戦姫絶唱シンフォギア ーNoisy Glowー 作:にこにこみ
「っ……」
「こんっの……邪魔!!」
響は左腕がネフィリムに喰い千切られてしまい、痛みも鈍く感じるように立ち尽くしてしまった。 あまりの衝撃に同様に立ち尽くす翼。 いち早く立ち直った律は鬱陶しそうに糸を斬り裂き、素早くと気絶したクリスを横たえると急いで響の元に向かう。
「ぬふぅ……!」
そしてこの惨劇が予定通りというように、ウェルが歪んだ笑みを浮かべ。 咀嚼を終えたネフィリムがそのまま響の腕を嚥下して腹に飲み込んだ。
「ぁぁ……」
「響!! しっかりしろ!!」
左腕を抑えながら膝をつく響。 律は急いで左腕を見ると、左腕の肘から先が無くなっていた。
「いったぁぁぁーーッ!! パクついた……シンフォギアをぉ……これでぇぇぇーー!!」
狂ったように目玉が飛び出る勢いで見開いて叫ぶウェル。 そんな奇行に付き合ってはいられず、翼も響の元に近寄る。
「くっ……ぅぅ……」
「出血が酷い! 傷口を焼くか!?」
「それは最後の手段! とにかく止血する!!」
火や高熱で傷口を火傷させて止血しようとする翼の提案を却下しながら律はシンフォギアを解除し。 上着を脱ぎYシャツの片袖を引きちぎり響の左腕の付け根に巻き付け、応急処置としてキツく縛り上げた。
この光景を、別の場所に着陸させていたエアキャリア内で待機していたマリアたちも見ていた。
「あんのキテレツ! どこまで道を外してやがるデスかッ!」
「ネフィリムに聖遺物の欠片を餌と与えるって、そういう……」
「ぁぁ……」
流石の奇行にマリアたちも着いては行けず、憤慨する切歌は壁を強く殴りつける。 スクリーンに移る、蹲る響を見て……マリアの脳裏に先程、廃工場で無残に殺されてしまった一般人の子どもたちが蘇る。
「——ッ!!」
「どこへ行くつもりですか? あなたたちに命じているのはこの場での待機です」
振り払うように頭を左右に振るい、踵を返してこの場から出て行こうとした所をナスターシャに引き留められる。
「あいつは! 人の命を弄んでいるだけッ! こんなことがわたしたちのなすべきことなのですかッ!?」
「……………………」
この愚行とも言える行いにさすがのマリアも怒りを露わにする。 切歌は血を流す響の姿をこれ以上見たくないように顔を伏せる。
「……あたしたち……正しいことをするんデスよね……」
「間違っていないとしたら……どうしてこんな気持ちになるの?」
「……その優しさは今日を限りに捨ててしまいなさい。 わたしたちには微笑みなど必要ないのですから……」
「くっ……」
これ以上見たくないように目を伏せ、マリアはこの場を後にした。
出て行ったマリアは閉じられた背に寄りかかり、祈るように天を仰ぐとその場に座り込み、ポケットから損傷したギアペンダントを取り出す。
「何もかもが崩れていく……このまま……じゃいつかわたしも壊れてしまう……」
マリアはペンダントを大切に手の中に包み込み、
「セレナ……律……どうすればいいの……!」
独り、後悔するように涙を流した。
「ああ……ああぁぁぁぁ……」
ようやく痛みを実感し始めたのか、額から脂汗を出しながら響は呻き、強く左腕を握りしめだす。
「立花! しっかりしろ、立花ぁ!!」
「心拍が上昇……! 出血が止まらない! すぐに救護を——ッ!!」
急いで救護を呼ぼうとし……気配を感じ咄嗟に立ち上がりながら振り返ると、目の前にさらに夥しい程の涎を出すネフィリムが、獲物を狙うような目で律たちの方を見ていた。 ……目などないが。
