戦姫絶唱シンフォギア ーNoisy Glowー   作:にこにこみ

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ようやく忙しさから解放されたと言うか、気が乗るようになったと言うか……


幕間 事件後

 

「——つまり、セレナくん自身もよく分からないと?」

 

「はい……」

 

「むぅ……」

 

事態の終息後、すぐに連行された律はセレナと共に弦十郎から事情聴取を受けていた。 律はセレナと出会ってから今まで集めてきた情報とそこからの個人の考察を事細かに話した。

 

話せる事は全て話し、弦十郎は渋い顔をしながら腕を組んで静かに唸る。

 

「全く、少しでも相談してくれれば良かったものを」

 

「すみません、自分の知らない過去にも関わる事だったので……」

 

「司令、その点は私にも責任があります。 相談内容は伏せてあったとはいえ、協力したのは他ならぬ私です。 本来であれば司令に報告すべきでした」

 

「誰も責めやしないさ。 結局、何も分からずじまいなんだからな」

 

分かった事はおもに個人的なものばかりで微美たるもの、肝心な部分はさっぱり分からなかった。

 

「それで、これからセレナはどうなるんですか?」

 

「記憶がない以上、マリアくん達以上の情報は得られないだろう。 セレナくんがどうして人形の姿になったのかも皆目見当がつかない……だが律くんの部屋にいきなり現れた事から、確実に何者かの思惑があるのだろうが、今はこれで手打ちだな」

 

「今後は、今まで通り律くんと一緒に行動して結構です。 また何か思い出したら連絡を」

 

「そうですか、良かった……」

 

「——終わったのならここから出してよーー!」

 

事情聴取中も鳥籠の檻の中に入れられてていたセレナ。 終わった直後暴れ出し鳥籠をガタガタと揺らす。

 

揺らしすぎて横に倒れ「フギャ!」と悲鳴を漏らす。 左右に転がるセレナを見てクスクス笑いながら緒川はリモコンを操作し、鳥籠の底部が開いてようやく出る事ができた。

 

「ふはー、シャバの空気はうまいなー」

 

「鳥籠の中だったんだから変わんないだろ」

 

「気分の問題だよ! 空気はともかくこの中にいたら絶対に気分は良くないよ!」

 

確かにそうかもしれない。 少なくとも檻の中に入れられては気分は優れないだろう。

 

ともかく事情聴取から解放され、律はセレナを抱えて部屋から出て医務室に向かった。 先の戦闘は苛烈を極めたため、その後のフィジカルチェックを行う予定だ。

 

特に響は融合症例から通常の装者と同じ適合者となったり、律はギアがころころ変わったりしたので必ず受けるように言われていた。

 

「あ、律さん!」

 

医務室の前まで来ると、ちょうどチェックを終えた響たちが医務室から出てきた。

 

「大丈夫でしたか?」

 

「事情聴取されただけだ、何にもないよ」

 

「まあ、そんなヘンテコを隠し持ってりゃあ当然か」

 

「ヘンテコじゃないですよーだ」

 

セレナはツンツンと頰を突っつくクリスにそっぽを向く。

 

「とりあえず自己紹介を。 彼女はセレナ……カデンツァヴナ・イヴでいいのか?」

 

「いいんじゃないの?」

 

「なんで本人が分かってないんだよ」

 

「記憶喪失なもので」

 

なんだろうか、翼とクリスに対して妙な棘を感じる。 律の印象としてセレナは優しく誰にでもさん付けで話し、ちょっとアグレッシブな部分もあるが分け隔てなく相手に接するイメージだったのだが。

 

「コホン。 改めましてセレナです。 お2人とは初めましてですね、どうぞよろしくお願いします」

 

「これはご丁寧に。 風鳴 翼だ」

 

「雪音 クリス。 まあよろしく頼む」

 

色々あったがお互いに自己紹介をし、その後響が律の前に寄り……ガシッと肩を掴んだ。 その顔を笑顔だが目が笑ってない。

 

「それはそうと、律さん……」

 

「な、なんだ?」

 

「私、初めてセレナちゃんと会った時……空から飛んできたんですよ」

 

「何?」

 

「それでですねぇ……頭ゴッチーンしちゃいましてねぇ」

 

「痛かったんだよねぇ……とっても痛かったんだよねぇ……」

 

「あ……そ、それはだなぁ……」

 

まさか調と切歌から逃がすために苦し紛れに投げた先が響の頭だとは思ってもみなく、律は慌てたように視線を泳がせる。

 

