戦姫絶唱シンフォギア ーNoisy Glowー   作:にこにこみ

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XVでのパヴァリア光明結社の残党の3人組の第一印象……怪人(モンストルム)


第4話 始動

「えー、つまり電子を手放す、もしくは受け取ったりし原子が電気を帯びた状態になり。 こういった状態をイオンと——」

 

音楽を重点的に学ぶアイオニア音楽学校とはいえ、それでも一般的な高等学校レベルの授業は普通に行われる。

 

しかし、ここには音楽を学ぶために来ている……故に生徒たちのほとんどは他の勉強には嫌な顔をしてしまう。

 

「………………(カリカリ)」

 

だが律はその例外で、先生の話を聞きながら真面目にノートに授業内容を書き写していた。

 

それから数回の授業を終え、昼休みに入り律は食堂で昼食を食べていた。

 

「律くん。 ここいい?」

 

がやがやとちょっとした喧騒がする食堂の中、律がハンバーグ定食を食べていたら、黒髪を三つ編みにしてポニーテールのようにまとめている女子が話かけてきた。

 

彼女はアルフ・ライフォジオ。 同じクラスメイトでヴァオリニストの卵。 彼女はとても優秀で、律やあともう1人の他に彼女の演奏に合わせられる奏者がいないため、音楽の授業ではよく一緒に組んでいるためそれなりに仲は良い。

 

……ちなみに物腰が柔らかい彼女、男子からはモテる。

 

そのため一部男子生徒から怨念が込められた曲を送られることがたまにある。 当のアルフは彼氏を作る気はないらしい。

 

「よう律。 ちょいと話があるから事情聴取させろ」

 

反対から律のトレーを押しつけるようにトレーを置いたバンダナ男は、打鐘(うちがね) (にしき)打楽器(パーカッション)奏者で、打楽器なら何でもこなせる……が、誰かに教えるのは苦手ないわゆる天才肌。

 

なお、打鐘(こっち)は女子からはあまりモテない。 元はいいし悪いヤツでもないが、少々ガサツであるのが1番の理由。

 

「なんだよ事情聴取って」

 

「昨日またノイズがこの辺りで出たらしいじゃねえか。 しかもそこ、お前のランニングコーススレスレときた。 時間帯も一致している。 何か見なかったか?」

 

「あら、またなの? この地域は他よりノイズが多いけど、律くんの行く先々に出会うわね。 少し関係を改めた方がいいかしら」

 

「その方が賢明だろうな。 人としては」

 

「冗談よ。 ノイズなんかに人間関係を操作されてたまるものですか」

 

謝罪をするようにアルフは軽く……にしては少し長めに頭を下げる。 自分でも冗談が過ぎたと反省したようだ。

 

「あ、律。 今日の午前中のノート見せてくれ」

 

「いい加減、自分でとれっての」

 

「音楽に向ける情熱を少しは勉強に向けたらどう?」

 

「無理だ!」

 

「豪語するな」

 

この音楽学校の例外に漏れない錦は、毎度こうして律に迫っている。 アルフはクスクスと笑う。

 

「それにしても律くん。 学校に入ってから指揮者も始めたけど……調律とピアノ以外も勉強してるよねえ」

 

少し呆れ気味にそう言い、錦が思い返しながら指を折り数えだす。

 

「鍵盤楽器に加えて管楽器、弦楽器、打楽器……ギター類にも手を伸ばしているよな」

 

「後パイプオルガンね。 そんなに勉強して大変じゃないの? 指揮者とピアノもあるでしょう?」

 

「折り合いをつけてやっているよ。 慣れればなんてことは無い」

 

「それだけの量をやってなんて事ないって……ヤベェな」

 

「うん、ヤベェーイ」

 

「そうかあ?」

 

側から見ても律の勉強量は異常に見えるらしい。

 

「そういえば、また話は戻るんだが……最近、ホントにノイズの出現が多い気がしないか?」

 

「ああうん、そうね。 でもその割にあまり被害が出てないのが不思議なくらい」

 

「避難誘導が上手くいってるんだろう。 それに、ノイズの避難警告に関して、ふざける人もいないだろう」

 

「そりゃそうだけど……それでも妙じゃねえか? ここ最近のノイズもそうだが、やっぱり被害が少な過ぎる気がすんだよ。 まるでノイズが倒されているような……」

 

