戦姫絶唱シンフォギア ーNoisy Glowー 作:にこにこみ
「なんか出そうな場所だなぁ」
「ガウ」
肩にリューツを乗せた律は目の前の病院……人気のない廃棄された《浜崎病院》や周りの景色を見て、心霊的な現象が起きそうな場所だと感想を述べた。
陽は沈み、すっかり夜が更け既に1日経っているこの時刻、律たち装者は人工島の一角にある廃棄施設付近の建物の物陰に潜んでいた。
『良いか! 今夜中に終わらせるつもりで行くぞ!』
「はん! こんなの朝飯前に……いや、日の出前に終わらせてやらぁ!」
『明日も学校があるのに……夜半の出動を強いてしまいすみません』
「気にしないで下さい。これが私たち……防人の務めです」
通信機から弦十郎の気合いと緒川の謝罪が聞こえ、翼は問題ないと返す。
「街のすぐ外れに、あの子たちが潜んでいたなんて……」
『灯台下暗しってやつだな。 まさか同じ手を喰らうとは思ってもみなかったぜ……』
奏が以前、フィーネが二課本部で《カ・ディンギル》を建造していた事を思い出し。 吐き捨てるように皮肉を言ってしまう。
『ここはずっと昔に閉鎖しれた病院なのですが……2カ月前から少しずつ物資が搬入されているみたいなんです。 ただ、現段階ではこれ以上の情報は得られず、痛し痒しではあるのですが……』
「結局。 鬼が出るか蛇が出るか、開けてみないと分からないって事」
「ガウ!」
「尻尾が出てないのなら、こちらから引き摺り出してやるまでだ!」
そう言ってクリスは物陰から飛び出し、それに続くように律と響と翼も走り出し廃病院に向かって駆け出した。
「シンフォギア装者、建物内へと踏み込みます」
司令室から現場を観測していた友里は装者たちが状況開始したことを通達し、弦十郎は腕組みをしながら司令室のメインモニターを静かに見詰めていた。
この動きは二課だけでなく、廃病院に残っていたドクターウェルもモニターで彼らの動きを捕捉、監視していた。
「御持て成しといきましょう」
ウェルがコンソールを操作すると、律たちが潜入していた廃病院の通路内に血のように赤い霧状の何かが散布される。
しかし、明かりもない病院では現場にいる律たちは目視で確認することは難しく、赤い煙に気付けなかった。
「……ガウゥ……」
「リューツ? どうした?」
リューツは本能的に反応できたが、それを伝える術が無かった。
「やっぱり……元病院ってのが雰囲気出してますよねぇ……」
「何だぁ、ビビってるのか?」
「そうじゃないけど……! なんだか空気が重いような気がして……」
「あれ? 確かクリスって怖いのダメじゃ……」
「——黙ってろ!!」
「痛い!?」
「……気を引きしめろ。 意外に早い展開だぞ……」
周囲を警戒していた翼の鋭い視線の先に、真っ直ぐ律たちに向かって侵攻してくるノイズの群れの姿があった。
それを確認した4人は頷き。 シンフォギアを起動するため胸から湧き出てくる聖詠を紡ぐ。
「Feliear claiomhsolais tron」
「Balwisyall Nescell gungnir tron」
「Imyuteus amenohabakiri tron」
「Killiter Ichaival tron」
聖詠が響き渡り、起動したシンフォギアは装者たちの体に展開される。 そして歌はクリスが歌い出し、歌が波紋として広がるとノイズの位相差障壁を無効化し、ノイズをこの世界に暴き出した。
そしてクリスがすぐ様アームドギアを展開すると2丁4門の2連装ガトリングで射線上にいるノイズを鉛玉の雨で一掃し始める。
【BILLION MAIDEN】
正面にいたノイズは無数の銃弾で撃ち抜かれた炭になり、初撃を終えたクリスの左右に翼と響が並び立つ。
律はこの狭い空間ではウィングが邪魔になるとウィングを折り畳んでから、次々と現れるノイズの方を向く。
