先に言っておきます。
今すぐグラブルを起動してイベント『OLD BOND』と9周年イベントの『and you…』のストーリーを見てくるんだ!!
知らない人でも分かるように書くけど、上記のストーリーを読むと見方が変わると思います。
あとはYouTubeのグラブル解説とかも分かりやすいのでおすすめです。ほんと突然ごめんね。
──次元が、違う。
戦いを見ているヴァジュラが感じたのは、それだけであった。自身とナガルシャの本気を以て、苦戦させるに至った筈のコーリスの動きが、全く異なるとさえ思えた。
「落ち込む事無き様、主様」
「ナガルシャ…」
「彼等は、理外の者なのです」
励ましの言葉も、言い換えれば現実逃避。
コーリスの霧も、蒼黒い光線も、尽きぬ盾も、恐ろしき膂力も、何もかも理解出来ない。
だが、それはバジュラを見ても同じだ。戦うと決まれば一瞬で懐に潜り込み、一撃必殺の斬撃を何十回も繰り出す。無から斬撃を発生させ、空を割る巫女。
そんな中で、渦中の当事者は激しい音を奏でていた。
(これが本来のバジュラの力……短刀の攻撃は視認すら危ういが、なる程分かりやすい。主体の刃を振りかぶる時の隙を無くすわけか)
(…ふむ、あの剣を直接受けてはならんな。刀どころか肩まで砕けるわ。ヴァジュラはよく往なしたものだ。だが、盾の効力は我の前で無意味と知っている筈。くく、後退が目立ってきたぞ〜コーリスぅ?)
彼等が一度足を踏み締めれば土煙が舞い、一度剣を交差させれば疎ましい金属音が響く。閃光の様な火花が巫覡達の目を置き去りにし、何とか追いつけるのはヴァジュラとナガルシャ、一部の実力者のみとなった。
「コーリス様は…私に手加減していた?」
「いえ、恐らくは主様の戦い方と相性が悪かったのでしょう。此方の攻撃力が足りない気もしますが、懐に入り続ければ持久戦の利もあった筈です。彼はバジュラ様の様な攻め手には得意な筈ですから」
「じゃあ、あの霧は?」
「それは分かりません。ただ、あのコーリス様から生み出された霧に限って感知、意識阻害、極短期間での記憶消去が可能な事が分かっています」
「……つくづく、対人特化です」
ヴァジュラが思わず溜息を零した。
それと同時に二人は一定の距離を保ちながら横に歩く。打ち合いは一段落した様だ。
「さて、攻め手を変えるぞ」
バジュラが柄頭の短刀を鞘に収め、純粋な刀として形を整えた。それに対しコーリスは右手をひらりと掲げた。
「お手柔らかに」
霧が充満した。視界が狭まっていく中で、バジュラの弱々しい感覚が警報を鳴らした。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
VS 巫女長
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
「針かっ!」
飛来したのは暗器の飛び道具。斬ることは出来ず、牽制としてしか使えないような小型の針が4本彼女の胸部に飛んできた。バジュラの反応速度はその針をいとも容易く弾くが、肝心のコーリスの姿は見えない。
(──ならば)
「がぁッ!!!」
吠え。森の時とは違い、律した精神で繰り出される戦神の斬撃は容易く大地を削る。霧など、淡雪の様に消え去った。
だが、バジュラは理解っていた。この動きはコーリスによって強制されたものであると。
「誘導癖もそこまでだッ!!」
だからこそ、バジュラは横一閃に刀を振るった。ヴァジュラと同質である──彼女本来の魔力を込めた斬撃は、祈りや精神に依る性質を持つ。つまり、その威力が高ければ高いほど彼女には余裕があるという事だ。
足場に置いていたコーリスの盾が、全て破壊された。
(…想定内だが、当てずっぽうで縦に振られてれば負けていたかもしれない)
ヴァジュラの時に使用した、盾による足場を構成し加速する戦法は彼女には無意味となったのだ。霧の危険性も認知されている。
霧を晴らせる者に対して攻めあぐねるというのは、彼の士官学校時代からの弱点であり課題だった。
「ならば」
コーリスの剣に魔力が宿った。黒き刀身が蒼く染まる。
(…!あれは不味い!)
