『エニュオの動作、問題なし。随時戦闘に投入する』
──違う。
『私はアテナ。共に星の世界を守りましょう』
──ちが………違う。
『…エニュオ。空の民は、本当に我々を滅ぼそうとしているのでしょうか』
『アテナ…私はそう思いません。何であれ、私達は主達にとっての道具に過ぎないのでしょう』
──ちがう。
『どうか…どうか子供だけは許してください!!』
『……』
『エニュオ…私がやりましょうか?』
『必要ありません』
『…?』
『戦う必要は今無くなりました。私は空に付きます』
『何を言っているのです!?私達の存在意義は──』
『アテナ』
『ッ!』
『空の民……いえ、人間達は生存競争として私達に抗っています。謂わば、簒奪者は此方。不変の私達が何かを奪う必要など無いのです』
『それでも…!』
『それに…命を摘むのは、好きではありません』
──違う、こんなのは私じゃない。
『…この感覚は。何処か…物足りない?』
──私は破壊と蹂躙の…。
『いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
『っ!私の手に掴まってくだ──』
『あっ…』
──命とは尊いも、の…。
『……あ、ああ。私は…どうして?目の前で子供が落ちたというのに…………』
──抗いようの無い
『…どうしてこんなに…胸が、すくのでしょうか』
──いや、抗わなかったのは正解だった。こんなにも清々しい。命は尊いから壊すのだ。
『女神様ぁ!?どうして!?』
『希望の後には絶望が待っているものですよ』
『たすけぇ……たすけ──!!』
『静かに。アテナに見つかってしまいます』
『誰かァァァァ!!!いけにえを!!女神様がお怒りだぁぁぁぁぁぁ!?!?』
『……ぷ。あははははははは!!』
──そうだ。
『この街を守りましょう。エニュオ』
──私は全てを壊す為に生まれてきたんだ。
『どうして』
──飽きるほど聞いたその言葉を星の数ほど砕いて。
『エニュオさんは相手の嫌がる顔が好きなんですね…』
『ええ。そうですよ?』
──玩具も見つかって。
『エニュオォォォォォォォォ!!』
『来てくださいコーリスさん!』
──あれ?
──なんで、私がこわされ
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(…………は?)
コーリスの放った一撃は確実にエニュオの胴を両断するものであった。
──しかし、結果は。
(腕だけ……だと)
破れかぶれの防御──対応に遅れ、反射的に指し出した左腕が消し飛び、他は無傷。
コーリスの脳が疑問で埋め尽くされる。そして、エニュオ自身も無意識の行動だった。故に、その答えは彼らの目に映る。
「………!!!」
エニュオは、槍にしか破壊の力を流せない。
それは槍から力が溢れるという理由では無い。
彼女が光線としての放出を使う理由は、遠距離攻撃というアドバンテージもあるが、実際は槍に纏わせる戦い方を避ける為である。
何故なら、破壊の力を長期的に纏わせ、それが自身の身体に触れてしまった場合、例外なく崩れていくからだ。
盾を防御術の中心としているアテナの様に、エニュオもまた、槍が無ければ破壊の力を満足に振るえない。
しかし、彼女はコーリスの斬撃を無意識に防御した。
──破壊の力を纏った左腕を犠牲に。
(しかし先程は槍を折る事が出来た筈…!この技で何故相殺される…!?)
死の間際の生存本能。
それは空の民に限らず、生命体ならばどんな生物も持ち得るもの。彼女はコーリスが子供たちに教えていた様に、攻撃を食らう箇所にピンポイントで力を集中させ、飛来する斬撃の威力を殺すに至った。
その代償として左腕は切断され、自身の力によって灰になったが、死の危険が無い星晶獣が永らく感じなかった恐怖により、エニュオは一時の命を得たのだ。
「はっあ…は……!」
左腕の痛みにすら気付かずに、エニュオは自身が生存した事をようやく理解し、隙を見せるコーリスへの反撃を─
「死に、なさい────!!!!」
「な、あ─────」
勝利の女神はエニュオに微笑んだ。
度重なる恐怖と苦痛、その試練の先に得たのは偶然という名の勝利。笑わずにはいられない。
これが運命なのだとしたら、何と滑稽なものだろう。
彼女は破壊の槍を振り被り──
「─────あ?」
──肩に、風穴が空いた。
「は?」
「なにが───あ……」
その場所は、短刀が刺さっていた箇所。
刺さった短刀を更に穿つ何かが飛来し、彼女の身体を貫いたのだ。
そしてその光景は───
「「アルミス……!!」」
──アルミスの弓術に合致する。
短刀を矢で狙撃する事で押し込み、傷口を広げ、対象に深手を負わせる神業。だが、狙撃者が見当たらない。
いや、見つける事は出来た。だが、それは約200mも離れた位置。筋力も、魔力による強化も不可能なアルミスがやったものとは思えない。
(彼女には膂力も魔力無い筈……なぜ、私の位置まで……!!)
