戦姫絶唱シンフォギア ーNoisy Glowー   作:にこにこみ

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16話 手を繋ぎ、広がる夢

 

 

「はぁ……」

 

山奥の洋館から帰ってきた律は、近くの公園の中をリューツと一緒にとぼとぼと俯きながら歩いていた。 なぜここまで落ち込んでいるのかというと、

 

「俺は奥さんに家を追い出された旦那かっての!」

 

「ガウ」

 

実は先程、律は自宅のアパートに帰ったのだが、奏に、

 

『女子が風呂に入ってんだからお前は終わるまで外にいろ。 ラッキースケベを起こされちゃたまったもんじゃない』

 

と言われ、締め出されてしまった。 洋館での事故とクリスの証言により、かなり警戒されてしまったようだ。

 

律は再び溜息をつきながら、着いてきたリューツを膝元に置き公園のベンチに座り、スマホを取り出して《カ・ディンギル》について調べてみた。

 

「んーーー?」

 

どれもゲーム関連の情報しか出てこなかったが、共通して“巨大な塔”というのが共通して出てきた。

 

「巨大な塔を、作る……」

 

二課は情報収集に特化している政府直属の組織。 そんな目立つような物を二課に知られず作るのはほぼ不可能に近い。

 

「——あれ? 律さん?」

 

「ん?」

 

《カ・ディンギル》が一体どこで建設されているのか考えながら歩いていると……後ろから声をかけられ、振り返るとそこにはリディアンから下校中の響と未来がいた。

 

「よお、2人とも。 今帰りか?」

 

「はい」

 

「わぁーい!! リューーツーー❤︎」

 

「ガブ」

 

「危なっ!?」

 

抱きつこうとした響に……リューツは噛み付こうとした。 寸での所で響は身を引き、噛まれずに済んだ。

 

「なんでリューツは響に懐かないんだろう?」

 

「……うぅ……私、呪わてるかも」

 

「呪いの一言で解決するな」

 

苦もなくリューツの頭を撫でる未来。 どういうわけか、リューツは響にだけは懐かない。 シンフォギアが関係しているのならそもそも律に懐かない。 恐らく、性格も関係はしていないだろう。

 

それから律と未来は他愛ない雑談を交わし、響は何度もリューツに触ろうとチャレンジをしていると、

 

「——ッ!」

 

「律さん?」

 

突然、律がノイズの気配を探知し、その方角を向く。

 

それと同時に、響の通信機……先程律とクリスが受け取った同種の通信機に着信が入ってくる。

 

「……ノイズだ。 しかもかなりデカイ」

 

「ええ?!」

 

(数は……5ってところか)

 

「今は人を襲うと言うよりも、ただ移動していると。 はい……はい!」

 

どうやら二課の方もノイズを探知したようで、響は通話を終えると2人の方に向き直る。

 

「響……?」

 

「平気! 私と翼さんでなんとかするから!」

 

「一応、俺もいるぞ。 未来は学校に避難してくれ」

 

「リディアンに?」

 

「いざとなったら、地下のシェルターを開放してこの辺の人たちを避難させないといけない。 未来にはそれを手伝ってもらいたいんだ」

 

「う、うん。分かった……」

 

「ごめん、未来を巻き込んじゃって」

 

「でも、未来のためなんだ。 分かってくれ」

 

今更ながら、未来を巻き込んでしまった事を後悔する。 さらに避難誘導とはいえ危険な役目を頼んでしまうことを謝ると、未来は小さく首を横に振った。

 

「ううん、巻き込まれたなんて思っていないよ。 私がリディアンに戻るのは、響がどんな遠くに行ったとしても、ちゃんと戻ってこられるように……響の居場所、帰る場所を守ってあげることでもあるんだから」

 

「……私の、帰る場所」

 

そうだよ、と言うように未来は無言で頷く。

 

「だから行って。 私も響みたいに大切なものを守れるくらいに強くなるから」

 

「……俺の居場所はないんだな」

 

「あ! もちろん律さんもですよ! 私のいる所が、律さんの帰る場所です!」

 

「それ無理矢理過ぎないか!?」

 

おいでー、と未来は両手を広げて律を誘ってくる。 このまま飛び込む訳には当然行かない、特に背後から響の視線が強く感じられる……とりあえずリューツを飛び込ませた。

 

