幽々の空、灰暮れに   作:魔愛暴導富

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59.Kηδεμονικός(守護神)

 

 

 防衛街はコーリスにとって特別好ましい街では無い。リュミエールよりも狭く、食糧の調達にも多少の手間を要する。そして、故郷であるトラモントのクレプスコロ村よりも自然が少なく、視覚的な静謐にも劣る。

 それでも彼がこの街に入れ込んでいるのは、人々の生き様故か──。

 

 

(…そろそろ一ヶ月)

 

 

 子供達の休息を見守りながら壁を眺める。

 薄かった壁はカリオストロの手によって堅固な物となり、偵察用の塔を4方向に配置する事で備えとし、更には弓や銃を高所から放つ事も出来、砦を思わせる機能となった。

 

 アテナのパラディオンが完成すれば、一方的に魔物の群れを押し潰す防壁が展開し、街の脅威を尽く退ける事ができるだろう。

 そして、その期間が長く続けば魔物はこの街を諦め、壁すらも不要となるかもしれない。それがアテナの望む道だ。

 

 だが、数日前に襲ってきた白狼の群れ以降、魔物達は全く姿を見せず、かと言って人々が訓練を行った日は無いのだが──兎も角、当事者の4人だけでなく、子供ですらもその事実に不穏な何かを感じていた。

 

 

「………気づいてますよー」

 

 

 彼の背後からいつも通り怪しい笑みを浮かべたエニュオが近づいてくる。

 

 

「おや、私は服についたゴミを取ろうとしただけですよ?」

 

「そう言って前に冷えた手で首筋触ってきたの忘れてませんからね」

 

「今日は肩甲骨をなぞろうかと」

 

 

 白狼との戦い以降、エニュオはコーリスに対しアプローチをかける事が多くなった。

 理由は不明だが、人をからかうのが好きなようで、アテナの次に反応が良いとは本人の談である。

 

 被害者であるコーリスは本気でびっくりしているので、影から忍び寄るのは勘弁してもらいたいと思っているが…。

 

 

「アテナさんの方へ行ってください」

 

「パラディオンに心血を注いでいるのです。今彼女の逆鱗に触れてしまえば本気で嫌われてしまいますから…」

 

「やっと分かりました。エニュオさんはイタズラが好きなんじゃなくて、相手の嫌な事を絶妙に突いて反応を楽しみたいだけなんですね」

 

「ふふ……軽蔑しますか?」

 

「普通にします」

 

「今日の夜は眠れませんよ?」

 

「なんで俺が脅されてるんですか!?」

 

 

 エニュオは笑いながら"そういうところですよ"と呟いた後、コーリスの横に腰を下ろした。 

 数秒の沈黙が流れた後、コーリスが口を開く。

 

 

「子供達は優秀です」

 

「日頃の指導の賜物ですね」

 

「生きる為の必死さは、魔物に襲撃されていれば勝手に付くような物ではないと思います。皆、アテナさんやエニュオさんを慕っているから……そして、そのアテナさんがここまで頑張っているからこそ、努力を欠かさないのでしょうか」

 

「私はそう生き急ぐ事も無いと思いますが」

 

「……どうしてですか?」

 

 

 コーリスは一瞬耳を疑った。アテナ達が救助し、壁を作るという判断を下さなければ壊滅していた筈の街だ。彼女に何時までも縋るという判断をしなかった人々が、自分達の生存の為に日々を費やすのは自然な事。

 ましてや街を助けたエニュオがその事を理解していない筈が無いと、彼は無意識に口を尖らせた。

 

 

「こう言っては何ですが…街の人々は運が悪かったのでしょう」

 

「…それは、そうですね」

 

「同時に、私達二人に助けられたのは不幸中の幸い。では、普通の人間は次に何をするでしょう?ふふ…私は少し意地の悪い質問をしています」

 

「………その2人に頼ります。出来るならば、街に長く居てもらう為に……」

 

 

 エニュオの質問に解答する際、コーリスは驚く程自然に答えが頭に浮かび上がった。

 恐らく、彼女は彼の思考回路や経験を元にこの質問を作り出したのだろう。多くの人間を救い、多くの人間の死を見てきた聖騎士、騎空団としての彼に向けた問い。

 