過剰な魔力を感じたバジュラは技を撃たせまいとコーリスに接近する。しかし、コーリスの技であるガンマライト・エクスキューションは、撃っている間に魔力を溜め続ける技。つまり、発動に時間が掛かる事は無い。
ここで初めてコーリスはバジュラの一手先を行った。
「ガンマライト・エクスキューション」
「なっ…!」
隣人に話しかける程度の平坦な声で発せられた奥義は、接近したからこそバジュラの身体に当たった。
「ぐ、ああ!!!」
奔流が身を焼くが、同時にバジュラは気づいていた。この技は
(…ならば!)
彼女は苦痛の叫びを斬撃発動に使用し、地盤を掘り起こした。そしてその面を蹴る事でコーリスの奔流から逃れたのだ。まさしく曲芸。自身の力の使い方を多義に渡って解釈できるバジュラの本当の強さが垣間見えた。
「取ったぞコーリスゥ!!」
これだけの光線を放てば隙が見える。迷わずコーリスの真後ろに向かったバジュラ。
コーリスは怪しく笑った。
「備えているとも」
バジュラを極端に過大評価していたからこそ、彼は何重にも技を重ねる。何故なら、その魔力量が重ねる事を許しているから。
剣を持っていない左手を後ろに向け、彼は叫んだ。
「ラビッド・ストリーム!!!」
それはゾーイ、スルトと協力して開発した対巨大生物用の極大光線。溢れんばかりの魔力を一気に放つ、先程の技とは異なる仕組みの技。
それでもバジュラは一瞬の判断で身体を反らし、胴へ直撃する筈だった物を脇腹へ被弾させた。巨大な光線故に腕や足にも次第に影響が出るが、一瞬でも両手が動けばそれで良かった。
(何をする気だ…!?)
次は、バジュラが笑う番であった。
再び短刀を抜き、二つの刃を平行に構えて獰猛に、そして勇敢に笑った。
「ぐ、はは───行くぞ。我の奥義」
「……!!」
静観していたヴァジュラに冷や汗が見えた。幼き頃、空を割った姉の姿が今垣間見えたのだ。
バジュラの眼と刃が金色に光る。
「
その黄金の斬撃は、コーリスを逃がすまいと両側から挟む様に飛来し、彼が張った数多の盾を切り刻みながら──ゼロ距離で炸裂した。
そしてその炸裂は爆風と共に新たな斬撃を生み、空へと上昇していったのだ。
「あれは……!?」
高密度の光線と音速の斬撃。それ等が混ざり合った余波が歪な空間を見せていた。
端的にいえば、空気が裂けていたのだ。
(や、ば…、…死──)
(が…寿命より先に消し炭になるやもしれ──)
そして二人はその刹那──互いに触れた。
○○○○○○○○○○○○○○○○
「……?」
そこは薄暗い洞窟だった。おかしい。俺はさっきまでバジュラと戦っていた筈だ。走馬灯にしてはこの場所についての記憶がない。何方かというとこれは──
「空戦の時に見た……」
そう、空戦で騎空艇から落ちて意識を失った時に見た、知らない記憶。それに近いものだ。
「いや、それは違うぞ」
「…誰だ!」
若い男の声。聞き覚えもない。後ろを振り向くと、金髪の男が立っていた。
「俺は初代神しょ──」
「!!!!!」
そうか、初代の神将か。そこまで分かればいい。
──丁度、殴りたかったとこだ。
「ぶ……!はは…初対面で殴られたのは初めてだな」
「バジュラなら、切り刻む程度では済まんぞ」
「…そうか、お前…結構あの子を大事に思ってくれてるんだな」
「ああ、存分に絆された。お前の力が原因で寿命が縮んでいる事も知った」
「当然の怒りだな」
その男はヴァジュラが身に着けている服の男性用といった様相で、網のようなアクセサリーが目立った。何より彼女等に顔が似ているが……人ではない気迫が伝わる。神聖さと言った方が分かりやすいだろうか。
男は頬をさすりながら言った。
「さて、俺は初代十二神将、闘神
「の?」
「の、力の具現化みたいな物だ。本人じゃない。
