戦姫絶唱シンフォギア ーNoisy Glowー   作:にこにこみ

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35話 英雄故事

 

同日、夜10時過ぎ——

 

響はシンフォギアを起動したが極短い間だったため身体に異常はなかった。 だが、心は別だった。 あの日、響と未来はスカイタワーにいた。 2人は避難誘導のため最後まで展望台に残り、響は崩落によりタワーから落下。 響はシンフォギアによって事なきを得たが、その直後……展望台が爆発した。

 

そのショックで現在、響は完全に落ち込んでしまっている。 当然、その後の知らせを受けた律や翼たちも。

 

後の事は二課に任せて装者たちは一時解散となり、律は足早く出て行ってしまった。

 

現在、二課本部の潜水艦は河川に停められている。 響は車で送られることになり。 奏、翼、クリスたち3人は揃って桟橋に降りる。

 

「ったく、律のやつはどこいった?」

 

「奏。 やはりそっとして置くのが良いのではないか? 立花同様、かなり動揺している」

 

「だからって放っては——」

 

——手折られ…………終わりの……

 

「ん?」

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、どこからか歌が……」

 

「この歌は……」

 

どこからともなく歌が聞こえて来た。 3人は歌がする方向に向かいだし、進むたび徐々に歌が大きくなっていきしばらくすると、

 

「あ……」

 

——あー何故(なにゆえ)に 我は膝を折り喉を焼いて叫ぶのか

 

近づくにつれて歌が鮮明に流れてくる。 河川の間にかけられた対岸に続く橋の真ん中……そこには手すりに両肘を当て、顔を伏せながら歌う律の姿があった。

 

——よるべなく彷徨(さまよ)う魂は 黄昏に溶けては朽ちてゆく

 

「……なんて……」

 

「……なんて悲しい歌……」

 

翼と奏は歌を聞き、共感するように悲しい気持ちになってしまう。 それほど律の歌には感情がこもっていた。

 

——誰か 誰か 凍える手を握りしめ 眠らせたもう

 

「この歌、律が落ち込んでいる時によく歌うだ」

 

「やっぱり、結構気にしていたんだな……」

 

この歌の歌詞を知り聞いたことのあるクリスは悲しそうに目を伏せる。 まるで悲しみを、そして怒りを吐き出すかの様に歌う姿を見たくない様に。

 

——慈悲もなき うつつのため生きわ 報われず 嘆きの歌となる どうか どうか 凍える身をかき抱き 眠らせたもお……

 

最後まで歌いきり、次第に声が薄れていくと……ゆっくりと静寂が訪れた。

 

「………………」

 

「またその歌、歌ってんのか?」

 

「……歌でしか感情が、想いが出せないからな。 でも、そろそろこの癖も卒業しないとな」

 

「ん? なんでだ? 悲しい歌だが、とてもいい歌じゃねえか」

 

「歌は歌うものだ。 決してストレスの吐口に使われるものじゃない……いい加減、俺も大人にならないと」

 

「……気持ちは分かる。 だがそうまで自分を追い詰める事はない。 これは律だけの責任ではないのだ」

 

「アタシもお前を連れて行った以上同罪だ。 自分ばかり背負い込むのは逆に子供っぽいぞ?」

 

「……分かったよ。 時々愚痴を聞くくらい付き合ってもらおうかな」

 

「そんくらい、いつでもいいっての」

 

それから奏は用があるからと別行動を取り。 律、翼、クリスの3人は、クリスが話があるからと行きつけのファミレス《イルズベイル》に集まっていた。

 

「ハグハグ」

 

「あーもうクリス。 綺麗とは言わないけどもっとゆっくり食べて」

 

注文したナポリタンにがっつくクリス。 その食べる様子は食器の使い方がおぼつかない子どものようで、口元は汚しソースはテーブルに飛び散っていた。

 

横に座っていた律は呆れながら、クリスの口元やテーブルを拭き。 自身もサンドイッチを口にする。

 

クリスの食器を使った食事はこのザマなので、学院では主に手づかみで食べられるおにぎりやパン類にしていた。 この様子では箸まで握れるようになるまでまだまだ時間はかかるだろう。

 

「はむ……むぐむぐむぐ……あんかはのめよ。おぼるぞ(なんか頼めよ。おごるぞ)

 

「飲み込んでから喋りなさい」

 

