戦姫絶唱シンフォギア ーNoisy Glowー   作:にこにこみ

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34話 沈む陽

 

翌日——

 

律はセレナについて調べるために学校を休んで調査活動をしていた。 と言っても名前しか手がかりがない……なのでセレナは自分の過去に関係があると仮定し、その紐付けで《F.I.S》について調べることにした。

 

二課の藤尭と友里などのオペレーターに協力して調べてもらった方が早いが、それだと足がつきそうなので別の手を考えていた。

 

「さて、どうしたもんかなぁ」

 

「ガゥゥ……」

 

「(ゴソゴソ……)プハァ! 何かいい方法はないんでしょうか」

 

律とリューツが並んでベンチに座って考え込んでいると、持ってきていたリュックからセレナが顔だけ出してきた。 律は普段は使わないリュックを背負っており、この中にはセレナが入っている。

 

「セレナも何でもいいから覚えているものがあれば良かったんだけど……」

 

「なんで絶唱を歌ったのか、それ以前の記憶がさっぱりなくなってますから」

 

シンフォギアを使用した状態で絶唱を口にして気絶した……セレナはそれだけ覚えているらしい。 どんな理由で、どんな聖遺物のシンフォギアを使用したのか、誰に対して歌ったのか全く覚えていないらしい。

 

情報が限定されているため、最初っから手詰まりである。

 

「うーん……だったら裏の事情に詳しい人に聞いてみるのはどうでしょう?」

 

「外部の人間で裏の事情……情報屋みたいな人か。 確かにそれなら足はつかないと思うけど、そんな人知らない——いや、緒川さんならおそらく」

 

もしかしたらそう言った裏事情に詳しい外部の人物を知っているかもしれない……律たちは丁度外回りだった緒川を探し、何とか合流して事情を軽く仄めかしながらも説明した。

 

「それでどうにか《F.I.S》について調べたいんです。 自分の過去もそうですが、何を目的として彼女たちが動いているのか……理由が知りたいんです」

 

「なるほど……」

 

緒川に《F.I.S》について知りたいと、本当に自分が知りたいという本音と事情を交えながら説明し、律とセレナは固唾を飲んで返答を待ち、

 

「……分かりました。 それなら協力できる人を丁度知っていますので聞いてみますね」

 

電話を取り出してどこかへと連絡し、なんとか協力してもらえた。 緒川はかなり鋭いので、バレなかった事に律は内心かなりホッとしていた。

 

本当ならこの後、響の容体について報告するために集まる予定だったが……薄情だと思われても仕方ないと溜息を吐いた。 色々な結果が予想されるが、最終的にまた戦線離脱になるだろう。

 

その後、律は緒川の運転で車で移動し、新宿歌舞伎町に到着。 そこにあるホストクラブ“絶対隷奴(アブソリュートゼロ)”に2人は入った。 入る際、律は「なんだこの名前」と店名について呟いた。

 

昼とはいえど当然ホストクラブなど入った事など無いので、律はキョロキョロと興味深そうに店内を見渡しながら少し緊張してしまった。

 

すると、奥から白いスーツを胸元をはだけさせている少しチャラそうなホスト風の男性が2人を出迎えた。

 

「紹介します。 彼は私の弟の……」

 

「緒川 捨犬(すていぬ)って言いま〜す。 よろしく!」

 

「——親が子につける名前じゃねぇ!!」

 

調子軽そうに言うが、律はあまりにも酷いネーミングセンスに思わずツッコミを入れてしまった。 それが面白かったのか、緒川は口元を手で隠しながらクスクスと軽く笑う。

 

「ご心配なく。 これは字名(あざな)……両親につけられた本名はまた別にあります」

 

「気軽に“すてくん”って呼んでね〜」

 

「………………ワンさんで、お願いします」

 

親が付けたであろうがそんな酷い名前言える訳がない……なんてデリカシーのない事を言える訳もなく。 とはいえそんな気軽に呼べる訳もないので“犬”の部分を変える事でギリギリだった。 まだ何も始まってもいないのに律はかなり気疲れしてしまう。

 

そして3人は会話が届かない隅にある席に案内される。 捨犬を対面に座って見た感じ普通である。 こうして見ると似てはいるが、隣に座っている緒川とは雰囲気が違った。 なんの変哲もない一般人だ。

