幽々の空、灰暮れに   作:魔愛暴導富

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フェリ最終おめでとおおおおおおお!!!! 
おらッ!ラジエル全プッパァ!!


50.カワイイあの子は遺跡(ハコ)の中に

 

 

 

「……生命体、無し。罠も無い。空洞…突起物が少ないな。何方かというと廃墟に近い」

 

 

 コーリスとゾーイはある依頼を受け、ポート・ブリーズから一時的に離れた。

 依頼の内容は遺跡の探索。依頼主はこの遺跡の最寄り街の長である。なんでもここ最近『あの廃墟にはナニカが封印されている』という音も葉もない噂が流行っており、彼等が実際に赴いた所、"奥に何かがあるのは分かるが進めない仕組み"らしく、その廃墟を古代の遺跡と断定。捜索の依頼をこなし続けていたコーリス達に白羽の矢が立った訳だ。

 祈望の騎空団はポート・ブリーズで名が立ち、ヘカテーの件で外部にほんの少し名が売れた。商人が多いその島で名声を得れば空に広まるのは速い。だからこそこの依頼を受けられたのだ。

 

 現在コーリスはその遺跡の入り口から内部に霧を送り込み、偵察を行っている。

 

 

「劣化での崩落にさえ気をつければ問題なく進めそうだ」

 

「了解した。行くか」

 

 

 二人は遺跡の中に入った。

 内装は最近になって噂になったとは信じられない程に神秘的で、子供が遊びの探検に赴くには本格的すぎる出来栄えであった。

 

 

「動物の気配が無かったのが気がかりだ。地中生物なら喜んで住みこむ筈だが…」

 

「封印は嘘だとしても、何かがあると思わせる雰囲気だけは強い。何故彼らは今更になって探索依頼を出したのだろうか」

 

「国があるのなら情報の検閲もありえるが…ここはどちらかというと田舎の方だしな」

 

 

 覇空戦争後、空の世界は星の残滓を残すまいと奔走し、あらゆる空域での連携による大捜索が始まった。星晶獣が封印されているか、眠っているのか…もしくは星の民が残した遺物の可能性があった為、分かりやすい位置の遺跡が知られていない筈がないのだ。

 

 歴史を重ねる過程で忘れ去られる物もあるが、街の近辺を忘れる方が難しいだろう。だからこそ彼等は違和感を抱いていた。

 

 

「霧で探った時に思ったんだが、ここは綺麗なんだ。手入れをされているという意味では無く、厳重に作られた建物の感触があった」

 

「だが、浅いのだろう。街の人々はあまり奥に進めなかったと言った」

 

「無駄骨で終わるならそれも良い。変なものが眠っていても困る」

 

 

 蝙蝠も虫も土竜もいない。茶色い土に囲まれた外壁も強固なもので、劣化を防ぐ何らかの技術が使われている様だ。

 そして二人は足を止めた。

 

 

「行き止まりだな」

 

「大体こういう最奥部には壁画なり像なり見えるものだが…本当に何もないな。だからこそ怪しい」

 

「罠は無いとしても、感覚では捉えられない仕掛けがあるのかもしれない。君の霧が属性元素を触れない様に」

 

「魔物が住みつかない理由にも秘密があるかもな」

 

 

 すぐに帰ることも出来たのだが、こうまで露骨に無意味な遺跡があるものかと疑問を覚えたので、二人は少し残って探る事にした。

 

 

「通常、属性は罠にしか用いられない。火を扱う奴に向けた粉塵爆発、水には水蒸気爆発。そういった現象を無理矢理引き起こさせるんだ。だから、機械的な仕掛けは星の民の物だと考えていい」

 

「属性に反応するぜんまい仕掛けの様なものは無いのか?」

 

「ない。だが属性では無く結界ならば融通が大きく広がる」

 

 

 結界。それは魔力で作られた一種の空間。コーリスが扱う盾は魔力の凝縮体であり、それを仕切りとして使う事で擬似的な戦場を作り出す事が出来るが、結界は完璧な断絶を表す。