「……夜の9時以降は食事を控えている」

 

「そんなんだから、そんななんだよ」

 

「何が言いたい! 用が無いなら帰るぞ!」

 

クリスの遠慮のない物言いに翼は苛立ちを顕にする。 その苛立ちはクリスの発言によるものだけではないのは翼自身がよく分かっている。

 

「……怒っているのか?」

 

「愉快でいられる道理がない! 《F.I.S》のこと、立花のこと。 そして……仲間を守れない私の不甲斐なさを思えば……くっ」

 

「それを言うなら俺も同じだ。 敵ばかりを追いかけて、結局何も守れてないんだから……自分自身が嫌になるよ」

 

もしもあの時、ウェルばかりに気を取られずノイズが現れていた時点でスカイタワーに向かっていれば……この様な結果にはならなかっただろう。 そう思うと律は自分ばかりを責めてしまう。

 

「呼び出したのは、一度一緒に飯を食ってみたかっただけさ。 腹を割って色々話しあうのも悪くないと思ってな」

 

「え? クリスにそんな気遣いが?」

 

「んだよ悪いか? あたしらいつからこうなんだ?目的は同じハズなのに、てんでバラバラになっちまってる。 もっと連携を取り合って——」

 

「雪音」

 

「ぁ……?」

 

「——腹を割って話すなら、いい加減名前くらい呼んでもらいたいものだ!!」

 

「はァッ!? そ、それは……おめぇ……あっ! ちょ、ちょっと!」

 

「ありがとうございました」

 

クリスの意見も間違ってはいないが……それに対して返された全くの正論にクリスは狼狽し、ヘルメットを持って立ち上がると止める間も無く翼はファミレスを出て行ってしまった。

 

「考えは悪くないけど……流石に早急すぎたし時期も悪かったな。 まあ当の本人も苗字呼びだけど」

 

「かもな。 はぁ~……結局、話さずじまいか……でも、それで良かったのかもな……」

 

「………………」

 

呟きに含むところがあるのを感じだが、クリスのコーヒーを飲んだ後の「苦いなぁ」と呟きに耳にしながら律は嘆息した。

 

その後、2人は気まずい雰囲気のままマンションに帰宅。 帰宅後律はすぐに鞄からセレナを出した。

 

「大丈夫か、セレナ?」

 

「う、うん……もう大丈夫。 心配かけてごめんね」

 

「クゥ……」

 

事故現場で混乱状態になったセレナに、リューツも心配そうに駆け寄る。

 

「とりあえずゆっくり休むといい」

 

「うん。 ありがとう」

 

律は使ってない部屋をセレナに開け渡していた。 元々荷物も少なく物置部屋としても使ってなかったのですぐに使えるようにしていた。

 

セレナは文字通り身の丈に合わない広すぎる部屋で1人、思い馳せる様に窓の外の夜空を見上げる。

 

(姉さん……)

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

同日——

 

新しい報告があると深夜に弦十郎に呼び出された律たち装者。 まず始めに奏が通信機を響に手渡した。

 

「これは……?」

 

「それって俺が回収した……」

 

「ああ。 スカイタワーから少し離れた地点より回収された未来くんの通信機だ」

 

「……………」

 

解析の結果、どうやらこの通信機は未来に渡していたものだと判明する。 響は暗い表情を見せるが弦十郎は報告を続ける。

 

「発信記録を追跡した結果、破損されるまでの数分間、ほぼ一定の速度で移動していたことが判明した」

 

「ぇ……?」

 

「未来くんは死んじゃいない。何者かによってつれだされ、拉致されたと見るのが妥当なとこだが——」

 

「師匠……それってつまり……!」

 

未来が生きている……囚われの身であるが少なくとも生存が確認できただけでも響の生きる活力が戻る。

 

「こんなところで呆けてる場合じゃないってことだろうよ! さて!気分転換に身体でも動かすか!?」

 

「はいっ!」

 

「「いやなんでそうなる!?」」

 

響に元気になったのはいいが、律と奏は声を揃えてツッコんだ。

 

翌日——

 

日が昇り出した早朝から律たち4人の装者に加え、奏と弦十郎を交えながらランニングをしていた。 弦十郎はラジオの曲に合わせながら歌い出す。

 

「憑自我 硬漢子 挨出一身痴! 流汗血 盡赤心 追尋大意義!」

 

「何でおっさんが歌ってんだよ!?……ってか、そもそもコレ何の歌だ? 大丈夫か?」

 

「色々あんだろ? 色々」

 

「結局何があるのか分かんないんだけど?」

 

弦十郎と曲にツッコミながら嫌々走るクリス。 隣を走る晴れた表情を見せる響を見てため息を吐く。

 

「ったく……慣れたもんだな」

 

「かもな」

 

(そうだ……うつむいてちゃダメだ。 私が未来を助けるんだ……!)