(アルミス…何故……いや、ありがとう──これで…!!)
動きを止めたエニュオ。しかし目の前のコーリスがまたも魔力を込め始める。その動作で意識を取り戻した彼女は、せめて武器を交えて相殺しなければと得物を構えて駆け出す。
その決死の抵抗に、またもや不条理が襲いかかる。
「っ!?これは………!!!」
「待っていたぞ──」
それは、カリオストロが浮かした街から風元素を集め、アルミスに分け与える事で狙撃の威力と距離を大幅に強化した存在。
主を破壊した怨敵を前に、唸り憤る竜蛇。
──ウロボロス。
「■■■■■■■■!!!!」
「この──!!」
地中から出現し、エニュオが踏みしめる大地を操作。足に絡ませる事で拘束を図ったウロボロス。
カリオストロを倒しただけで、ウロボロス自体には何もしていない事を彼女は勿論覚えていたが、たった一つ思考に過ちがあった。
それはアルミスの事では無い。
自身がキュドイモスを扱う身である故、ウロボロスをカリオストロの召喚物と勘違いしてしまった事だ。
主が再起不能になれば即座に行動不能になる。実際にコーリスとの戦いに乱入しなかった為、そう思っていても無理は無い。
だが、ウロボロスは人造生命体。
主が命じるのならば従い、主が倒れたのなら自身で思考し──敵を殲滅するのみ。
「はァァァっ!!!!!」
エニュオは大地を砕く。ウロボロス諸共破壊する心持ちではあったが、時間をかければコーリスの技を受けてしまう。その懸念が彼女の槍を鈍らせた。
「───」
しかし、振り向いてもコーリスはいない。
(右──いや、上!)
上空に感じる魔力の高まり。
コーリスは盾で足場を作り、跳躍する事でエニュオの遥か頭上から降下していた。
(当たる訳がない…勢いを付けた所で一直線では)
エニュオはこれを好機としてウロボロスを破壊し、完全なる迎撃姿勢を作り出そうとした。
魔力を借りたアルミスの狙撃は一回限りの物であり、それは拘束された段階で2射目が飛来しなかった事から容易に想像できた。
だが、理不尽はたった一回で終わるものではない。
「──よぉ」
エニュオの背後、その地中から現れたのは──
「────ッ?」
コーリスよりも、ウロボロスの雄叫びよりも…何よりも聞きたくなかった声。掠め手の連鎖によって最終的にこの戦況を招いた張本人。
思考が回るよりも先に、死が身を染め上げた。
「───さっきぶり」
──開祖、カリオストロ。
(何故!?あの傷では動けな────あ)
エニュオは気付いたのだ。
彼女は知らなかった。コーリスの継戦能力も、ウロボロスの自律行動も、アルミスの怒りも──そして。
「ガキ一人に任せてお休みなんてなぁ──オレがする訳ねぇだろうが!!!!!」
──カリオストロの執念も。
砕けた左腕と胴を土を用いて穴埋め。辛うじて人体のバランスを保つ事で戦場に復帰したのだ。
そしてウロボロスと共に地中を進み、エニュオの不意を見事突いてみせた。
コーリスが待っていたのはウロボロスだけでは無かったのだ。
「!!!」
カリオストロに魔力が宿る。水圧線でも、自爆技でも、拘束でもない。彼の原点にして頂点の奥義。
四元素を束ねた最大出力の黄雷を拳に集中させ、その矛先は──ウロボロスに気を取られてがら空きになった腹部。
キュドイモスの肉壁、破壊による相殺。これ等の手段によって妨害され続けてきた技が遂に──
「アルス・マグナァァァ!!!」
──獲物を得た。
「うらァァァァァァァァァァァァ!!!!」
「ぐ、なぅぅああああ!!!??」
突き刺さる黄金の雷。
火、水、土、風、四元素のエネルギーがエニュオの腹部を激打し、表層を貫通し…全身を駆け巡った。
間違いなく、この戦闘において最も痛手を負わせる一撃と化した。
(まだだ…!まだ足りねぇ!まだ…もっと込めろ……!コーリスみたいに!!!)