「なら、尚更目の前のお前が原因だと」
…殺すか。八つ当たりだが、
「お前思い切り良さ過ぎだろ。剣を収めてくれ」
「話す事など何もない」
「あの子が短命の原因とか聞きたくないのか」
「ただの偶然。人から腕力や脚力を概念として奪う事が出来ない様に、一部分としてもバジュラの力である限り取り除いて寿命を延ばすなんてことは出来ない」
「…知っていたのか。そうだ。本当に偶然で…ただ誰よりも神将としての才能があるから、産まれる前に初代の力を降ろしてしまった」
「だから、お前に何の価値も見出していない。人や星晶獣、精霊…とにかく生命体は尊重するがな」
「生命の定義か…思ったより傲慢な男だな」
初代の人格を基にしてその姿は出来ているのだろうが、こいつから情報を貰ったところでバジュラを助ける事は出来ない。それはもう分かっている。
一家の話を聞いたからな。先代の神将が命を賭しても十年しか延ばせなかったんだ。本当に、どうしようもないのだろう。
驚くべきは力が人格を持っているということ。そいつは軽薄な表情から一転して、真剣な眼差しで此方を見つめてきた。
「──生命体の存在を尊重するなら、もっと身近な奴を理解してやったらどうだ?」
「──は?」
何を言っているんだこいつ。
「お前があの子の力である俺の元に現れた。それはつまり、同質の力が影響──いや、共鳴か。それが理由だ」
「きょう、めい…?」
「要するに──」
どういう、ことだ?
「
「…?」
「恐らくあの子は今、お前の中に触れている筈だ」
…………………俺の中に誰かいるのか?
○○○○○○○○○○○○○○
「なんだぁ、ここは」
いやはや。我はコーリスと戦って絶賛消し飛ばされ中だった筈なんだが、何だここ。我は恐ろしいくらいの上空を落ちる事なく歩いているぞ。
下を見れば勿論大地が見える。そして──
「…あれは海、というやつか?」
青い青い水が際限なく広がる。確かアウギュステには海があるんだったな。
「…あれ?」
ここで我は違和感に気付いた。何もかも俯瞰できる程の上空から──何よりも冴え渡る視力にも違和感を抱いたが、それよりも、だ。
…こんな大きな島、いやこれはもう世界というレベルだな。そんな場所があるのか?
「ひっ…ぐす」
「…!?」
なんだ!?泣き声が聞こえるぞ!だが…男にも女にも聞こえる声だ。近い…!
「奪ってごめんね……水、土…………」
「?」
「負担掛けてごめんね…風…!!」
「気候に謝ってどうする」
「オロロジャイア………」
「実はおちょくってるな貴様?」
意味の分からん言葉を羅列する泣き声。煩くて敵わん。どうでもいいが、もう少しこの光景を歩いて見てみようか。貴重な体験であるし、何より美しい風景だ。犬神宮の夜明けでもここまで晴れ晴れとした爽快さは無い。
「………」
歩く。ひたすら歩く。いや、歩くというより視点が恐ろしく早く動く。全能の神になった気分だ。世界を一瞬で見渡している気がする。
そして、我は気付いた。この世界は我等が住んでいる場所では無い。
まず、海が多すぎる。そして、次に陸が多い。島という概念は海にちらほら浮いている物にしか当てはまらん。空は上にしかないし、この大地が空に浮いているという証明が出来ないのだ。
「……あ、一周した。ふむ、真っ直ぐ歩いて輪郭が見えんという事は、本当にこれが一つの世界か──あと」
「う、ひぐ」
「さっきから五月蝿い!!泣き虫めが!」
何処にいても聞こえてくる泣き声にうんざりして、我は空に向かって思いっきり手をぶつけた。
…空を切る筈の手が、何かが崩れる音と共に当たった。
「…へ?」
空間に、ヒビが入った。
「なんじゃぁぁぁぁ!!??」
そして崩落する世界。
わ、我は世界を滅ぼしてしまったのか…!