「ま、まあぁ? 終わりよければ全てよし?」

 

「「良いわけあるか!!」」

 

律は一撃でノックアウト、響とその腕の中にいるセレナは律に背を向けて歩き出しながら息ぴったりにお互いに拳を突き出し小突き合わせた。

 

「一撃で退してしまうとは」

 

「案外気が合うんだろうな、あの2人は」

 

奏が医務室から出てくるとかっこよく去ろうとする響を「戻ってこーい」と呼び止め、律のフィジカルチェックを終えた後、今後の予定について説明を始める。

 

「さてと、先ずはお前たちの今後について説明する。 多少の疲労があり数日はガタが来るがフィジカルチェックは全員問題なし、私生活の復帰は滞りなく出来るだろう。 ただ、響がなぁ……」

 

「あ、あいつがどうかしたのか!?」

 

「そんな深刻な事じゃねえよ。 ナスターシャ教授がマリアの歌でフォニックゲインを集め月遺跡を再起動、月の公転軌道を正常に戻していたのは知っているな? その際、世界中からフォニックゲインを集めるために、世界中にライブ配信がされたんだが…」

 

「そこに響が映った、と」

 

「そういうこった。 シンフォギアを装着する場面込みでな」

 

全世界へライブ映像が流されている中現れた響。 しかも堂々と氏名と年齢を自己紹介した後、シンフォギアを纏ったときた。 当然、その前のウェルの凶行もバッチリ映っていた。

 

「セレナも映っていたがそこはどうとでもなる。 ともかく響に限り来年の新学期までは車で送迎、外出も出来る限り控えてもらうしかないな」

 

「ええぇ!? そんなぁ!!」

 

「これを見ろ。 映像等は二課で潰しているが、コメントはSNSが燃え上がってるぞ」

 

「うへぇ、どいつもこいつも言いたい放題言ってやがるなぁ」

 

「我々は陽に当たれぬとはいえ、実に不謹慎極まりない」

 

「そ、そうですねぇ……」

 

嫌がっていた響が途端、声を抑えた。 あのライブ後の出来事があって以来、律も響もSNSを見ることも使うこともしてない。

 

もちろん全ての人が糾弾する人間ではない事は分かってる。 偏見かもしれないが、それでもほぼほぼ糾弾する人間が集まってくるのがSNSなので2人はSNSから自主的に避けている。

 

「学院側には詮索、公言しないよう言い聞かせてある。 まあ、生徒職員の大半は《カ・ディンギル》の一件以降、事情を知ってるし全員あの国家機密漏洩防止の同意書にサインしているから問題ないとして……問題は交換編入生だな。 全員に緘口令を敷いて同意書にもサインしてもらう可能性もある」

 

「うーん、アルフと錦、鈴先輩と由叉先輩にも事情を説明した方がいいのかなぁ……」

 

「そこが悩みどころだな」

 

特に律を通して交友関係のあるアルフたちは確実に気付いているだろう。 二課は先んじて口止めをしに訪問しているらしいが、後々律自身から説明する必要があるだろう。

 

「とりあえず響の事は置いておいて「置いておかないでください!」マリアたちの処遇はどうなってる?」

 

「今のところ、表向きは特機部二(とっきぶつ)が逮捕、拘束している扱いになってる。 だが、少し雲行きが怪しくなってきている」

 

「それは、どういう事だ?」

 

奏は頭をかいて顔を顰める。 そのせいで髪がピョンピョン跳ねるのも気にしてられないくらいに溜息を吐きやながら説明する。

 

「マリアたちの身柄を米国政府に明け渡す可能性があるかもしれない」

 

「なっ!?」

 

「ど、どうしてそんな事に!」

 

「裏だけの被害ならこっちもシラを切れるんだが、表で艦隊を2つも潰され民間の報道機関にも被害者が出ている。 やっさんもかなりの被害を出した以上黙っちゃくれないだろう」

 

「………………」

 

クリスは甲板での惨状を思い出し、そんなクリスの肩に手を置き律は気にするなと言うように首を振る。

 

最初がノイズ、後がフロンティアによってと違いはあるが、どちらもウェルによって壊滅させられている。 マリアたちには非がないとはいえそんな理屈で納得できる米国政府ではなかった。

 

「だが、それは藪蛇を突いた奴らの自業自得だろう。 欲をかかずに撤退していれば被害は最小限に済んだ筈だ」

 

