闇寄りの正義 作:味噌のなめこ汁
避暑地近くの山道。2人組の男女が車を走らせていた。
「ヒロくん、まだつかないの?」
「まだ結構かかるよ、とりあえずあと230分位のところに食べ物食べれる場所があるみたいだから、そこで昼飯にしよう」
しなだれかかる女をやんわりとどけて男はカーラジオをつける。
『次のニュースです。今日午前5時頃、ヒーローに捕縛され、移送中だった桐崎 翼容疑者が逃走しました。桐崎容疑者は昨年11月に都内に住む男性を個性で切りつけ死亡させるなど……』
番組を変える。あまり今聞きたい内容ではなかった。
窓を開け、外の空気をいれる。少し湿った涼しい風が心地いい。
「そう言えば、ここら辺って夜になると幽霊が出るらしいよ」
「ちょっと〜やめてよ〜」
その言葉に女は男の肩を軽く叩く。
「それがさ、森の中からいきなり飛び出してきて、轢いた!と思って車を降りると誰もいないんだって」
今回の旅行で調べている時に見つけた記事、そこに書かれていた内容を話していると
「ヒロくん! 前!」
今自分が話したように森の中から男が飛び出してきた。急ブレーキをかけるも間に合わず、飛び出した男の体は吹き飛んだ。
「なっ、なんで飛び出してくんだよ!? くそっ、最悪だ!」
急ぎ車を降り、確認する。さっき話した話の幽霊のように飛び出したんならどうか消えててくれよと願いを込めて。
「ああ、クソ……」
確かにそこに存在していた。さっき自分が轢いた人間が。
とりあえず警察に電話しよう。携帯を取り出そうとした時。
「それを今すぐしまえ」
「え?」
ふらりと地面に倒れていた男が立ち上がる。
「そいつをしまえって言ってんだよ、聞こえねーのか」
「え、いやでも……」
「いいからしまえって言ってんだよ! 死にたくなかったら黙って言うことを聞きやがれ!」
男が伸ばした手が徐々に金属のような光沢を帯び、形も鋭く変化していく。やがて男の手は完全に変形した。
それは1本の剣だった。剣と言うよりも短剣か、いわゆるダガーと呼ばれるものの形状に近いそれの切っ先を首元に突きつける。
「車に乗れ! 死にたくなかったら俺の言う通りにしろ!」
男の名は桐崎 翼。脱走したヴィランだった。
桐崎は車を運転していた男を車に乗せると後部座席に乗り込む。
「いいか? 逃げようとか警察に電話しようとか余計なことをしたらこの女の首をかっ切るかな!」
刃に変化した腕を助手席に座る女の首に突きつける。
「ひっ……い、いやぁ!」
「大声出すんじゃねェーッ!! 黙ってろボケッ!!」
激昂した桐崎は席を蹴り怒鳴り散らす。
そして再び首に刃を当て囁くように言うのだ。
「いいか……? 俺は別にお前たちを殺してーわけじゃねぇんだ。ただ行きたい場所があるからこうしてるに過ぎない。約束する、目的地に着いたらテメーらを解放する、
なんだったら足代払ってやってもいい……。だから今だけは静かに黙っててくれ……」
その言葉に女は涙やら鼻水やらでぐちゃぐちゃになった顔を何度も縦に振る。
「テメーもだ、テメーも何か余計なことをするんじゃねえぞ、いいな」
男はハンドルを強く握りながら女と同じように何度も頷く。
だが、実際のところ桐崎の言葉は2人を黙らせるための嘘に過ぎない。ようがすめば殺すし、なんだったら男の前で女をぶち犯すのも悪くないと考えていた。
桐崎という男に良心というものは存在しない。もしかしたら欠片程度存在するかもしれないが、あっても欠片程度でしかない。
桐崎を一言で表すなら人間のクズとしか言い表せないだろう。
ピリリリリリピリリリリリと電子音がなる。
ベンチに腰かけていた男は胸ポケットから今どきあまり見ることがなくなったガラケーを取り出すと通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『俺だ、着いたか?』
「あぁ、バッチリだ。だが本当にここを通るんだろうな? さすがにこんな山奥まで来て間違えましたってんならよォー」
『確実に奴はここを通る。確実にその休憩所に現れる』
「そんなに言うんなら信じるけどよ……」
『いいか、今回ターゲットの存在は世間に知られている。殺すな、事故にみせかけるんだ』
「あぁ、分かってる」
通話を切りパチンと携帯を閉じる。コキリと首をならし立ち上がる。
「ったく、かったりーぜ。仕事とはいえこんなクソ田舎にまでこなきゃなんねーとはよォ〜」
丸刈りの頭に剃りこみを入れた男。7人いるヒットマンチームのうちの一人。
名をホルマジオ。
「ここだ、ここで止まれ。」