 

「それにしても緒川さんの弟さんだから、てっきり弟さんも人間辞めているのかと……」

 

「捨君は遺産を含む、一切の奥義継承を行わないことを条件に基本的に自由にしているんです。 このホストで勤務しているのも好きでやっているからなんです」

 

「一応、ここのNo.4ホストで“亜蘭”って通り名で通ってるんだぜ〜」

 

「へ、へぇ……」

 

名前が捨犬(あんなの)だから、グレてしまって家から出たのではないかと思ってしまう律であった。

 

だが、軽そうな雰囲気から一転、捨犬は真剣な目に変わりケースから数枚の紙資料を取り出した。 今のこのご時世なら電子化してパソコン等に保存するが秘匿情報を紙媒体で保存する点、どことなくプロ感を感じてしまう。

 

「さて、本題に入ろうか。 律君が知りたいのは今世間を騒がせているアイドル大統領……もとい《F.I.S》について。 元はアメリカの聖遺物研究所、それが一部独立してなんらかの目的で動いている。 ここまでは知っているね?」

 

「はい」

 

「それで、つい最近気になる情報が入ってね」

 

そう言って数枚の資料を律との間に置く。 一番上の資料には破損した大型の輸送船の写真と、それについての詳細な情報が記載されていた。

 

「6年前……太平洋でアメリカの輸送船が原因不明の事故があったんだ。 ただこの輸送船、何を運んでいたのか完全に秘匿されていてね。 政府は軍事機密の一点張りだったんだけど、当然調査の手が入ったんだ。 っで、これがその時の輸送船の写真」

 

トントンと、輸送船の写真を指で叩く。 そのままスーッとある部分をなぞる。 その撫でた輸送船の部分には焼き切られたような大きな裂き傷があった。

 

「これって……」

 

「鋭利な太刀筋……普通ではまずあり得ない傷ですね」

 

「普通ではありえないけど、可能にするものならあるにはある。 それは——」

 

「シンフォギア……」

 

普通に考えてこんな大きな傷、現代兵器を持ち得たとしても不可能だろう。 他に可能性があるとすればSF映画で出てくるようなラ○トセ○バーくらいだろう。

 

「シンフォギアならあの3人のうち誰か、この傷なら誰にでも可能性はあるけど……」

 

「——それなら君じゃないのかい、律君?」

 

「え……」

 

捨犬の指摘に、律は思わず声を漏らす。

 

「これは6年前に起きた事故。 そして、君が流れ着いた所を見つかったのも……6年前だよ」

 

「それは……確かに」

 

言われてみれば、年は同じで日にちは1ヶ月半くらいの差がある。 《クラウソラス》ならこの破損も可能で、あり得なくもなかった。

 

(って、船でも太平洋横断に大体1ヶ月かかるのに、俺はどうやって日本に来たんだよ?)

 

疑問は残るが、とりあえず頭の隅に追いやった。

 

律は資料を手に取り、とりあえず今は分かりやすい写真だけを見ていく。 そして……ある写真を目に止める。

 

「こ、れは…………ぐぅっ!!」

 

そこには、酷く破損したコンテナが写っていた。 コンテナの中から何か大きな力がこじ開けられ放たれたような壊れた方をしている。 それを見た律は激しい頭痛が起こる。

 

「律君!」

 

「ぐっ……そ、うだ……あの時……俺は……!」

 

脳裏に記憶がフラッシュバックされる。 扉が1つしかない無機質な部屋……そこには自分以外にも質素な服を着た少女たちがいた。 そこにはあのマリア、調と切歌、そして……人間の姿をしたセレナがいた。

 

「どうやって……どうやって俺はあそこから……!!」

 

「律君ッ!!」

 

今、断片的に思い出したのは施設の記憶……律は続けてこの輸送船での記憶を思い出そうとすると、緒川が律の肩を揺さぶって正気を取り戻そうとする。

 

「落ち着いてください、そう焦ってはいけません」

 

「……あ……」

 

律はなんとか気を取り戻し。 息を整え、心を落ち着かせ今しがた思い出した記憶を整理する。

 

「……ご心配かけてすみません」

 

「ご無事で何よりです。ですが、あまり無理をしてはいけません。 ゆっくり、焦らずに思い出して行きましょう」

 