……未来はそのまま幸せそうにリューツをモフモフした。

 

「じゃあ、行ってくるよ!」

 

「リューツ、未来のエスコートを頼むな!」

 

「ガウ!」

 

リューツは未来に預け、響と律はノイズを何とかするために走り出した。 その後姿を、未来は心配そうな目でジッと見つめていた。

 

「………………」

 

「ガーー」

 

「……うん。 行こう」

 

そのまま微動だにした未来に、抱えられていたリューツが未来の腕に頭を擦り出す。 早く行こう、とでも言っているようで、未来も2人に背を向けリディアンに使って走り出した。

 

その途中、再び二課から連絡が入っくる。

 

『ノイズ進行経路に関する最新情報だ』

 

「はい!」

 

『第41区域に発生したノイズは、第33区域を経由しつつ、第28区域方面へ進行中。 同様に、第18区域と第17区域のノイズも第24区域方面へと移動中』

 

(第24区域というと……)

 

二課と交信する響の隣で、通話を聞いていた律はノイズが向かっているであろう区域を検索すると、

 

「《東京スカイタワー》……」

 

その区域には巨大な塔とでもいうべき東京スカイタワーがある。 今までの情報を踏まえると、このタイミングでのノイズの出現が示唆しているのは、スカイタワーこそがカ・ディンギルであるという事、だが、

 

——ピリリリリ!

 

すると今度は律の通信機に着信が入り、通話に出る。

 

「はい」

 

『律、そっちにクリスが行った』

 

今日2度目の奏からの説明抜き。 前置きもなく率直に事実だけを伝える。 もう慣れたもので、律は静かに耳を傾ける。

 

『恐らくノイズ迎撃に手を貸してくれるはずだ。 合流してノイズを倒してくれ』

 

「了解」

 

『……それと、ノイズを——』

 

続けて奏から伝えられた指令、その内容に不審を感じた律は眉をひそめる。

 

「……それは、どういう事だ?」

 

『詳しい説明は後だ。 いいな?』

 

「……了解」

 

やはり返答もさせてはもらえず、通信は切れた。

 

「スカイタワーでも、ここからじゃ……」

 

ここからスカイタワーまではかなり距離がある。 律はともかく、響はシンフォギアを使ったとしてもかなり遅れてしまうだろ。 律がまた響を抱えて飛ぶのかと考え始めると、

 

「うわっと!?」

 

「ヘリ?」

 

上空から強風とプロペラ音と共に一台のヘリが降りてきた。

 

『何ともならないことを何とかするのが、俺たちの仕事だ!』

 

いきなり現れたヘリに驚いたが、すぐに響は気を取り戻しヘリにホバリングする乗り込んでいく。

 

『律くん、君も乗るんだ!』

 

「いえ、俺は自力で飛べるので、このまま直行します!」

 

せっかくの弦十郎からの提案だが、自分で飛んだ方が早いため。 律はヘリには乗らず走り出し、

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️」

 

聖詠を紡ぎ、黒いシンフォギアを纏うと翼を広げ、ヘリよりも早く飛んでいく。

 

「あれが律さんの、シンフォギア……」

 

初めて律がシンフォギアを纏う瞬間を目撃した響は、改めて律が黒いシンフォギアの装者だと実感する。

 

一足先に現場に到着した律。 そこには巨大な飛行機の形をしたノイズが5体、全機既に合流して街の空を覆い尽くしていた。

 

さらにこの5体のノイズの船底部がスライドして開き、そこから小型のノイズがバラまかれ、街に大量のノイズが放たれてしまう。

 

「先ずは大元を!」

 

巨大飛行型ノイズを先に倒さなければノイズ放出は止まらない……律は真横から一気に接近し、佩刀している長剣の柄を掴み、

 

「せいやっ!」

 

刃速(クイック)範囲(レンジ)

 

抜刀による高速の居合い斬り。 律の剣が届く範囲ならどこでも何でも斬り裂く。 剣の太刀筋はノイズ通り抜き側にその両翼を何度も縦に輪切りにし。 そして振り返り際に横一閃、上下が分かれるように斬り裂き、バラバラになったノイズは最後に炭となって崩壊した。

 

「お、来たか」

 

