戦姫絶唱シンフォギア ーNoisy Glowー 作:にこにこみ
冬休みに入り響達3人が揃ってコタツで暖まりながらライブを見ている中……律はいつも通りに年末ライブの音響スタッフとして裏方の仕事をしていた。 だがこうも何事もなく平穏が続くと逆に退屈になってしまう気持ちが少しはあった。
いわゆる生活環境の変化……昔、どこかで聞いた話だが戦争に長い間行っていた人物は家に帰っても落ち着かなく、また別の戦争に行く事があると……律は自分もそうなっているのかなぁと多少、危機感を覚えてしまう。
「くぁ〜〜……」
それでも欠伸が出て平和ボケしそうになるも、気を取り直してステージで歌う翼を横目に真面目に会場内の見回りをしていた。
(こうして見ると……普通だなぁ)
いつもは“己は剣”と言っている翼だが、ステージの上で歌う彼女はどこにでもいるような普通の女の子だ。
あそこで歌う翼はとても生き生きしている。 不満に思うかもしれないが、剣を握っているよりよっぽど似合っているだろう。
「さて、もう少し見て回ると……」
——Who has seen the wind?
Must follow in the sky
「———!!」
突然、歌が聞こえてきた。 ライブが行われている会場に関わらず鮮明に聞こえてくる歌声……律は歌が聞こえてくる方角に足を向ける。
Neither I nor You
My puny darling is
近付くに連れて歌が大きくなる事はない。 最初に聞こえた大きさのまま外に向かって行く。
「The flowers gently ring
The wind is passing through……」
ライブ会場の正面……ライブが始まった事で人一人もいないこの場に、1人の人物がいた。
その人物は全身にローブを覆い隠しフードを被っている人物……以前に律とクリスを足止めした者だった。
「……………」
「……………」
F.I.S.は解体され1番の元凶であるウェルも海の底、もう後の祭りだ。 今更出てきたところで得る物はない……にも関わらず目の前の人物は再び姿を見せた。
「あの時は邪魔して、もう終わった後に顔を出すなんて……何を考えているんだ?」
「それを答えるにはまだ足りない、と言っておこう」
そう言いながら金色の剣を抜き、一気に肉薄すると剣を振い……寸での所で律の首筋で剣は止まった。
「……………」
「なぜ、避けない?」
「今は翼のライブの最中だ、水を刺したくない。 それに……」
律は目の前にある剣を観察する。 大きさや形状に差異はあるが、まず間違いなかった。 フィーネが使用していた完全聖遺物の《デュランダル》であった。
「やっぱり……それは《デュランダル》だな。 初めて見た時もしやとは思ってたけど……」
すると彼は律から飛び退き、剣を懐に納めた。
「消滅したはずの聖遺物をなぜ持っている?」
「それを知るにはまだ足りない」
「なら何故、今俺の前に現れた?」
すると何かを放り投げ、律は飛んできた物体を受け止めた。 手を開きながら確認すると、そこにはUSBメモリがあった。
「これは……」
「そこに行け。 ある楽器が保管されている」
「楽器? 一体何が——」
話が見えず、近付こうとすると……真横から風を切る音が接近し、律の足元に矢が突き刺さった。
(矢!?)