「完全聖遺物《ネフィリム》は、いわば自律稼働する増殖炉! 他のエネルギー体を捕食し、取りこむことでさらなる出力を可能とするぅ~! さぁ始まるぞ! 聞こえるか? 覚醒の鼓動! この力がフロンティアを浮上させるのだ! フハハハ! ハハハハ! フヒヒヒヒ!」
ウェルが狂いながら懇切丁寧に説明する間、ネフィリムの身体に走っていたオレンジ色の線が赤く輝き出し、肉体が膨れ上がるように膨張を始めより怪物的な姿に変貌して行く。
「外道め……!」
(フロンティア? 浮上? 何を言っている……)
「ぅぅぅぅぅ……ゥゥ……!』
「フヒヒヒヒッ……ヒヒ……うぇ……?」
狂いながら笑うウェルを睨みつける翼。 律も怒りを露わにしたかったが、それでも冷静になりウェルの言葉の意味を探っていると……息を荒げていた響から唸り声が出始める。
律と翼がウェルに向けていた視線を下ろすと……響の胸元から“f”字の輝きが発生しており。 その輝きが黒くなると、響の全身を一気に黒く染め上げた。
『ウウウウ! ウガァァァァァ! ッアアアアアアア!!』
「そんな……まさか……!」
「ッ——離れろ!」
急いで律はシンフォギアを再装着し、翼を抱え響を置いてその場から離脱する。
この事態には流石のウェルも予想外のようで、狂ったような笑みが止み響を驚愕の目で見ていた。
『ァァァァ……ゥァァァ! ガァァァァ!!』
獣のような唸り声と共に立ち上がった響は目の前にいたネフィリムを睨み。 ネフィリムも口元を半開きにして涎を垂らしながら響を睨む。
両者、先程と姿が一変し今にも殺し合いそうな雰囲気になる。
「これが……フィーネの観測記録にあった……立花 響の——」
「暴走……だと!?」
別の場所で響の暴走を見ていたナスターシャと弦十郎も驚愕を露わにする。
『グゥゥゥ……アアァァァァァァ!!』
暴走した響は咆哮とともに無くなった左腕を振り上げると、そこから黒いエネルギーのような物が飛び出し。 溢れ出していたエネルギーが徐々に収束し、元の左腕を形作った。
「左腕が!?」
「ギアのエネルギーを腕の形に固定!? まるでアームドギアを形成するかのように!」
「槍が出来ないからってそんなのアリかよ!?」
今まで散々アームドギアが出ないと喚いていたにも関わらず、失われた腕を生やすという離れ技ができたことに絶句してしまう。
そして暴走した響はネフィリムに襲いかかり、型もなくただ力任せにネフィリムをボコボコに攻撃していく。 反撃をまともに受けてもお構いなし、再び獣のように襲いかかる。
「や、やめろー! やめるんだー! 成長したネフィリムは、これからの新世界に必要不可欠なものだ!それを……それをぉぉぉぉ!!」
「身から出た錆だろう!!」
「あんなの放っておけ! とにかく今は響を止めるのが先決だ!」
一方的にやられるネフィリムにウェルは絶望的な表情で苦しそうに息を荒げる。 翼は自分が招いた結果だと一蹴し、律はそんなのは無視し急いでなるべく気付かれないよう背後から響に近付こうとする。
「いやぁぁぁぁぁぁあーーー!」
やられるネフィリムを見て、ウェルは悲鳴を上げながら出鱈目にノイズを大量出現させ、そしてその全てを集結させ……一体の巨大なノイズを出現させた。
『ハッ! ハッ! グアアアア!』
獣のように四足で走る響は現れたノイズの口の中に自ら飛び込むと……ノイズの中で暴れ回り、腹わたを切り裂き炭と化しながら咆哮と共に出てきた。