「それで済ませられる段階を当に超えちまったんだよ。 そもそも《F.I.S》も秘密裏とはいえ米国の組織団体……それだけでも口出しする権利はあるって訳だ」

 

「目的は……月落下の情報隠蔽が主だが、その裏で動いていたマリアたちを加えた諸々の隠蔽と口封じ、と言ったところか」

 

「そんな、酷い!?」

 

自分たちの過ち、その証拠を消し去るためにマリアたちを要求している……そんな身勝手な理由に響は驚愕するが、奏は問題ないというように手をヒラヒラと振るう。

 

「ま、そんな悲観するな。 ここは二課のお得意の情報操作の出番って訳だ。 既に旦那たちも動いているし、先に先制パンチ喰らわせれば後はこっちのもんだ。 何せこっちにはやっさん黙らせる材料はいくらでもある……やったもん勝ちだぜ」

 

「米国政府とて一枚岩ではない……保守派あたりに自国の膿を見せつけて、後は彼ら自身に隠蔽させれば……いい事ばかりではないだろうが、今はそれが最善かもしれない」

 

「《F.I.S》の存在そのものが無かった事になり、なし崩しにメンバーだったマリアたちの罪も無かった事になる。 マリアは何らかの別の形を用意して落ち着くだろうし……少なくとも調と切歌は安心して暮らす事ができる」

 

マリアたちの為とはいえかなり陰謀めいた会話をする律たち。 そんな3人を見てセレナは響に抱きつきながらガタガタ震える。

 

「ひ、響さん……この人たち、すごい笑顔で黒い事言ってますよ……」

 

「律さんって昔から敵対した相手に容赦ないからねぇ。 私の家に石投げたり落書きした人を特定して被害請求を要求してたし」

 

「おい、それって……」

 

クリスが聞き返そうとしたがその前に響が笑顔で制し、いつもは天真爛漫と言ってもいい響に笑顔に陰りが見えてしまい、それ以上クリスは追求するのをやめた。

 

「何はともあれ、後は大人のアタシたちに任せてお前たちはゆっくり休んでいろ。 本土に戻ったら学校もあるんだろうし」

 

「あ、そうか。 そういえばもうそろそろ学院は期末考査だったな」

 

「うわぁぁぁぁ!! それがあったんだああ!!」

 

期末考査があった事を思い出し、響は叫びながら頭を抱える。 元々危なかったのに腕を喰われたり暴走したりで入退院を繰り返し、未来が攫われてからも特訓続きさらに海に出てから数日が経っている……勉強ももちろんだがそろそろ出席日数にも響いてくるだろう。

 

「教材は全部あっちだし、帰ってから勉強会でも開くか」

 

「——それなら私もご一緒しますよ」

 

「未来!?」

 

いきなり未来が律の背からひょっこりと出てきた。 してやったりと悪戯っぽい笑みを浮かべながら前に出る。

 

「遅かったので迎えに来たんですが、勉強の事なら私に任せてください。 皆さんの迷惑をかけた汚名を返上してみせます!」

 

「別に気にしなくていいと言ったんだけど、未来がそれで納得するならお願いするよ」

 

「はい! 任されました!」

 

「ガーーウ!!」

 

帰ったら勉強会を開こうと決めたら通路の先からリューツが走ってきて、律に駆け寄ると足に引っ付きガジガジと噛みついてきた。

 

「ガブガブ!!」

 

「わわ!?」

 

「ど、どうしたんだ? 落ち着くといい」

 

「あー、恐らく今回は出番が無かった事で拗ねているんですよ」

 

「どうどう、落ち着けよ。 別に除け者にした訳じゃねえんだから」

 

クリスが律の足に齧り付くリューツの頭を撫でて落ち着かせ、足から離れると抱き上げた。

 

「よしよし」

 

「ルゥ……」

 

背中を撫でてもう一度落ち着かせ、落ち着いた所で律に手渡され。 セレナも響から飛び降りて律の肩の上に乗った。

 

「それじゃあ、俺はマリアさん達を一眼見てから休むから」

 

「あ、なら私も……」

 

「響、ダメだよ」

 

一緒に行こうとした響を未来が止める。 律とセレナ、元はマリアたちと同じ施設にいたが当時の記憶はない……それを聞きに行くため、部外者が入ってはいけないと未来が気を利かせてくれた。

 

「問題ないと思うが、気をつけて行くといい」

 

「なんか分かったらアタシたちにも教えろよ」

 

「了解」

 