剣を振り払い刀身についた炭を落としていると、そこで響を乗せたヘリが到着し、別の巨大飛行型ノイズの上空から飛び降りた。 その最中に聖詠を歌い、シンフォギアを身に纏うと背中のバーニアからエネルギーを噴射、落下速度を加速して拳を握りしめながら目の前に突き出す。

 

自分ごと矢を放つように拳がノイズ上部に叩き込まれ、バンカーが引き戻されて大きくめり込み……ノイズを貫き大きな風穴を開け、崩壊が広がるようにノイズは炭となる。

 

その直後、バイクを走行させていた翼が現場に到着する。 翼はバイクを踏み台にして跳び上がりながらシンフォギアを身に纏い、最初からアームドギアを大剣に変形させて構え、

 

「ハァッ!!」

 

【蒼ノ一閃】

 

斬り上げ放たれた蒼い斬撃は、巨大飛行機型ノイズの周囲を飛び交う小型の飛行型ノイズを斬り裂きながら上空へと昇って行くが……その斬撃の勢いは徐々に減衰していき、本命に到達する前に霧散してしまった。

 

「くっ!」

 

着地した翼は上空にいる巨大飛行型ノイズを鋭い目付きで睨み付ける。 落下してきた響はバーニア勢いを落としながら、律は急降下してから一瞬だけ一気に急上昇し速度を殺し、2人は翼の隣に着地する。

 

「相手に頭上を取られることが、こうも立ち回り難いとは!」

 

「俺は飛べるから問題ないけどな」

 

「なら、私たちは空から——」

 

その時、律の視界に上空を旋回していたヘリがノイズに狙いをつけられ襲撃されようとしているのを発見した。 咄嗟に律は飛び上がって透過能力を使いヘリの中に突撃、パイロットだけを引っ張り出し……それと同時にノイズがヘリを貫き、墜落させた。

 

「ギリギリセーフ……」

 

「た、助かった……」

 

パイロットの両肩を掴みぶら下げながら、律はパイロットと揃ってホッと息を吐く。

 

「このまま安全な所に連れて行くから、後は頼んだぞ」

 

「はい!」

 

「早く帰ってこないと、全て片付けてしまうわよ」

 

「アレを見上げながらどうしようか悩んでいるのによく言うよ」

 

響と翼に断りを入れて一時離脱、とりあえず近くのシェルターがある場所まで移動する。

 

「君は、一体……」

 

「しっかり掴まっててください。 早く戻らないと、終わってしまいます」

 

「あ、あぁ……」

 

それからすぐにシェルターに到着し。 律はゆっくりと降下し、パイロットを地面に下ろした。

 

「よっと……それじゃあ、お気をつけて!」

 

「あ、おい!」

 

すぐに戦場に戻るため、律は止める間もなく早々と飛び去っていく。 後に残されたパイロットは、伸ばされた手をゆっくりと下ろし、

 

「男の……シンフォギア装者……?」

 

会話していた時の律の声を改めて思い出し、パイロットはポツリとそう呟いた。

 

現場に帰還した律は、上空からの狙い撃ちで苦戦していた響と翼の援護に入り。 降り注ぐノイズの縦横無尽に斬り払う。

 

本来ならば奏の指令でもう撤退してもいいのだが。 あと一人足りないため、律はまだ離脱出来なかった。

 

「お待たせ! 状況はどう?」

 

「防戦一方、と言ったところだ。 こちらからの攻撃が届かない以上、このままでは消耗していくのみだろう」

 

「なら、俺がひとっ飛びして——」

 

この中で唯一飛行できる律が飛び上ろうとした時……上空から無数のノイズが雨のように、加えて地上からもノイズの突貫してきた。

 

「うわあっ!」

 

「空にも上がらせない気か!」

 

「くっ、身動きが……!」

 

防ぐことはできるが身動きが取れず、後退する訳にもいかずとにかく反撃の隙を伺っていると……突如としてどこからともなく銃弾が飛来し、迫ってきていたノイズを撃ち落としていく。

 

「これは……!」

 

「来たな!」

 

ノイズを倒せる銃弾を撃てるのは、律の知る限り1人しかいない。 弾が飛んできた方向に振り返ると……そこには二丁のガトリングを片手で構えるクリスが立っていた。

 

「チッ……あの女と、こいつがピーチクパーチク喧しいから、ちょっと出張って来ただけ。勘違いするなよ、お前らの助っ人になった訳じゃねえ!」

 

『——助っ人だ。 少々到着が遅くなったかもしれないがな』

 

