幽々の空、灰暮れに   作:魔愛暴導富

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48.ヘカテー死す

 

 

 

 心地が良い。

 

 

「ふぁ…」

 

 

 目を開けたら俺はいつもの切り株の上にいた。小鳥のさえずりと風が頬を撫で、薄っすらと漂う霧。

 赤子の様に丸まって寝ていた俺は、近くに鍛錬に使っていた木剣が無いか探したが、そんなものは無い。ある筈がないんだ。身体を鍛える必要はない。今や空は平和で、誰一人寿命以外で死んでいないのだから。

 

 俺は約束通りあいつらを待てばいい。■■■と、フィラと──

 

 

 

「…もう、探したのよ?コーリス」

 

「あぁ、すまん。ヘカテー」

 

 

 ──ヘカテーを。

 

 

「眠たいのなら私の家で寝ればいいじゃない」

 

「ここが好きなんだ」

 

「変わらないわね、昔から」

 

「……そうか?」

 

「ええ。昔からここで寝て、私が起こしに来ていたでしょう?」

 

「そう、か。お前が言うなら間違い無いな。いつもありがとう」

 

「どういたしまして…ふふ」

 

 

 ヘカテー。俺の幼馴染で、度々俺を起こしに来てくれる優しい女性だ。将来を誓い合った仲でもある。

 俺達の馴れ初めは特に何もなく…いや、あるにはあるのだが、語るまでもない。俺の隣にはいつも彼女がいてくれた。だから、俺も死ぬまで彼女の隣にいようと思う。

 

 ヘカテーがこの島に来たのはいつだったか…覚えていないが、まぁ大丈夫だろう。ヘカテーだし。

 

 

「それよりも!こんな所に留まっていたら困るでしょう?」

 

「何がだ?」

 

「今日は式の服をフェリの家で試着する予定でしょう」

 

「……」

 

 

 ああ、そうだった。確か来月に結婚式を挙げる予定だった。何故俺は忘れていたんだ。でもヘカテーが覚えていてくれるから問題はない。

 

 

「さぁ、行きましょう…?」

 

「ああ…」

 

 

 俺達はあいつの家に向かった。

 

 

「ふふふ……」

 

 

 

 

 

 

○○○○○○○○○○○○

 

 

 

──古戦場、駐屯地。

 

 

 

 

「うふ、ふふふふふ」

 

 

 先程まで星晶獣や魔物と戦っていた戦士達は既に倒れ付した。倒れ、眠り、快楽を貪り、同時に力を吸われる餌となった。

 最後に残ったコーリスとゾーイも既に無力。

 

 

「餌がいっぱぁい………じゅる」

 

 

 下品な舌なめずりも、その姿で行なえば男を射止める魔性の魅了でしかない。

 一人、戦士達の顔を見ながら愉悦に浸る魔女がいた。

 

 

「ここを狩り場にして正解だったわぁ」

 

 

 ()()()()。またの名を冥妃、邪妃─そして、夢魔。

 星晶獣では無く、魔物ではなく、精霊でもなく、そして人間でもない。その上で永き時を生き、人を快楽の夢に堕とし精力を吸い尽くす魔女であった。

 

 彼女の影響下に置かれた戦士達はそれぞれが理想の夢を見ており…性欲、食欲、禁欲等、全てが叶う世界に浸っていた。先程コーリスが目撃した腰を振る男も、そういうものである。

 

 胸や脚を強調した扇情的な衣装に熱を帯びた瞳、そして金色の髪に、明らかな人外の証明である耳は男の情欲を刺激するだけの危険性を秘めていたのだ。

 

 

(最後の二人は中々に堕としがいがありそうだったけれど…少女の方は思ったよりも俗っぽかったし、男の子の方も疲労が溜まっていたからすぐ眠った)

 

 

 "精神の強さは肉体の強さに直結しない"、というのがヘカテーの持論である。どんなに屈強で武功を立てた戦士でも色には溺れるし、ひ弱で剣も振れない者が誘惑を退ける事もある。色欲が全ての世界ではないというのも彼女は知っている。

 

──だから、夢を見せた。夢ならば何が起きても受け入れ、享受する。それが人間の性質なのだ。

 

 

「さて、順番に精を……そして」

 

 