 

「「昂歩顧分似醒獅!!」」

 

響は弦十郎と合わせて歌いながら速度を上げた。

 

そして、一昔前の地獄の修行が始まった。

 

時に両足を柱に括り付けて両手の茶碗に水を汲み体を起こして桶に水を入れる特訓を行い。

 

「頭に血が上りそうだな」

 

「終わりが見えねぇなー」

 

「ゼェゼェ……」

 

時に縄跳びを行い持久力を高め。

 

「これボクシングでもあるよな?」

 

「そう言えば、縄跳びは最初にどこから生まれたのだ?」

 

「よいしょ……よいしょ……」

 

時に両腕両足、頭に水が入った茶碗を乗せ体制を維持し続け。

 

「これは疲れるなー」

 

「だなー」

 

「あぁあああ溢れる——どわっ!?」

 

時にどこかの冷凍庫で凍った生肉で殴り込みをし。

 

「せいっ! せいっ! 人を殴るのに近いからコレでやってるのか、なっ!!」

 

「ふっ! ふっ! 確かバナナ木でも代用できるって話を聞いた事がある、なっ!!」

 

「ううぅ〜、寒ぃ〜〜……やぁ〜、たぁ〜」

 

時に胡桃の殻を素手で割ったり。

 

「これ10円玉でやってなかったっけ?(バキッ!)」

 

「それは別の映画ではなかったか?(バキッ!)」

 

「ウギギギギ……!」

 

時に雪が積もった道なき山道を走り込み。

 

「ここどこだよ!?」

 

「どこだろうな?」

 

「ヒィ……ヒィ……!」

 

体力をつける為に生卵をジョッキでそのまま飲み。

 

「流石に、生卵は、無理……!」

 

「旦那〜、プロテインでもいいか〜?」

 

「……ぅぉぇ……」

 

そんなジ◯ッキーオマージュの地獄の様な特訓を続けた。

 

「これって酔拳のやつだっけ?」

 

「メダルで不死身になるやつだろ」

 

「ラッシュなアワーではなかったか?」

 

「子どもを弟子にするのじゃなかったですか?」

 

「今更気にするとかそこかよ!?」

 

「——ふむ。 では、続いてはこれで行こう」

 

映画談義をする中、弦十郎がそう言って取り出したのは……“史上最強の弟子ケン◯チ”だった。

 

「嘘だろ!?」

 

「律くんから借りて読んでみたが実に興味深い。 これならより高みを目指せるだろう」

 

「いや漫画だから現実より修行内容がよりバイオレンスなってるんですけどそれ!?」

 

「ちょっと律さん! なんて物を薦めているんですか!? 流石にコレは死んじゃいます!!」

 

映画だから線引きはある。 だが漫画となればそんなものはなく、主人公に容赦がない修行が多い。

 

それを現実に行うとなるとかなりキツイものになるだろう。

 

「では、始めよう」

 

「いや、ちょっとまっ——」

 

——じぇろにもーーーッ!!! ×5(意味不明)

 

その後、名状し難き修行が行われた……

 

それから一同はどこかの山の頂上に辿り着き、頂上に建てられてあったどこかの外国の神殿風の建物を背にしながら朝焼けを眺めていた。

 

「そのうちドラゴン◯ールとかもやり始めたりして……」

 

「……修行内容はいいですけど、甲羅を背負い続けるのはなぁ……」

 

「そういえばあの甲羅って、あの喋る亀の甲羅か? 名前忘れたけど」

 

「ノコ◯コではなかったか?」

 

「それマ◯オだから」

 

「ハァハァ……たっく……」

 

またもやつまらない講談を繰り広げる律と響にクリスは肩で息をしながら呆れる。

 

(どいつもこいつもご陽気で……あたしみたいな奴の場所にしては……ここは暖かすぎるんだよ……)