同時にカリオストロは、この期を逃せばエニュオを逃がす事になると理解していた。コーリスの魔力は尽きる直前であり、カリオストロも深手の影響で走る事が出来無い。ウロボロスで追うよりも、キュドイモスに乗って逃げる方が速い可能性を考えれば、彼女の生存率は高まる。
故に今滅ぼす。確実に、容赦なく、全てを賭けて。
文字通り、カリオストロは全ての魔力を右手に込めた。
「ぐぅぅぅ……ぁ……がはぁ!!!!!」
エニュオが大きく吐血する。
しかし、星晶獣はコア諸共休眠してしまえば長い時間を経て再生が可能。真の意味での撃破とは、
(ここで!!!殺す!!!!!!)
2000年をも越える生──その全ての過去を凌駕する熱情を以て、彼の魔力が弾けた。
「ウ、だらァァァァァァァァァァ!!!!」
迸る雷鳴。無防御でのクリティカルヒット。
最大出力のアルス・マグナを食らったエニュオは意識が絶える寸前を彷徨い、自身の身体が砕けていく様を自覚した。
そしてカリオストロは彼女を
そう、コーリスが座する上空に。
「これで最後だコーリス!全部ブチ込め!!」
「了、解!!!」
現時点でコーリスに残された魔力は少ない。斬撃や光線を溜めて出す事は出来るが、一回だけではエニュオの破壊を上回る程の力は出ないだろう。
よって、必殺の一撃が必要となる。
しかしコーリスにその様な技は存在し得ない筈──否。
一つだけ存在する。彼が自然に行っていた行為の延長線上…それでいてまともな精神ならば思い付きもしない技。
その技の発案者はカリオストロだった。
────────────────
『…なぁ』
『ん?』
防衛街の依頼を受ける一週間前、フロンティア号の甲版にてカリオストロはコーリスと星を眺めていた。
二人とも星見の趣味は無いが、この日に限ってはやる事がなさ過ぎて黄昏るという、哀れに思えてくる状態だった。
『オレ様の封印って結構質が良かったんだよ。何百年も継続して閉じ込める…それが解けたら錬金術を行使できなくなる呪いに近い封印』
『…そうだっけ』
『お前さ、どうやって解いたか覚えてるか?』
『術に魔力を流して…壊した』
『そう、それ』
カリオストロは両手を枕にして寝そべりながら呟いた。
『人に使ったらどうなるんだか』
コーリスは答えを持たなかった。考えた事すら無かった。
『身体という器に魔力を注ぎ込んで、許容量を超えたらどうなるか。実例も過去にはあっただろうぜ』
『上限は普通身体の成長と一緒に増えるから…多分放出しないと溢れて身体強化魔法と同じ効果に繋がるんじゃないか』
『それを超えたら?』
『………まさか破裂するとでも?』
『考えてもみろ』
カリオストロは何時もの様に教えを授けた。
コーリスは彼の考えを聞くのが好きだった。何処か未知の世界を進んでいる様な気がして、腑に落ちる説明は興味深いものばっかりで、先生の様にも思えてくる程だ。
『術は一定量の魔力を含ませて成立させる。お前がオレ様の封印を解いた仕組みは、その一定量に魔力を足して溢れさせて、術を大破させるものだ』
『だが、人体は魔力無しでも成立する。魔力が有害で無ければどんなに注いでも無事ではあると思うぞ』
『どんなものでも許容量があるんだよ。血が多すぎると血栓ってのが出来ちまったり、水を飲み過ぎると身体がぶっ壊れる』
『…』
『魔力なんて結局はエネルギーの概念みたいなもんだからな。案外身体が勝手に放出するんじゃねぇか?』
『………そう、かな』
『お、気付きそうか?』
コーリスは彼のニンマリとした顔を見て答えを待った。
『本人の魔力は本人の身体にしか定着しない』
『…という事は』
『相手の身体に魔力を流し続けると……相手の体内を破壊する様にお前の力が放出される。同じくお前が火属性の魔力を流されれば大変な事になる』
『魔力流し…恐るべし』
『残念ながら、触れただけで魔力を流し込めるのはお前くらいだ。既に用意されている技に魔力を乗せて補助する事と、他人の