 悩む振りをして…やがて答えを出す。

 

 

「…機嫌を取るでしょう」

 

「どのように、ですか?」

 

 

 エニュオは逃さない。

 

 

「金、衣食住……最悪の場合、人を使います。今の時代には珍しいでしょうが」

 

 

 大金を払う。充実した衣食住を与える。女を貸す。男を貸す。美男美女を(つがい)として与える。

 そして…相手が理解の及ばない存在だと知った人々は、時に自らの同胞を生贄として扱う。滅多に無い事例だが、現在の世界でも有り得る行動だ。

 

 空の民は生きる為なら何でもやれる。それには、良い事も悪い事も、そして必要ない事も含まれている。

 

 

 

「…子供の前でする話ではありませんね」

 

「誰も起きていませんよ?」

 

「時と場所、という事です。もう意地悪はやめてくださいね」

 

 

 その言葉に返答は無かった。

 昼寝している子供達を起こそうと彼が腰を上げた瞬間──エニュオは無意識に聞いていた。

 

 

「何故、彼等は私達二人に依存しないのでしょうか」

 

「…」

 

「私達が他の場所へ行ってしまえば元の生活に戻ってしまう。その様な懸念はある筈ですが」

 

「それは…貴女達を敬愛し、崇拝しているからでしょう」

 

「崇拝?」

 

「アテナさんはもっと多くの人を救う…そう信じているから人々は自立しようとしているんだと思います。足を引っ張りたくないんです」

 

 

 エニュオは少し考える素振りを見せた。

 

 

「では、パラディオンが壊れてアテナが再起不能になった時…彼等は武器を手に取ると?」

 

「はい。必ず」

 

「そうですか」

 

 

 彼女はただ下を向いた。

 

 

「……そうですか」

 

 

 ──表情を見せず、先程と同じ言葉を反芻した。

 

 

 

「ッ!!!??」

 

 

 それと同時にコーリスが戦慄する。

 何か。何か巨大な物が街の外に降り立ったと感じたのだ。

 

 

「…これは!」

 

「行きます」

 

「いえ、その必要は無いと思いますよ」

 

「何か知っているのですか?」

 

「はい。これはアテナの──」

 

「コーリス殿!!!」

 

 

 名を呼んだ声はアテナの物だ。

 脇芽も振らず、必死な様相で二人の元へ走っている。

 

 

「アテナ、子供達が起きてしまいますよ」

 

「そ、そうですね…はぁ、はぁ…」

 

「どうしました?」

 

 

 一直線に駆け出して来たのか、汗を拭った後に彼女はコーリスの両手を掴んで顔を上げた。

 

 

「完成しましたっ!」

 

「まさか…あれが」

 

「パラディオンです!!」

 

 

 後にコーリスは語る。

 この時のアテナの表情が、大量の課題を終えた学生の様な幼さと晴れ晴れしさを持っていた、と。

 そして、エニュオの表情は追加の課題を用意する悪徳教師そのものであった、とも。

 

 興奮する二人を他所に、エニュオは無言で手を振ってその場から離れていった。

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 辺り一面に存在するのは壁。

 巨城を思わせる分厚い土色の壁。レンガの様な自然感に対し、高貴な神聖さを漂わせている。

 人工物の様であり、天然物にも感じられる程の美しい圧が街を囲んでいた。

 

 

「これは…物理的な壁なんですか?」

 

「私の守護の力、その具現です。強固な城壁に見えますが、星の力と私の魔力で出来ているので、コーリス殿の魔法に近い物でしょう」

 

「…ほんとだ。よく見れば透けてるような」

 

「あらゆる魔法の威力を軽減し、大半は完全に弾く事が出来ます。防壁から発せられる波動が敵を押し弾き、その間に弓や銃を用いて打ち崩す戦法を取れば……もうこの街に危機は訪れません」

 

 

 守護と平和の星晶獣アテナ。

 その穏やかな性質と善性から、空の民からは頼もしい味方である戦士として、星の民からは戦闘に向かない裏切者として扱われていた。

 