 彼女はうつ伏せに寝ているコーリスを見て涎を垂らす。

 

 

「メインディッシュは現実(いまここ)でぇ……」

 

 

 強い人間が無様に媚びる様、欲に負けて醜態を晒す様、青い若さを散らす様。そんな色が絡む人間の業を彼女は心底望んでいた。

 精気を吸う事は生命活動の一環だが、ヘカテーはそれを敢えて楽しみ謳歌する。

 

 

「ふふふ」

 

 

 その魔の手がコーリスの身体を仰向けに転がし、そのまま跨がろうとして───

 

 

「っ!」

 

()ね!!!」

 

 

 ゾーイと2匹の翼竜による3方向からの光線が彼女を襲った。

 

 

(起きたッ!なぜ!?眠りを跳ね除ける人間はいたけれど…眠ってしまった後に即座に起きる事は出来ない筈…!)

 

 

「種明かしをしよう。魔女」

 

 

 上に飛翔して逃げる事で光線を避けたヘカテーだが、突然の奇襲にかなりの衝撃を受けていた。

 そしていつになく剣呑な表情のゾーイ。その顔には血管が浮き出ており、怒りだけでなく他にも理由があると彼女は分析した。

 

 

「君の眠りの術は恐ろしい。生命体の欲に訴えるからか、本能的にその夢へ意識が滑り込んでしまう」

 

「…」

 

「だから、先にやらせてもらった」

 

 

 疑問の声を上げる前に龍が声を上げた。

 

 

「ルルルル!」

 

「この龍は…」

 

「尾にリボンを付けている方がディ。こっちがリィだ。ディは人を眠りに誘う息を吐ける」

 

「…まさか」

 

「君の術中に嵌る前にディに眠らせてもらった。不甲斐ない。私がいながら、この戦場を君の思うままにしてしまった」

 

 

 しかし人間の本能に訴える眠気は簡単に無効化できるものでなく、例えディのブレスが強力なものだとしても、同じ睡眠誘発の効果がせめぎ合ってしまう事は明白だ。

 そうなってしまう場合、人間の脳には恐ろしい負荷がかかる。

 

 ビキビキと脈動している血管や瞳孔は、その様な負荷を抑え込んで無理矢理に意識を取り戻したからである。

 

 

「さて、世間話はこれにて終了」

 

 

 ゾーイが剣を構え、翼竜のディとリィが大きく口を開けた。ヘカテーは先程まで眠っていた少女が、自分より高位の存在である事を今更理解し、後退った。

 

 

「…虎の尾を踏んでしまったわね」

 

「注意書きからして古戦場自体が君の餌場になっていた様だが、悪事には応報が付き纏うものだ」

 

「ふふ。でも私を中途半端に倒してしまうと、ここの人間達は目覚めの喜びを知れなくなるわよ?」

 

 

 術を操る人間を殺害する場合、特に封印や呪い等は術者に解除させなければそのまま残る事が多い。ヘカテーの言葉通りならば、餓死するまで夢から覚めないままであろう。

 

 しかし彼女のソレは嘘だ。夢を利用して力を得る彼女の性質上、敢えて起こす事で人間の欲を刺激し、夢の再来を望ませる事こそ効率の良い餌の作り方。どんな人間が死のうが構わないが、自分が生きられなくなるのは困る。そういう思考回路だった。

 

 

(さて、彼女と戦うのは避けたいし。この人数を逃がすのは勿体無いけれど、逃げなければね)

 

 

 ──残念ながら。

 

 

「君は何も言わず許しを乞うべきだった」

 

「待っ──」

 

「ガンマレイ」

 

 

 奥手になった時点でゾーイは彼女の性質を見抜いている。万感の敵意を込めた光線に加えディとリィによる一極集中のブレス。

 

 しかし直撃したかに思えたヘカテーの姿は無かった。

 

 

「幻影か。器用だ」

 

 

 ゾーイの背後に現れたヘカテーが杖を振りかざす。すると一瞬にして周囲から炎が現れ、うねりながら襲いかかった。

 そしてまたもや姿を晦ます。

 

 

「リィ」

 

「クルッ!!」

 

 

 炎の対応はリィによる水の吐息。

 

 

「ディ」

 

「ルル…!」

 

 