『それこそ、俺の力が属性無しだから使いやすいのでは?ほら、推進力そのものみたいな感じとゾーイが言っていた』
『お前とゾーイは似てるよ。でもな、ゾーイの力は星由来の光線だ。何でも消し飛ばすから笑えん』
でも、と前置きした上で入念に聞かせた。
『この技に関してはソレと変わらん。相手は死ぬ』
『…』
『オレ様はよ、お前にこの技を使わせる相手に会いたくねぇんだ』
『でも、やらなきゃいけない時が来るかも』
『じゃあ、殺さなきゃいけない相手だといいな』
カリオストロは、コーリスに汚れて欲しくなかったのだ。
…もう既に汚れている事に気付かずに。そう呟いた。
────────────────
──嗚呼、見る。薄暮を抜け、明日を見る。
──夜を越え、明日が来る。
──黎明を迎え、光を越え、明日を知る。
(しな、ない)
どのくらい戦っていたのだろうか。戦い始めたのは夜、それ程長い戦いでは無かった筈だが、打ち上げられた身体は朝日を向いていた。
(まだ、いきが、あ、、る…)
エニュオは薄れゆく意識の中で、前方から恐ろしい速度で飛来する蒼銀を見た。
既に自身の槍に破壊は宿らない。槍部はカリオストロの奥義にて破壊され、皮肉にもコーリスの杖と同じ末路を辿った。ただの棒きれだ。
(…………)
彼女は自問していた。
結局自分は何なのだろうか、と。破壊衝動に身を任せる前の彼女は、確かに人を助ける事に喜びを感じ、傷一つ負わせるのに忌避感を抱いていた。
その心は偽りでは無いし、破壊衝動も同じく本心だ。
では、自分は二人いるのか。その二面性の何方に身を委ねるべきだったのか。
周囲を蹂躙していた時には感じなかった、都合の良い内省が行われていた。
無論後悔はしていない。ただ漠然と、アテナと共に歩み、コーリス達と出会い、共に旅をする未来ならばどれほど楽しめたのか──という下らない妄想をしてみたのだ。
どうせ壊す方が楽しいのだろう、という前置きが存在していたが。
(あなたも…私をこわしに)
星晶獣は能力の副産物として感情が生まれている。
能力を行使するにあたって都合の良い人格が形成されていく。故に、備わっていた人格ではなく、能力を使用するその過程において、空の民から学習する様に拾い集めた知識や傾向が唯一の感情と言えるのかもしれない。
だからこそエニュオは自身が異端であることを理解していたのだ。
それは自分だけが破壊の喜びを知れるという愉悦も与えたが、同時に寂しさもあった。
(でも…ふしぎと、空はきれいに思えてきますね)
全てを壊したいと願うエニュオは、何故か空の景色はそのままで良いと、何時も思っていた。
そんな拙い情緒が、自身の死を如実に知覚した。
「ネビュラ・ディスペルガァァァァ!!!!!」
コーリスの蒼く光る右腕が、カリオストロの与えた傷に突き刺さる。
「が、あああぁぁぁぁ!!!??」
ネビュラ・ディスペルガ。
相手の身体に直接魔力を流し込む技。膨大な魔力を扱う為、武器を用いた場合にはそれ等が破損してしまう。
故に、攻撃は全魔力を込めた拳によって行われる。
この技によって絶大な魔力を流された相手は───
「こ、れは………!?」
──内側から蒼くひび割れ、霧散する様に消えていく。
拳がめり込んだ部分から、全身に向かって蒼い光の亀裂が奔る。
エニュオは痛みによって取り戻した明朗な意識を右腕の棒切れに集中させ、振り抜いた。
「ああああああああ!!!!」
「ッッッッく…!」
頭を金属の棒で殴れば人は死ぬのだ。
加えて、全ての力を動員したコーリスに魔力の鎧は無い。無防備なこめかみに彼女の最後の打撃が直撃する。
その上で──
「く──ガァァァァァァァァァァ!!!!」
「い、やっ……!!」
──コーリス、怯まず。
同時にエニュオの全身に渡る亀裂が大きく光り、大量の魔力が迸るのを感じた。
(いや、だ……し、ぬ……!!!)