「ノイズと対抗できる武器が作られたっていうの? そんな話聞いたこともないわ」

 

「………………」

 

妙に的を射ている話の内容に、律は食事を進めながら無意識に視線を逸らす。

 

「はぁ……結局、ノイズって何なんだよ……」

 

「……悲しい存在」

 

「え……」

 

「ノイズを見てると……悲しく感じるんだ。 何でかは、分からないけどな」

 

律は世界でもノイズと接触する回数が多い人間。 2人には理解し難いが、錦の問いに対する答えはそれ以外には考えられなかった。 言っている意味が理解できないアルフと錦。 律は「何でもない」と言い、いつの間にか食べ終わったトレーを持ち席を立った。

 

「錦。 あなた少しデリカシーが無いわよ」

 

「……どういうことだよ?」

 

「律と、あともう1人……2年前、どんな目にあったか知らないわけじゃないでしょう?」

 

「…………!」

 

クラスメイトで友人でなくとも、ほとんどの人間が知っている2年前の事件。 その後の風評もニュースに大々的に報道されている。 そしてあの事件を経験したからこそ、律はあの答えを出したのだろう。

 

……本当は事件ではなく、それ以降のノイズの中に入っていた感想であるが。

 

「悪りぃ……あとで謝っておく」

 

「そうしなさい。 ——さて、私ももう行くわ」

 

「はっ? ちょ、俺まだ食べ終わってねぇ!!」

 

話をし過ぎて全く箸が進んでいなかった錦を置いてアルフは行ってしまう。 錦も残りをかきこみ、午後の授業開始のチャイムとともにようやく席を立った。

 

午後の授業は音楽関係の授業が行われる。 基本選択授業で自分が受けたい授業を受け、日々自分の腕を磨いている。

 

各々がやりたい勉強を進め……放課後になり、HR(ホームルーム)を終え律は帰り支度をしていた。 するとスマホに1通のメールが届いた。 内容を見ると、リディアン音楽学院からだった。

 

(あ、そういえば今日、リディアンで調律の依頼があったなぁ……)

 

両親が有名ということもあるが、音楽界の上層階級には律個人の実力が認められており、時折こうして調律の依頼が届いてくる。

 

最も、依頼が届くようになったのはごく最近。 2年前まで疎らに来ていたが、あの事件以降は全く来なくなった。

 

「2人はどうするの?」

 

「俺は用事があるから。 先に帰るわ」

 

「また調律か? 今日はどこに行くんだ?」

 

「私立リディアン音楽院」

 

サラリと言ったその名前に、2人は驚きを露わにする。 2人は律が調律の仕事をしているのは知っていたが、問題はその場所だった。

 

「ちょ、あそこ女子校だよね!?」

 

「律テメェ! 俺に内緒で女の花園に行く気だったんだな!?」

 

「内緒も何も関係ないし、お前の求めるお嬢様はいないと思うぞ多分。 それに行くのは仕事のためだ。 あと揺らすな、このドアフォーウ」

 

「おうっ!?」

 

乱暴に肩を組んで揺さぶってくる錦に、律は思いっきりデコピンを喰らわせる。 これが無ければモテるというのに……音楽以外は学習しない人間である。

 

「全く……そんなに打楽器が好きならゲームセンターにでも行ってコダイコの鉄人でも極めてくればいいでしょう」

 

「もう全国ランキング1位だ!」

 

「でもこの前、俺に負けただろ」

 

「うっせえ! つっうか何だよあのバチさばき!? お前はいつも指揮棒を二刀流であんなスピードで振ってんのかぁっ!?」

 

ややキレ気味になって錦は持っていたドラムスティックを律の頰にグリグリと突き付ける。

 

律は鬱陶しそうにするも嫌そうには顔をしない。 前の授業で机の上に置いていた指揮棒をケースに入れようとすると、

 

……パキッ……

 

「あ」

 

手に持った瞬間、指揮棒が音を立てその先端がポッキリと折れてしまった。

 

(昨日、メンテナンスしたばかりなのに……)

 

無言で先端を拾いながら見つめる。 昔から度重なる不幸不運を経験してきた律でも、まだ不吉な予感を感じ始める。

 

「……じゃあ、俺行くわ」

 