 幻影の対処にはディによる光線。ディのブレスには魔力を断ち切る能力が備わっており、魔法による効果を消去できる。

 

 

「そこか」

 

「く…!」

 

 

 ヘカテーの居場所を感知したゾーイ。恐ろしい速度で接近し剣を振り下ろすが、炎を纏った杖によって防がれる。

 

 

「なる程。戦闘慣れしている」

 

「あなた…何?」

 

「語る必要は無い。ただ君の敵だ」

 

(まずいわね…本当に)

 

 

 

 だが同時に気づいた。ゾーイと共にいた男の莫大な魔力。それを吸取れば逃げるだけの力を得る事が出来るかもしれないと。

 

 

(男が堕ちるまであと少し…ふふ。それがこの少女の絶望のサインかもしれないわねぇ)

 

 

 淫妃は心の中で再び微笑んだ。

 コーリスの心を犯す事はそう難しくな───

 

 

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○

 

 

 

 

 あいつの家に来てフィラに出迎えて貰った後、俺とヘカテーは鏡がある部屋に来ていた。彼女がドレスを着終わった様なので、今から俺はタキシードの試着に入る。

 

 

「見てコーリス。似合ってるかしら?」

 

「ああ、綺麗だ」

 

 

 ヘカテーは黒を基調としたドレスで、何でもおばさん*1の持っていた喪服を参考にして作られた物らしい。

 

 

「コーリスも着替えましょう?」

 

「ああ」

 

 

 髪が整っているか確認しようと鏡を見た。そこには勿論いつも通り笑うヘカテーと、俺の姿が───俺の、姿が。 

 

 いや、うん。俺だ。なんてこと無い服を着て、五体満足で生きている俺だ。19歳になったばかりの、俺だ。

 

 

 あれ……ここ、どこだっけな。

 

 

「ヘカテー」

 

「なに?」

 

「この島の名前って…何だった?」

 

「んもう…忘れたの?」

 

「教えてくれ」

 

「私達の島は、"トラモント"よ」

 

 

 

 ─────そうか。

 

 

 

「よく分かった」

 

「ッ!?」

 

 

 脳が冴え渡る。異物感が消え去り現実の記憶が戻って来た。

 敵、名前はヘカテー。能力は強制的に眠らし夢を見せる。

 

 

「痛い…!やめてコーリス………!」

 

「知らん」

 

「分からないの…?私よ、ヘカテーよ…?」

 

「初対面だ」

 

「………!あなたまさか」

 

「来い、ノスタルジア」

 

 

 ここは理想の世界。俺の思うままの背景で進行するストーリーが主軸の様だ。但しこいつ(ヘカテー)が登場する以外は。だがそれ以外はこっちの都合に合わせてくれる。この様に剣士である俺を想起すれば現実と同じ姿になれる訳か。

 

 

 

「覚悟しろ。夢魔」

 

「な……何故夢から戻ってこれたの?あのまま気持ち良く生きられたというのに」

 

「…この夢はその人間の望みをベースとしているが、一つ違うのは、必ずお前が出現し()()()()()()をしなければならない事だ」

 

 

 その行為に検討はつかないが、恐らくヘカテーに恋心を抱く事か、長い時間身近で過ごすといったものだろう。魅了使いの魔物にもよくある事だ。

 

 

「どんな人間でも夢を見ている途中は薄っすらと『ここは夢だ』と勘づくものだが、それはそれとしてその世界を謳歌する。夢の中では違和感や異物感は無く、受け入れる事が出来るからな」

 

「……」

 

「その受け入れるという夢の性質を利用し、お前の魅力を最大限主張する事で、無関係の人間なのに"ヘカテー"という設定が刷り込む事が出来たという事か」

 

 

 先程まで俺は何一つ疑わずにヘカテーを婚約者だと思っていた。今では全く欲も湧かないが、間違い無く俺は鼻の下を伸ばしていた。

 

……屈辱。しかしこの夢には欠点がある。

 

 

 

「だが、現実で"そういうもの"だと決め付けたものが、違う形で夢に出てくる事を受け入れられる訳がない。あくまで人格は俺ベースだからだ」

 

「私が口を滑らせた、とでもいうの…?」

 

「口ではない。設定の話だ」

 

 

 俺は絶対にあの絶望を忘れない。

 

 