 魔力で象られた故に破壊は可能、加えて空間の輪郭を構築し、それを手放しで維持する事は難しい。犬神宮でバジュラとの一騎打ちの際、ヴァジュラと巫覡達が作った結界も高度なものであったが、結界に対し常に自身の魔力を流し込んで形を安定化させる必要があった。

 

 つまり遺跡に何らかの結界があり、人を遮っているのなら、その作成者は相当な曲者になるだろう。

 

 

「そして何より恐ろしいのは、作った人間の死後もその場に在り続ける結界」

 

「そんなものがあるのか?」

 

「その場にある物質に魔力を混ぜ合わせ、一つの物体として認められる様になれば自ずと自立する。俺は以前普通の結界を作ろうとした事があったが…無理だった」

 

 

 四角形を想像するのは簡単だ。円も形だけなら可能かもしれない。しかし、中身に物質が入る事を前提とする結界は、地面の接地面に加えて表面の強度にも気を遣う必要がある。

 短時間で作る事は彼には出来なかった。

 

 

「まぁ…歩いていて問題がないのなら結界じゃな──」

 

 

 ──ポチ。

 

 

「…何か押した。左足で」

 

「仕掛けか」

 

「分からない。何も起きないが」

 

 

 コーリスは足に感触があった場所を凝視したが、何も見つからない。ボタンの様な感触だったし、空気を押してる感触でもあった。

 同じくゾーイもその付近に手を触れてみる。

 

 

「これは魔法が網目の様に重なっている部分だ。恐らく封印術」

 

「…」

 

 しかし、何も起きない。

 

 

「解けないのなら迂闊に触らない方がいいんじゃないか?危険な兵器とか星晶獣が眠っていても困る」

 

「安心してくれ。星の気配は感じない。もしも兵器が眠っているのなら私が改めて封印する」

 

 

 無論それは解ければの話だ。触るだけでは封印が解除出来ないのなら、何かしらのきっかけが必要となる。

 

 

「一緒に触れてみたらどうだ?」

 

「複数人数か…やってみよう」

 

 

 コーリスとゾーイは手を重ねてその部分に触れてみた。先程と同じ感触が伝わり──

 

 

「…!」

 

「紐どけた」

 

 

 魔力の束が霧散した感触を感じた。

 

 

「これは…」

 

「これは…()()()()()解けたのだろう。人数の問題では簡単に解除できてしまうからな」

 

 

 目の前の壁が溶けるように消える。更に道が出来たのだ。

 

 

「霧を送り込む」

 

「頼んだ」

 

 

 コーリスは目を瞑り奥の部屋に向けて霧を飛ばしたが、すぐにそれを止めた。

 

 

「どうした?」

 

「ただの狭い部屋…その中心に、子供が倒れている」

 

「何だと…?」

 

 

 コーリスが読み取った情報は少ない。何故なら、この道の先には狭い部屋と倒れた子供しかいないのだ。先に道も無く、仕掛けもない単純な部屋。

 だが、封印されていた部屋の中に子供がいるとなれば話は別だ。間違いなく普通の人間ではない。強大な力を持った大罪人や、暴走した魔法使いを封印しているのならまだ理解も出来る。しかし子供。星の民は不死身だが不老ではなく、大抵は大人。だがゾーイが星の気配を感知できない事からその線はそもそもない。

 

 警戒と共にゾーイは剣の先に光を灯した。先の薄暗い部屋が鮮明に見える。

 

 

 ──倒れていたのは金髪の少女だった。髪は長く、服装は一般的な魔法使いの物ではなく、高貴さと、童話に出てくるようなメルヘンチックな様相を混ぜた物。

 

 

「起き上がる様子は見えない」

 

「だが衰弱している様にも見えないね。いや…あの少女自体が罠の可能性もある」

 

 

 ゾーイの言葉が響いた瞬間、少女の指がピクリと動く。

 

 

「…動いた」

 

「ディ、リィ。落ち着くんだ。まだ敵と断定はできない」

 

 

