幽溺の空、灰暮れに   作:湧棄俄

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士官学校編チンタラやってもテンポ悪くなるのでどんどん飛ばしますよ〜。

鍛錬描写くどいと飽きますからね。書く側も見る側も。


百花繚乱ブラッディソード

──コーリス?ああ、良い奴だと思うよ。あそこまで真面目な奴はそうそう見ないかな。でも少し辛辣というか…言葉を選んで欲しいと思う場面もあるな。

 

 

──いやなに、別にそれで喧嘩が起こるわけでも無いんだが…寧ろそれがあいつの特徴なのかな。あと、スルトと仲がいい。

 

 

──スルトはどうかって?アイツはただの馬鹿だ。ただ凄く強いのがムカツクとこだな。ま、アイツも良いやつではあるよ。コーリスと一緒だとコントも見られて面白い。

 

 

──…コーリスとスルト、どっちが強いかだって?随分難しい事聞くんだな。

 

 

──俺が思うに、スルトの方が強い。

 

 

 

──俺だって士官学校在学生だしな、戦闘の分析ぐらい出来る。それでもやっとつい最近分かったことがあるんだ。

 

 

──コーリスがスルトと模擬戦をやる時。戦いづらそうにしているのを俺達はずっとスルトの戦い方のせいだと思ってたんだ。もう皆と過ごして1年は経つからな。コーリスの霧の力もスルトの炎の強さも知ってる。その上スルトは素早いわ小さいわで攻撃が当てづらい。霧だって炎で撒けるからな。

 

 

──でも、それだけじゃない。コーリスが戦いづらそうにしてるのは…

 

 

 

──魔力を調節してるみたいだったよ。手加減してる訳でも無さそうだった。違う事を念頭に置きながら戦ってるみたいでさ。

 

 

──まあ、さっきのは憶測だからコーリスに聞かないと分からないと思うよ。

 

 

 

 

【某士官学校の生徒より】

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

「──三歩交わして二者択一。東か西か、先来一決(せんらいいっけつ)後悔なかれ」

 

「と、ポエムをいきなり吐くお前だが。詩人に目覚めたか?」

 

義父(父さん)が良く言ってたんだ」

 

 

道を歩く二人組。

成長期故に色々伸びたコーリスと、成長期だが1cm*1しか伸びなかったスルト。

寮へ帰宅する姿は珍しくない。というか毎日見られているぐらいに自然に溶け込んだ物になっている。

 

それもその筈、彼等がリュミエールに来て約一年が経ったからだ。

彼等が一年間学んだ事は決して軽い物では無かった。

 

戦術の有効さを知り。

武器の重みを知り。

魔術の深みを知り。

学の清らかさを知った。

 

そんな彼等だが、現環境は夏の休日。

と、言っても士官学校だ。

一般で言われる、夏休み等とは違う。せいぜい一週間の休みが限度なのだ。

その間に騎士候補生達は全力で休む。ただ、外部の島から来たコーリスとスルトは里帰りの時期であり、三日ほど故郷で過ごすチャンスとなった。

 

今は昼食帰りの二人。

何でも最近屋台で話題を集めているラーメン。

その流行りに彼らも乗ってみたかっただけだ。加えて騎士として鍛えられる日々にはラーメンのような物を食べ過ぎると栄養的にまずい。

無論、食事制限のような物は設けていない士官学校だが、騎士を本気で目指す彼等はストイックだ。プライドも合わさって妥協を許さない。

 

だから、妥協を許される休日の初日に二人で食べに行ったという訳だ。

コーリスは味噌ラーメンを頼み、スルトは小サイズの塩ラーメンを頼んでいた。

夏にラーメンというのも可笑しな話かもしれないが、鍛錬を続けていたある一人の生徒がこう言った。

 

『夏にラーメン食って汗流しまくれば代謝良くなって身体機能上がるんじゃね?』

 

コーリスでもスルトでも無い、一年経った今なら友達と言える間柄のクラスメイトがそう言った時。

皆の目が変わった。無論、身体機能が上がるなど身も蓋も無い話だが、修行の苦しみに明け暮れ、強さに飢えていた者共は簡単に信じた。

彼等は12歳だ。欲には従う。心では違うと目を反らし続けていたが、依存性があると噂されていた程のラーメンを食べたくて仕方がなかった。

 

回りくどい言い方をしたが、要するにラーメンを後腐れなく食べる理由が欲しかっただけだ。

そして、リュミエール士官学校にラーメンというプチブームが舞い降りた。

 