その咆哮により本能で危機を察したのか、背を向けて逃げ出すネフィリム。 しかし、暴走した響は逃す訳もなく……赤い眼光がネフィリムに捉える。
『ガウゥッ!』
飛び上がり、背を向けて逃げるネフィリムの背を押し潰しながらマウントを取り。 右腕を振り上げ、手刀を放とうとする。
「ま、まさか……!?」
「やめろ立花!! やめるんだ!!」
響が何をしようとしているのか察したウェル。 その瞬間、横から翼が飛びかかり、ゴロゴロと転がりながら響を地面に組み伏せた。 解放されたネフィリムはというと……隙が出来たと思ったのか、背を向ける翼と響に再び襲いかかる。
「お前も黙ってろ!!」
すぐさま間に割って入った律は回し蹴りでネフィリムの腕を弾き上げ、両手で構えていた剣を握りしめて懐に飛び込み、
「せりゃりゃりゃりゃりゃ!」
掛け声と共に瞬く間に何度も剣を振るい、同じ箇所……心臓がある左胸の位置を何度も斬り裂き、ネフィリムの硬い皮膚に風穴を空け、
「せりゃあっ!!」
【
即座に右手の指を揃え手刀で空いた左胸に突き刺し……何かを掴んで強引に引き抜いた。 律の右手には紅く鼓動する心臓のような物が握られていた。
「うわっ、ノイズで練習はしてたけど……メタルなライジングじゃなくてシンフォギア・ライジングで出来ちゃったよ」
今まではフィーネ戦以降に見え出したノイズの“核”で練習をしていたが、ノイズ以外ではこれが初めて。 律は赤く鼓動する心臓を気持ち悪そうにポイッと、握り潰す事なく背後に放り捨てた。
「ひぃぃぃ! あああああーーー!! ああ! あああぁ!」
律はネフィリムの心臓が抉り取られてしまった事に頭を掻き毟るように絶叫するウェルを無視し、すぐに暴走する響を抑え込む翼の元に向かう。
「落ち着くんだ、立花!!」
『ゥゥゥァアアアアッ!!』
「抑えておいて! このまま“調律”する!」
「“調律”……!? 立花を止めることが出来るのか!?」
「シンフォギア相手は初めてだけど……やるしかない!」
「ごめん」と一言謝りながら響の胸元の傷に手を当て。 紅い粒子が周囲に散布されると背のウィングが広がり、右手を通して響を覆う黒いモヤが徐々に吸い出されて、同時に浄化するように黒の色合いが薄れて行く。
『グァァ!グアアア!アアアア!』
「ぐうっ……!」
「動くな……!」
しかし、暴走はすぐには止まらず。 2人は暴れる響を精一杯抑えつけていると……気絶から目が覚め、状況が飲み込めないクリスが走ってきた。
「おい! 何がどうなってんだ!?」
「起きるの遅い!! とにかく響を抑えるのを手伝って!」
「わ、分かった!」
とにかくクリスも暴走する響の腕を掴み、抑え込むのに協力しする。
「い、いやぁぁぁぁぁ~~! あぐっ……ひぃぃぃぃ……あぐっ……」
すると、とうとう響に恐れをなしたのかウェルが悲鳴を上げて、何度も躓き転びながら不様にも尻尾を巻いて逃げ出した。
そんなのを律たちが気にしている余裕など無く……そしてゆっくりと暴走を鎮め完全に調律を終えると、
「うわっ!?」
「くっ……!」
響から強い閃光が放たれ、律たちはあまりの光量に目を閉じ腕で覆い……光が収まると、響は暴走が止まってクリスたちの手の中でグッタリと気絶しており、ギアも解除され制服姿になっていた。
「立花? 立花!」
「大丈夫。 気絶しているだけ、みたいだけどこれは……」
身体に異常が無いことを確認して優しく、ゆっくりと横たえる。 外傷は特に見られない……喰いちぎられた左腕も何事もなかったかのようにちゃんとある。
(左腕は……無事なのか……?)