道沿いの休憩所。展望台にもなっているそこを桐崎は指さす。
男が車を駐車場に止めると桐崎は女に外に出るように促す。
「いいか? ここで待ってろ。逃げたり、誰かに連絡したりしてらこの女を殺す。誰かと話しても殺す」
「……分かってる」
男の返答を聞いた桐崎は女を連れ売店へ歩き出す。
「お前も妙なことするなよ。声を上げようとしてもする前にお前を刺殺す」
嗚咽をかみ殺すように頷く女。
売店に着き、飲み物と食べ物、旅行の情報誌を持ちレジへ行く。目を腫らした女に店員が困惑するが桐崎が笑みを浮かべ「少し喧嘩をしてしまいまして」と言えば納得半分疑い半分といった様子で会計をする。
やがて会計を終え、店から出る時女に聞こえる程度の声で男は呟く。
「まともな身なりの人間はそれだけで多少の信頼感が生まれる。逆に浮浪者みてーに汚い格好してたりすれば疑うんだ。ものが盗まれた時容疑者がスーツを着た男とボロボロの服を着た男だったら? 全員が全員ってわけじゃねえが最初に汚い服装のやつを疑う。つまりそーゆー事だ」
まるで誇るかのような言い方……実際に誇るように語るのだ。今までどうやって人を騙しただとか、どうやって人の心の隙間に入り込んだだとか。
そして最後に必ず言う。
「覚えておくといい。もしかしたら役立つ時があるかもしれん」
桐崎の言うもしかしたらとは「もしそういう状況に陥ったら」ではなく「もし気が変わって殺されなくなったら」に過ぎない。
だがこのまるで自分にその機会が巡ってくるかもしれない、つまり自分が生き残れるかもしれないと無意識のうちに思い込むのだ。
そうやって少しづつ自分の生き残る未来を期待させてから絶望のどん底に落とすのが大好きだった。
それが生き甲斐とでも言うかのように。
上機嫌に駐車場へ向かう桐崎とそれについて行く女。女の表情は先程より少しだけ明るい。
ホットコーヒーをすすりながら横目でその様子を見る桐崎はほくそ笑みさらに上機嫌になり頬緩めるのだ。
前から歩いてきた男。何となく桐崎は目で追う。手元の携帯に気を取られ歩く。しかしぶつかることも無く避けたので目を離した。
コーヒーの表面。静かに波紋が広がっていた。
熱さを気にせず飲み干したホットコーヒーのカップをゴミ箱に捨て、車へと向かう。
「待ってたか。そんなにこの女が大切かァ? 俺なら逃げちまうがよ」
小馬鹿にするように、挑発するように言葉を放つも大した反応を見せない男の姿に途端に不機嫌になる桐崎。
舌打ちをすると助手席に女を蹴るように押し込み、運転席から男を引きずり下ろすと後部座席に座るように顎で示す。
そして自分は運転席に座り、片手をハンドル、片手を助手席に座る女の太ももに置く。置いた時にビクリと震える女に若干機嫌をよくする。
桐崎は車を発進させた。
「
『そうか』
「これから帰る。景色にも飽きたしよ」
展望台の手すりによりかかっていたホルマジオは車のキーをもてあそび歩き出す。
『待て、確認をしてからにしろ』
「いーや、大丈夫だ。たった今確認したからよ」
目の前を走る警備員たち。休憩所を出て少しした場所で事故があった。車はガードレールを突き破り木に激突。死人がひとりとけが人が2人。死人は運転手でその首にはガラスが刺さっていたらしい。
「さすがに車の窓の破片を全部集めて調べたりはしないだろうよ」
『……分かった』
切られた電話を閉じる。
「土産でも買ってくか」
売店の土産売り場に積まれた菓子の箱を1つ取るとレジに向かう。
「俺の個性をくだらねー能力って言うやつがいるがよ、要するに考え方よ。やり方を考えれば最強の能力になるんだぜ」
誰に向かって言うでもなく、独り言のようにつぶやく。
ご当地物の土産はそこそこ高かった。
飲みこんだガラスがなんで喉から出てくるんだとか車のガラスが刺さるように割れるわけないだろとかよく考えたらなんでイタリア人のヒットマンチーム全員集合なんだとか言わないでください。深く考えては行けません。私も考えませんので。
あと7人と書いた時点で分かる方もいると思いますがソルベとジェラートが本作に出ることはありません。スタンドわからないし荒木先生みたいにかっこよくて強いスタンドをかける自信がありませんので。
ただ強いだけじゃなくて一見使いにくいスタンドを使いこなすスタンド使いも好きです
ペッシの場合はプロシュートニキも出ます。
プロシュートニキの場合はペッシ出るかわかりません。
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