「いやー悪いね。 こっちも君の事を考えずにベラベラと軽い感じで喋っちゃって」

 

記憶がこんがらかった状態でふと、疑問を思い出し律は質問してみた。

 

「そう言えば……前々から気になっていたんですけど、どうやって俺は太平洋を横断したんでしょう? 生身で流れ着いたのなら途中で荒波や低体温症とかでお陀仏になっていると思うんですけど……」

 

「ああ、それならこれが原因だろうね」

 

資料の中から1枚を取り出した。 そこにはどこかの海底の写真が。 その中心には円窓がついた四角柱型のポッドのようなものがあった。

 

「小型の脱出ポッドだよ。 4年前、君が見つかった浜辺の沖合で見つかったんだ。 調査の結果、アメリカが使用している形式ということから、君がこれに乗って日本に来たのは間違い無いと思う」

 

「って事は、俺はこれで脱出して……」

 

どうして途中でポッドを出て漂流したのかは定かではないが……これで律が五体満足で日本に流れ着いた原因が判明した。

 

「とりあえず今日はここまでとしましょう。 いくら律君でも一気に新しい情報を許容できないでしょう」

 

「……はい、そうですね。 そうします」

 

律は大きく息を吐き、目を閉じて今まで得た情報を整理する。 記憶に間違いがなければセレナは律やマリアたちと同じF.I.Sにいた。 ほとんどが過去のもので主に律についてだったが、それでも充分過ぎる情報が得られたのだった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

現在、何が起きても即座に行動に移せるように、なるべく2人でいるようになっている。 今はクリスの部屋に集まっており、律は写譜、クリスはボーッと猫じゃらしを振りながらリューツと戯れている。

 

ちなみにセレナは律の部屋でテレビ鑑賞をしている。 どうやら今まで娯楽とは縁がなかったようで、かなりのめり込んでいる。

 

「……響は、今日どうしてるんだ?」

 

「確か未来と出かけているようだな。 今は穏やかに過ごす事が大切だけど……」

 

ひと度戦いに繰り出せばもう予断を許さない状況になるだろう。 だが、律には不安が拭えなかった。 どういう星の元に生まれたのか響が望まずとも戦乱の方から寄ってくる。 そして、響の1番近くにいる未来もそれに巻き込まれる……2年前からそうだった。 ノイズからも、人からも。

 

(ノイズの方が単純明快だ。 人の方が……醜く度し難い……)

 

ある意味この世で最も業が深い……“原罪”の生物とも言えるだろう。 自然界でも身体部位の欠損や形状、色彩の差異で群れから淘汰される動物もいるが……人はそれ以上に最悪で捻くれているだろう。

 

どこまでも執拗に追い立てる。 享楽に浸りたいがために狩りのように。 そのためには何でもしてしまう……タダで遊べるゲームのように、壊れてもいいおもちゃのように。

 

(……話が逸れたな)

 

趣旨が変わっていることに気が付きトラウマを払うかのように頭を振るう。

 

気を取り直し、気分を変えようと律は写譜を片付けて本でも読もうとした時、律のスマホに着信が入る。 相手は奏だった。

 

「もしもし?」

 

『——すぐに来てくれ、大事な話がある』

 

前置きもなく奏は律を呼び出す。 いつもなら理由を追求するが、通話越しに伝わる雰囲気から律は出しかけた言葉を飲み込んだ。

 

「……俺だけか?」

 

『ああ』

 

「了解。 すぐに向かう」

 

通信を切り律は立ち上がるとクリスは心配そうな表情で見ていた。

 

「呼び出された、少し出る。 クリスはこのまま待機してくれ」

 

「お、おい……」

 

「大丈夫。 まだ何も起きてないから」

 

何もないとクリスの頭をポンポンと撫でながら部屋を後にし、地上に降りてマンションから出る。

 

(そう。 まだ、何も……)

 

「——ところがギッチョン!!」

 

「ヘブッ!?」

 

突然、後頭部に強い衝撃が走る。 不意打ちを食らった律は地べたに倒れ、その目の前に1体の人形……セレナが華麗にシュタッと着地した。

 

「もうダメだよ律ー。 私を置いていっちゃあ」

 

「……もっとまともな登場の仕方はなかったのか……」

 

「お仕置きです」

 

