだな」
ゾーイは自身有りげに鼻を鳴らして言った。
「"ガンマ・レイ"だ」
「それお前の技名じゃ」
「お揃いというやつをやってみたかったんだ。ビーム仲間。所謂ビー友だな。コーリス、友達になろう」
「何言ってんだお前」
「今の口ぶりだとゾーイ、お前はビームが撃てるのか!?」
「ああ。撃てるぞ」
「何なんだこいつ……」
スルトは余計に混乱した。
数日前に急に寮に入りだした女が、人智を超えた力を持つ事を隠そうともしない。そろそろ彼でも気づきかけてきた。
そして、受けが悪いと感じたゾーイは渋々次の案を語った。
「"コズミックキャノン"」
「何か凄い大層な名前を付けられてる気がする……」
「これでも駄目か……わがままな」
「……取り敢えず全部言ってみてくれ」
溜息をつくゾーイにイラッとしたコーリスだが、たくさん候補があるのならまずは聞いてみようと決心。
「"ルーラー・バースト"」
「……却下」
「……"フェイト・イグニッション"」
「却下」
「……"アウトバースト"」
「……却下で」
「"ラストバーストレイ"!」
「……なんか混ざってるな。却下だ」
「く……"コーリス・キャノン"!!」
「却下だ!」
「"コーリス・ビーム"!!!」
「却下ァ!!」
悲しい事に、人間に見合う技名は彼女には思い浮かばなかった。コーリスは見た目とのシナジーを気にするタイプ。技名だけ大層でも満足できない。存外面倒くさい男なのだ。
「ふん。ゾーイには荷が重い様だな。俺に任せろ」
崩れ落ちたゾーイと代わり、スルトが前に出て尊大に振る舞った。
「"ラグナロク"」
「……」
「"レーヴァテイン"」
「……火、だな。方向性が読めた。もういいわ」
「貴様!」
スルトも駄目だった。火に偏ってしまう。
半分諦めた状態でコーリスは呟いた。
「もう"ストリーム"とかそんなんでいいぞ」
「え、ダッサ……」
「コーリス、君の事は理解しているつもりだが、それは良くない。私は君の事を想って言っているんだよ……?」
「じ、自分を棚に上げやがって……」
ジメッとした空気が流れる中、ゾーイが手をポンと叩いた。
「そうだ。これにビーム感を出すために"ラピッド・ストリーム"としよう!」
「急速な奔流……確かにアリか。コーリス、やってみろ」
「え、あ……分かった」
何となく方向性が決まったところでコーリスが手に魔力を集中させる。
「これで成功したら……私はコーリスを完璧に理解していると言える。そうだなスルト?」
「お前の言ってることが分からん」
聞こえてくる頭の悪い会話を無視してコーリスは叫ぶ。
「ラピッド・ストリーム!!!」
「───っ!!」
スルトが目を見開く。
右手に青黒い光が一気に収束し、空間がほの暗く変わり始めた。紛れもなく甚大な魔力の影響である。
思わずゾーイは笑みを浮かべた。
「いけるか!? ゾーイ!」
「ああ行けるとも! やってしまえコーリス!」
「分かった!」
そのまま天を貫く勢いで放出───出来なかった。
収束した魔力はまたガスの様にプシュプシュと音を立て霧散した。流石の本人もこれには困惑の表情だ。
「何故……?」
「疲れたのかコーリス?」
「いや……まだ余裕がある」
「もう一度やろう!」
「……ああ」
気が逸れたのかもしれないと自戒し、コーリスはより一層集中する。
「ラピッド・ストリーム!」
先程と変わらず高密度の光が集まる。
「ここからが正念場……む! そうだ……! 私達が応援すれば……」
「なんだと?」
「スルト! コーリスを応援しよう!」
「は、はぁ?」
「諦めるなコーリス! ビーム! ビーム! ビームは気合!」
「いきなりどうした!?」
ビームが絡むと、というより自身の戦法をコーリスに教えられる事が嬉しかったのか、少しハイテンションなゾーイである。無論本来のキャラでは無い。右手をブンブン振りながら応援する様は、
「フレー! フレー! コーリスッ! さぁスルトも!」
「くっ……フレー! フレー!」
「馬鹿共が……」
半ば呆れた状態で放出しようとするも、先程と同じく霧散の兆候が見えた。
「諦めるなやればできるコーリスはできる男なんだだからビームを撃てる頼むコスモスよ天司長よ創造神よ彼に力を!!」