「うっ……!?」

 

間髪入れず、弦十郎からの補足がクリスの手に持つ通信機から聞こえてくる。 図星だったのか、クリスは羞恥で頰を赤く染める。

 

「助っ人……?」

 

『そうだ。 第2号聖遺物、イチイバルのシンフォギアを纏う戦士——雪音クリスだ!』

 

「クリスちゃーん! ありがとー、絶対に分かり合えると信じてたー!」

 

「ぐっ! このバカ! 人の話を聞いてねぇのかよ!? おい律! このバカを引き剥がせ!」

 

「やれやれ……」

 

嬉しそうに抱きつく響を鬱陶しがるクリス。 律は肩をすくめながら、放置する。

 

『そして今更だが、正体不明の聖遺物を使う雑音(ノイズ)を喰らう戦士——芡咲 律も、ここに改めて俺たちの仲間だ』

 

「……クリスのついでみたいに言わないでくださいよ……」

 

「ふふっ、あなたはもう、私たちの仲間よ。 そこに順序はないわ。 とにかく今は、連携してこの状況を打開する……!」

 

少しだけ落ち込む律に、翼によるフォローを入れられる中、響の抱擁から抜け出したクリスは先に前に出る。

 

「勝手にやらせてもらう! 邪魔だけはすんなよな!」

 

「ええっ!?」

 

まだ協力はできないクリスは単独で交戦を開始し、アームドギアを2丁のボウガンに変化させ、無数の矢を扇状に射る。 矢は全て的確に飛び交う飛行型ノイズを射抜き、上空で矢と同じ数の爆発が起こる。

 

「おお〜」

 

「仕方ない。 空中のノイズはあの子に任せて、私たちは地上のノイズを。 律は彼女の援護を」

 

「了解。 ま、こっちも勝手にやらせてもらうだけだけどな」

 

「は、はい!」

 

装者が4人揃ったとはいえ、まだ足並みを揃えることはなかった。 律とクリスは空のノイズを、響と翼は地上ノイズをとにかく撃破し、数を減らし始める。

 

「喰らい尽くす……!!」

 

飛び交う無数の飛行型ノイズを薙ぎ払ってまとめて斬り裂き、炭にする前に刀身に吸収する。

 

(ん?)

 

不意に、何かを感じた律は手に持つ剣の刀身を目にやる。 一瞬だけ、違和感を感じたようで……

 

「うわっ!?」

 

戦場の只中で無防備に思考に耽ていると、突然周囲から無数の爆発が起こる。 どうやら地上からクリスの斉射によるものだ。

 

「俺ごとやる気かよ!」

 

抗議を申し出ようと、地上を見ると……既にクリスは翼と揉めていた。 仲裁に入ろうと降下しようとすると……間に響が割って入り、クリスと翼の手を取った。

 

「どうして私にはアームドギアが無いんだろうって、ずっと考えてた。 いつまでも半人前はやだなぁって……でも、今は思わない。 何もこの手に握ってないから——2人とこうして手を握り合える! 仲良くなれるからね!」

 

「立花……」

 

(やれやれ……)

 

軽く微笑んだ翼は、握っていた刀を地面に突き刺した。 そしてスッと、何も握っていないその右手をクリスに差し出す。

 

「……ぁ……」

 

手を取り合いたい、友達になりたい……そんな言葉が、差し出された右手から見て取れるような気がする。

 

クリスは差し出された手を見て顔を薄っすらと赤めながらそっぽ向く。しかし、クリスの空いた左手はクリス意志に反して僅かに動く。

 

「……………………」

 

無言でその手を差し出しながらクリスを見つめる翼。 翼の右手を見つめながら、クリスゆっくりと左手を伸ばす。 クリスの手が後少し翼の手に触れるところで……翼は自分からクリスの手を掴んだ。

 

クリスは突然手を握られたのに驚き、翼の手を振り払い左手を引っ込めてしまう。

 

「ッ!? このバカに当てられたのか!?」

 

「そうだと思う。 そして、あなたもきっと」

 

「……冗談だろ」

 

「おいおい、俺を忘れてないか?」

 

そこへ、律が翼とクリスの間に割って入り、離されたクリスの左手を自身の右手で握った。

 

「よっと」

 

「!? は、離せよ!」

 