 

まるでこの中に自分の居場所がない、いるべき場所ではないかの様にクリスは自虐的に笑いながら地べたに座るのだった。

 

「っと、そうだ! 頑張ったクリスくんにご褒美だ! 家に帰ったら開けてみるといい!」

 

「おー……さんきゅー……」

 

疲れ切って生返事をするクリスは何も気にせず紙袋を受け取った。

 

帰宅後……お隣の部屋から興奮気味のクリスの声が聞こえて来た。

 

「なんだろう?」

 

「ガウ?」

 

「弦十郎さんの策にハマったな」

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

数日後——

 

律たちを乗せた二課の潜水艦は海底に沿いながら移動していた。 目的は米軍所属の艦艇の追跡……《F.I.S》の次の目標が分からない以上、接触があった米軍を追跡していた。

 

そして、前触れもなくアラート音が鳴り響く。

 

「ノイズのパターンを検知!」

 

「米国所属艦艇より応援の要請!」

 

どうやら目論見通りに米軍の艦艇がノイズによる襲撃を受けた様で、メインモニターに艦艇が映し出された。

 

「藪蛇突っついた結果だな。 しかも諦め悪く逃げてねえとは」

 

「スカイタワーでの事件より前から仲悪いからな。 目をつけられたんだろう」

 

「そう言うな。 この海域から遠くない! 急行するぞ!」

 

「応援の準備にあたります!」

 

「あ……翼さん! わ、わたしも——」

 

「死ぬ気かお前!」

 

「ぅぇ……」

 

後を追おうとする響をクリスがネクタイを乱暴に掴んで引き止める。

 

「ここにいろって! な。 お前はここからいなくなっちゃいけないんだからよ……」

 

「……ん……」

 

「頼んだからな……」

 

響のネクタイを直すとクリスも後に続いた。

 

「未来の事は任せてくれ」

 

「……お願いします」

 

律も後に続いて出ていってしまい、響は待つ事しかできなかった。

 

「そう気負うな。 これもあたしたちの務めだ」

 

「……はい」

 

奏に慰められ、こうなってようやく戦えなくなった装者の気持ちがわかった響だった。

 

艦艇の甲板では既に交戦という名の虐殺が繰り広げられていた。

 

「……っ!」

 

米軍兵の銃火器は当然ノイズに意味をなさず、次々と炭素の山が増え続けている。 その光景を見下ろしていた操縦席に座るマリアは下唇を強く噛みしめ、口元から血を流す。

 

そんな辛そうな表情をしている調はとても見ていられなかった。

 

「こんなことがマリアの望んでいることなの? 弱い人達を守るために本当に必要なことなの?」

 

「くっ……!」

 

反論できず、傍観する事しかできないマリア。 何も言い返せないマリアを見て調は心を決め、踵を返してドアに向かう。

 

「———!」

 

「調?」

 

不安そうに見ていた切歌は、調がドアを開けるのを見て慌てた声を上げる。

 

「何やってるデスか!?」

 

「マリアが苦しんでいるのなら……私が助けてあげるんだ」

 

「調!

 

止める間も無く調は空に躍り出る。 眼下に広がる海原を見下ろしながら聖詠を口にする。

 

「Various shul shagana tron」

 

調は桃色と黒を基調とした、頭部のギアが特徴的なシンフォギア《シュルシャガナ》を装着した。

 

「調ッ!」

 

引き止めようと飛び降りようとした時……切歌の肩に手が置かれる。

 

「連れ戻したいのなら、いい方法がありますよ」

 

ウェルは不穏な笑みを浮かべながらそう告げた。

 

重力に引かれて落下する調は歌いながら艦艇に向かって落ちていき、頭部のギアを展開し無数の丸鋸を射出する。

 

【α式 百輪廻】

 

射出された無数の丸鋸はノイズを切り刻み、空いたスペースに調は降り立つとすぐさま靴底から歯車が迫り出して回転、艦艇を駆け抜けノイズの群れの中に飛び込みながら頭部のギアから巨大な丸鋸を取り出しその場で回転、徐々に丸鋸を大きくしながら次々とノイズ切り裂いて行く。

 

「——調!」

 

その時、水柱を上げながらシンフォギアを纏った律が携帯型の小型酸素ボンベを咥えながら海中から飛び出て来た。 律の《クラウソラス》は透過移動が可能なので一足先に現場に急行していた。

 

「……お兄ちゃん……ッ!?」

 

気を取られてしまい、背後から襲い掛かるノイズに反応が遅れ……上空から降りて来た鎌が襲って来たノイズを切り裂いた。

 

そして鎌の持ち主である切歌が甲板に降り立つ。

 

「キリちゃん! ありが——」

 

——カシュッ!