矢が飛来してきた方角を向くと、そこには同じようなローブ姿の人物がいた。 その手には矢を射たであろう弓が握られていた。
「来たか……」
「行きますよ」
「待て!!」
——ポロロン……
追おうとしたと同時にハープの音が聞こえると……律の頭上にいきなり現れた土塊が落下してきた。
「くっ!」
咄嗟に横に転がって避け、顔を上げるとそこには誰もいなかった。
「ッ……逃げられた……!」
一戦交える気はなかったとはいえ逃した事に憤りを覚える。 そして律は手に持つUSBを一瞥する。 何が目的なのか定かではないが、この中に答えがあるのだろう。 信じるわけではないが確かめる必要はある。
(そういえばあの弓……)
ふと後から来た人物が持っていた弓を思い出す。 暗くてよく見えなかったが上半分にハープが取り付けられているという奇妙な形状をしていた。 先程聞こえたハープの音の出所もその弓からだろう。
そのように推理しながら先程刺さった矢を地面から引き抜こうとすると、触ろうとする前に矢はボロボロと崩れていった。
「一体、何者なんだ?」
その呟きは誰に届く事もなく、律は適当に急いで土塊を茂みに片付けるとその場から離れた持ち場に戻った。
その後、翼のライブも無事に終え帰宅するとUSBをパソコンに差し、一つだけあったファイルを開いた。
「ええっと……これは……」
そこには座標のみが書いてあり。 律は座標にしたがって検索してみると……皆神山と表示された。
「皆神山。 ここって、確か……」
以前に奏から軽く聞いたことがあった。 ここに聖遺物《神獣鏡》が安置されていたが、フィーネによって奏の家族は殺され奪われた経緯がある場所だと。
だがここに何があるのだろうか? 事件が起きた後も徹底した調査がされたと聞いており、もう何も残ってないと思われるが。
「……行くしか、ないか」
幸いにも今は冬休み、2、3日居なくなっても問題ない。 加えて何が待っているか分からない。 本当なら弦十郎たちに相談すべきだろうが律は自分の目で確かめたく、伏せておく事にした。
そうすればバレた時に大目玉を喰らうが、バレやしないと鷹を括りつつバレた時は仕方ないと受け入れる事にする。
「……………」
行動を開始し遠出の準備を始めた律。 その様子を影で見ている目があり、その影は不敵に笑うと目をキラリと輝かせた。
◆ ◆ ◆
翌日——
朝イチに家を出た律は新幹線を使って永野に向かっていた。 年末の帰省ラッシュからズレていたためか車内には人が少ない。 響たちと弦十郎たちには数日出かけると伝えてあるが、響たちはともかく弦十郎たち二課が本腰になったら律の所在など一瞬で分かってしまう。
不自然に思われないためにいつも通りに二課の発信機付きの通信機を持っているのだから。
(とはいえ、これが罠とも限らないが……)
罠ならこんな回りくどい事をせずに直接取りに来るはずだ。 少なくもあの《デュランダル》の使い手は律とクリスを一蹴する程の手練れ……遠回しにわざわざ手間がかかる真似はしないだろう。
「さて、何が出てくるのやら」
「——わぁ! 呼ばれてないのにジャジャジャーーンッ!!」
「どわあっ!?」
そう呟いた瞬間……いきなりバックからセレナが飛び出してきて、律は席からひっくり返ってしまった。
かなり大きな声を出してしまったが、不幸中の幸いとしてこの車両には律たちしかいなかった。
「セ、セレナ!?」
「もう律、私を出し抜こうとしてもそうはいかないんだから!」
「ガウ」
「リューツも!?」
同じくバックからのそのそ出てきたリューツは座席の上に降り、ひと欠伸すると丸まって眠り出した。
「なんか昨日から様子がおかしいと思ってついて来たんだよねー」
「確認した時は寝てたのに……!」
「そんなの身代わりだよ。 律が身代わりに気を取られている隙にこうして潜り込んだんだから」
本当に行動的というかアグレッシブなセレナは向かい側の席に座り腕と脚を組んだ。
「それで? 今度は何を仕出かす気なの?」
「仕出かす前提かよ……」
「何も言わずにいる以上、また弦十郎さんに怒られるよ?」
「うぐ……」
否定はできず律は言葉を詰まらせる。 実際、フロンティア事変後で響がたっぷりと特大のお灸を据えられた。
見ていても分かるが死にはしないが死にたくなるような光景……弦十郎とのガチバトルは想像を絶するものだった。
ともかく、こうなっては仕方なく律は昨夜の出来事とUSBの内容をセレナに伝えた。
「なるほどねぇ……でもそれって信じられるの?」
「虎穴に入らずんば故事を得ずってね。 相手の方から教えてくれるんだ、行ってみないと」
「……だから怒られるんだよ、懲りないねー……」
セレナと雑談しながら新幹線は目的地に到着し、駅から出ると律はスマホでルートを確認する。
「さて、ここからはバスだな。 1時間くらいはかかる」