 だが、その実。彼女は覇空戦争時に作られた星晶獣の中では最高位の性能を持っているのだ。

 この防壁は彼女の持つ守護の力を広く展開したもの。パラディオンへの攻撃は現状コーリスの火力を以てしても傷を付けるには程遠い。

 そして、本来この力は盾に宿っている物。凝縮されていた防御力を防壁状に展開しているに過ぎない。彼女が万全の状態で盾を活用すれば──恐らく、本当の意味での戦女神になるだろう。

 だが、その事を理解している人間はいない。アテナでさえも、守護という力の使い方に迷っているのだから。

 

 

「……と、いう事は」

 

「…?」

 

「俺達の依頼は達成という事ですね」

 

「………はッ!?」

 

 

 アテナは雷を浴びたかの様に衝撃を受けた。

 はっきり言ってしまえば、コーリスとカリオストロが居た日々を当たり前のように感じてしまっていたのだ。

 

 

「…念の為パラディオンの点検をしましょうか。2日ほど」

 

「取り敢えず目的達成したので報酬を」

 

「そんなに帰りたいのですか!?」

 

「カリオストロも限界なんです。騎空団としても一人に負担を強いる状況なので…」

 

 

 無論、ゾーイが疲れる事は滅多にないのだが…通常時の活動を一人に任せ続けるというのも情け無い話である。

 

 

「…………………むぅ」

 

「子供達には防御魔法を習得させましたし、何なら最後の方は街の人全員に教えましたね。ちゃんと使える筈です」

 

「その事には感謝していますが…」

 

「カリオストロも人造の防壁を強固にしました」

 

「その事にも感謝しています……感謝してもしきれない程に………しかし」

 

 

 どうしても帰ってほしくない理由が彼女にはあるらしい。

 その事に検討も付かないコーリスの頭には一つのことが過ぎっていた。

 

 

「ああ…1つだけ心残りがあります」

 

 

 一人だけ、どうしても防御魔法を使えない子供がいた。

 

 

「アルミスは大丈夫でしょうか」

 

「魔力量が少なく、身を守る盾を作れないという問題の事ですね」

 

「弓は上手だったんですが…」

 

「………子供は弓を使えない筈です。コーリス殿…もしや」

 

「……っ」

 

 

 コーリスは口を塞いだが、アテナの睨みは止まらない。

 

 

「ごめんなさい」

 

「子供には子供の生き方があります。少なくとも災難に引きずられて戦いに身を落とすなど…」

 

「それは違います」

 

 

 アテナはコーリスを見た。

 真っ直ぐに此方を見ていた。

 

 

「強迫観念ではありません。村の人間は皆、自分達で生きる為に出来る事をやろうとしているんです。貴女に全てを背負わせないという意味も込めて」

 

「…」

 

「貴女は…その、自分が想われている事をあまり誇らないんですね」

 

「…どんな事をしても、体のいい償いに思えてしまうものですから」

 

「………では」

 

 

 コーリスは意を決した。

 

 

 

「俺達と一緒に来ませんか?アテナさん」

 

「私が騎空団に…?」

 

「はい。永い旅になりますが、目的は世界の為。迷う人々を救う事が俺の生きる指針です」

 

 

 アテナは考えた。考える事はそう多くないが、それでも考えようと思考を回した。

 人を守りたい。自分が殺めた人間たちに報いる事が出来るよう自分を殺しながら救おうと、奔走した。確かに、祈望の騎空団に入ればそれが叶うかもしれない。

 

 だが、彼女は他人に自身の望みを背負わせられる程強くなかった。

 信頼関係という物を真に理解する機会が無かった故か、自分一人で何もかも背負ってしまう。

 それがアテナという星晶獣の本質だ。

 

 

「お断りします…私には、貴方達に困難を背負わせる覚悟がありませんから」

 

「…そうですか」

 

 

 コーリスは渋々呟いた。

 

 

「残念です。とても」

 

 

 彼は、アテナの生き方に少し同情した。

 

 

 

───────────────

 

 

 

「あ、先生」

 

「……………なに、やってるんだ」

 

 

 

 アルミスが何時も訪れる弓の練習場。

 別れの事を話しに来たコーリスの目に映ったのは、異常な光景だった。

 

───矢に、矢が刺さっている。

 

 

「私の力じゃ矢がちょっとしか刺さらない」

 

「…そうだな」

 