 

「なっ!?」

 

切歌も同じ気持ちなのだろう。 そう思いながら調は笑顔で近寄ると……切歌は無言で調の首筋に圧力式の無針注射を打ち込んだ。

 

「あっ……何を……?」

 

何をしたのか、何故こんな事をしたのか……何も分からずふらつき、足元がおぼつかないながらも後ろに下がる。

 

「ぁっ……」

 

そしてヘタレこみ、調の意志に関係なく勝手にシンフォギアが解除されてしまった。

 

「……ギアが……馴染まない……?」

 

「この薬品……まさか、あの時の!」

 

以前《浜崎病院》で使われた適合係数を下げる効果がある薬《アンチLiNKER》……それが原液で調に使われた様で。 結果、調のシンフォギアが起動状態を維持できずに解除されてしまったようだ。

 

問題は、何故仲間である切歌が調に使用したかにある。

 

「あたし、あたしじゃなくなってしまうかもしれないデス……そうなる前に何か残さなきゃ……調に忘れられちゃうデス……」

 

「キリちゃん……?」

 

「例えあたしが消えたとしても、世界が残れば……あたしと調の想い出は残るデス。 だからあたしは、ドクターのやり方で世界を守るデス。 もう……そうするしか……」

 

「おい切歌、一体何を——」

 

調と切歌の話が噛み合ってない、何を考えているのか聞こうとした時……水柱を上げながら装者搭載型ミサイルで発射された翼とクリスが甲板に降り立った。

 

「はッ!」

 

「くっ!」

 

「あ……」

 

翼は切歌に向かって斬りかかり、律は調を抱えると後退して距離を取った。 この場で1番命の危険に晒されているのはシンフォギアを使えなくなってしまった調であり、律は調を守るために剣を握った。

 

「邪魔するなデス!!」

 

「キリちゃん……!

 

翼と切歌が交戦を始め。 クリスがすごい剣幕で律に……調に迫ってきた。

 

「おい!ウェルの野郎はここにはいないのか?!」

 

「え……」

 

「ソロモンの杖を使うあいつはどこにいやがる!!」

 

「おいクリス、落ち着け。 お前も何を……」

 

クロスボウを突きつけながら脅迫気味に問いただそうとするクリスに、律は調を庇いながら落ち着かせようとする。

 

敵味方関係なく何がおかしい。 この場で様々な感情が錯綜して滅茶苦茶な状況になっている。

 

そうこうしている内に翼の刀が切歌の喉元に突きつけられ決着がついた。 そもそも鎌は元々草刈り用で対人に使われるものではなく、加えて一対一なら経験が多い翼の方に軍配が上がったのだろう。

 

そして、この状況を見ていたウェルが次の行動に入る。

 

「切歌!」

 

「ならば傾いた天秤を元にもどすとしましょうよ」

 

「………!」

 

「できるだけドラマティックに、できるだけロマンティックに……」

 

「まさか……あれを!?」

 

ウェルは操作盤を操作し、何かを起動させた。 そしてハッチが開き……エアキャリアから紫色に光る物体が投下された。

 

(なんだ?)

 

いち早く気付いた律は落ちてくる物体がなんなのか目を細めて確認しようとし、

 

「——Rei shen shou jing rei zizzl」

 

(え……)

 

その物体から、上空から突如として混沌めいた戦場に聞き覚えのある声。 しかし決して口にする事はない、いやしてはいけない歌詞を口にして聞こえて来た。

 

「まさか……!」

 

その物体は艦艇の前方にある甲板を砕き煙を巻き上げながらながら降り立つ。

 

艦艇にいる誰もが降りてきた物体に視線をやり、次第に煙が晴れると……そこには紫を基調とした装甲、上下に分かれているバイザー。 初めて目にするシンフォギアであったが、そこにいたのは間違いなく、

 

「未来!!」

 

律と響が探し求めていた“小日向 未来”だった。

 

 

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