「やっぱり、このノイズは……!」
「ああ。 間違い無く制御されている!」
「ならここにいるのは間違いなさそうだな!」
この廃病院のどこかに彼女たち《フィーネ》が潜んでいると確信し、4人は一斉に飛び出す。
「立花! 雪音のカバーだ! 懐に潜り込ませなように立ち回れ!」
「はい!」
「律! お前は先行しろ!」
「了解! さあリューツ! ランチタイムだ!」
「ガウ!!」
翼が現場指揮を出し、響は先に先行したクリスのカバーに周り。 ペロリと唇を舐めた律は一気に駆け出し、クリスたちの頭上を超えてさらに前に出る。
クリスが正面のノイズを2丁のクロスボウから放たれる矢で撃ち抜き、横からクリスの懐に忍び込もうとする他のノイズを翼が斬り捨て、響はクリスが撃ち漏らしたノイズを打撃で粉砕する。
そして先行する律はこの狭い空間では長剣は使い難いため長さを縮め片手剣とし、とにかく数を減らすため通路ギリギリの範囲で剣を振り回し乱舞する。
「リューツ!」
「ガーーブ!!」
剣で切り裂いたノイズを吸収しながら狙って四肢を切り落としたノイズを背後にいたリューツに放ると、リューツは笑顔で大口を開けノイズに牙を立てて噛み付き美味しそうに捕食する。
いつも通りにノイズを倒していく律たち。 しかし、クリスが撃ち抜いたノイズが……前触れもなく突如として攻撃しても倒し切れずに元通りになってしまった。
「でやあっ!!」
響の渾身の右ストレートがノイズの胴体を打ち抜くが、時間が巻き戻るかのようにすぐに空いた穴が塞がってしまう。
「ええ……!?」
いつもなら朽ちていくノイズ。 だが再生した事実に響は驚愕してしまう。 次いで翼は刀を大剣に変え振りかぶり、
「はぁ!」
【蒼ノ一閃】
繰り出された“蒼ノ一閃”が直線上にいたノイズを切り裂く。 だが、斬られたノイズはクリスと響と同じ結果となり、再生して再び動きだす。
「なっ!?」
驚く間も無く、続けてノイズが槍となり特攻してきた。 響は殴り、蹴りを入れて弾き。 足元に着弾したノイズを後退して避け、翼とクリスに背を向けながら着地すると息を荒げる。
他の2人も同様で、思い通りにならずどんどん疲弊していく。
「なんで……こんなに手間取るんだ!」
「ッ……ギアの出力が落ちている……!?」
原因不明のギアの出力低下に、響たちは徐々に焦ってしまう。
二課本部でも響たちのギアの出力低下を観測しており、異常事態として対応していた。
「装者たち、適合係数が低下!」
「このままでは戦闘を継続できません!」
「何が起きている!?」
弦十郎たちは驚愕するだけで原因も解決策も出ず、徐々に下がっていく適合係数……このままではノイズを倒すどころか身を守るためのギアすら纏えなくなってしまう。 そうなれば命の危険に晒されてしまう。
ノイズに囲まれ、響たちは息を荒げながらも諦めずにアームドギアを構える。 その時、紅い閃光が響たちの周囲に走り、ノイズを一掃した。
「おい! 何やってる!?」
「ギ、ギアがおかしくて……!」
後方の様子が変わった事に気付いたのか、先行していた律が戻ってきたようだ。
「——せいっ!!」
劣勢になってしまった3人の現状を見ながら律は横一線、確認のため吸収せずにノイズを切り裂くと……いつも通りに炭化して朽ちていく。 元に戻る気配もない。
「何もないじゃないか!」
「な、なんで律さんだけ!?」
「もしや、律のシンフォギアにあるノイズが……!」
翼は律のシンフォギアが3人とは違うという点がギアの出力低下に関係していると仮定する。
「「…………!!」」
その時、律と響が同時に同じ方向……通路の先の方を向くと、それと同時に拳と剣を振り抜き……突如として現れクリスを襲い掛かろうとした影に直撃した。
「2人共気を付けて! 何かいる!!」
