幽々の空、灰暮れに   作:魔愛暴導富

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37.何かがおかしい家

 

 

「君がコーリス君か」

 

「お世話になります」

 

「寛いでいくといい。君の事はバジュラから聞いている。家主として、この家に滞在する事を認めよう」

 

 

 ──ヴァジュラとの試合の後、彼女の父はコーリスを一時的に住まわせる事を認めた。

 

 そして同刻。

 ゾーイが姿を消した。

 

 置き手紙には、『君が修行の間、少し世界を見渡す』と書いていた。

 彼女は一時的に使徒としての役割に身を任せたのだ。

 

 

 ──────────────

 

 

 ──2日後。

 

 

「すぴー……」

 

 

 コーリスは自身の布団に潜り込むバジュラの吐息音にて目を覚ました。

 

 叫びもせず、払いもせず、逃げもしない。

 

 だがしかし──恐怖が強すぎた。

 一人で寝たはずだ、気配も無かったはずだと、そんな未知の恐怖感が彼を金縛りの如く不動にした。

 

 そして数分後、コーリスは自らが男である事を強く意識させられた。

 

「あ、あ」

 

 如何に快活な少女であっても、17も歳を刻めば大人びてくるものだ。艷やかな白髪も相まって、バジュラは天女の如き美しさを持っていた。

 

 回りくどいが、つまり……コーリスはドキッとしてしまったのである。

 性欲にまでは及ばないが、その煩悩は布団に侵入した少女への恐怖を消し、彼を動揺させ──

 

「──ま、夢か」

 

 

 ──現実逃避(二度寝)ッ!! 

 

 

 早朝5時の事であった。

 

 

 

 

 ──1時間後。

 

 

 案の定二度寝から復活したコーリスが叫んだ。

 (つんざ)く声にバジュラが覚醒し耳を抑えのたうち回る。

 既に起きていたヴァジュラが驚き部屋に突撃。

 

 ヴァジュラ、本気謝罪(ガチ土下座)

 コーリス、恐怖により人生で数少ない涙。

 バジュラ、未だ耳を抑え苦しむ。

 

 

 

 ──数分後。

 

 

「姉さん、お覚悟を」

 

「勘違いでコーリスを襲わなかった事は褒めてやる」

 

「お前……」

 

 

 怒髪天のヴァジュラが姉への尋問を開始した。

 

 

「我が朝に弱い事は知っているな?」

 

「ええ、まぁ」

 

「折角我がコーリスを弟子に取るのだ。朝に強いこ奴を朝から鍛えてやりたい親切心からよ」

 

「良いことだと思いますが……」

 

「なら、こ奴と共に起きる方が無駄が無くて良い」

 

「……」

 

「我の容姿は他の十二神将のお墨付きだ。悪い事でもあるまいて」

 

「…………姉さん」

 

 

 暴論ではあるが、それは納得できなくも無い理由であり、美人が自身の寝床に潜り込んでいるというのも、悪くないのかもしれない。

 

 ……ただし、それは未経験者の言葉だ。

 

 

「朝起きて自分の布団に女性が入っていたら…………普通男性は怖がりますよ……」

 

「え? 妹、もう一度言え」

 

「怖がりますよ……」

 

「何でだ」

 

「逆で考えてみて下さい」

 

「我が起きたら伊達男(イケメン)が布団に……?」

 

「はい」

 

「……怖。すまんコーリス。我が悪かった」

 

 

 ようやく理解出来たのか、腰を折って謝るバジュラ。

 

 

「まぁ貴様なら別に良いがな」

 

 ポツリと漏らした言葉を、ヴァジュラとコーリスは聞き逃さなかった。

 

 

「ッ!!」

 

「耐えてくださいコーリス様! 惚れちゃ駄目です!!」

 

「し、心臓がぁっ!」

 

 

 心臓の鼓動が止まらないコーリス。

 女性を甘い言葉で誘惑する優男がいる様に、男性の心を鷲掴みにする優女の様な存在もいるのだ。

 

 如何に故郷の幼馴染へ想いを寄せていても、他の女性へ鉄心を貫ける男などいない。いない……いないと言ったらいないのだ! 

