闇寄りの正義   作:味噌のなめこ汁

1 / 2
リゾット・ネエロ

男は夜中の住宅街を走っていた。

なにかに追われるかのように。しかし、男の背後に何者の姿もない。

 

 

「ハッ、ハッ、ハッ……」

 

 

もう10分以上も全力で走っている。走るのをやめたらやられる。そう確信めいた予感があったからだ。

 

 

「チクショウ……こんなはずじゃ……なかったのに……」

 

 

男は与えられた仕事を行っていだけだった。いつものように自分の個性を使い、『荷物』を運ぶだけ。

 

そしてふと気がつく。

 

 

「あ……あれ? ない……」

 

 

思わず足を止めてしまう。運んでいた『荷物』をどこかで落としてしまったのだ。『あれ』を無くすのは自分の命を無くすも同然だった。男は来た道を振り返る。誰もいない、探しに戻るしかない。

どうせこのまま帰ったら殺される。『荷物』を見つけなくては

 

 

こつり、とひとつ足音がなった。

 

 

「探し物はこれか……?」

 

 

その声は、男を追いかけていた者の声だった。辺りを見回す。いない。声はするのに姿は見当たらない。

 

 

見回すうちに男の目の前にひとつ置いてあるものが目に入った。

それは男の運んでいた『荷物』だった。トランクケースから中身が少し覗いている。白い粉の袋。パッと見箱から取り出したホットケーキミックスか何かにも見えるが、それはれっきとした『麻薬』だった。

どうやら、麻薬はトランクケースから出てはいるが、中の粉末が漏れている様子はない。男は瞬時にあたりの地形を把握、目の前のトランクケースを掴むと同時に走り出し、そして転倒した。

 

 

「あ……アガッ……」

 

 

頬からジャラジャラと落ちるそれは、赤く血に染まりながらも街頭の光を反射していた。

 

 

「カミソリ……!?」

 

 

そして男はようやく気がつく。己の相対している者の正体に……。

 

 

「ヒットマンチーム……」

 

 

そしてそれが最後の言葉だった。男の喉から肌を突き破りハサミがこぼれる。それは地面に落ちる前に、空中で静止しその先端が男の右目に突き刺さった。

声を上げようにも()()()()()()()()()()()()()()()()()()声が出ないのだ。

 

そして男は目覚めることの無い眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

「オレだ」

 

 

夜の住宅街を歩く男。その名はリゾット。捕まえることが出来ないヴィランを『始末』するためのチーム、ヒットマンチームのリーダーである。

先程始末した男が運んでいた荷物を持ち、電話をかけながら歩く。

 

「ターゲットを始末した。後始末は任せたぞ」

 

 

それだけ伝えると通話を切り、スマートフォンをしまった。

しかしすぐにピリリと着信を知らせる電子音がなる。

再びスマホを取りだし相手を確認すると

 

 

「……何の用だ、オールマイト」

 

 

『仕事が終わったと知らせを貰ってね。少し付き合ってくれないか。軽くワインなんかどうだい?』

 

 

断ろうと口を開きかけ、少し考える。

 

 

「いいだろう。どこへ行けばいい」

 

 

『駅前の居酒屋はどうだい』

 

 

「……おい」

 

 

『ハハハ、冗談さ。○○駅の東口にBARが出来ただろう、そこならどうかな』

 

 

「構わない。しかし少し時間がかかるかもしれん、なにか頼んでおいてくれ」

 

 

『OK!』

 

 

通話を終了、リゾットは闇夜を再び歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リゾットと飲む約束を取り付けたオールマイト……八木俊典はかつてのことを思い出していた。

 

 

彼と初めてあったのはもう10年以上前のことだった。

今よりももっとヴィランの悪行が盛んだった頃、パトロール中だったオールマイトに連絡が入った。捕縛したヴィランが逃走、子供を人質に立てこもってると。

急いで現場に急行した時、既に事態は収まった後だった。悪い意味で

立てこもったヴィランは麻薬をやっていたらしく、怒鳴り声や唸り声が聞こえていたという。そして、子供の悲鳴が聞こえたあと何も聞こえなくなった。突入した時には既に子供は殺され、ヴィランは事切れていた。死んだヴィランの近くには注射器が何本か転がっていた。現場にいたヒーローがそう報告していた。

 

 

 

リゾットはその人質になった子のいとこだった。

故郷であるイタリアから引っ越したばかりの出来事だった。

葬式に参列した時に見た、ただ黙って遺影を眺めるリゾットが未だに脳裏に蘇る。

悲しんでるようにも、憤っているようにも見えた。彼はその全てを押さえつけ、飲み込んでいた。

 

 

 

そしてしばらくたった頃。5年ほどだろうか、新たな対ヴィランの組織が設立されたとオールマイトの耳に入った。

それは極秘のチームで、表には知られてはならいないため、オールマイトを含む極わずかな人間にしか知らされなかった。

 

チームの名前はヒットマンチーム。捕縛が不可能なヴィランや、連行中に逃走し、被害を出しかねないヴィランを処理するチーム。

 

そのリーダーがリゾットだった。

 

 

 

彼と再会した時、どうにも危ういと感じたのだ。だからこそ連絡先を交換し、時々ガス抜きがてら食事を共にする。

 

彼はあまり自分のことを話さないが、やはり彼がこの道を歩み始めたのはあの事件が発端だったようだ。

 

 

 

 

「……おっと、そろそろ向かわないと」

 

 

彼と出会った日、そして再び顔を合わせた日のことを思い出していたらかなり時間が経っていた。

急ぎ足で目的他へ向かう。

 

 

 

 

リゾットが先に到着していた。




原作と違い、このリゾットは麻薬をやっていたヴィランにいとこを殺されたため麻薬を嫌っています(それどこのブチャ……)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。