「この感触は……」
影は顔面に拳、胴体に剣を受け影は受け身を取り天井を蹴り上げ、再び襲い掛かろうとした所を翼が斬りつけ、影を大きく弾き返した。
「アームドギアで迎撃したんだぞ!?」
「なのに、なぜ炭素と砕けない!?」
「まさか、ノイズじゃ……ない?」
「……斬りつけた時、ノイズを吸収出来なかった。 アレはノイズじゃない……」
「じゃあ、あのバケモノは何だっていうんだ!?」
原因不明の今の状況ではノイズは倒しづらいが、攻撃の過程でノイズは必ず黒く炭化していた。 だが襲ってきた影はその炭化すら起きなかった。
そう言って律は左手に紅い光を集束させ、光球として周囲を照らしながら前に放ると……目が無く口からは涎を垂らしながら凶悪な牙を剥き出しにしている身体中に黄色い線が走る黒い獣がその姿を見せた。
「な、なんだアレ!?」
「ノイズでは、ないのか……?」
「……どっかの国の生物兵器か……完全聖遺物」
色んな憶測が行き交う中、完全聖遺物と思われる正体不明の敵の後方からパチパチと、拍手を打つ音が施設内に響き渡る。
律は光球を前進させると人影が映り、次第にその全貌が見えてくると、
「君は
「ドクター……ウェル」
白衣に身を包み眼鏡をかけた白髪の男性……ドクターウェルが律たちの前にいた。 そのウェルの足元にはゲージが置いてあり、化け物は大人しく自分からその中に入った。
「そんな……博士は岩国基地が襲われた時に……」
「……つまり、ノイズの襲撃は全部……」
輸送中や岩国での襲撃が全部自作自演だと気付いてしまう響とクリス。 その中で律が一歩前に出る。
「やっぱり生きていたのですね」
「おや? 君が記憶を失ってから初めて会ったというのに、どうして私が生きていたと?」
「簡単な推理です。 ノイズを制御する《ソロモンの杖》を搬送中でのノイズによる襲撃……当然、杖が手元にある以上、杖以外の方法での“ノイズを制御できる方法があるのか?”と考えてしまいます。 ですが、ノイズを操る方法が《ソロモンの杖》しかないと仮定すれば……犯人は自ずと分かりました。 岩国基地の襲撃で貴方が消えた事で確信になりました」
張り付いたような笑みを崩さぬウェルは律の推理を聞き……最後まで聞き届けるとその笑みを少し歪ませた。
「——素晴らしい! ええ、実はあの時すでに、アタッシュケースに《ソロモンの杖》はなく、コートの内側にて隠し持っていたんですよ」
「《ソロモンの杖》を奪うため、自分で制御し、自分に襲わせる芝居を打ったのか……」
「彼の言う通り。 《バビロニアの宝物庫》よりノイズを呼び出し、制御することを可能にするなど、この杖を置いて他にありません!」
そう言うと、懐に忍ばせてあった《ソロモンの杖》を起動させ、自身の周囲に再び複数のノイズを召喚した。 それに反応したのか、ゲージに入っている化け物が唸り声を上げる。
「そしてこの杖の所有者は、今や自分こそが相応しい! そう思いませんか?」
「シランガーナ」
「ッ! 思うかよッ!」
律はウェルの言葉を一蹴したが、クリスは自身が起動させてしまった杖が悪用されてしまっている事に怒りを覚える。
そして、ウェルが呼び出したノイズを迎撃すべく追尾型の小型ミサイルが内蔵された左右の腰部アーマーを展開する。
「ッ!」
しかし、クリスがシンフォギアの武装を展開した瞬間、体に激しい痛みが走り、クリスは痛みで苦悶の表情を浮かべる。
身体が痛みを訴えるが怒りは止まらず、激情に身を任せ、そのまま小型ミサイルを一斉発射した。
「うわぁぁぁぁ!!」
「クリス!!」
発射と同時に激痛がクリスを襲い、クリスは苦しむように絶叫した。
発射されたミサイルは一直線に飛んでいき、ノイズの群れに着弾するとその爆発で施設諸共ノイズを吹き飛ばした。