再び振り払おうとするが……律がニコリと笑うと、顔を一気に赤面させたクリスは振り払う力を無くし、俯いてしまう。

 

「言っただろう、クリス? 手を繋ぐことで、夢はどこまでも広がって行くって。 それは、夢だけじゃ無いのかもしれないな、響?」

 

「はい!」

 

「手を繋ぐことで夢を……それは、どこまで届き、広がって行く手ね」

 

「ああ!」

 

再び差し出された翼の右手と律の左手が繋がり、4人で一つの輪となった。 律たち3人は笑い合い、羞恥で恥ずかしがるクリスは顔を赤らめ嫌そうな顔をしながらもその手を振り払おうとはしなかった。

 

と、そこで4人に大きな影が差す。 4人ら視線を上げると、太陽を遮るようにして飛行する巨大飛行型ノイズがいた。

 

「親玉をやらないと、キリが無いわ」

 

「だったらアタシに考えがある。 アタシでなきゃ出来ないことだ。 イチイバルの特性は、長射程広域攻撃……派手にぶっ放してやる!」

 

「まさか……絶唱を?」

 

最後の手段と思ったのか、響は絶唱を口にするが、クリスは罵倒しながら否定する。

 

「バカ、アタシの命は安物じゃねえ!」

 

「ならば、どうやって?」

 

「ギアの出力を引き上げつつも放出を抑える。 行き場の無くなったエネルギーを臨界まで溜め込み、一気に解き放ってやる」

 

「だがその間、クリスは無防備な状態になるだろう。 この状況で少し無謀が過ぎるかもしれないが……」

 

「はい! 私たちがクリスちゃんを守ればいいだけのことです!」

 

響と翼はノイズをクリスに近づけさせまいとノイズを倒しに屋上から飛び出した。

 

その言葉に、クリスはハッとした顔で驚いて目を見開き、響と翼は軽く笑みを浮かべてから飛び出し、向かって来るノイズを倒して行く。

 

(頼まれてもいないことを……私も引き下がれないじゃねぇか!)

 

「これが仲間だ、クリス」

 

その場に残った律は、クリスの隣に立ちながらノイズと戦う響と翼を見つめる。

 

「出来ないことを補い合って、高い壁を乗り越えていく……それってさ、最高じゃないか?」

 

高い壁が目の前にある、そんな風に左手を空に掲げながら、律は左腰に懸架している鞘の反対側、右腰にあるパーツが形を変え……律の左手に一丁の銃となって収まった。 形状は大型のオートマチックに似た横に長い台形のような黒塗りで銃身をしており、トリガーの前には楕円形に輝く紅いラインが施され、ラインの光はまるで血流のように流動しながら輝いている。

 

「そこっ!」

 

発射されたのは細い紅い光線。 貫通力のある光線は正面とその背後のノイズを貫いて灰へと変え、続けて連射し周囲のノイズを一掃する。

 

「って、銃かよ!? お前の聖遺物は剣じゃねえのかよ!」

 

「弓のくせに弾とミサイルばら撒いている奴に言われたくない!」

 

歌いギアの出力を上げながら器用にツッコむクリスに、律は逆にツッコみ返す。

 

バシュンバシュン!と、光線銃から某“星戦争”で登場する《ブラスター》のような音を出しながら引金を引き続け、ノイズを撃ち倒していく。

 

「ふははは! ゲーセンで鍛えたエイム撃ち、舐めんなよ!」

 

(サイコガン撃ってるヤツじゃないよね?実銃のヤツだよねやってたのって?)

 

律の光線銃を見て、響はノイズを殴りながら妙な心配をする。

 

腕と一体化している訳ではないが、やっている事は宇宙進出したコブラ……つまり「エボ○トォォォォッ!!」ではなく、ある種の宇宙戦争(スター○ォーズ)に出てくる光線銃のようなもの。

 

だがそんな事は特に関係なく、とにかく律は光線銃を撃ちまってノイズを倒していく。

 

(……離脱するためには、派手なのを一気に決めないと……やるしかないか)

 

律はあのノイズを倒した後、すぐにリディアンに向かう算段をつける。 その為には、謳うしかないと。

 

「俺はノイズの影響で歌えない。 だから発生するフォニックゲインは少ないし、ギアの出力も3人のと比べれば低い……」

 

(……だろうな)

 

(あれほどの適合率がありながらも、私たちと比べ出力が低かった原因か……)