 

「ブハハハ! 顔を赤くしておるぞ貴様!」

 

「誂うのも大概に! 姉さん!」

 

「誂う? 本心を言った上でソレだから笑っておるのだ」

 

「あっが!?」

 

「一々コーリス様をキュンキュンさせないで下さい!」

 

 

 19年の生の中で、思春期を迎えてからここまでコーリスを揺さぶる人間はいなかった。

 ロイスは相棒、ゾーイは友達、レイは母親面の知人であり、サテュロスやメドゥーサは恩人だ。

 

 成人入りかけ(肉体年齢は19から進まないが)の男が2つも年下の少女に心をこねくり回される光景は厳しいものがあるが、何よりそれを自覚しているのは彼である。

 

 彼はまた逃げた。

 

「す、素振りしてくる……!!!」

 

「あっーそっち便所だ」

 

「うぐ」

 

 

 濁った声とグルグルの目と共に、コーリスは庭へ走っていった。

 

 

 

 ─────────────

 

 

 

「煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散」

 

 

 ただ一つの言葉を永遠に呟きながら素振りをする事五百回。

 疲れによって正気を取り戻したコーリスが横のバジュラの視線に気が付き、またもや素振りを再開しようとする。

 

 

「そんなに我が嫌か」

 

「自分の情けなさに嫌気が差してきた」

 

「はは、男よのぉ」

 

「やめろッ!!」

 

 ただの木刀は彼の力にとっては軽すぎる為、五百回素振りをする事など容易だったが、如何せん刀を扱う振り方では無い為、バジュラは新鮮な気持ちで見ていた。

 

 

「"叩き斬る"、のう……」

 

「不格好か?」

 

「いや全く。須らく良き」

 

 

 そう言ってバジュラは瞬く間にコーリスの背中を取り、掌を彼の腹筋に当てた。

 

 

「あー堅い」

 

「お、おま」

 

「"縮地"。まぁエルーンだから速いのは当然だ。それよりもコーリスよ。我はかっこいい物が好きだ」

 

「なに?」

 

「男子もいつだって剣や刀、鎧が好きだろう?」

 

「……確かに」

 

「浪漫溢れる実用性の欠片もない巨剣を振り回していたとしたら、それはもう最高だ。我の理想とも言える」

 

「……?」

 

「貴様はそれに近い」

 

「………………え?」

 

 

 ドラフ程の筋肉は全く無いが、それでも凹凸がハッキリしている身体に重い長剣、高い身体能力があるのにエルーンだという反逆性に、バジュラの感性は刺激されたのだ。

 

 

「まぁ、何というか、そのだな……」

 

「なんだ」

 

 鼻を擦って言葉を濁すバジュラに違和感を持つコーリス。

 同時に彼はこの様な状況は混沌とした未来に繋がることが多いという謎の持論を展開していた。

 

 そして彼女の口が開く。

 

 

 

 

「貴様を我好みに育てることにした」

 

 

 

 この言葉によって先程の胸の高鳴りは無に帰した。

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

「まずは師匠と呼んでもらおうか」

 

「ば、バジュラ師匠」

 

「おーおー気持ちいいものだ。師匠と呼んだからには毎日一緒に打ち合いをしてもらうぞ?」

 

「お前……初めて会った時と性格違くないか」

 

「初対面で相手の何が理解出来ようか。我は元よりかっこいい物が好きな女だ。強いて言えばこういう状況にも焦がれていた」

 

 

 バジュラは純粋な格好良さを好む者。

 更に言えば、ハーヴィンが武術で活躍したり、ドラフが魔法を極めたりと、そういう逆的な生き方も好きだ。

 

 少年の様な心を持った武神。

 それがバジュラであった。

 

 

「……ん」

 

 

 煩わしげにバジュラを凝視していると、コーリスは彼女の一点に目が行った。

 髪の毛である。一点だけが微かに光った気がしたのだ。

 

 

「頭にゴミが付いてる」

 

「なにっ。どこだ?」

 

「俺が取る」

 

 

 変に触らない様気を遣いながらコーリスがその一点に触れると──

 

 

「……」

 