「ちょ……っ!?」

 

嫌な予感を振り払い、荷物を持ち……窓から飛び降りた。 律のクラスは2階にあり、さらに中間の高さに丁度いい木の枝を足場にして地上に降り立つ。

 

背後から叫ぶ声を背にし、玄関口で外口に履き替えてから正門に向かって駆け足で向かう。

 

「ふぅ……」

 

「律」

 

正門前で一息ついていると背後から呼ばれる声がかかる。 振り返ると、そこにはこの学校の弦楽器の担当、そして律のクラスの担任の先生が歩いてきていた。

 

「先生」

 

「指揮者を始めて早2年、音楽家の家系とはいえよくここまで成長したものだ」

 

「まだまだですよ。 この前の“大草原の歌”での指揮にまだ甘さがありました。 写譜も吹奏楽とフルオーケストラ中心で月200曲2000枚まで……そろそろロックやジャズ、クラシックにも手を伸ばさないと。 そしてこの基礎から自分自身の音楽を見つけないといけません。 まだまだ努力しないと」

 

「いや、毎月それだけの写譜や練習量は正直、無理し過ぎじゃないか……? というか写譜も指揮者ならフルスコアで充分なのにコンデンス・スコアとパート譜まで書いて……」

 

「フルスコアだけでは見えない部分もあります。 それに指揮者は演奏者あってこそ。 机に齧ってばかりもいられません。 指揮者は指揮棒とハンドジェスチャーだけで指揮しなければいけません。 自分の思いを伝えるために正確かつ迅速な指揮が必要……」

 

そこで言葉を切り、先生に背を向けながら一度息を吸い、

 

「俺、雑音(ノイズ)を消したいんです」

 

そう口にする。 これには担任も意味がわからず、少し問い正そうと問い詰めようとする。

 

「……すみません。 今日は調律の依頼でリディアンに行くので、これで失礼します」

 

その前に律は時間がないという風に半ば強引に話を終わらせ駆け足で正門に、学校を後にした。

 

「やれやれ。 才能もあり優秀で努力家、誇ることも慢心することも驕ることも無いが、どこか余裕がない……一体何が彼をあそこまで駆り立てるというんだ……?」

 

第三者から見ても、危うく見えるのだろう。 向上心があるが、どこに向かっているのかが……それが律からは見えてこない。 それが周りからとても心配されていた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「ここが私立リディアン音楽院、か……(そういえば響と未来がここに入ったって言ってたっけ)」

 

2年前、響と未来と別れる事になってしまったが、連絡先は交換していたので頻繁に連絡は取っていた。 何でも響が風鳴 翼に憧れてリディアンを志望し、未来もピアニスト志望で今年、ここに入学している。

 

未来はともかく、勉強もあまりできず憧れという理由で入学できた響を関心しながら……律は私立リディアン音楽院に到着する。

 

「おおー、随分と未来チックなデザインだなぁ。 ウチ(アイオニア)とは大違い」

 

リディアンはどこか近代的な雰囲気を感じさせる学校で、初見で音楽学校だと分かる人は少なくだろう。 律は正門前の警備員に目的を伝え、入場許可証をもらい敷地内に入る。

 

「ふーん、寮生活が多いのか」

 

下校する生徒の視線を受けながら、正門前の通りを歩いて帰宅する生徒が少ない事から律は寮生活が多いと考える。

 

「——あーもう、邪魔!」

 

すると、正面通りで清掃していた女の子が苛立った声で箒で道を掃いていた。 しかし掃いているのは道ではなく、ここの通りに点々としている鳩たちだ。

 

「ほらあっち行って! 掃除の邪魔!! ……ああぁぁーーっもう!! 何で今日に限ってこんなにしつこいの!!」

 

普通なら手を振り払うだけで飛び去って行く鳩だが、なぜかあまり飛び立とうとせず、女の子の苛立ちはさらに募っていく。

 

(しょうがない……)

 

——パチンッ!!