屋台の店長曰く、『暑い時にラーメンを食う物好きは居るが、学生。それもまたクラス単位で来るのは流石に遺憾である』らしい。

 

そして先程から言われている鍛錬。

それが何処まで厳しいと言うとそうでも無い。

 

教師は合理的な指導をする。

経験の深さから魔術の属性のアドバイスを的確にこなし、武器の熟練度を見抜き至らぬ点を指摘。単純な肉体能力の低さは個人への筋トレメニューで解決。

頭脳的な面を教える場合は基本過去の戦争や偉人達の戦いの記録から引っ張り出す。

 

スムーズな教育は生徒達に意欲を与え、極め付きにそれぞれが扱う武器の私物化を許可した。

刃物などを与える行為なので、如何に生徒への信用が高いかが伺える。

意欲を道具でブーストされた彼等は興奮(OVER DRIVE)状態になり、狂うように鍛えた。

結果、リュミエールの生徒は脳筋になった。

身も、心も。

丸々とした姿のハーヴィンであるスルトの軽やかな肉体ににすら鍛え上げられた筋肉が隆々と浮かび上がる程だ。コーリスもドラフ程では無いが非常に細マッチョ。

脂肪などかなぐり捨てた姿になってしまった。

これはリュミエールに来る前から鍛えていた名残であるが。

 

言っておくと、コーリスのクラスは皆こんな感じだ。

一人に付き一般的な犯罪者を完封できる程の実力は備えている。

コーリスのクラスだけが特別かは分からない。

この士官学校は先輩や後輩などとの交流は無い。他のクラスの事情を知る機会が全く無いからだ。

 

 

「で、ポエムの意味は?」

 

「俺にも良くわからん」

 

「ああ?じゃあ何故口ずさむんだ?痛いぞ」

 

「うるさい、大体のニュアンスは理解している。只意味を聞く以前に当時の俺は幼児だった。対して意味も分からず意味を聞く前に亡くなってしまったよ」

 

「…そうか。じゃあお前が思っている意味を教えてくれ」

 

「恐らくは…『人は個人個人色々な道を進むが、どれも選択肢は一つだけだから、どれを選ぼうとも後悔はするな』、という意味だと思う」

 

「なんだ、思ったより道徳的だな。まぁカッコいいから使うか」

 

「いやお前が使うのかよ」

 

「強者オーラが出て良し」

 

 

 

「なお、身ちょ「黙れ」

 

 

「別に何も「止めろ」…アッハイ」

 

 

見た目に言及されると怒りに身を染めるのも変わっていない。

寧ろ、キレが掛かっていると見ていいだろう。

 

 

「貴様に分かるか!?真面目に勉学に励んでも、模擬決闘で相手を打ち負かしても!男女問わず出てくる感想は『かわいい』だ!!」

 

「愛されているって事だろ」

 

「舐められているんだよ!!大体お前は人に頼られすぎだ!何だ!俺も霧を出せば信用されるのか!?」

 

「そうやって一々身長とか気にしてるから可愛がられるんだろ。可愛いという概念がお前への信用だ。では、出航の用意をさせてもらうので先に寮へ戻っているぞ」

 

「ま、待て!話はまだ終わっていない!!」

 

「ははっ!!里帰りして両親に誇るが良い!()()()()()()()()()()()()ってなぁ!」

 

「貴様ァァァァァァァァ!!!!」

 

 

元より、コーリスは人を煽り倒す人間では無い。

ノリで皆がなじる相手に対し便乗する訳でも無い。ただ、単純に思うのだ。

 

『スルトだから良いか』…と。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「ふぅ…」

 

 

馬鹿の相手をするのも疲れるという物だ。

クラスメイトからは『お前も含めて馬鹿と言っている』なんて愚語を吐かれるが、全く持って間違いだ。

スルトより頭良いぞ、俺。

 

なんて思いながら二時間の間昨日里帰りの為に纏めた荷物を確認し、トラモントへ旅立つ空挺に乗り込んだ。

やはり晴天の中乗る空挺は至極の心地。

 

里帰りと言ったが、俺の場合それは少し違う。

一度村長である義父に預けられた身だが、義父は俺が8歳になる頃に病気で死んでしまった。

結果、義父の親戚であるレルフ一家に養われる事になった。

当然第二の親を失って悲しかったが、くどくど毎日を過ごしていてはあの日に助けてもらった礼にならない。

そしてレルフ一家は俺をリュミエールに送り出すのに悩みに悩んだ。俺がトラモントから出発した時には号泣していたそうだ。

 