 

「だから……(うた)を紡ぐんだ」

 

少なからず敵対していたからなのか、クリスと翼は感覚的に察していた。

 

「——常世の玉響(たまゆら) 散華の日和」

 

羞恥など二の次、クリスたちが心配する眼差しを向ける中とにかく律は謳う。

 

「泡沫に咲ゆく 金の蓮」

 

謳いながらゆっくりと長剣を持ち上げ、剣先をノイズに向けながら顔の側まで持ち上げる。

 

「ひさかたの 天津風(あまつかぜ)……」

 

すると、紅い刀身から紅い輝きだけではなく、蒼い光と翠の光が放たれ出し。 螺旋を描くように三色の光が混ざり合い、

 

「咲きて散り見ゆ!!」

 

極光の穿剣(フォトン=レイ)

 

突きを放つと同時に自身ごと飛び出し、三色の光がドリルのように螺旋を描きながらノイズの正面から突進して行き……光がノイズを削りながら抵抗なく直進、そのまま巨大飛行型ノイズを貫き爆散した。

 

地上で響と翼が、上空では律が攻撃を仕掛けるノイズを倒し、その間にクリスは歌を歌いながら徐々に力を溜めていき……

 

「「クリス(ちゃん)!!」」

 

3人の呼び掛けと同時に、クリスは溜め込んでいたフォニックゲインが解放される。

 

シンフォギアの腰部アーマーが展開されると同時に変形、両手にはいつもの2丁4門のガトリングガン。 腰部のアーマーには通常とは形状の違う小型ミサイル。 肩より上の位置の背部には左右2基ずつ合計4基の大型ミサイルとそれを撃ち出す射出器。 そしてそれらを支えるアウトリガーが展開された。

 

【MEGA DETH QUARTET】

 

クリスが今出せる最大の火力……射出されたミサイルの数々と、銃弾の雨あられを惜しむことなくばら撒いて行く。 射出された三角柱の形をしたミサイルから内蔵されていた小型ミサイルが拡散し、飛び交っていたノイズを一掃。

 

ガトリングで近中距離にいたノイズを撃退。 そして、大型ミサイルが本命である巨大飛行型ノイズに飛来し……着弾と同時に爆発四散した。

 

「やった、のか?」

 

「ったりめぇだッ!!」

 

全てのノイズを殲滅し、残骸である煤や炭が残る中、戦闘が終わり息を吐いた。

 

「やったやったーー!!」

 

「やめろバカ! 何しやがるんだ!」

 

クリスの元に戻った響は嬉しそうにクリスに抱きつく。 だが当然、クリスは鬱陶しそうに押し返す。

 

それと同時に、見に纏っていたシンフォギアが解除され、3人は元の服装に戻った。

 

「勝てたのはクリスちゃんのおかげだよー!」

 

「律のことも忘れるなよ」

 

「っ! だからやめろと言っているだろうが!」

 

響は再びクリスを抱きしめながら翼が補足を加え、そしてクリスも再び響を押し返す。

 

「いいか? お前たちの仲間になった覚えはない! アタシはただ、フィーネと決着をつけて……やっと見つけた本当の夢を果たしたいだけだ!」

 

「夢? クリスちゃんの? 聞かせてよ〜!」

 

「うるさいバカ! お前本当のバカ!!」

 

「アハハ……って、あれ? 律さん?」

 

抱きしめるのと押し返すやりとりが繰り返されていた所で、最後のノイズを倒した律が戻ってこない事に気がつく。 上空を見上げてもその姿はなかった。

 

「律の奴、どこ行きやがったんだ?」

 

「あの攻撃を繰り出した後、真っ直ぐ……待て、あちらには確か……」

 

——ピリリリリ♪

 

その時、響の通信機に着信が入ってきた。

 

「はい?」

 

『響? 学校が、リディアンがノイズに襲われ——』

 

相手は未来だったが、未来は短い通話でそれだけを伝えると……いきなり通信が切れ、話中音だけが通信機から聞こえてくる。

 

「え……えっ!?」

 

しばらく通信機を耳に当てたまま、響は立ち尽くすしかなかった。

 




光線銃の見た目は《PSYCHO-PASS》の“ドミネーター”のイメージで。

決して左腕と一体化した宇宙コブラのサイコガン、またはロックなバスターではない。
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