 

見てられなかった律は大きく指を鳴らし、掃除をしていた少女と鳩たちの視線を集める。 少女はなぜこのリディアンに男子が……と疑問に思うが、律は右手の人差し指を立て内側に向けて振る。 次に左手で制するようにゆっくりと出す。

 

指揮をする様に指を振り続けると、鳩たちは律に向かって歩き出し、次第に並んで歩いてくる。

 

「嘘……鳩たちを()()しているの……!?」

 

少女が驚きを隠せない中、最後に両手を勢いよく上げ……鳩たちは一斉に飛び上がった。

 

「随分と気の強い鳩たちだったな」

 

「あのっ! ありがとうございます! 鳩をどうにかしてくれて」

 

鳩と悪戦苦闘していたツインテールの少女が、鳩をどうにかしてくれた律にお礼を言って頭を下げる。

 

「気にしなくていいよ。 俺が勝手にやった事だし」

 

「……でもあれって……鳩を指揮していたんですか?」

 

「ああ。 昔、猫の溜まり場でやっててね。 上手くいってよかったよ」

 

律は子どもの頃、指揮者の物真似で数匹の猫を手で誘導して餌を与えていた事がある。 その関係で指揮者を目指そうと思ったと過言ではない。

 

「失礼ですが、ここには何を?」

 

「ああ。 俺は調律師でね。 この学校のピアノの調律しに来たんだ」

 

「え!? えっと、まだ学生ですよね……それで調律を任されるなんて! 凄い……そんなに優秀な人、何だかんだアニメみたい!」

 

「いやアニメって……」

 

妙な例えな上に分かりづらかった。

 

「この流れに乗るなら、私が職員室に案内しますよ?」

 

「いいよ、自分で探すから。 それより掃除を早くやったら? 何かの罰なんだろう? こんな大きな通りを掃除させられてるってことは」

 

「ギクッ!?」

 

明らかに図星という顔をするツインテール少女。 律は彼女が固まっている内に「頑張れよ〜」っと言い残し、本校舎の方に歩きながらヒラヒラと手を振るう。

 

本校舎前に来ると学校から寮に帰る生徒たちが続々と出てきていた。 先程よりさらに強い視線を感じながらも再び本校舎に向かおうとすると、

 

「ニャ〜」

 

足元から猫の声が聞こえてきた。 下を見るとそのには白猫がおり、頰を律の足に擦り付けていた。 律は猫の頭を撫で、人に懐いていると分かると両脇を抱えて胸の前まで持ち上げる。

 

「今度は猫がやってきたよ。 それよりお前、どこから入って来たんだ?」

 

「ニャー」

 

「——ま、待って〜……」

 

すると寮から恐らくは猫を探す人物が走ってきた。 その人物は黒髪を大きな白いリボンで止めている少女、息を切らせながら寮生活の前まで来た。

 

「あ、ありがとうございます……! その子、いきなり走り出して……」

 

「なんだ、未来(みく)じゃないか」

 

「え……」

 

自身の名前を呼ばれ、呼吸を整えながら姿勢を戻す。 そこには、2年前に別れてしまったうちの1人、成長した小日向 未来がいた。

 

未来は律の顔を見て、一瞬思考が停止したように動きが止まる。 だが徐々に動き出して驚愕の表情へと変わっていく。

 

「り、律さん!?」

 

「シンチャオー。 元気してたか、未来?」

 

「……なんでベトナム語?」

 

2年越しの再会だと言うのについ昨日会ったような軽い口調に、未来はクスクスと笑いだす。

 

「相変わらずですね、律さんは」

 

「お互いに、な」

 

数秒後……2人は吹き出し、心の底から笑った。 実際に顔を見せるのは2年ぶりだが、連絡自体は交換していたので、そこまで感動的な再会とはならなかった。

 

どうやらこの猫は響が連れて来たらしく、今は飼い主を探している最中らしい。

 

とりあえず、猫は一旦預かっている寮の寮母に預け。 律は未来の案内で中央棟にある職員室に向かう途中、ここにきた理由を説明した。

 

「なるほど、それでリディアンに……それでどこのピアノの調律を? 正直、リディアンにはピアノがいっぱいあって探すのは大変ですよ」

 

「それはアイオニアも同じだから。 それで確か1のAクラスだったな。 そのクラスにある2つのピアノの調律をして欲しいそうだ」

 

「あ、それ私と響のクラスです。 良かったら案内しましょうか?」

 

「なら、お言葉に甘えて」

 

先は職員室に向かい挨拶をし、未来との軽く関係を交えながら事情を説明。 担任の女性に未来の案内と調律と……2つの許可を得て、未来に、クラスまで案内された。

 