現場が混乱していく中、弦十郎達たちいる司令室には比例して無数のアラート音が鳴り響いていた。
現在、司令室のメインモニターには各装者の状態が映っており。 律を抜いた3人のバイタルが状態が危険であることを表示している。
「適合係数の低下に伴って、ギアからのバックファイアが装者を蝕んでいます!」
原因は以前不明だが、適合指数の低下により通常のシンフォギアの使用でも“絶唱”によるダメージと同じ現象が起きているようだ。
クリスの爆撃により廃病院は崩壊し、黒煙が立ち上る。 その中からノイズの塊が飛び出し、炭化して崩壊すると中から無傷のウェルが現れた。 どうやらノイズで自身を覆う事で爆発から身を守ったようだ。
続いて律たちも外に出るが、クリスは先ほどの攻撃によるバックファイアで負傷しており、翼の肩を借りて立っていた。
「くそッ……なんでこっちがズタボロなんだよ!」
(この状況で出力の大きな技を使えば……最悪の場合、そのバックファイアで身に纏ったシンフォギアに殺されかねない……)
クリスの状態を見て、翼は推測を立てる。
「はあっ!!」
「おっと!」
しかしそんなのは関係ない律は飛び出し、ウェルに向かって剣を振るうと……ウェルは頑丈なノイズを正面に召喚すると盾とし、律は現れたノイズを突き刺し、吸収して排除した。
その一連を後退したウェルは興味深そうに観察していた。
「やはり君の適合係数はそれほど低下してませんねぇ。 報告通り、シンフォギアにバグが発生し、ノイズを取り込む事でギアとして形成している……と言った所ですか。 中々興味深いですが……」
「……! あれは!?」
その時、響が空から飛行音のような音を聞き顔を上げると……夜空に気球のようなノイズが飛んでおり、そのノイズの足元には先程の化け物が収容されているゲージがあり。 そのノイズを護衛するかのように無数の飛行型ノイズがいた。
「ノイズがさっきのケージを持って……!」
正体は不明であれ、あの存在は野放しにして良いものではない事は明白だった。 その様子は二課も観測していた。
「このまま直進すると、洋上に出ます」
「……くっ!」
藤尭が言う通りノイズの進行方向には海があり、このままでは取り逃してしまう可能性があった。
(さて、身軽になったところで、もう少しデータを取りたいところだけれど……)
ここから離れていくノイズを見上げていたウェルはウェルがデータの収集をしたいと呑気に考えていると、
「ん……?」
「動くな」
その首筋に刀が添えられた。 首だけ後ろを向くと、翼がウェルに刀を突きつけていた。
ウェルは目を伏せると、降参とばかりに両手を上げた。 だが《ソロモンの杖》を手放さない辺り、まだ何か企んでいるようで気は抜けなかった。
「立花!その男の確保を!」
「はい!」
「私が雪音を見ている。 律、お前はあのゲージを!」
「ああ!」
翼の指示を聞き入れ、律は折り畳んでいたウィングを広げると空に飛び立とうとした時、
「……待ちやがれ……!」
「クリス?」
飛び立とうとした律の腕を息絶え絶えのクリスが掴んで引き留めた。
「アタシも……連れて行け……!」
「で、でもその身体じゃ……ハッキリ言って……」
「みなまで言うな……! 足手まといになる気はねぇ——せめて、アタシを使え……!!」
「それって……」
言いたいことを理解した律は少し考え込んでしまう。 それを見たクリスは急かすように無言で手を掴む力を込める。
“早くしなければ逃げられてしまう、考える暇があるなら早くしろ”……そう言っているようだった。
ここでクリスを止めるよう説得している時間も無い、律は渋々頷いた。
「いいんだな?」
「ああ……」
再度意思を確認し、律はリューツを呼び出し、
「リューツ!!」
「——ガブ!!」