 翼竜達は本能からかブレスを叩きこもうとしたが、主の言葉には従うのみ。

 

 

 

 だが、彼女の判断は適切では無かった。

 

 

「ッ!!」

 

 

 ──少女の真下の地面が脈立った瞬間、コーリスが全走力を以て駆け出す。

 うねった地面が()()()()()()()()()所で、その首に向けて彼は剣を振るった。

 

 

「なっ!?」

 

 

 だが、剣はその龍の首にめり込んでいる途中で静止し、敵の内部と同化しようとしていた。

 コーリスは左手に盾を纏って岩の龍の頭部を殴り壊す事で密着から一先ず逃れることが出来た。

 

 

(剣は無事だが義手に負担をかけた…しかも少女が立っている)

 

 

 そう、目の前の少女が指で地面を撫でた事が発端。更にその当事者はいつの間にか目の前で佇んでいる。

 

 

「ほぉ?出来ない奴はそのまま、出来る奴は剣を捨てて下がるのが基本だったが…やるじゃねぇの」

 

 

 声は軽薄、瞳は万物を嘲り、容姿は可憐。

 

 

 

 

 ──そしてその表情、邪悪。

 

 

「悪いが面倒事があって生かして帰せねぇ。封印解除の礼だ…楽に逝きたきゃ大人しく呑まれなァ!」

 

 

 少女が本を掲げる。背後からは赤の龍が顕現し、周囲の地形を泥波の様に塗り替えていった。

 

 

「魔導書か…」

 

 

 コーリスは少女を土属性と仮定し、土や石などの形状を操る能力と考察した。だが問題は背後の龍。少女から発せられる物と同質の魔力を感じたのだ。

 

 彼は剣を構え、明確に少女と相対した。

 

 

「と言ってもあっちの奴は少し危険だな…まぁどの道」

 

「ッ、隔離だ!!」

 

「遅え」

 

 

 少女が怪しく笑ったと同時にゾーイは背後に回ったが、周囲の土が粘土の様にかき混ぜられ、彼女は遠くにまで追いやられてしまった。

 

(まずい…流石にゾーイでも生き埋めは厳しいか)

 

 

 無論ゾーイが強硬的に周囲を消し去る事は可能だが、少女はそれを感じ取ったのか、只管遠くに飛ばす事に留めている。 

 だが彼女は寸前に2対の龍と杖をコーリスに差し向けていた。ディとリィが吠え、コーリスは杖を左手に持って剣と構える。

 

 

「くくっ…なる程な。魔術のイロハはある訳だ。だが、勘違いしてるんじゃねぇか?」

 

「…」

 

「お前が相対するオレ様は──摂理そのものだって事をなァ!!」

 

 

 ──ある男は数千年前にある技術を生み出した。錬金術という、物質を分解して再構築する魔法の一種。その利便性と拡張性、そして未来性から派閥として一気に広まる事数十年。

 男は不滅の肉体を作り、真理を追求していく。しかし、その天性の横暴さと余りある才能が同士達の反感を買い封印。

 

 

 名を──

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

VS 開闢の錬金術師 カリオストロ

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

 

「冥土の土産に学べ!オレ様の名はカリオストロ!寝起きなんで少々荒れさせなぁ!!」

 

 

 開祖カリオストロ、復活。

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

「ディ!ブレス頼む!」

 

「ルルル!!」

 

 

 尾にリボンを付けたディが睡眠の吐息を吐く。物理的な攻撃力を含まないその煙は、吸い込んだ時点で意識を微睡ませる恐ろしい性質。防御の方法は無い。

 

 

「あぁ…?」

 

 

 カリオストロは自分の意識が途切れかけている事に気が付いた。瞼が閉じていく。しかし吸い込んだ時点で詰みである。

 

 …筈だった。

 

 

「ん」

 

 

 ──コツン。

 

 拳で弱く、頭を叩いた。それだけで彼女の意識が完全に覚醒した。

 

 

(やはり…人間の構造では無いか)

 

 

 一応の想定外ではあったが、既にその隙を見てカリオストロに急接近したコーリス。腕を取り、魔力の壁で四肢を固定し無力化を狙う。

 そこで彼女が取った行動は、コーリスの左手に触れる事だった。

 

 

「…おっ?」

 

 

 何故か驚いた表情を浮かべたカリオストロだが、すぐにそれは悪辣な笑みに変わった。

 

 

「これなら()()()()

 

「──!!」

 

 

 その瞬間、コーリスの義手が先程の地面の様に捻じれ、複数本の槍の様に尖って彼自身に襲いかかっていく。

 

 

(土以外も操れるのか…!?)