「だから、浅く刺さった矢を射って押し込めば突き刺さるんじゃないかって」

 

「それで、出来たと?」

 

「1射目さえ外さなければ…今のところ順調」

 

「はははっ」

 

 

 コーリスは初めて天才という物を実感した。

 リュミエール騎士団のスルトは体質が化け物なだけで才能とは異なるし、錬金術には疎い為にカリオストロの技術を正しく評価できないからだ。

 だが、これは分かる。弓矢を更に狙撃出来る人間は絶対にいない。出来ても偶々だろう。

 

 

「だが、動いてる的にそれが出来るか?」

 

「そう。そう言うと思った」

 

「………」

 

「枝に矢を当てて的をグラグラにしてからこうやって……っ」

 

 

 1射目、揺れている的の真ん中に命中。

 

 

「次はこうっ!」

 

 

 2射目、先程とは異なる角度から弓矢を狙撃し、すでに刺さっていた矢を更に貫通させる。

 

 

「どうでしょう」

 

「天才。アテナさんに自慢していいぞ」

 

「やった」

 

 

 淡々と喜ぶ様子から、アルミスはかなりの回数を成功させているのだろうと察せられる。

 コーリスは考えるのを辞めた。

 

 

「なぁ、アルミス」

 

「なに?」

 

「俺達、いなくなるから」

 

「じゃあ、お別れのパーティーやらなくちゃね」

 

 

 悲しんだ様子を見せたが、それでも彼女の矢は一瞬もブレなかった。

 

 

 

─────────────

 

 

 

「いっちゃうの…」

 

「やだよぉ…」

 

 

 

 寝ていた子供達を起こし、この島から離れる旨を話したコーリスは、予想外の泣き落としに出会っていた。

 アルミスの淡白な反応とは真逆の、悲壮感溢れるものだったのだ。

 

 

「……えっと、落ち着けニコロ、ルルス」

 

「カリオストロのお姉ちゃんも行っちゃうの…?」

 

「ぶっ」

 

 

 "お姉ちゃん"という言葉で反射的に笑いそうになったコーリスだが、子供達の表情を見て襟を締め直した。

 しかしかける言葉が見つからない。会話の出力に難航していると…。

 

「ガキ共に囲まれて情けねぇの」

 

 

 後頭部を突いたのはカリオストロ。

 

 

「何だって好かれてる。変に関係深めると帰る時に厄介だって言ったじゃねぇか」

 

「そういうお前は…お姉ちゃんと呼ばれているだろ」

 

「呼ばせたんだよ。純粋なガキ共には眩しいくらいの美少女具合だからな」

 

「笑止」

 

「ああ、ちなみにお前はクソガキだ」

 

 

 蹴りが直接足に当たるが、コーリスはビクともしない。

 

 

「悪いなお前等。オレ様達にも生活がある。まぁ暇な時は顔くらい見せに来てやるから安心しな」

 

「そういえば…カリオストロ、取り繕ってないな」

 

「ん?ああ、どうやら街に来た当初からこいつ等にアテナとの会話を盗み聞きされてたらしくてな…」

 

 

 ひときわ幼い子供の頭を撫でながら気怠げに返事をする開祖。

 カリオストロはこの街を嫌っている訳でもなく、今すぐ取り掛からなければならない研究も無い。

 だが、飽きているのだ。長い年月を生きると、何も発見が無く、長閑な場所に滞在する事は苦痛となる。当初はアテナとエニュオを元に星晶獣についての情報を集めようとしたが、ゾーイから得られる情報と同じ物しか得られなかった。

 

 だから、騎空団としての活動も考えて帰る事にしたのだ。

 

 

「明日には発ちたい。コーリス、お前も支度しとけ」

 

「ええ!?パーティはー!」

 

「あと3日ー!!」

 

「うるせぇ!スカート引張んな!!」

 

 

 恐れを知らない少女達に弄ばれるカリオストロを見るのは、彼にとって新鮮な気分である。

 

 

「それが…アテナさんがどうしても帰ってほしくない理由があるそうで」

 

「じゃあ言えってんだ。変な所で億劫だな」

 

「…聞いてくる」

 

「おう」

 

 