「へぇ、これが……中々立派なグランドピアノじゃないか」

 

全長が長い白いグランドピアノと、茶色いアップライトピアノの2つが教室内に置かれていた。 そのうちのグラントピアノの調律を依頼されてとり、律は屋根を開き、中を見る。

 

「どうですか?」

 

「んー…………ふむ、これかな……こことここが消耗してるな。 」

 

中の状態を確認、メモを取りながら作業手順を決め。 そして調律を始めながら未来に話しかける。

 

「そういえば響はどうした?」

 

「響は翼さんの初回限定生産版の初回限定特典のCDを買いに学外に。 当人も今日発売を忘れてたみたいで慌てて」

 

「あはははっ! 響は相変わらずだなあ」

 

響も相変わらずの慌てん坊に律は笑うしかない。 律と響、2人は変わらなかったが……だがその意味は全くの別だと本人が一番自覚している。

 

それから見学して時折手伝ってくれる未来とお喋りをしながら順調に調律を進めていき、整調、整音も進め……日が暮れる頃にようやく終える事が出来た。

 

「ふぅ、これで良し。 未来、ちょっと触ってみて」

 

「はい」

 

感想を聞くため、未来に音を出してもらうことにし。 未来は鍵盤の端から端、高い音から低い音までを滑るように鳴らした。

 

「……うん。 とても良いと思います!」

 

「そっか。 ならよかった」

 

もちろん一度教員にも確認してもらうことになるが、未来に聞いてもらう方が律には嬉しかった。

 

窓の外を見ると既に夜、時間を見ると7時を回っていた。

 

「思ったより時間がかかったな」

 

「調律ですし、仕方ないと思います」

 

とりあえず調律の完了を伝えに、もう一度職員室がある中央棟に向かおうと調律道具を片付けていると、

 

——キンッ!

 

「!!」

 

その時、律の頭に甲高く鋭い音がよぎる。 咄嗟に律は音を感じた方向を振り向く。

 

「…………? 律さん?」

 

「……いや、何でもない。 行こうか」

 

首を横に振り、荷物を持った律はクラスを出て、その後を未来が追いかける。

 

職員室に行き担任の教師の確認を終えた後、一度寮に向かい。 未来が正門前まで見送りしてくれた。

 

「ニャー♪」

 

「ありがとうございます、律さん。 この子を引き取ってもらって」

 

「ウチのアパートは動物オーケーだからな。 それに広いと逆に虚しいし、1人じゃ寂しかったからな」

 

一度学生寮に行ったのは子猫を引き取りに人になるため。 この子猫は律が引き取る事になり、ケースの中に入れ連れて帰るようだ。

 

「名前は何てつけますか? その子はまだ名前がないんです」

 

「うーん……そういえばオス? メス?」

 

「オスです」

 

「なら、リュートで。 メスだったらリネットにしてた」

 

「弦楽器にクラ()()()()……律さんらしいですね」

 

そう言ってクスクスと笑う未来。 彼女に「じゃあな」と告げて律はリディアンを後にし。 モノレールまでの道のりを歩きながら、

 

——闇に惑う魂よ さあ、逝きなさい

 

不意に歌い出した。 その歌は夜によく似合う歌で、どこか切なく悲しいような歌である。

 

「——いい歌だな」

 

「!?」

 

すると、突然、律の歌を賞賛する声がかかって来た。 声の主は進行方向にあった電柱に隠れており……そこからカジュアルな服装の長い赤髪の女性が出てきた。

 

「……まだ一節しか歌ってないんですけど……」

 

「一節だけで分かるだろ。 いい歌だ。 だが……悲しい歌だ」

 

律の歌をそのように評価し、彼女から自己紹介を始めた。

 

「アタシは天羽 奏。 自分で言っちゃあアレだが、これ以上の自己紹介は省いてもいいか?」

 

「……ああ。 一応、知っているからな」

 

「一応とは言ってくれるねえ」

 

苦笑しながら律の元に向かってくる奏。 目の前まで来ると、その横を横切ろうとしたところで足を止め、

 

「——まどろっこしいのは無しだ。 単刀直入に問おう。 お前は、2年前の事件で現れた《黒いシンフォギア》の装者か?」

 

そう、質問を投げかけてきた。

 

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