制服が無事なのは特に問題ない。 ギアを装着する際、着ていた服はどういう原理か粒子化され一旦ギアペンダント内に入れられ。 解除する際に再構成されるため、左腕を千切られようとも破かれる事はない。
それは置いておき。 律は気絶する響の左手を取り、肘まで袖を巻くって傷が無いことを確認する。 傷どころか元通り、噛み千切られた様子もなく最初から無くなってもいなかったようだった。
夢か幻だったのか、と思いたかったが。 地面に散らばる大量の響の血が実際に起こった出来事だと実感させる。
「とにかく急いで救護班を。 念のためクリスもね、頭を強く打ったんだから」
「あ、ああ……」
「既に司令が手配したようだ。 もう時期に来るだろう」
「そうか……」
救護班が来ることを確認すると律は立ち上がり、響を翼たちに任せ……ネフィリムの元に向かった。 地にうつ伏せで倒れ伏すネフィリムはピクリとも動かず、既に生き絶え亡骸となっていた。
「よっ」
そんなネフィリムの亡骸に剣を突き刺し、亡骸を吸収すると剣先の1箇所に収束させ……ギアペンダントと同じ形状の結晶にして封印した。
機能を停止したとはいえ完全聖遺物……使い道はいくらでもある。 悪用されるくらいならこうした方が世のためだ。
「……さてと……って、あれ?」
地面に落ちた結晶を広い、先ほど抉り取った心臓を探そうと辺りを見回すと……心臓がどこにも無かった。
「確かこの辺りに……どこいった?」
この暗闇では探す事は困難……心臓とはいえ、流石に適当に放るべきでは無かったと今更ながらに後悔する。
「——律! 何してんだ!」
「……今行く!」
手を貸せとクリスに呼ばれ。 右手に視線を落とし、その中にあるネフィリムが封じられたペンダントを一瞥して握りしめ……踵を返し響を連れて行くため翼たちの元に向かった。
◆ ◆ ◆
《カ・ディンギル跡地》での戦闘から時間が経ち日付が変わり……左腕の切断と暴走により緊急搬送された響。 検査の結果からある一点を除けば問題は無く、時期に目を覚ますらしい。 同様にクリスも特に異常はなく、結果を知らされた律と翼はようやく一息つけた。
響は翌日には目を覚ましたが……暴走により響の胸に埋め込まれた《ガングニール》の欠片が癌のように広がり浸食深度が進んだのだ。 このまま繰り返しシンフォギアを使い続ければ文字通り命を削る事になりかねない。
そして……響は翼から、延いては司令から離脱を言い渡された。
「あいつが戦線離脱、か……」
「まあ、しょうがないよな。 命に関わる事だし」
二課内にある自販機の前でお茶を買い、律の膝の上でリューツが寝る中、2人は響の心配をする。
響はこの戦線から強制離脱。 当分の間、少なくとも胸のガングニールの浸食の抑制、もしくは除去等の解決方法が見つけるまでは待機となるだろう。
「遣る瀬無いとは思うけど、後は俺たちでやるしかない」
「……わぁってるよ」
返事をしながらクリスはグイッとコップを仰り、残りを飲み干すとその場から空の紙コップを放り投げ、綺麗な弧を描いてゴミ箱に入れた。
「しかし、これからマリアたちは……特にウェル博士はどうするんだろうな?」
「と、いうと?」
「言ってたろ? “落下する月から世界を救うのは《ネフィリム》だけ”だと……そのネフィリムがご臨終したんだ。 あの発狂具合から相当大事な物で、アレで月を救おうとしていたのも本気だったのかもしれない。 真意はどうあれ、な……」
ネフィリムが一方的にやられる光景に奇声を発して発狂していたウェル……どれだけネフィリムが彼にとって重要だったのか見てとれた。
「そもそも、あの化け物を使ってどう月の落下から地球を救うのか全く分からん」
「確かにそうだな。 アレを使って物理的に地球から押し遣る訳でもあるまいし……結局、相変わらず何も分からず仕舞いか」