 子供達との別れは本当にこれでいいのかと、何故かコーリスは考えてしまった。

 別段今世の別れでもない筈であり、依頼で生まれた信頼関係である為に再開も容易なのに、だ。

 

 

 

────────────────

 

 

 

「……実は街を離れる必要がありまして」

 

「ああ、手薄になるから守ってほしかったと」

 

 

 理由はこうだ。

 防衛に注力した結果この街の知名度が上がり、他の街から救援依頼が来た。そしてアテナが二つ返事で出向く事を了承したが、街の防護についての心配が強く、どうにかコーリス達を残らせられないか考えていたらしい。

 

 

「でも、その心配は無くなりました」

 

「…?」

 

「エニュオが出向く事になりました。私はこの街に留まります」

 

「なる程…エニュオさんが」

 

 

 攻撃性に長けるエニュオ。守るより迅速な攻めで街を守るつもりだ。

 期間を考えればその方がいいだろう。

 

 

「なので…コーリス殿は安心して団に戻って下さい」

 

「大丈夫ですか?」

 

「はい」

 

 

 アテナの意思は堅いようだった。

 そして、部屋から出ようとするコーリスを呼び止めた。

 

 

「コーリス殿」

 

「……なんでしょう」

 

「貴方が団に誘ってくれた事、とても嬉しく思います」

 

 

 彼女は、少しだけ頬を赤く染めながら言い切った。

 

 

「もし、私が頼る強さを認める事が出来るのならばその時は……団に入っても………いいでしょうか?」

 

 

 コーリスは驚いた。驚いて、優しく笑った。

 

 

「はい…!その時はエニュオさんも、是非」

 

 

 

 

 

 

 

──その夜、コーリス達は街の子供達が開いた"お別れ会"に参加し、防御魔法の教え子達とのかけがえのない時間を作った。

 カリオストロも案外面倒見が良く、手芸の様な感覚で錬金術によるオブジェを色々作ったり、アテナを模した小さな像を作って住民に見せるなど、珍しく羽目を外して暴れていた。

 アテナとエニュオも、その日は防衛に注力せず、住民全体を巻き込んだ宴に参加して静かに空を眺めていた。

 束の間の平和を…誰もが享受したのだ。

 

 

 …そして、次の日。

 

 

 

「さて、行くぞ」

 

「長い依頼だったが無事達成だ」

 

「オレ様がいて幸運だったな、アテナよ」

 

「ええ、本当に助かりました」

 

「ガキ共も門の外までは来ねぇよな…?」

 

「流石に危険ですからご安心を」

 

「エニュオさんはこれから出張ですか?同じタイミングですね」

 

「はい。すぐに戻ってくる予定ですが…一先ずお別れですね」

 

「やりすぎんなよ?」

 

「さぁ、どうでしょう」

 

「エニュオ…」

 

 

 アテナは街の中へ、コーリスとカリオストロは艇へ、エニュオは草原へそれぞれ歩みを始めようと足を動かす。

 その前に、エニュオがコーリスの横に立った。

 

 

「コーリスさん」

 

「どうしました?」

 

「──貴方なら、この街がまた窮地に陥った時、助けに来てくれると信じていますよ?」

 

「はい、そうですね……?」

 

「ふふ」

 

 

 含みのある様で真っ当な言葉に二人は首を傾げ、再び行くべき場所へ戻っていった。

 

 

 

「ふふ、ふふふふふふふふふふふふふふふ」

 

 

 

 誰かの笑い声が、小さく草を揺らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

「アテナ、戻りましたよ」

 

「…エニュオ?早いですね。もう街から帰ってきたのですか。まだ数日も経っていませんよ」

 

「ええ、手早く終わりました」

 

「外敵は少なかったのですか?」

 

「いいえ、数は多かったですよ。何分、魔物も人も街も全て壊して来たのですから」

 

「──」

 

「あまりに弱すぎて、蹂躙しがいがありませんでした」

 

「何を言って──」

 

「では、こっちも始めましょうか」

 

「………これはあの時の白狼の群れ…!!」

 

「少し、あの時は出来過ぎた展開でしたね。お粗末な防衛劇を見せて申し訳ありません」

 

「まさか……エニュオ……!!」

 

「大丈夫ですよ、アテナ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コーリスさんは、きっと来てくれます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









お ま た せ
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