「うへぇ、そんなにー?」
「どうせリュックの中なんだから別に良いだろう」
「暇なんだよぉ!」
暴れるセレナの首根っこを掴んでリュックに詰め込み、リューツを抱えてからバスに乗り込んだ。
街並みを眺めながらバスに揺られ続ける事1時間半……ようやく目的地である皆神山発掘跡地に到着した。
「ここが……」
砂場に盛られたような山のような形状の山、ここが奏の両親と発掘隊が亡くなった場所……そう言いかけて寸での所で飲み込んだ。 来る途中もそうだったがこの辺りは閑散としており空き家が多い、5年前の事件が今もなお尾を引いているのかもしれない。
「とにかく行ってみるか」
「ガウ」
リューツを下ろして山に入り、律は鈍った身体をほぐす様にしばらく山を登り続け、
「荒れ果ててるな……」
律は山頂にあった遺跡跡地の入り口に辿り着いた。 入り口はテープが貼られ封鎖されていたが、5年の月日のせいかくたびれて地に落ちていた。
すると、背負うリュックがゴソゴソと動き出した。
「プハァ! やっと着いたの!?」
「結構前に着いたよ。 何やってたの?」
「暇過ぎて寝てた!」
喋ることもできないため仕方ないとはいえ、こうもあっけらかんと言われては律は少しだが苛立ちを覚える。
「へぇ、ここで《神獣鏡》が見つかったんだー。 そう言えば《アガートラーム》も中東のイラクで見つかったんだって」
「中東で? アガートラームが出てくるケルト神話は欧州だぞ。 全然関係ないだろう」
「何でも見つかった当時、銀色の左腕だった理由から暫定的にそう名付けられたみたいだよ。 因みに律の《クラウソラス》もそう! アガートラームの近くに落ちていた紅い結晶みたいな刃片から関連付けられてそう名付けられたみたい」
重要な事をサラッと言うセレナ。 そこでふと疑問に思った。
「あれ、そう言われると……中国由来の神獣鏡がどうして日本のこんな場所に……」
「渡日したんじゃない? 金印みたいに」
「……よく知ってるな。 まあ聖遺物じゃない鏡も見つかっているようだし、あっても不思議じゃないか」
緊張感がないが変に肩に力が入るよりはマシだと思い律はセレナと雑談を交わしながらライトをつけて遺跡内に入る。
遺跡内の入り口は人為的な坑道となっており、恐らく人の手で掘ってから地中にあった遺跡まで届かせたのだろう。
「おおー! まるでダンジョンを冒険しているかのような臨場感……! BGM流さない!?」
「やりません」
まだ入り口にも関わらずセレナはテンションが高い。 調と切歌もそうだが、箱入りだった分見るもの全てが物珍しく思ってしまうのだろう。
しばらく坑道を歩き、何事もなく最奥まで辿り着くと、そこには何かを祀っていたような台座があった。
「ここは……」
「知ってるの?」
「過去の記録で見たことがある。 あそこの台座、あそこに神獣鏡が安置されていたんだ」
「……でも、行き止まりみたいだよ」
セレナの言う通りここで道は終わっており、これ以上先に進めなかった。 壁伝いでぐるっと一周しても通れそうな場所はなかった。
フードの人物が言っていた武具の影も形もない。 騙されたのかと頭を悩ませていると……ガリガリと言う音が聞こえてきた。 音がする方向を見ると、リューツが台座に爪を立てていた。
「リューツ? どうかしたのか?」
「ガウ!」
「下に何かあるみたいだよ」
どうやら台座の下に何かあるらしく、セレナは台座の周りをペタペタ触りだす。
「んーー……」
「セレナ、何してるんだ?」
「こういう時、こんな場所にスイッチとかがあるんだよ……!」
「……ゲームのやり過ぎだぞ。 流石に——」
「よっ!」
すると、セレナは台座の側面の一部を凹ませると、
——ガコン! ゴゴゴゴゴゴ……
台座の一部が奥にスライドし、隠されたさらに下層に向かう階段が見つかった。
「マ、マジですか……」
「ここ、って事か……」
「ガウ……」
階段の前で律は脚を止める。 恐らくこの先は未開の遺跡……何が起こるか分からない。 ゴクっと唾液を飲み込み、律は階段を降りて遺跡内に足を踏み入れた。
しばらく降り続け……下層に辿り着いた。 今までと違って掘られた坑道ではなく完全な遺跡となっており、長い月日が経ってもなおその形を保っていた。
「どこまで続くんだろう……」
「行ってみるしかないな」
「律、気をつけて……ダンジョンには罠が仕掛けられているんだよ」
「……あながち否定できなくなってきた」
ゲームから得た知識だがこういうトレジャー系の遺跡の罠は殺意が酷い。 侵入者を容赦なく殺しにかかってくるのがほとんどなので、律もセレナも緊張してしまう。
「ガウ!」
「り、律……あれって……」
リューツが何かに気が付き、セレナが指差すのは足元に張られたロープ。 罠としはおざなりだが、律はサバイバルナイフを取り出してロープに向かって投げると、
——サクッ、ザンッ!!