「トラモントは俺が13の時に離別した霧の島だ。誰が何と言おうが俺はもうあの島に戻る事は出来ないし、その運命を心から憎んだ」

 

「…」

 

「だからこそ──()()()()がトラモントにいる事はあり得ない」

 

「それは詭弁よ!」

 

 

 ヘカテーがありえないと叫ぶ。

 

 

「夢はその人間の望む世界を作る…!なら貴方がトラモントを望む程そういうものになる!大人になってもこの島で幼馴染達や村人と過ごし、怪我も死も無い幸福な人生を送る世界を──」

 

「俺は諦めたんだ」

 

「は」

 

「───()()()

 

 

 剣を振りかぶる。

 

 

「皆が皆お前みたいに性欲で生きてると思うなよ」

 

 

 ……なんかコイツ泣きそうな顔してた。

 

 

 

 

 

○○○○○○○○○○

 

 

 

 ヘカテーの足掻きも長くは持たない。ゾーイが杖を弾き飛ばし、膝をつく彼女に剣を向ける。

 そこでヘカテーは涙を見せた。

 

 

「ここまでだ」

 

「…して」

 

「うん?」

 

「許して…私、人を殺そうなんて思ってないわ…ただ生きる為に必要だったの」

 

「そういう生態なのか。確かに人を殺す気は無かった様だな」

 

 

 ヘカテーは心の中で笑う。確かにゾーイは強いが疑う事が苦手だ。数々の人間を魅了し利用してきた彼女の言葉は真に迫る物があり、効果は覿面に見えた。

 

 しかし…。

 

 

 

「私は許そう。だが──」

 

「…?」

 

「──コーリスが許すかな!」

 

 

 

 瞬間──コーリスは拾ったヘカテーの杖を全力で振り抜く。

 

 

 

「ぼっご──!?」

 

 

 脇腹を殴り飛ばされたヘカテーは何回か地面を跳ね、防衛の為に建設されていた壁に激突した。

 

 

「すまん、遅くなった」

 

「おかえり」

 

 

 "起きた時点でヘカテーを殴り飛ばす"と決めていたコーリスは、近くに落ちていた彼女の杖を手に取り即座に行動に移った。

 動揺による影響か、ヘカテーの夢に囚われていた戦士達の眠りが浅くなったのを二人は確認した。

 

 

「コーリス」

 

「ああ。クリアオール!」

 

 

 折角なので杖を用いて魔法を使用。これはコーリスの魔力を空間に流して活力を与えるもので、毒や麻痺、睡眠等の状態異常を和らげる効果がある。

 コーリスは剣士だが、魔法は得意な方であった。

 

 

「うーん…はっ!」

 

「ここは…?」

 

 

 次々に起き始める戦士達。何故か数秒後に皆顔を赤らめているが、コーリスは突っ込まなかった。というか突っ込めなかった。自分もあんな感じになっていたからだ。

 だから彼は腹部を抑えて悶絶しているヘカテーの元に向かった。

 

 

「あ、貴方…私の、杖…」

 

「恨むのはお門違いだ。こっちは見たかった景色()の中にお前が出てきて腹が立っているんだからな」

 

「そうじゃな、くて…」

 

「?」

 

「杖は殴るものじゃないでしょ…それはメイスでしょう……」

 

 

 よく見るとヘカテーの杖は先端が燃え盛っているので、彼女の腹部は軽く爛れていた。

 途端に申し訳なさを感じるコーリス。

 

 

「よくも…この私を……!!」

 

「…困った」

 

「皆私との夢を見て幸せだったのに…それを邪魔したのよ貴方は…!」

 

「……そうだな。確かに逃げたい現実もあるかもしれない。その理想から無理矢理に起こすのは辛い事か」

 

 

 トラモントの情景は確かに正確だった為、彼もその点には思う所があった。だからこそ、ヘカテーの目的を聞かなければならない。

 

 

「ではお前の目的は何だ。皆の理想を夢だけでも叶えたい、という訳では無いだろう?」

 

「…私は」

 

 

 ヘカテーは語り出した。

 

 

「…私は夢魔の邪妃。人に夢を見させて精力を奪う者」

 

「ここに来た理由は?」

 

「屈強な戦士達が揃う場所だから…餌場として狙った」

 