「ま、まずい…腹切り程度じゃ済まんぞこれ………む?」
あたふたしていると、剥がれた世界の中から顕になったのは、我がよく知る世界。
「お?あれは犬神宮…か?じゃああの水が目立つ島はアウギュステ……というか輪郭が見える。空に浮いてる。やっぱり世界はこうだよな…?」
「ち、ちがうんだよ」
「おうおうやっと姿を現し──」
先程とは違い、背後から聞こえる声に対応して後ろを見ると……。
「……コーリス?」
「…!え、えと!」
「…………」
小さい子供がいた。涙目で、エルーンの耳が生えていて…なにより灰色の髪が目立つ。コーリスを幼子に戻した様な見た目だが。
──歪な角が二本生えていた。
「おうおうおう我の前でコーリスの偽物とは良い度胸だなぁ!その角さえなければ良い再現性だと褒めてやったが……甘いわ!!」
「え!?き、君が彼の何を知ってるのさ!」
「黙れ!さっきからウジウジとその見た目で泣いてたのか!?コーリスはもっと儚げで……言ってしまえば妖艶だ!!あとかっこいい!」
「彼をそんな目で見ないでよ!」
こ、こいつ…知った風な口を聞く。泣き虫の癖にコーリスの事となれば必死に反抗してくるぞ。
仕方ない。少しこいつに興味が出てきた。
「興味が湧いたぞ。名乗れ!」
「……
「楔……お前、我が何でも知ってると思ってないか?」
「お、思ってない…」
「ならさっきのはずっと独り言か?」
「う、うん…」
「………はぁ。どうやら、迷い込んできたのは我の方らしいな」
「お帰りはあっちだよ……?」
「帰らんわ」
「え!?」
興味が湧いてきたと言っただろう。
「理だの楔だの、分からん事ばっかだ。せめて我がここに来た理由だけでも教えてくれ」
「……ちょっと待ってね。今許可取るから」
「…許可?」
「オロロジャイアー!!話していい!?」
「人名だったのか…」
目の前の奴が空に向かって叫んだ。そしてそれに対する返答は無かった。所詮独り言の類だったのか、あるいは物狂いか。もしくは一人過ぎて拗らせたか。
だがこいつは親指を上に立てて自信満々に笑った。
「"例外だけど貴重なタイミングだからヨシ!"だって!良かったね!」
「…頭大丈夫か?」
失敬だと言わんばかりに口を尖らせたこいつ…いや、アウゲィアスだったか…?とにかく、我の頭に触れてくる。
「…な、なんだ」
「質問は後で聞くから、外に出たら決して口外しない事。特にコーリスには言わないでね」
「なんでだ?」
「僕は彼のファンなんだ。決して僕の後を追ってほしくないからね」
「……分かった」
「じゃあ、心して聞いてね?」
先程まで泣いていた姿には思えない、演劇が始まるかの様な素振りであちこちを見ながらアウゲィアスは語り始めた。
「僕はコーリスの身体に宿った力。そして君は初代十二神将の力を降ろしてしまった人間。お互い内に存在を秘めた者同士が干渉し合って生まれたのが今の状況。君が僕に触れ、コーリスは初代の力に触れているだろうね」
「で、君は勿論初代の力を自覚しているけど…コーリスは僕の事を全く知らないんだ」
何故だ、という問いは出ない。口が開かない。さっき触れられた時に何か細工を……。
ともかく、聞こう。
「…さっき君が見てたのは創られた当初の世界。アレが色々な過程を以て今の空の世界になったんだ。僕達"楔"は、あの世界を世界たらしめる為の効力であり、圧であった」
…という事は、楔とやらの力が無くなったから今の世界になったという事か…?
「お、恐ろしく物分りがいいんだね。そうだよ…楔の大半は消えるか、力を失って破棄された。今じゃ7、8体くらいしか残ってない。僕はその中でも"廃棄"の役割で、世界に不必要なもの、害あるものを取り込んで捨てる役割を持ってたんだ」
ほへー。結構大事そうだな。
「…でも僕死にかけちゃって…それで世界に影響を及ぼす物を廃棄出来なくなったから…こんな世界になっちゃった訳で………」
つまり、戦犯?