ロープが切れると左右から無数の槍が迫り出してきた。 しかも、
「きゃあああっ!?」
槍の1本に白骨化した頭蓋骨が突き刺さっていた。
「使用済みのようだな」
「再利用されてるよ!?」
「罠としてはおざなりだが、本来はこれが作られた時代用なんだろう。 松明でここに来たのならこの罠は有効だったな」
「そんな考察いらないよ!?」
さっきまでノリノリだったのに途端に弱きになるセレナ。 ともあれこれでこの遺跡には罠があることが判明し、より一層緊張感を持って前に進む事にした。
そして、その後も幾つもの罠に遭遇した。
「落とし穴だ」
「いやああぁ!?」
落とし穴に嵌る前に看破し、石を投げて攻略し、
「吹き矢だ」
「いやああぁ!?」
感圧式の罠が作動した瞬間、放たれた矢から避けたり、
「今度は下から槍が」
「いいやああぁぁ!?」
同様の罠が作動すると床から槍が飛び出したり、
「あ、天井が崩れる」
「いぃぃやああぁぁぁ!?」
崩落する天井から逃げたりした。
「ゼェゼェ……」
「大丈夫か?」
「むしろ何で律は平気なの!? 私以上に当たる可能性が高いのに!?」
「トゥー◯レイダーで予習してたからな」
「そこで何故ゲーム!?」
そんなこんなで罠を交わしながら順調に進んでいくと……通路の先に光が差してきた。
「あ、あれって……!」
「どうやらゴールのようだな」
部屋に入ると暗闇に慣れていた目が少しだけ眩み、しばらくして慣れてきて目に入って来たのは……薄い光で照らされた大広間だった。
「結構明るいね……」
「天井が、いや……あれは苔か?」
「いわゆる光苔ってやつ? ぶっちゃけ言えば暗いけど、こんなに光るものだっけ?」
「分からないが……ここがゴールで間違いなさそうだ」
周囲を確認しながら中央に向かって歩き、祭壇のような物がある舞台に上がると、
「これは……!」
祭壇には取り囲むように6つの台座があり、それぞれに楽器のような遺物が乗せられていた。
律は1つに近づき、ライトを照らして観察してみる。
「楽器? いや、武器か? 変な形をしているけど、これが奴が言っていた武具?」
何とも言えない珍妙な形をした楽器が6つ、これが何なのは不明だが……ローブの人物が言っていたのは恐らくこれだろう。
「ほへー、何だか凄そうだねー」
「何はともあれ、これを回収するしかないだろう。 とはいえ、これ全部どうやって持ち運ぼうか——」
——ゴゴゴゴゴッ……!