 

(こいつ…錬金術を知らねえなぁ?)

 

 土を操る能力という見当が外れたと同時に、カリオストロもコーリスの無知を理解した。

 彼は串刺しになる前に義手との魔力連携を解除、間一髪で無理矢理取り外しその場から離れる。

 背後からはリィが援護するが、その攻撃はカリオストロの近くに現れた赤龍が防ぐ。

 

 

 

「クルル…?」

 

「…問題ない。リィ、ありがとう」

 

 

 義手がその機能を果たせなくなった為、実質左腕が破壊された事になる。その事実がコーリスの精神を怒りに染めた。誇り高き騎士の国に齎された物であり、紛れもなくかけがえのない道具。

 そしてリィの心配は杞憂のものとなる。

 

 

「ディ、リィ。少し下がってくれ──」

 

(…気配が変わったな。それにしても機転が利く奴だ。土で飲むのも串刺しも避けやがった)

 

 

 カリオストロは魔導書を構える。余裕の表情はあくまで外面的なもので、内心ではほんの少し焦っている。理由はゾーイ。遠くの地面に飛ばした彼女が此方に向かって猛進してきているのだ。

 

(あの女が帰ってくる前にケリつけるしかねぇな。冷静に行くか)

 

 しかし次のコーリスの言葉が、彼女の感情を刺激した。

 

 

「──壊す」

 

「────あ"?」

 

 

 ここで豆知識。

 カリオストロに『壊す』は禁句である。何故なら、錬金術とは物質を分析・分解し、異なる物質に精錬する事であり──単なる破壊とは程遠い技術であるからだ。

 そして彼女は自身の身体さえも理想の体現として構築した。つまり、彼女を壊すと表明する事は完全なる侮辱。加えて彼女が封印された理由にも破壊の能力が関係している。

 

 

「やってみろや…ガーキっ♡」

 

 

 カリオストロの指に力が入った。背後の龍が唸り、周囲の地面は一層迷宮の様に複雑な変化を起しながらコーリスへと向かっていく。

 

 

「ウロボロスに飲まれるか大地に捻じり殺されるか…好きな方で逝きな!!」

 

(…なる程。ウロボロスという龍はあいつの能力で作った被造物。つまり感情は無い……無いよな?)

 

 

 ならコーリスのやり方は出来ている。霧を全開にすれば良いのだ。

 

 

(感情があるなら無生物でも構わん。だがあの龍は自律で動いている様には見えない。つまりあの女を叩けばッ!!)

 

(霧だぁ?大体は水と風の複合属性…大穴で大気の温度を操作できる火属性ってとこだな。目晦ましなのにまぁ随分と小器用なもん作りやがる)

 

 杖によって以前とは比べ物にならない速度で霧の段階が進んでいく。

 カリオストロは自然現象の霧を魔法で作り出したと分析したが、コーリスの霧は正常では無い。霧の見た目を取っただけの感覚そのものである。

 

 

「っ?」

 

 カリオストロの意識が一瞬途切れた。

 しかし常に思考を巡らせている彼女は、逆に自分が呆けた事に対してだけ違和感を覚えた。通常ならば記憶の逸脱に混乱する所を、自身の思考状態にだけ疑問を覚える事で、常人よりも遥かに対応が早く復帰した。

 

 だが、コーリスは既に懐に潜り込んだ。

 

 

「どうせ人間じゃないんだ。お前みたいな魔法使いの手合は──」

 

「てめぇ─」

 