「ひ、ひどい……でも、そうかも、ね。海なんてあんなにあったのに減っちゃったし、大地も空に浮くしかない。だから"水"と"土"の楔は弱体化しちゃって……今の世界で重要な"風"に負担をかけちゃったんだ」
でも貴様は生きているではないか。
「この力は重要だからね……何とか存在を維持して、力だけでも受け継がせる必要があった」
それがコーリスか?
「うん…親友──オロロジャイアがその子のとこまで案内してくれて……はい、今に至ります」
……人間に宿るには重荷過ぎやしないか?星晶獣ですら我等の手に余るというのに、世界が創造された時からいる奴等が1人間に宿るとは………。
「い、今は楔が無くても世界が維持されてるから…!コーリスが大丈夫なのは保証するから!」
「いやそこまで懸念はしてないが……あ、喋れた」
「それ、で…どう思った」
「さっぱり分からん」
「け、結構噛み砕いたからね…君の理解力に甘えちゃった」
てへ、と頭を掻くアウゲィアス。あざとさが凄いぞこやつ。
「まぁ理解力が高いのは……もうすぐ死ぬから達観しとるのやもな。ははは!」
「ぶ、ブラックジョーク……」
「ちなみに生きてる楔とやらは今我等の世界にいるのか?」
「
「ほう……寝てるのか」
「で、ここからが問題で……コーリスの力は僕由来なんだけど、その……
「く、ク■…!?」
「あの■売のク■ファッ■ンの塵芥共が……ぶっ殺してやる……!!」
えー、聞くに耐えんので自主規制させてもらう。悪く思うな。
何やら幽世という者に対してすごい殺意を抱いている。
「……ごめんね。それで、僕由来の力である"吸収"がク■共のせいで捻じ曲げられて、霧になったんだ。吸って好きな時に捨てる能力が、"奪う"という概念に寄っちゃって。あ、幽世って何って思うかもしれないけど、こいつ等だけは知らない方がいいから聞き流しといて」
「……おう」
「本来楔は世界の有り様によって持つ人格が変わるんだけど、コーリスに同化して彼に依存する形になった僕は、彼の影響を受けた人格を持つに至ったんだ」
「どういう事だ?」
「働いていた頃の僕は、もう廃棄の名の通り………邪魔な物は焼き尽くす破壊装置だったんだ。コーリスのお陰で、ひ弱だけど豊かな感性を持てた」
「ふむ」
…分からん!
「…一方的に宿っておいて何だけど、感性を持った僕は思った。この子にはこの子の人生を全うしてほしいんだ」
「しかし、それは困るのではないか?」
「うん。でも思ったんだ。この世界に変わってしまった今、廃棄の楔はいらない。一応の保険として僕は生き続けるけど、今は四元素と生死…そして時間さえあれば大丈夫」
アウゲィアスは慈しみの籠もった表情を見せた。それは、コーリスには出来ない様な顔。見た目は同じだが、根本的には違う生物であると認識させられた。
「いつかコーリスが楔の権能と向き合う事になるだろうけど、その時は僕なんか放って理想を歩んでほしい。迷う人間を救うなんて、素晴らしい夢だよね。掃除ばっかしてた僕とは大違い……だからこそ、彼のファンになったんだ」
「なるほどなぁ……」
「君はあの子の事が大好きみたいだから、理解しているでしょ?」
「……いや」
「え?」
「今思えば我、あいつの事全く知らんな。一目惚れだったからな!ハハハ!」
「………そういえばそんな感じだったかも。コーリスは天然だからなぁ……君の問題にも顔突っ込んじゃったし」
「兎にも角にもコーリスについては任しておけ!今は戦闘中だが、強い男にしてやるからな!!」
「…うん。お願いね、空の子供」
奴はそう言って、眩しいくらいの笑顔を見せた。
「…あ、聞き忘れた。結局貴様からしてもこの状況は予想外か」
「うん偶然。でも、君に会えて少し気が楽になったよ。コーリスの方は全く得してないだろうけどね。何より君に宿るのは力だけが先祖返りしたみたいな物だから本人じゃないし。辛辣な事を言うけど…僕とはレベルが違いすぎて不要だ。有益な情報すらない」