「な、何!?」
「これは……!」
何かが擦れる様な音と共に洞窟内が揺れ出し……地面の一部が剥がれる様に盛り上がると、
「巨大な人間!?」
「いや、石造りの人形……ゴーレムってやつか!」
地面に埋め込まれる形から出てきたのは無骨な石造りの巨人、ゴーレムだった。
「Feliear Claiomh-solais tron」
律は聖歌を口ずさみクラウソラスのシンフォギアを身に纏い。 腰の鞘から剣を抜くとゴーレムを観察する。
「セオリー通りなら額に何かの文字が書いてあって、その1文字目を潰せば止まるはずなんだけど……」
「……何も書いてないね」
「そのタイプじゃななさそうだな。 それに!」
チラリと後ろを向くと、先程通ってきた通路が閉まり閉ざされていた。
「一筋縄じゃ行かなそうだ」
逃げ道を塞がれ戦うしかなくなる。
ゴーレムは一歩踏み出し腕を振り上げる。 律は余裕を持って避けようとすると、
「ッ!?」
直ぐ背が壁にぶつかり、その間に振り下ろされた拳が迫ってくる。
「やば——ぐぅッ!! お、重っ!!」
「律!」
「っ、ここじゃ戦うには狭すぎる!」
大きく動き回る高機動型で装備も大剣や太刀などの大物を取り扱うクラウソラスにはこの閉鎖空間での戦闘は厳しかった。
加えてゴーレムの存在だけでも空間を圧迫しており、逃げ場がなく攻撃を避けられず超重量の攻撃を受け止めるしかなかった。
天井も高いとは言え5メートルあるゴーレムが手を伸ばせば余裕で届く高さ、律には戦いにくい空間である。
「こうなったら! ギアチェンジ——イペタム!」
宙から発生したノイズが律に纏わりつき球状になり、弾けると紅いギアのシンフォギア《イペタム》を纏った律が出てくる。
「どりゃああああ!!」
イペタムは攻撃力と防御力に優れており。ゴーレムの拳を受け止めると捻り上げて転倒させる。
「そこだぁ!! 寝技に持ち込むんだぁ!」
「事ある事にプロレスを持ち込もうとするな!」
後ろでセコンドなのか実況なのかと騒ぐセレナにツッコミを入れつつ間髪入れずにゴーレムの頭を掴み、もう片方の腕を大砲へと変形させて砲口を頭に押し当てる。
「吹き飛べ!!」
——バシュンッ! バシュンバシュン!
続け様に3発、顔面に砲撃を撃ち込む。 衝撃と黒煙が広がるが掴んだ手は離さず、黒煙が晴れると……巨木のように大きな手が、ヌッ、と迫ってくる。
「チッ!」
手を離しその場から飛び退いて距離を取り、巨大な手は地に着きゴーレムは何事もなかったかの様に立ち上がる。
「見た目通りにタフだな」
「一気にぶっ飛ばないの?」
「そんな事したら生き埋め真っしぐらだよ。さてどうしたものか……」
——……ブゥゥゥッ……
「ん?」
「この音って……」
——ブォォォォッ!!
——ジャキンッ!! ドカァァッ!!
「——律、無事か!」
手はないか策を練っていると、いきなりバイクと共に通路の扉を切り裂き飛び出して来たのは、天羽々斬のシンフォギアを纏った翼だった。
「翼!? どうしてここに……」
「プライバシーの関係で常時マークしてはいないが、律が持っている通信機は二課からある一定の距離から離れれば自動で所在地を送信される仕組みになっているんだ」
「そ、そうなの!?」
通信機はクリスと一緒にいきなりポンと渡された物をそのまま使っているので、律は今までそんな説明を聞いた事がなかった……と思ったら、未来が連れ去られた時に発信機の話をしていた事を今更ながらに思い出した。
律はバレないためにした策が全く意味がなかった事に頭を抱える中、翼は今回は無事だったバイクから降りるとゴーレムを見据えながら刀を構える。
「どうやら尋常ならざる相手のようだが、あまり時間をかければこの洞窟が崩れるかもしれん。 律、
「いきなりだね。 けど、了解!」
気を取り直して律はシンフォギアをクラウソラスに戻し。 お互いに歩み寄りながら手を伸ばし、
「蒼き心、風を鳴らして!」
「「契り結ばん!!」」
謳を詠い翼の姿が光に包まれると律に向かって飛んでいき、光が収まると律の右手には片刃の大剣が握りしめられていた。
『一気に決めるぞ!』
「ああ!」
翼の幻影が律の背後に現れ、2人はゴーレムに向かって視線を向けながら心を鎮め、合わせながら息を吸う。
「『——
2人の合わさった心から詩が浮かび上がり、口ずさみ詠い出す。 だがそんな悠長に詠っているのをゴーレムが見逃すわけもなく、地を揺らしながら迫ってくる。
「『
振り下ろされた拳を横に避けながらも詠うのは辞めず、駆け寄り拳から腕を伝って駆け上る。
「『などさは臆せにしか ゆめゆめ独り
肩を踏みつけゴーレムの頭上を飛び越え背後に回り、着地すると振り返らずに距離を取る。
「『地の終えの さやけし天の海 颯颯の声……』」
そしてゴーレムの方を向くため一転すると大剣に渦巻くように風が纏わり、
「『——かくいめ合わさん』」
【
一瞬でゴーレムの横を抜けながら太刀を振り抜いた。 そして
「ふぅ」
『奇妙な相手であったな』
気にはなるが戦闘が終わり、2人はギアを解除し翼は少し呆れた様に溜息を吐く。
「全く、また我々に相談もなく勝手な真似をして」
「わ、悪いとは思ってるよ。 でも確証を得ないまま話すのはどうかと……」
「……まあ、説教はおじ様に任せるとしよう」
——ドゴオオオンッ!!