「フレー! フレー!」
「こ、ここは地獄か……?」
只管意味の分からない応援を叫び続ける女と、同じ単語を叫ぶハーヴィン。
救いは無く、またもやビームは失敗した。倒れ込むゾーイを無視してスルトがコーリスに話しかける。
「だめ、か……」
「ふむ……なぁコーリス。直球な名前だからいけないんじゃないか?」
「何?」
「例えば……そうだな。
「言葉遊び……兎にビームの要素はないぞ」
「だが、オリジナル性が生まれ愛着が湧く。もう一度やってみろ」
「……分かった」
これが最後だ、というつもりでコーリスは溜め始めた。
「──ラビッド・ストリーム!!」
「先ずは1段階突破か。…………なんだと?」
収束。その段階は成功している。そして、先程と明確に違うのは収束している光の周囲には輪のような物が"シュン、シュン"と音を立てて上昇していく。
迸るエネルギーが更に増量していると思わせる音だった。
コーリスは確かな手応えを感じた。
そして放出。しかし音が途絶え完全な静寂が訪れ、失敗だとゾーイとスルトが落胆した瞬間──群青光が天を貫いた。
「う、おおおおおお!!!」
「ほ、ほんとに成功したぞ!?」
「やはり君はビームが撃てる! ああ……泣きそうだ!!」
「なんか凄い出てる!? ゾーイ!! これどうしたら良い!?」
その極めて太い光線は雲に穴を開け始めた。
流石にこれ以上は周囲の建物に影響が出始めると懸念し、コーリスはゾーイに選択を委ねた。
「やむを得ない……! 一端止めよう! 魔力を断ち切れ!」
「わ、分かった!」
魔力の放出を断ち切って、数秒して彼の光線は収まった。
─────────
数秒後、驚愕に腰を抜かしたコーリスの肩をゾーイは叩いた。
「出来たじゃないか! 何故兎でビームが出たのかは分からないが、とにかく良くやった!」
「あ、ああ……」
「後は剣からも出せるように……む?」
ゾーイの視線の方向は食堂から繋がるドアから。
そこからは寮長のグルシが血相を変えて走ってきた。
「アンタ達無事かい!? ゾーイちゃんも!」
「グルシか。私達は至って健康だ」
「さっきの光はなんだい……? ここから出た様に見えたけど」
「ああ、コーリスを鍛えていたんだ」
「……? 兎に角、アンタ達の起こした事が原因なら、不味い!」
「何故だ?」
「聖騎士団がここに来るよ!!」
「「「あ」」」
雲を割るほどの光が発見されたならば、異常と見なして騎士が駆けつけてくるのは当然である。
無論、この後コーリスが滅茶苦茶怒られたのは言うまでもない。それはそれとしてルクスに事情を話し、許可を得た上で彼は剣先からビームを撃つ練習をゾーイと共に行った。
この日から街でのコーリスのあだ名は"ビーム騎士"となった。
そしてそれが原因で聖騎士を目指す子供が増えたのは本人も預かり知らぬ話である。
──小話:剣とは。
ある飲食店にて、二人の男が話している。
一人は灰色の髪に欠けた片耳が特徴的な無表情のエルーン。もう一人は白いマントと二本の剣、そして軽い表情が目立つ金髪のヒューマンである。
「ところでコーリスさぁ、あのレーザーみたいなのはどうやって出してるの?」
「あれは魔力を収束させて放出している。量さえあれば多分誰でも出来る可能性はあるぞ」
「うっそぉ…!?俺には人間があんなの撃つなんて想像できないよ?」
「俺からすれば、名剣を剣拓として平然と作り出すお前の方が恐ろしいがな。オマケに化身さえ生み出す」
「ふふん。まぁ伊達に剣聖名乗って無いからねぇ。そういえばそのレーザーっていつ身につけた技なの?」
「いつ……100年前くらいか?」
「子供の時からレーザー撃てたの!?」
「まぁ…協力者がいたから」
「ねぇコーリス。コツだけ教えてくれよ。俺も撃てるようになれば頭目の風格出せるかもしれないしさ!」
「そうだな……1つだけある」
「それは?」
「気合だ」
────────────────────
何故兎でビームが撃てるようになったのかというと、コーリスがイメージ出来る大切なものの中に兎を想起させる存在がいたからです。
要するに気合が入ったという事でokです。