「……」
「でも、君自身は魅力的な人間だ。力に縛られることなきよう──最期まで頑張ってね」
「…おう!言われるまでもない!」
「それじゃ、またね」
結局奴は最後までその姿のまま手を振っていた。
──ああ、意識が戻っていく。コーリスとまた戦闘か。
…こんな話を聞いたら、やりづらいな。
「短命の娘と長命の子が関わったらこんな風になるなんてね〜。ほんとにびっくりだよ」
「あ、オロロジャイア」
「やっほー!アウ君も元気そうだねー!」
「"も"?君は不健康そうに見えるよ…?」
「なにをー!?僕はまだまだ働けますとも!それより君の方も問題ないかい?」
「うん。一切問題ないよ。懸念点で言えば……土と水が弱体化した原因の一部は僕だから、彼等が人格を得たら僕を憎むかもしれない。連鎖的に僕の力を持つコーリスを狙う事になるんじゃないかって思うんだ」
「なるほどねー。でも問題ナッシング!楔の人格は空の形に依るからね!つまり、平和であれば温厚な友達が増えるって訳さ!」
「…コーリスが世界に影響を及ばしたらどうするの?」
「………幽世と混ざっちゃった以上、君の力がある分害ではないけどねぇ、僕が干渉出来なくなっちゃったから、そこは怖いかな。バジュラちゃんがコーリス君に良い影響を与えてくれる事を祈るよ」
「結局のところ、バジュラちゃんに話す事を許可した理由ってさ……」
「うん」
「島から出ずに満足してすぐ死んじゃうからって事だよね。だってこの情報ばら撒かれたらオロロジャイアの努力帳消しだし」
「……コーリス君との接点がなければ触れる事すら無いからねぇ…………」
「ねぇ、オロロジャイア」
「…んん?」
「創世神、ぶっ殺したいね」
「ノーコメントで!!!」
「本音は?」
「土下座しても絶対許さない!!」
「あはは」
○○○○○○○○○○○○○○○○
コーリスとバジュラの技が衝突し、爆発を引き起こした。両者は結界の壁に激突し、暫く動かない。
「…まさか、死んだ訳では無いですよね?」
「深手ではありますが、そんな事はないでしょう」
「様子を見ますか──って言ってる間に…」
ヴァジュラが静寂に一石を投じようとした瞬間、コーリスとバジュラが同時に起き上がり、互いを見つめ合った。
バジュラは瞳が金色に光り、コーリスの瞳は灰色に光る。明らかに先程から様子が変わった両者の間には誰にも入る事は出来なかった。
「……」
「……」
そして何やら察し合ったのか、頷き合い、獰猛に笑った。
「「積もる話はこの後で!!」」
第2ラウンド、開戦───!
アウゲィアス
・コーリスが持つ謎の力の根源であり、遥か昔に"楔"として世界の重大な要素だったモノ。
・何らかの理由で死にかける前は恐ろしく攻撃的な外見の翼竜であり、その破壊力は随一だったという。
・コーリスに宿る事で権能の維持を狙った。副産物として、彼の記憶に深く残る"迷う人"と"明るいけど病弱な妹分"、そして"ひ弱な幼馴染"から着想を得た結果、『今すぐにでも救いたくなる様な幼子』の人格を得た。
・彼の喪失が一因で世界はあるべき姿を失い、空に浮く島々の世界へと移行した。
・通称、"灰竜アウゲィアス"。
初代神将の力。
・初代神将のバサラが持っていたとされる力。バジュラが持つ計り知れない才能が、彼女自身が産まれる前にこの力を降ろしてしまい、寿命を縮める原因になった。
・バサラの人格を模倣しているが、力そのものであるが故に深い怒りや悲しみは覚えない。感情自体は持っている。
猟砕犬戊
・バジュラの奥義。二つの刃から斬撃を発生させ、炸裂後に更に多くの斬撃を生み出す技。
・炸裂をさせずに飛ばす事も出来、その場合巨大な二つの斬撃の技となる。
・幼き頃のバジュラは後者の技で空を割ったという。
オロロジャイア
・周年ストーリーを楽しもう!