「なんだ? 早う取ってくれ」

 

 

 

 ──光った物は。

 

 

「か、み……?」

 

 

 白髪の中に一本だけ、金色の髪の毛。

 

 

(これじゃまるで)

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 違和感に気が付いたとき、既にコーリスは宙を舞っていた。

 

 

「……あ」

 

 

()()、と思った。

 

 

「ッッッ!!!」

 

 

 最期に見る物はきっと、憤怒に身を染めたバジュラの表情──そこまで見えて、コーリスは魔力全開の盾を展開した。

 

 

「……煩わし」

 

 無表情のまま盾を刀で削り続けるバジュラ。

 その間にコーリスは何とか受け身を取り着地した。

 

 唐突な激情による戦闘について、彼はただ一つ思った。

 

 

 

 地雷を、踏んだのだと。

 

 

「……」

 

 

 木刀を捨て、剣を抜く。

 朝の混乱故に、剣を差したまま木刀を振っていたのは彼にとって幸運だった。

 

 だが、この戦闘において彼に剣は必要なかった。

 何故なら……

 

 

「な──」

 

 

 バジュラと打ち合う事など不可能だからだ。

 

 

(盾を斬られた? 20枚も重ねたのに……!?)

 

 過剰とも言える装甲だが、死の直感が彼にそうさせたのだ。

 結果的に二十もの盾を両断され、既に息のかかる距離に彼女はいた。

 

 自身に限りなく近い距離まで接近されれば、盾は無意味となる。

 コーリスは破れかぶれで身体を反らした。最早話し合いは無く、殺し合いの雰囲気だと悟った。

 

 ならば、と彼は霧と光線(ビーム)を開放する。

 

 

「遅い」

 

 

 バジュラはコーリスの両手から放たれた光線を紙一重で躱し、後退する彼を追い掛ける。

 同時に放たれている霧は未だ第一段階。感知に限定された使用法だが、彼にとっては動きの理解だけでも最優先であった。

 

 だがそれも。

 

 

「が……!?」

 

 コーリスに襲いかかる頭痛。

 使うにつれ慣れていった霧の情報処理の負担が、少女一人によって再発させられている。

 

 何故か? 

 それはバジュラの挙動が複雑かつ速すぎるのである。

 

 一息の間にどれだけの動きを組み込んでいるのか、それを理解しようとしたコーリスの霧は彼の脳に大きな負担を与えた。

 

 

(くそ……ここまでか)

 

 

 目前に迫るバジュラの姿を見て、コーリスは遂に意識を失った。

 

 

 

 最後に見たのは、彼女の()()()だった。

 

 

 

 

 

 

 ────────────

 

 

 

「今年のコーリスは厄年の様だ」

 

「本当に申し訳ありません。姉の非礼、決して許されるものでは無く……犬神宮の主として客人に傷を残すなど、到底──」

 

「ヴァジュラは悪くない。バジュラの逆鱗に触れた俺が悪い。多分」

 

 

 意識が覚めるまで永遠に頭を下げていたヴァジュラを宥め、コーリスは自らの災難を呪った。

 

 

(空戦後の方が戦いが増えている気がする……)

 

 

 ある種、空の広さを知ったというべきか。

 様々な人間がいて、様々な強さがあって、様々な要因で戦う事になるのだと、彼はしみじみ理解した。

 

 

「僭越ながら、姉さん……いや、バジュラが怒った理由に心当たりはありますか?」

 

「……髪を見つけたんだ」

 

「……髪?」

 

「バジュラの髪の中に一本、金色のを」

 

「……………………」

 

「ゴミが付いてると思って、取ろうとした時に見つけた」

 

 

 その言葉を聞いて、ヴァジュラは見せた事も無い悲痛な表情を浮かべ、数秒間の沈黙の後、コーリスが先に口を開いた。

 

 

「気が付いたら飛ばされて……俺は最初、髪の毛をゴミ扱いされた事に対する怒りだと思っていた。だが、バジュラの顔は……」

 

 

 とても言葉に表せない。

 怒りの表情なのに、泣いている様だったのだ。

 

 

「……バジュラは今、何を」

 

「父上の元で叱りを受けています。心配なさらずとも、二度とコーリス様に手出しはさせません」

 

「……」

 

 

 不可解であった。

 この家には何かあるのでは無いかと疑う物があった。

 

『戦士として致命的な欠陥』とは、ゾーイの言。

『十二神将ではない理由は、人格でも才能の欠如でも無い』とは、本人の言。

 

 

(戦士として致命的な欠陥。それは、戦えない事だ。だとしたら武力が足りないから戦えないのでは無く、体力面……? いや、俺よりも早く動けた。息も切れてなかったから、常人以上の体力は備えている筈だ……何だ?)