その破壊に苦痛は無かった。
寧ろ、全身に渡る魔力は活力として漲り、清々しい気分さえ感じさせた。
エニュオには、それが恐ろしかった。
「やめ、て………!!!」
自身のした事は分かっている。
悪い事だとも分かっている。
だが彼女は、自分が壊れる事がここまで恐ろしい物だとは思っていなかった。
結局、我が身可愛さで生きるだけの悪辣な人間と変わらない。その事実が何よりも自己を削る。
(おねがいだからこのまま何もなく殺すのはいやだ……いや、いや………私は星晶獣のエニュ、オ────)
彼女は有象無象の大罪人として処理されるのだ。
「─────あ」
そうして彼女は自身の大事な場所が、"パキン"と音を鳴らして壊れたのを感じ取った。
ガラス細工の脆い玉のように呆気なく…彼女の全身を構成する部位が魔力の濁流に耐え切れず、壊れた。
「───終わりです、エニュオ」
コーリスは仲間だった頃、そして怨敵としての今、半々となった語り口調で別れをそっと呟いた。
──大地に一筋の光が衝突する。
「はぁ、あ………」
地に叩きつけられても尚、エニュオは原型を留めている。しかし消えゆくのは時間の問題だろう。
空を見上げて呆ける彼女の横に、コーリスは座った。
「あ、ああー………アテ、ナ?」
星晶獣にも走馬灯はあるのだろうか。
しかしコアを破壊できないコーリスが彼女に死を与えることは出来ない。
では精神崩壊の現れか?
否、どれでもない。
彼女は只恐怖と寂しさから逃れようと、記憶に追い縋っているだけなのだ。
自身の死を見つめた朝日に手を伸ばして。
「コーリ、スさ、ん………」
「……」
「あ、あれ……おかし、いですね。なんでわたしが…壊れて?」
「…これで終わりなんです。貴女は壊してしまった」
「あ、ああ………………」
彼女はコーリスに手を伸ばした。
彼は応じない。伸ばされた手を払いのける事もしない。
そして彼女の指が頬に触れようとして──先端から綻ぶ様に消えていった。
破壊の象徴であった槍も既に粒子と化した。
それを見て彼女は、遂に全てを認めた。
「…………かなしんで」
その言葉を最後に、エニュオの身体は光の泡となって空気中に溶けていった。
残されたのは、淡く緑に光る球体。それがコアだ。
「……」
破壊の限りを尽くしたエニュオの言葉は、人々を守れなかったコーリスに対しての『悲しめ』という意味だったのか。
それとも…。
「…貴女の死を、哀しむ筈が無いでしょう」
…自身の死を哀しんで欲しいという、独りよがりの欲望だったのか。
エニュオ戦、終了です。
お疲れさまでした。
エニュオ
・破壊と蹂躙を繰り返した人外の最後は、酷く人間的なものだった。
コーリス
・憎んでいた。それでも別れではあった。
ネビュラ・ディスペルガ
・魔力を流して大破させる技を人体に適用するコーリスの必殺技。一度に込める魔力が多い程相手の死は早くなる。
・術や物などに使用する場合は"ディスペルガ"という名称。
カリオストロ
・最もエニュオにダメージを与えた存在。
ウロボロス
・行動の一つ一つが勝利に紐付けられている。
・アルミスに風元素を貸して、威力を底上げした。
アルミス
・狙撃によってコーリスの死を防いだ。
・戦場から逃げなかった理由や、エニュオへの思いは次回にて。