自分の頭にかぶりつかせた。 律は振り解くこともせず、リューツはそこからシンフォギア内にあるノイズを吸い出し……全て吸い出すと律は目を伏せ、握られている右手に意識を集中させる。
「——赤き心。 降りしきる雪の音を……」
すると胸から謳が浮かび上がり、その謳に身を任せて紡ぎ、
「契り結ばん!!」
謳いきると……クリスの身体が赤く輝きだし、クリス身体は光の粒子となって律の右腕に纏わりつくと……水平に向けられた弓と弦、銃身にトリガーが取り付けられた赤いボウガン、クリスのアームドギアがその手に握られた。
それと同時に《SG-D》も起動し、ギアが変形し紅い粒子が大量に放出される。
「ええっ!?」
「雪音!?」
(これはこれは……)
『……変な感じだな。 だが悪くねぇ!』
痛みは薄れたのか、強気になったクリスの幻影が律の背後に現れる。
律のシンフォギアには他のシンフォギアと装者ごと取り込む事で武器とする能力が備わっており、この事を総じて
加えてこの状態になるには律の体内やシンフォギアからノイズを除去して《SG-D》を起動する必要があり、使用するにあたってリューツの存在が必要不可欠になっている。
そして同契が完了し、ボウガンを握りしめ律は再度飛び上がり、逃走するノイズを追跡を開始する。
「………………」
その途中、ウェルに視線をやる。 彼も律の失われた過去を知る人物……問い質したかったが、
『律』
「分かってる」
それよりも今はあの化け物を確保するのが優先。 クリスに叱咤を受け、前だけを見据え速度を上げで飛翔する。
「律くん! 逃走するノイズに追いつきつつあります!」
「律くんのシンフォギアは飛行が可能です。 このままなら……!」
飛行ができる《クラウソラス》なら海の上だろう空の上だろうと追跡が可能。 小回りは効かないが最高速度なら《天羽々斬》を軽く上回る。
次第にその姿が見えると、護衛らしきノイズが律に気付き迎撃行動を始める。
「行くぞ……!」
無数の方向から接近するノイズ……クリスは律の背後で人差し指を立て手銃で狙いをつけ、
律もボウガンを構えると自動で弓が引かれ複数の矢が扇状につがえられる。 そしてトリガーに指をかけ、
『狙い撃つぜ!!』
【NEEDLES CUTTING】
引金を引き、矢が扇状に放たれた。 飛来していく矢は追尾機能と拡散効果があり、自動でノイズを射抜くとそこから拡散、矢は累乗的に増殖しあっという間に空からノイズを一掃した。
クリスは銃口から出る硝煙を吹き消すように人差し指に息を吹きかけた。
『フッ……狙い通りだぜ』
「まだ気を抜くな」
格好をつけるクリスを注意しながら前進する律。 最後にゲージを持っていたノイズを射抜き、支えがなくなり重力に引かれ落下していくゲージに律は接近し手を伸ばし。 手がゲージに届こうした瞬間、
「ッ!?」
『律!』
頭上から飛来した物体に手を弾かれてしまう。 すぐさま体勢を立て直し、海上ギリギリの所で静止し顔を上げると……海上に穂先を下にして槍が浮いており、その柄頭の上に人影が降り立ち、落下してきたゲージをキャッチした。
そこで丁度、日の出の時間になったのか海から太陽が登り……槍の上に立つ人物が日に晒されると、
『アイツは……!』
「時間通りですよ——《フィーネ》」
「「!?」」
日に晒された人物を見て、響に拘束されているウェルがその人物の事を《フィーネ》と呼んだ。
その名は、今は彼女たちの組織の名前を意味している。 にも関わらずウェルは呼称として彼女の事をそう呼んだ。
「フィーネだと!?」
「“終わりを意味する名”は、我々組織の象徴である彼女の二つ名でもある……」
「まさか……じゃあ、あの人が……」
「新たに目覚めし、再誕した《フィーネ》です……!」
海面に浮かぶ槍の上に佇んでいたのは……黒いガングニールに身を纏った《マリア・カデンツァヴナ・イヴ》その人だった。