 

 

 思考が淀む。

 

 

(精神面の弱さも欠陥足り得るが、それは剣士としても同じ事。俺の光線にも物怖じせずに向かってきた。ゾーイの分析は間違っていたのか……?)

 

 だが、答えを導くだけの材料は揃っている筈だと、未だ思考に身を落とす。

 

 

(しかし何故白髪の中に金が…………いや待て、冷静に考えてあの歳で白髪に髪が変色するなど病気しか有り得ない。ゾーイ、お前が見た物は病気か)

 

 

 そして彼はある意味答えに近づいた。

 

 

(病気だとするのなら身体が弱る筈だ。だが、あの運動能力に弱さを感じられない。十二神将として活動できない理由も含めると……………………いや、まさかバジュラは──)

 

 

 核心に迫ると同時に、ヴァジュラの声が彼の意識を戻す。

 

 

「……何か気がかりに?」

 

「……いや、何でもない。だが、後で少し家主様と話させてくれないか」

 

「父上ですか?」

 

「今回の事はお互い詳細を話しておかなきゃいけないと思って」

 

「分かりました。部屋に向かいましょう」

 

「今は説教中なんじゃないのか?」

 

「構いません。姉は怒られている時だけは静かです。外で待っていれば何事もなく済むはずです」

 

「済まない」

 

 

 コーリスとヴァジュラは立ち上がり、家主の元へ向かう。

 

 

(この家の人間は何処かバジュラの破天荒な行動を読んでいる様に見える。黙認さえも。俺を勝手に連れてきても、家主が直ぐに許可を出すくらいだ。もし俺の読みが正しいのなら、それ等はある状況下で周囲の人間が必ず取る行動だ。わがままが通せる状況──)

 

 

 ますます、コーリスはこの家に疑心を抱いた。

 

 

 

 

 ──────────────

 

 

 

 

「ここで待ちましょう」

 

 

 二人は音を立てずに、努めて静かに振る舞った。

 襖で仕切られた和風部屋は、内部の音をいとも簡単にこちら側へ運んだのだ。

 

 

「父上……申し訳ありませぬ」

 

 

 妹と同じく、生真面目な謝罪だった。

 耳を澄ませる必要もなく、彼等の声は緊張を共有させる。

 

 

 

「……私が言いたいのは説法では無い。コーリス君が()()()()()()()()()()のも、解っていた。だがバジュラ、彼を危険に晒した以上……」

 

 

 気づきかけてしまった、という言葉を聞いた瞬間コーリスはヴァジュラの方を見た。

 彼女は視線を合わせない。だが、心無しか冷や汗が見えた。

 

 不審な容貌だったので彼は追求を始めようとしたが、その意志はすぐに消えた。

 

 

「あ、ああああ!! い、嫌だ……!!」

 

 

 狼狽えた叫び声が聞こえたからだ。

 

 

「バジュラ、落ち着きなさい」

 

「コーリスだけはどうか……どうか父上…………!!! わた、あ……わ、我の、我は二度とこの様な愚行は……!」

 

 

 コーリスは気分が悪くなった。吐き気さえも覚えた。

 その気分に理由は無いが、強いて言えば、この場所が気持ち悪かったのだ。

 

 

「こ、コーリス様……」

 

「何だ」

 

「状況が宜しくないようなので……その、お外に」

 

「……」

 

 

 これ以上聞かせたくない様だ。

 

 バジュラの癇癪は最早発狂に近しい。

 呂律が回らず、畳を引きずる音がたまに聞こえる程度には、錯乱している様だった。

 