ムスッと頬を膨らませるセレナ。 痛む頭を摩りながらやれやれと律はセレナが持っていた鞄を持ち……そのまま鞄を頭から被せてセレナを収納した。

 

鞄からはみ出た足がジタバタするのを無視して律は指定された場所に向かった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

同日——

 

町ではノイズ警報が鳴り響き、人々は慌ただしく避難をしていた。

 

そして、スカイタワー付近にあるビル。 ノイズの出現で客や従業員が避難して誰もいなくなくったレストランに1人だけ残っていた。

 

スカイタワーが見える席で、側に《ソロモンの杖》を携えているウェルが優雅に紅茶を飲んでいた。

 

「誰も彼もが好き勝手なことばかり」

 

そうボヤキ、呆れながらウェルは紅茶を口にする。 すると、向かいから2人組の男女が側まで歩いて来た。

 

「おや……」

 

「ご相席しても?」

 

テーブルに片手をつきながら上から目線で威圧する様にスーツ姿の女性が……奏が同席を願い出る。 その隣には律がいた。

 

ウェルは笑みを浮かべながら無言で向かいの席にどうぞと言わんばかりに手のひらを向け、奏と律はウェルも向かい合って並んで腰掛ける。 律は持っていた鞄は膝上に置き、中に入っているセレナも聞き耳を立てる。

 

「何か好きな物でも注文しても構いませんよ。 ここは年長者である私が持ちます」

 

「もう誰もいやしねえよ。 それに、あんなのがいちゃあ落ち着いていただけるわけもねえだろ」

 

奏はクイっと顎でスカイタワーを指す。 スカイタワーの展望台の周囲をノイズが飛び交っている。

 

身の危険があっては落ち着けるわけもない……だがウェルはそんな事はお構いなしにもう一口、紅茶を飲んだ。

 

「さて……ここに来たという事はそれなりの目的があっての事でしょう。 私を見つけられたご褒美と言ってはあれですが……制限時間はありますが、その間なら答えられる範囲でお答えしましょう」

 

「それじゃあ単刀直入に聞く——何が目的だ」

 

「それは以前にお答えしたじゃありませんか。 月の落下を阻止し、地球を救う……それだけです」

 

「それは建前だろう」

 

奏の質問に答えたウェルの問いに、律は異議を申し立てる。

 

「ほう?」

 

「俺は以前、仲間の中で一番先にあなたと接触していた響とクリス、友里さんからあなたの表向きの第一印象を聞いていました。 そこで一番気になったのは響との会話……俺たちが事件解決の後に一部の人間からこう呼ばれている事に尊敬していたそうですね?——“ルナアタックの英雄”と……俺はそこに答えがあると思っています」

 

「………………」

 

律に質問に笑みを浮かべたままウェルは無言になる。

 

彼は響たちの名前に強く反応し、本人も預かり知らないような“ルナアタックの英雄”という名前を知っていた。

 

英雄を求め、英雄の姿に憧れていると……英雄という単語、名誉に異様なほどこだわっている点、律はそこが気になっていた。

 

「……やはり、君はとても頭がキレるようだね」

 

「……………」

 

「——ですが、見透かされているようでいささか不愉快ですね」

 

「——! 奏!!」

 

笑みを浮かべいたウェルは不快な表情に変わると同時に律は奏を押し倒し……それと同時にガラスを突き破りノイズが突撃してきた。

 

「ッ……サンキュー、律」

 

「どこに……!」

 

律は突撃して来たノイズを蹴り飛ばしながら辺りを見回してもウェルの姿はどこにもない。 その時、どこからか徐々にプロペラ音が聞こえてきた。

 

「ヘリの音!」

 

「奴らが乗っていたエアキャリアか!」

 

どうやら以前に確認されたエアキャリアで逃走を図るようだ。 律たちは急いで非常階段を駆け上がり、ビルの縁からホバリングするエアキャリアに《ソロモンの杖》を片手に飛び乗るウェルを発見する。

 

「待て!!」

 

「これでも私は忙しいのでね。 これにて失礼を……」

 

「——最後に、ひとつだけ」

 

「うん?」

 

エアキャリアの風に煽られながら律は前に出て、もう一つ気になっていた点を質問する。

 

「尖った耳をした金色の剣を待つ人物に心当たりは?」

 

「律?」

 

「……何を……いや、まさか……」

 