「力で殴るに限るッ!!!」

 

 

 狙うは腹部。左手を失った為に身体のバランスが覚束ないが、それは上腕部から盾を構成する事で違和感を解消。

 

 彼の鉄拳がカリオストロの身体に激突した。

 

 

「がは……!!!」

 

「……馬鹿な!?」

 

 

 確かにカリオストロは苦しみの声を上げた。しかしコーリスは剛力を用いて意識を断つべく全力で胴を突いた。本来ならば跳ね飛び、蹲る様に身を丸めて悶絶する筈だ。

 そのくらい、拳の直撃は苦しいものだから。

 

 だが彼が自らの拳に感じた感触は、()()

 

 

「ってええ………!!!」

 

「まさか…お前自身も鉱石か何かの塊か?」

 

 

 初めて笑みが消え、カリオストロはコーリスを睨みつける。拳は直撃したものの、身体は依然として地面に立ち続け踏みとどまっている。

 

 

(どんな馬鹿力だこのガキ…そこらのなまくらじゃ折れるくらいには硬く作った筈だぞ。クソ…!いってぇ…)

 

 

「リィ!凍らせてくれ!畳み掛ける!!」

 

「ば!?氷は止めろっ!」

 

 

 コーリスはカリオストロの身体を被造物であると考察したが、性質は人間の肉体に限りなく近い物だと判断し、リィによる氷結を試みた。

 

 しかし洞察力はカリオストロの方が上手。

 

 

(読めてきたぞ…ガキは馬鹿力と防御、絶対に触れちゃいけねぇ霧か。霧は吹き飛ばせばいいが…問題は龍だ。リボンの方が弱体の息、もう一体は属性の息か…!)

 

 全てに置いて回避を要求される戦闘は彼女の不得意とする所。ならばと、彼女は敢えて単純に考えた。

 

(広範囲を一瞬で散らす!)

 

 

「ウロボロス!」

 

 カリオストロは動きを止め、その瞬間ウロボロスの速度が上がった。彼女の手に空気中の4元素が集まっていく。

 

 

「これは…大技か。この狭さで何を…」

 

 

 広範囲の魔法を使えば周囲の瓦礫に押し潰されるのは必然。だが、カリオストロは環境を自在に操る。退避も可能。その事を思い出したコーリスは杖に魔力を宿らせた。

 

 

「──フォルウン」

 

 フォルウン。杖に一定以上の魔力を継続して纏わせ、放出・収束を最速で行える状態にする技。魔力を放出しながら振るえば物理と魔法の二段攻撃が可能となる。

 彼は蒼銀色に光る杖をウロボロスに向けて振るった。

 

 

「───!!!」

 

 

 その打撃はウロボロスの外殻を破壊し怯ませた。

 

 

「ちっ…」

 

 

 カリオストロの溜めはあと数秒で完成する。だがディとリィ、コーリスが既に周囲を取り囲んだ。戦いは終わる。

 

 

「…なんてな」

 

 

 と、誰もが思っていた。笑ったのはカリオストロだ。

 

 

「誰でも分かる必殺技なんてオレ様がやると思うか?ガキ」

 

「なんだと…?」

 

「複数の属性元素を込めた奥義ってのはな…」

 

 

 それは常人の頭では思いつかない運用方法。

 

 

「不安定に暴発させた方が危険なんだよ!!」

 

 カリオストロは土の繭を作り自らの身を守る。コーリスは思わず舌打ちをした。

 

(やられた…魔力を敢えて寸前で断ち切る事でワザと奥義を失敗……!爆発か!)