 

「さいごなんです!! 少しくらい……じゃなくて、さ、そんな気がするのです……! どうか、どうか!!」

 

 

 頭を擦り付ける音が聞こえてからは、彼等の顔は病人の様に青白くなった。

 

 

「……ヴァジュラ?」

 

 

 同時に身体を伏せるヴァジュラに声をかけると、返事が無い。

 

 聞こえるのは姉の叫び声と、妹の小さなえづき声だ。

 

 

「……っ捕まれ」

 

 

 震える右手でコーリスの手を掴むと、ヴァジュラは左手で自身の口を抑えて吐き気を堪えていた。

 彼は雰囲気の重さを何となく『吐きそう』と形容していただけで、ヴァジュラとは異なる。

 

 

(この家は危険かもしれない)

 

 

 彼は戦場以外の場所で初めて恐怖を感じた。

 ヴァジュラを便所へ運ぶ過程で、姉の声は聞こえなくなったが、この家に満ちる陰鬱とした空気はますます濃くなっていった。

 

 

 

 

 ─────────────

 

 

 

 

 そのままヴァジュラを使用人に預けた後、コーリスは普段から使用されている居間に移動した。

 理由はこの家に対する違和感を覚えた起点がここにもあった気がしたからだ。

 

 居間の台に飾られているものは家族を描いた絵画の様に見えるが、描き物にしては随分と鮮明かつリアルすぎる。

 

「確か……古代文明の、写真というやつだったか」

 

 

 ファータ・グランデには古代文明の遺産として、正確に形を写し取って一枚に収める機械がある。

 写真機を持っている者は少なく、大半が写真屋として活動しているため、ルピを払って撮ってもらうというものだ。

 

「……」

 

 そして彼は犬神宮の写真の裏に隠されていたもう一枚を発見した。

 写真立ての中に重ねられていたのだ。

 

 写真には、大人の男女二人に姉妹が二人写っていた。

 変わらない強面の男性と、朗らかに笑う女性。二人の子供の片方は明るい金髪で、もう片方は赤ん坊であるが故に、ほんの少しだけ髪が生えている。姉が赤ん坊を抱えており、後ろから両親が支える……そんな家族の写真だった。

 

 

「……」

 

 

 姉が、金髪。

 

 

「この男の人は家主様。ならばこの女性はあの二人の母親……二人とも金髪……か」

 

 

 赤ん坊はヴァジュラ。姉がバジュラなのは言うまでもない。

 

 

「……ん?」

 

 

 更に裏にもう一枚、あった。

 

 今度は3人。

 先程の写真と同じ男性に、少し成長した姉妹。妹に見える方は刀を持ってはしゃいでいる。父親らしき男性がそれを咎める様に慌て、悪戯げに笑う姉の方が写真を取れと促している景色だ。

 

 微笑ましいものだ。

 

 

 

 

 

 ……バジュラの髪に白が混じっている事以外は。

 

 

 ──ミシ

 

「っ!!!」

 

 

 写真に絶句している場合では無かったのだ。

 廊下の足音に気が付くには遅すぎた。

 

 

(使用人か……いや、足音の間隔が狭い。二人いるのか? それにしては規則的すぎる。そもそも人じゃない……?)

 

 

 急いで写真を元の位置に隠して、偶然を装い部屋を出ようとする。

 最早長く留まっては逆効果。

 

 彼は自ら戸を開けた。

 

 

「!?」

 

 

 すると目の前にいたのは───

 

 

 

「犬!?」

 

 

 大人の背丈くらいある、超大型の犬だった。

 

 

「……どうも。ナガルシャです」

 

「ナニィィィィィィィ!!??」

 

 

 更に喋った。

 

 

 

 






感情のジェットコースター回。

コーリス「…バジュラが布団に入ってる。ちょっとドキッとし…えっ何で殺しにかかって。えっ何かこの家やば」

バジュラ「好みのタイプの男が弟子になった!これから我好みに…あっこいつの我の秘密に触れた殺す」

ヴァジュラ「姉が暴れすぎてやばい。吐きそう…吐いた」



ちなみにコーリスは何も悪い事してません。
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