以前に現場に向かおうとする律とクリスの行手を阻んだフードの人物。 その素顔は最後まで確認出来なかったが、特徴な武器と耳をしていた。

 

その質問を聞きウェルは心当たりがあるようで顔に手をやり驚愕の表情を見せ……口元が吊り上がった。

 

「フッ、フフフフッ……なるほど、こちらとは完全に連絡を絶ったと思ったら、そちらと接触していましたか」

 

「心当たりが?」

 

「それを教える義理はありませんよ。 どのみち、君が戦いを続ける限りいずれ合い見えるでしょうし、ここで話しては楽しみが減ります」

 

するとエアキャリアが透明になって消え始め、ハッチが閉まり出す。

 

「くっ、待て!!」

 

「それでは皆さま、ご機嫌よう」

 

ハッチが閉まり、エアキャリアはビルから離れて行った。 追うこともできるがそれよりも前にやる事があった。

 

「逃したか……」

 

「一応、収穫はあった方か……」

 

微々たるものだが得るものはあった。 気持ちを切り替えて律はスカイタワーの方を向き、ノイズを睨みながらギアペンダントを取り出す。

 

「奏、俺は残り物を片付けに行く。 後の事は任せた」

 

「ああ、行ってこい」

 

「Feliear claiomhsolais tron」

 

律は走り出しながら聖詠を口にし、ビルから飛び降りると同時にシンフォギアを装着。 スカイタワーに向かって飛翔しようとした時、

 

「ッ!?」

 

スカイタワーの展望台が爆発した。

 

(爆発!? 避難誘導は終わってるのか……!)

 

ノイズの殲滅は後に到着するであろう翼かクリスに任せ、念のためと律は飛び交うノイズを斬り払いながらスカイタワーに突入する。

 

「……誰もいないか」

 

「——プハアッ!!」

 

誰もいないことを確認した時、背負っていた鞄が蠢き……セレナが苦しそうに飛び出て来た。

 

「ああ、いたのか」

 

「いたよずっと!! 何言ってるのか分からないし話ついて行けないからずっと黙ってたの! それよりも——ヒッ!?」

 

鞄から頭を出し、律を見ていたセレナは火事現場を見回すと……突然、怯えた表情になり再び鞄の中に引っ込んでしまった。

 

「セレナ? おい、セレナ?」

 

『……いや……いやぁ……』

 

律は鞄の中を覗き込むと、セレナは頭を抱えうずくまり怯えるように震えていた。

 

律は何も言わずに鞄を閉じ、胸に抱えながらポンポンと背に当たる部分を叩いて宥めようとし。 周囲の捜索に入る。

 

時折、外にいるノイズに手を出したながら捜索を続け、律は崩落した展望台に到着する。

 

(……誰もいないか。 避難誘導は迅速に行われたようだ——)

 

辺りを見回し、最後に外を確認すると……スカイタワーから落下している黒い影を発見する。

 

「あれは……」

 

気になりすぐさま追いかける律。 悟られぬようノイズをかわしながらスカイタワーに沿って垂直に地上に向かい、最後に影が消えた河川降り立つ。

 

「どこに消えた……?」

 

周辺の避難は終わっているので誰かに見られる心配はせず、シンフォギアを装着したまま捜索を続ける律。

 

すると、スカイタワー方面の地上から銃撃やらミサイルやらがノイズに向かって飛び交い、ノイズを殲滅していく。

 

(クリスの仕業か? 相変わらず派手だな)

 

あれがクリスのシンフォギアによるものと確認しながら河川を上っていく律。 だが何も見つからず、次第に気のせいだったのかと思い始めた時……河川の側に陽の光に反射する物体を見つけた。

 

「これは……」

 

拾い上げたのは傷ついた通信機。 しかも携帯やスマホではなく二課で使用されている壊れにくいハードタイプのキャッシュ機能とGPS付きの物だった。

 

「どうしてこれがここに……?」

 

その呟きに答える者はいなかった。 そして、すでに手遅れになっていることを、今の律には知る由もなかった。

 




ワンさんの名前は自己解釈で字名って事にします。
生まれた後、家業を継がないと言うことで捨犬になったのならまだしも、
生まれた時から捨犬はキツイです。じゃなきゃ可哀想過ぎます……
長男、総司
次男、慎次
三男、捨犬……なんで!?
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