「うわあっ!?」
「来たか」
突然、律たちが入って来た入り口から反対方向の壁が爆破したように崩壊した。
「ゲホゲホッ! な、何……!?」
「——元気そうだなぁ、律?」
敵かと律はギアペンダントを構えた時……土煙の中から聞き覚えのある声が聞こえ、崩壊した壁から弦十郎と奏が出て来た。
「げ、弦十郎さん……ど、どうしてここに……」
「翼がいるのならあたしらも当然いるだろう」
「そう言うわけだ。 それはそうと……」
後ろからひょっこり出てきた奏がそう言い、弦十郎は拳を鳴らして威圧をかけながら律に近づいて行く。
「また報告せずに勝手な行動……少々キツいお仕置きが必要のようだな?(バキッ! ボキッ!)」
「い、いや〜これには深いわけがあって……まだハッキリしない内に相談するのは……」
——ゲンコツッ!!!
「………………(チーン……)」
「わぁーお(ツンツン)」
「ガウゥ……」
「全く。 勝手な行動もそうだがまた厄介な物を見つけてきたものだ」
拳を律の頭に振り下ろし、頭から煙を上げ力無く倒れ伏した律に弦十郎はため息を吐いた後辺りを、立て掛けられた楽器を見回す。
それからすぐに二課科学班が到着し、早速調査を開始した。
「こんな物がまだ残ってたとはな。 了子くん……いやフィーネも目先の神獣鏡の光の反射に目が眩んだのか?」
「それはないだろうな。 あたしもギアになる前の神獣鏡は見たことあるが、それと比べてこれらは綺麗過ぎる。 後から置かれた感じがするぜ」
「簡易的な検査ですが、聖遺物の反応はありません。 推測ですが、まだこれらの遺物は休眠状態にあるものだとされます」
「なるほど。 しかしそうなると、これだけ状態が良いものを6つもこちらに寄越すとは……一体何者だ?」
「至急、捜索の手配をします」
いつの間にかいた緒川はそう言うと、またいつの間にか消えてしまった。
「そう言えば無事にここまで来れたんだね。 罠と色々かあったのに」
「以前に律から薦められたトゥー◯レイダーは鑑賞済みだ」
「そういえばそれゲームだけじゃなく映画でもあったねそれ!? って言うか壁壊して正面突破しておいて映画も何もないじゃないの!?」
「——さて、物が物だ。 ここは俺と二課科学班、増援して翼を呼び寄せている。お前たちは先に地上に上がれ」
「了ー解、ほら伸びてないで行くぞ」
「……ぅぇぃ……」
「ちょっと! 無視するな!!」
奏は伸びている律を軽々と背負って出口に向かって歩き出した。 その後ろにリューツに乗ったセレナがギャーギャー騒ぎながら後に続く。
「奏さん。 結局何者なんだろうね、あんな物をタダで渡してきた人は?」
「それは分からねぇが、タダじゃ……ねぇんだろうな」
タダより高いものはない……つまり、そういう事なのだろう。 それは目的遂行のため、フィーネが一時的にクリスに《ネフシュタンの鎧》を与えていたように……奏はそう考えるのだった。
◆ ◆ ◆
律と奏が撤退した後、翼がこの場に留まり遺物を回収するまでの警護をしていた。
「……………」
「ん? どうしたんだ翼、そんなに目付きして?」
「いえ、どういうわけか……私はあの楽器から目が離せないのです……!」
翼の視線の先には、柄がクラリネットのような形状をしている全体が黒塗りで穂先が結晶となっているランスが置かれていた。
喋り方、スタイル、中の人が同じですからね。
因みに2作くらい前になるとスタイル抜群、武器も同じの美人教師になったりする。