もし、俺がトラモントからリュミエールへ向かう光景を見せたら哀しい思いをさせるかもしれない。

だから、半端に過ごすよりは顔を見せる程度にしておこうと思う。

 

何より、俺はもう一つの家に行かなければならない。

 

 

「元気してるかな?おじさん…」

 

 

 

おじさん。

叔父ではない。俺を見つけてくれたエルーンの大人。

わたしとフィラの父。今日はその一家にお邪魔させてもらう事になっている。

 

特になまえとは手紙を送り合っていたので、家の事情は把握済み。

歓迎してくれるそうだ。

ちなみにフィラは病気を直すために既に近隣の島に旅立っており、彼女とも手紙での交流をしている。

 

だが、フィラはお互い元気な姿で会いたいそうなので、病気が治ってから会う事にするらしい。

 

 

「はぁ…」

 

 

しかし、度し難い。

レルフ一家への訪問の問題を手紙で○○○に相談したとしても、思っていた返答が来なかったのだ。

 

『どの様に面会したら良いんだろう?』という質問に対し、帰ってきた手紙にはこう書いてあった。

 

『何も無理してレルフさん達と一緒に過ごす必要は無いんじゃないか?コーリスだってまた親元を離れるのは辛いだろ?騎士になることを約束して送ってもらったんだからもう少し立派な姿になって戻って来た方が私は良いと思うな。お互いそれなりの覚悟を決めて来たんだろ。もし、トラモントが恋しいなら私の家に泊まれば良い。何、お父さん達も喜ぶさ』

 

と、帰ってきたのだ。

またトラモントの森で静かな日常を過ごしたいという思いも無くは無いし、何よりおじさんにも会っておきたい。おばさんの美味しいご飯も味わいたい。

極限まで自分の欲望と戦いながら選んだのは…

 

 

『ありがとう。お願いする』

 

欲望に負けた己の姿だった。

だが、アイツが積極的に誘ってくるのは珍しい事で、自分でもそんな態勢に憶えはない。

 

とはいえ浮かれているのは俺も同じなので、早くトラモントに着いて欲しいと思う。

早くあの薄い霧が立ち込める島に行きたいのだ。

常人には分からんと思うが、薄い霧の中から見える晴天の空は美しい。

 

霧の島なんて呼ばれているが、大抵の日は薄い霧が立ち込めているだけだ。

更には夕方に真っ赤な景色も楽しめる。

ん?それは他の島でも変わらん?

 

分かっとらんねぇ。

霧の島、なんて言う窮屈なイメージから繰り出される秀麗な景色がまた良いんじゃないか!

何だか湧いてきたぜ!

一応持ってきた剣も腰に引っ掛けておいたし!

何も怖いものはない!

じゃあ、行こうか^~

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

騎空挺から降りて見えたのは森。

その奥に見えるのは霧に囲まれた小村。だが、今日行くべき場所はそこでは無いので、向かうのは明日以降とする。

変に姿を見せる必要は無いので、霧を出しつつ村外れの森から入っていく。

 

 

こうすれば、人を避けつつ更に魔物の感知も行える。

もう視覚との共有も訓練により慣れたような物だ。それでも広範囲に及ぶ感覚には目眩を起こすが、半径200メートル程なら問題は無い。

将来的には島一つ分の範囲まで伸ばしたいが、先生にドン引きされたので辞めようと思う。

妥協して、今の目標は街一つ分だ。

時間があれば距離を伸ばす訓練を続行したい物だ。

 

「…」

 

無言で山までの道のりを歩くが、霧の中に四足歩行の生物が侵入した事を感知。

中型の狼か…?

こちらに迷うことなく近付いてくる事から、匂いでこちらを嗅ぎ付けている事は分かった。

 

「……」

 

更に近づく。

もう50メートル県内に姿を表している。もう自分の姿は薄っすら確認されている。

脚が収縮している…恐らく飛びかかる気か。

 

敵意を確認した所で念の為持ってきた長剣を鞘から抜き腰に構える。そして、目を瞑り足で地面を鳴らす。

これは一種のルーティーンのような物で、戦闘前にこのように決まった動作を行う事で心身を研ぎ澄まし、余分な考えを心の剣で斬り裂く動作。

 