「行っくよー! ハイヨー、リューツー!」

 

「ガウ」

 

響たちと別れ、律から離れたリューツの上にセレナが乗り、律たちはマリアたちがいる独房に向かった。 ここは今までは縁遠い場所で、今回初めて独房に来たようなものだ。

 

「もう事情聴取は終わったのですか?」

 

「軽く行っただけでまだ途中です。 彼女たちも律くん同様に疲労していますし、また日を改めて行う予定です」

 

「そうですか……」

 

「律くんは、彼女たちに会いに来たのですか?」

 

「はい。 あの3人は俺と、後セレナが知らない過去を知っています。 本当なら俺も日を改める必要があると思うのですが……」

 

「軽く、ですよ?」

 

「はい、ありがとうございます」

 

許可ももらって独房のカードキーを預かり、緒川が去った後に律は独房に入ると、

 

「失礼しま——」

 

「え……」

 

「デス?」

 

そこには着替え途中のマリアたちがいた。 まだ着替え始めたばかりだが3人は上下どちらか1枚は脱いでいた。

 

「お、お兄ちゃん……?」

 

「あ……」

 

あまりの出来事に固まってしまい、調の声でようやく動き出し、

 

「「「きゃあああああ!!!」」」

 

「ぶへッ!?」

 

悲鳴と共に律に向かって色々な物が飛んできた。 通路に倒れた律の顔に布のようなものが被さり、その状態のまましばらく放心してしまった。

 

「大丈夫〜?」

 

「……まあ、大丈夫……」

 

本当は戦闘後の身体にちょっと来ていたが、律は布を取り払いながら起き上がる。 それから手に掴んだ布を確認すると……黒いコートだった。 大きさからして恐らくマリアのものだろう。

 

(通りでいい匂いがすると思ったら……)

 

他にも小道具に紛れて調と切歌の服やら靴が散乱していた。すると……律の鼻からタラリと鼻血が出る。 決してやましい事は考えていない、思っきり鼻にぶつけられたから出ただけだと血を拭いながら律は自分に言い聞かせる。

 

「もう気をつけてよね? 部屋に入る前はちゃんとノックしないと」

 

「ごめんなさい……」

 

その後、散乱していた衣服はセレナが回収して独房に入り。 しばらくしてセレナから入室許可が出たので再び独房に入った。

 

囚人服と言えばいいのだろうか、そこには簡素な服に着替えていた3人がいた。 心なしか顔が赤く視線を合わせようとはしないが。

 

「コホン! だ、大丈夫だったかしら? 鼻が赤いけど」

 

「あ、ああ……大丈夫大丈夫」

 

心配するマリアに律は問題ないと鼻にティッシュを詰めながら苦笑いする。 誤解されないようにもう一度言う、鼻血が出ているのはぶつけられたからだ。 そうに違いないと律は自分に言い聞かせた。

 

「と、ともかく! 弦十郎さん達が乱暴するとは思ってないけどオチツイタヨウデナニヨリダヨ」

 

(途中からすっごい棒読みデース……)

 

「そ、そうね! 律も聞いたと思うけど今後は私たちが知りうる情報を話す予定よ。 それによって私たちの罪状も軽くなるらしいわ」

 

「いわゆる司法取引だね」

 

どうやら身柄の引き渡し等の話は聞かされていないようだ。 マリアたちをこれ以上不安にさせないための当然の配慮だろう。

 

「そこは追々として、俺が急かすようにここに来たのは他でもない……俺と、後セレナについて聞きたいからです」

 

「うん……私もちょっと待ちきれないかな」

 

「……ええ、そうね。 お互いに知っておいた方がいいわね」

 

そうと決まり先に律は未来伝てに聞いた内容と、孤児院にいた頃と自分の出自はフィーネであった櫻井 了子から聞いた等の説明をし、それからセレナについても弦十郎に説明したのと同じ内容を話した。

 

「そうだったの……まさか2人とも記憶喪失だったなんて」

 

「しょうがないけど、私たちを忘れてしまったのは悲しいデス……」

 

「ま、まあそこはこれからだ。 覚えてはいないけど、一緒に生活していれば俺もセレナも何かしら思い出すかもしれない」

 

「う、うん! 私もそう思うよ!」

 

「……ありがとう……そう言ってもらうと私も嬉しいわ」

 

時間はまだあるしこれからだと、焦らずにゆっくり思い出して行こうと律は思った。

 