「やれやれ、頭を悩ませてばかりだな」
「クァ〜……」
欠伸をするリューツの頭を撫でながらそうごちる律。 状況が刻一刻と確実に進んでいるとはいえ、律たちは解決の糸口は全く掴めていなかった。
結局、響は経過観察のためそのまま入院となり。 律とクリスは一緒に家に帰宅していた。 帰り道では雑談などする空気でも無く、終始無言になっていた。
その途中、進行方向にあったスーパーが視界に入って来て、律は足を止めた。
「確か家には何も無かったな……クリスもついてくるか?」
「んー、そうだなぁ……冷蔵庫の中身も少なくなってたし、アタシもついて行くわ」
クリスも同行することになり、「ギャーウ」と少し不満そうな顔をするリューツを外で待たせて2人は店内に入った。
「んーこの際だし、クリスもウチで食って行けよ」
「そ、そこまで世話になるつもりはねぇよ……」
「隣なんだし、別に赤の他人って訳でもないんだ。 それに母さんからしっかり面倒を見ろって言われてもいるんだ。 クリスは放っておくと偏った食生活になるだろう。 俺がこうして健康にいいものを食わしておけば万事解決なんだから、黙って俺の料理を食え」
「…………!?」
強要するようにそう言い、何を作ろうかと品を取る律。 その背後ではクリスが絶句して顔を真っ赤にさせる。 と、そこで律はクリスが押していたカートの中を見る。 籠の中には飲み物やお菓子の他に、既に料理として作られた弁当や惣菜ばかりが入っていた。
「って言うか、惣菜と弁当ばっかだなぁ。 こんなのばっかだと栄養が偏って……」
そう言いかけて律は少し視線を落とし、
「……手遅れか」
「おい! 今身長見て言ったな!?」
装者の中でも身長が低いクリス。 幼少期の頃、戦禍に巻き込まれて充分な食事が取れなかったせいもあるが……それによる人体による防衛機構なのか、逆に栄養を貯め込むようにある部位だけが大きくなっていた。
「あれ、サキさん?」
「ん?」
声をかけられ振り返ると、そこには同じように買い物カゴを乗せたカートを押す詩織がいた。
「こんにちは。 お買い物の最中でしたか?」
「ああ、夕食の買い出しにな。 そっちもか?」
「はい。 お母さんにお使いを頼まれまして……」
隣にクリスがいる事に気がつき、詩織は2人に交互に視線をやる。
「……んだよ、ジロジロ見て」
「いえ。 こうして見ると、仲のいい恋人か夫婦に見えて」
「んなっ!?」
クリスは酷く狼狽しながら顔を真っ赤にする。 その詩織の言葉に律は呆れ顔になる。
「何を馬鹿な……」
「違うんですか?」
「そうだ! 何が馬鹿だ!!」
「あれぇー? なんで俺が怒られてるのー?」
「んー! ナイスです!」
何故かクリスに怒りの矛先を向けられ、律は意味が分からないと肩を竦める。 そんな2人のやりとりを見た詩織は笑顔で親指を立てた。
その後も詩織を交えて買い物は続き、青果類があるフロアに足を踏み入れると、
「リンゴ……」
先ず目に入り、手に持ったのは赤く熟れたリンゴ。 それを手に持ちジッと見つめていると、ふと口が独りで動き出す。
「……リンゴは……浮かんだ お空に リンゴは落っこちた地べたに……」
ボソリと紡がれたのは歌詞。 脳裏に突然浮かんできたこの歌を呟くように歌い……首を傾げた。
(スッと出て来たけど……こんな歌、聞いたことあったか? ニュートンの“万有引力”をモチーフにした歌っぽいけど……)
記憶を失ってから今までの生活で多種多様な歌と触れ合って来ていたが、こんな歌は聞き覚えがなかった事に疑問を感じる律。
「律さーん!」
「こっちはもう終わったぞ。 お前も会計に……って、何してんだ?」
「……! いや、何でもない」
誤魔化すようにリンゴを籠に入れ、律は会計を済ませるために財布を取り出しながらクリスと詩織の元に向かった。