20メートルもの近さに達した時、既に生物の特定は完了している。

それはウルフリーダー。凶暴な野獣であるランドウルフで最も力を持つものが呼ばれる名前。

一際大きく、爪をまともに受ければ人の傷は内蔵まで達する力。ランドウルフが強くなる方法は正に弱肉強食と言った風情で、例え人は食わずとも生態系を乱した結果そうなると言える。

騎空士の依頼でも数多くの討伐が依頼されている事からも危険性が伺える。

 

そんな相手への温情は一寸たりとも存在しない。

ただ、斬る。

 

あと飯に持って帰る。

 

 

「────」

 

 

自分の意思すら意に止めず、剣を持った右腕と地を踏みしめる左足に精神を上乗せする。

相手が唾液を垂らしながら万全の筋力でこちらに飛びかかる。

 

「ガァァァァァ!!!」

 

 

敵意と殺意を乗せた雄叫びを上げながら。

だが、

 

 

「ガァァァァァ──────。」

 

相手の喉笛を引き裂く。

それを行おうとした時には既に──

 

 

「──!……?……。」

 

 

大狼は喉笛を切り裂かれ絶命した。

 

自分の暴力の顕現──雄叫びを最後まで上げる事も出来ずに。

自分が失敗した事だけを察知して獣は事切れていった。

 

 

「……ふゥ」

 

 

深めの息。それは溜息ではなく安堵の息。

簡単な決着だったとしても今のは純粋な死合。その場に絶対の安全は無い。

 

今、俺が使った動作は()()()()

獣にしろ人間にしろ、人の及ばない位置の死角を取るのは有効な手段。

だが、角度に関係なく解っている俺なら死角を取ろうとしている相手の死角を取れる。

 

原理としては簡単で、死角を取ろうとしている人間はそれに全力を注ぐ為一瞬だけとは言え一直線の動きになる。その直線の呼吸を乱し、例え小指で小突いても主導権を握る事が出来る。

但しこの動きが出来るのは、恐ろしく耳が良い…又は俺のように感知系の魔法を使えるか。

こう思うと我ながら便利な魔法だなと思う。

クラスメイトと打ち合う鍛錬で使えば面白いほど倒れてくれるからな。問答無用のクソ技認定されたよ。

まあ、バ火力のスルトと力自慢のドラフ共にはゴリ押しでやられたがな。

 

「…さて」

 

この狼、捨て置くには無作法と言うもの。

勝手ながら、これから行く家へ献上する夕飯にさせてもらおう。エルーンは自然に生きる者、これも狩りの一貫として大事に食べてくれるだろうさ。

 

 

時間差で流れてくる血を袋に入れる。

首を直接切断した訳では無いので血が飛び散る事は無かった。

身体にも血が付着していない事から、剣術としてマシな範囲内だと考えた。

狼を縄で縛り、結び目を背負って山登りを再開。

 

 

「…ああ」

 

 

見知った景色。

山の上に見える幽霊屋敷のような見た目をした建物。

懐かしい。

 

 

「──」

 

気分が高潮していくのを感じる。

今の自分はきっと笑っているのだなと思う。

 

 

「─」

 

 

森の景色を横目に登れば時間を忘れて結果が訪れる。

もう玄関に着いた。

 

少し緊張しながら呼び鈴を鳴らす。

 

 

「……」

 

程なくして、直ぐに走ってドアを開けようとする音が聞こえる。

 

今更緊張するな。自信を持って入ってやろうではないか。自分の身だしなみも問題ない。血も何も付いていない。

 

ドアが開けられる。

 

 

「っ!コーリスか!?」

 

待っていたかのように俺への期待の言葉が掛けられる。

それに笑顔で返す。

 

 

「久しぶりだ「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!???」

 

 

 

…え?

何で?

いきなり叫んでどうした?

何故家に逃げる。

 

 

 

「……!!!」

 

 

 

 

自分の身体に異変でもあったのかなと下に視線を向けて…気がついた。

 

──ああ、そりゃ逃げるわな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「剣…拭いてなかった」

 

 

 

 

 

*1ハーヴィン的には伸びた方




最後の状況、分かりづらかったら申し訳ありません。

単純に説明すると。

①待ってた人が来た。
②ウキウキでドアを開けた。
③血塗れの剣を持った笑顔な人が待ってた。
④逃げた。


って感じです。
そりゃ逃げるわ。

ちなみに名前にぼかしがかかってる人はフェリですね。
単純にフェリはあだ名で、本名がグラブル本編で明かされていないのでああするしか無いのです。
コーリスは本名で呼ぶタイプなんです。

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