「屈強な戦士という理由が分からない。生気そのものに筋肉は必要無いだろ」

 

「……ど、どんなに強い戦士達でも夢には抗えない。夢の中でだらしなく顔を緩めて腰を──」

 

「…………」

 

 

 コーリスは理解した。嫌味のつもりで言った『お前みたいに性欲だけで生きてると思うなよ』は間違いでは無かったということに。そして、ヘカテーが自身の愉悦を追求する悪魔だという事にも。腰の意味は分からないが。

 

 

「つまり人間が堕落する所を見たいという事だな。同情の余地なし」

 

「ちょ、ちょっと待って」

 

「なら早く消えろ」

 

「分かったわ!」

 

 

 情けなく逃げ出そうとするヘカテーに背を向け、起きた人間達を見ると、彼らは武器を構えても一向に此方に向かってこない。それどころか目を逸らし気まずそうに頬を掻いている。

 眠気が覚めていないのだろうか。

 

 

「…何なんだ」

 

「あーきっとさっきまで()()していた相手に剣を向けるのは気分的に嫌なんじゃないかしら…」

 

「合体…?なんだ、合体って」

 

「え…?言ってしまえばセッ──」

 

「ガンマライト・エクスキューション!!」

 

「ク──!!??」

 

 

 言わせてはいけない危険な言葉を感じたコーリスは即座に奥義を解き放った。だが足りない。これ以上ヘカテーをこの空間に居させてはならないという謎の使命感が彼を支配した。

 

 

「ガンマライト・エクスキューション!ガンマライト・エクスキューション!ガンマライト・エクスキューション!ガンマライト・エクスキューション!ガンマライト・エクスキューションッッ!!!!」

 

「ぼあああぁぁぁ!?待ってほんとに死んじゃ──」

 

 

 5連。累計6回の光線をまともに受けてもヘカテーは健在だった。伊達に永い時間を生きていない。最後の方には自らも炎を展開してコーリスの魔の手から逃れようとしていた。

 

 

「大体俺より年下の人間もいるんだぞ!」

 

「そういう青い若さを犯すのが良───あ…いや!ちが」

 

「…お前終わってるな。今までの人生、変わった人間と突然出会った事は多いが…お前ほどぶっ飛んでる奴は初めてだ」

 

 

 初の古戦場にてヘカテーと遭遇。この出会いは後に大きな運命を齎すのか…それとも何の意味もない息抜きなのか。

 

 

「…金輪際人間の営みを乱さないと誓うなら逃がす」

 

「え…それはちょっと」

 

「当たり前だ。戦士達の士気に関わる」

 

「別の意味で士気の向上に貢献してるの思うのだけれど…」

 

「黙れ。あとお前の様に星晶獣以外で古戦場を狙う者はいるか?」

 

「…私には分からないわね」

 

「取り敢えず分かった。今日はこれでいいか…」

 

「…本当に良いの?貴方達を襲ったのよ?」

 

「死人は出なかった。それに…」

 

 

 コーリスは瞼を大きく開いて言う。

 

 

 

「お前の名前覚えたからな」

 

「あ、はい…」

 

 

 

 ヘカテーの強制謹慎が言い渡された瞬間であった。

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 ヘカテーは杖を返してもらいおずおずと帰っていった。突然の淫夢に戦士達は暫く無言になっていたが、コーリスもその様な夢を見ていたと気づくと激しく活気が増した。

 

 

「坊主は結婚する夢かー。俺はな…」

 

「俺なんて姉だったぞアイツ」

 

「娘ー!!」

 

「メイドさんだった」

 

 

 薄めの猥談。ゾーイは陰ながらにヘカテーを消すべきか思案中だ。それくらいの影響力があったのだ。

 

 

 古戦場は、まだ終わらない。

 

 

「ゾーイ…」

 

「なんだ?」

 

「…帰ろっか」

 

「…そうしようか」

 

「古戦場、つらい」

 

 

 ヘカテーの様な敵には色んな意味で会いたくない。そう願ったコーリスは古戦場を1日目で辞退する事を決めた。

 

 

 

 

 

 

*1
フェリの母





 古戦場を淡々と書くのが嫌だったのでヘカテーを出しましたが、ちゃんと後の展開にも繋げたいと思います…

 あとマーズの尻でか!

 
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