 

 暴発で死にはしない。だが、天井の崩落は流石に盾でどうこうなるものではない。一手先を行ったのはカリオストロだ。

 

 ──そこで光る青の星。

 

 

「待たせた!!」

 

「待ったぞ!」

 

 

 ゾーイである。彼女は地面に揉まれ続けていたが、カリオストロの爆発する程の魔力を感じ取り、周囲に気を遣いながら駆け抜けてきたのだ。

 

 

「はぁっ!」

 

 

 ゾーイが天井に穴を開ける。頭上の崩落の心配は無くなった。

 後は──

 

 

「衝撃に備えろ!!」

 

 

 爆発から身を守るだけである。

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

「はぁ…寸前だが間に合った」

 

 

 爆発の範囲はこの場所を考えれば大きい方であったが、コーリスが予め盾で囲んだ為か、そこまでの影響は無かった。

 しかし生きているのはカリオストロも同じ事だ。

 

 

「何処にいる?」

 

「君の真下だ」

 

「なに?」

 

 

 コーリスは下を見た。見覚えのある悪辣な少女が蹲っていた。

 

 

「自爆…?」

 

「ちげぇよ…ガキが……」

 

 

 カリオストロは胸を抑えて苦悶の表情を見せていた。それが何だか演技にも見えなくて、ディとリィも困惑しながらゾーイの肩に乗った。

 

 

(これは…くそ、二重封印だったか。オレ様が力を使えば遅効性でジワジワ削ってきやがる…!)

 

 

 カリオストロに施されていた封印は二つ。単純な肉体の封印と、力を削ぐ封印。後者は彼女の錬金術に反応して肉体と魔力を削る恐ろしき術。

 

 そこで、何を思ったのかコーリスが彼女の背中に触れる。

 

 

「敵かもしれないぞ」

 

「間違いなく敵だ。だが袋叩きにも出来る」

 

 

(クソガキが…何を………ぐっ!?)

 

 

 コーリスが力を入れると、カリオストロの身体が跳ね、数秒後に彼女は自身の苦しみが消えた事を理解した。

 

 

「……ガキ、何をした」

 

「お前を苦しめてる術に魔力を流し込んで壊した」

 

「術式の魔力を溢れさせたのか…」

 

 

 カリオストロは助けられたのだ。しかし、先程殺そうとした相手に温情を掛けられた事は、彼女のプライドを複雑に唸らせた。素直に礼は言えない。

 歯を食いしばって青筋を浮かべた彼女はぎこちなく笑みを作った。

 

「こ、交換条件だ」

 

「なんだ」

 

「お前の力について解明してやるから…カリオストロを見逃して?」

 

 

 カリオストロは猛烈に後悔した。ここまでしてやられた事は人生史上二度目だと、自分のペースが崩された事に怒りを抱いた。

 

 だが、コーリスの反応は想像と異なるものだった。

 

 

「俺の力が分かるのか!?」

 

「うおっ!?」

 

「教えてくれ!」

 

「がっつくな!解明と言っただろうが!」

 

 

 コーリスはカリオストロの肩を掴んで詰め寄った。彼女が示唆した力の解明は霧のことであり、コーリスでさえ理解できないと言う事に気付いた理由は傲慢なものだった。

 

──"カリオストロが知らない事は、他の人間も知らない"。

 そういう考えだったのだ。

 

 

「頼む!」

 

「分かったよ…クソ、逃げれなくなったじゃねぇか」

 

 同時に少しだけ今世に興味を持ったのも事実。数百年に及ぶ封印の影響は彼女にとって大きかった。

 

(オレ様の知らない力が他にもあるんなら…ちょっとは退屈しないで済むな。この女も星の奴等と似てるし)

 

 警戒心を一方的に解かれたカリオストロは溜息を付いた後、彼等の方を向いて声色を変えた。

 

 

「じゃーあ…」

 

「…?」

 

「カリオストロをぉ…養って♡」

 

 

 

──2人目。

 

 

 そしてゾーイはキレた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
カリオストロについて積もる話は次回。
取り敢えず仲間入りです。


コーリス
・「錬金術…?変な魔法が多いなー(ハナホジ」

ゾーイ
・「こいつ(カリオストロ)はいかんでしょ」

ディとリィ
・ウロボロスと仲良くなれそう。

カリオストロ
・なんだこの霧!?
・なんだこの女!?
・なんだこの龍!?
・驚きが多くて実はワクワクしてる人。
・ちなみに壊したコーリスの義手は、後で代わりの物を作ると約束した。
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