「それで、俺が実験中のシンフォギア……つまり《クラウソラス》を暴走させて施設から脱出。 海上輸送中のタンカーに乗り込むが事実を隠蔽しようとした米国はタンカーごと海に沈めた……って事になっているんですけど、その時何があったんですか?」

 

「……ごめんなさい、私も詳しくは知らないの。 むしろ実験の日の次、マムからあなたは死亡したと告げられたの」

 

「デェス……あの時はみんな、お兄ぃが死んだと聞かされて大泣きしたデス……」

 

「……うん……」

 

当時はとても悲しんだのだろう、調と切歌の目尻に涙が浮かんでくる。

 

「だからあのライブ会場であなたが生きていた事に本当に驚いて、私たちの事を忘れてしまった事に本当にショックで……何が何でも連れて帰ろうと思ってたんだけど……結局、何もできなかったのよね……」

 

「そう落ち込まないでください。 マリアさんは世界を救う為に出来る限り頑張りました、俺はそんなマリアさんを尊敬します」

 

「そうデス! マリアは頑張りましたデス!」

 

「うん、マリアは頑張った」

 

「あなた達……」

 

何とかマリアを励まし、一通り律については話し終えたので今度はセレナの番となった。

 

「それで、次は私だけど。 私ってどうなったの……?」

 

「……端的に言えば、貴女は《F.I.S》施設で行われた起動実験で暴走したネフィリムを休眠させるために絶唱を歌い、ネフィリムを休眠状態にする事に成功したわ。 でもその後のバックファイアで動けなくなり、ネフィリムによって引き起こされた火災による瓦礫の崩落に巻き込まれて……」

 

「……そう……」

 

マリアの話を聞き、セレナは改めて一度自分が死んでしまったと実感する。

 

「私、ちょっとだけその場面覚えているんだ。 誰かを助けるために歌って……でも、後悔はなかった。 今なら分かるよ、姉さんを……マムや調、切歌を助けるためだったんだから」

 

「セレナ……」

 

「お兄ぃもお兄ぃデスが、セレナもセレナデス! 何にも変わってないデス!」

 

「そうだね。 でも、お兄ちゃんはそんなに変わってないけど、セレナは結構変わったよね」

 

「そ、そうなの?」

 

「え、ええ。 優しい所は同じだけど、行動的というかお転婆になったというか何というか……アグレッシブになったわね」

 

やっぱり印象が違うのか、マリアたちは困惑しながらもセレナに苦笑いを送る。 と、そこで会話の輪に入れなかったリューツが律の足をはたく。

 

「ガウ」

 

「ああ、そうだった。 こっちも自己紹介しておくよ。 こいつはリューツ、元はノイズだけど今は俺の相棒……というかペットだ」

 

「わぁああ!! 可愛いデス!!」

 

「モフモフ……」

 

「って、ちょっと待ちなさい。 今ノイズって言った?」

 

「ええ。 ノイズの群の中にちょっと変わったのがいたので……《クラウソラス》でちょちょいと弄ったらこんな風に」

 

「……もっと具体的に説明しなさい。 害はないのよね?」

 

「それはもちろん。 二課のマスコットですよ」

 

害はないと律はリューツを抱えて手渡し、切歌が満面の笑みでリューツを抱きしめて感触を楽しむ。

 

「きゃーー! モフモフデーース!!」

 

「切ちゃん、次、私……!」

 

「じゃあ私はセレナを!」

 

「ちょ、ちょっと姉さん!?」

 

調と切歌がリューツに夢中になる中、マリアはセレナを抱き上げて抱きしめる。

 

それから少しだけ雑談を交わし、律はセレナをリューツに乗せながら立ち上がる。

 

「それじゃあ俺はこれで。 マリアたちもゆっくりして身体を休めてね」

 

「うん、ありがとう」

 

「——それはそれと、律」

 

「はい?」

 

独房を出ようとすると、その前にマリアが律を呼び止めて近くまで寄る。

 

「さっきから気になってしょうがなかったけど、今度からは敬語は禁止よ」

 

「え、ですが……」

 

親しい存在であるだろうがその記憶は律にはなく、どうしても他人行儀で話していたが……どうやらマリアには気に入らなかったようで少々不貞腐れている。

 

「き・ん・し。 いいわね?」

 

「は、はい……」

 

「…………(ジロッ)」

 

「じゃなくて! わ、分かったから……」

 

「うん! よろしい」

 

有無言わせぬ圧力をかけられ、律は頷くしかなかった。

 

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