六道女学院教師GS横島   作:ミニパノ

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今回は、美神令子事務所の面々のちょっと前のお話となります。
ただ、原作より1年後くらいではあるので、独自設定、独自展開になっていることには変わりないです。
それでも宜しい方はお暇つぶしにでもどうぞ。
※前回同様横島がだいぶ強いです。(魔族化とかではありませんが)




ちょっと前のお話

今日も今日とて美神除霊事務所は平和であった。

 

「せんせ~、サンポに行くでござるよ~」

 

事務所の中央にあるマホガニーの机に向かい座っている人物に、人狼であるシロがシッポをぱたぱたとさせながら言う。

いつもならその席には事務所の所長である美神令子が座っているのだが、今は違う人物が座っている。

 

「あとでな~」

 

その人物横島忠夫は、目の前の書類を片付けながら適当にシロに返事をする。

その様子を、ソファに座って<世界お揚げ百選>たる雑誌を広げているタマモは呆れた風に、横島にお茶を持ってきたおキヌは苦笑しながら見ていた。

 

「そんな殺生な~、そもそも何をしてるでござるか?」

 

横島の肩を掴んで揺すっていた手を止め、背中越しに書類を見るシロ。

 

「だぁ!ひっつくな暑苦しい!結構前から美神さんの事務作業の手伝い始めたの知ってるだろ、今は依頼者のリストをまとめてんだよ」

 

のしかかってきたシロを振り払いながら説明する横島。

振り払ったのは暑苦しかったからで、決して煩悩が働きそうになりジャスティス(ロリ否定)に危機感を覚えたからではない……ハズだ。

 

「そういえば、横島さん結構前に急に事務作業を教えてくれって美神さんに言ってましたよね?何か理由があるんですか?」

 

「あぁ、それは「ただいま~!」」

 

お茶を机に置きながら尋ねるおキヌに横島が答えようとした瞬間に、ドアが開いて美神が入ってきた。

少し機嫌が良さそうにして大量の荷物を降ろす様子を見ると、厄珍堂が大きな損失を出した事は間違いないだろう。

 

「あ、美神さんおかえりなさい」

 

「ただいま、おキヌちゃん。横島くん、頼んどいた書類は終わった?」

 

「多分これで大丈夫だとは思いますよ」

 

言いながら手元にあった書類をまとめながら立ち上がり、トントンと軽く揃えてから渡す。

それをペラペラとめくりながら眼を通す美神。

タマモは興味がないのか、それとも雑誌に興味津々なのか、雑誌を穴が開くくらいに見つめている。

しばらく、書類を眺めていた美神が一つ溜息をついて書類を机の上に置く。

 

「え、何か駄目でした?」

 

結構自信があったのか美神の溜息を悪評価だと思い、書類に手を伸ばそうとする横島。

 

「い~え、完璧よ」

 

その様子をみて苦笑しながら先程まで横島が座っていた椅子に座る美神。

シロは横島の仕事が終わるまでサンポは諦めたのか、タマモの読んでいる雑誌を横に座って覗き見ようとしている。

 

「え、じゃあ何で……」

 

「不満そうかって?そりゃ不満にもなるわよ。アンタ私が色々教え始めてからたった一年よ?

なのにこんだけ完璧にこなすなんて……。今まで碌にGSの仕事を教えてこなかった私へのあてつけかしら?」

 

冗談めいて少し怒った表情をする美神。

機嫌が良さそうなところを見ると、むしろ成長を喜んでいるところも見受けられる。

正直心中複雑なのだろう。

おキヌもそんな様子を見て苦笑している。

 

「何言ってんすか~、美神さんの教え方が良いに決まってるじゃないですか。

俺なんて高校の成績もひどかったの知ってるくせに……。あ、でももっと手取り足取り腰取り教えてくれれ『キン』スミマセンホントスミマセン」

 

話の途中で美神が取り出した神通棍を見て冷や汗ダラダラで後ずさる横島。

即土下座をするその姿勢は流石だ。その姿を見て美神がもう一つ溜息をつく。

 

「はぁ、でも血筋かもしれないわね。横島君の両親って確か凄い商才もってるでしょ?アンタも基本的に何でも出来るんじゃないの?」

 

「あ、そういえば美神さんがGメンに行ってた時も黒字で凄かったですしね」

 

「たまたまっすよ」

 

美神が横島の両親を思い浮かべて言い、おキヌが一時期美神抜きで事務所を経営していた事を思い出してそれに同意し、横島が笑いながら否定する。

ソファではナインテールが赤メッシュにイラついている。どうやら雑誌を読むのにだいぶ邪魔なようだ。

 

「でも……、この努力を見る限りだと本気みたいね」

 

「まぁ……、そうですね」

 

ポリポリと人差し指で頬を掻く横島。

美神と横島の会話に首をかしげるおキヌ。

ソファの方で赤い炎が見えた気がする。

 

 

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ここらで時間的な説明をすると、アシュタロスの核ジャック事件から凡そ1年が経っていた。

横島は何とか留年する事無く高校を卒業し、正式に美神除霊事務所の所員となった。

ここでこれまでと大きく違う事は二点。

一点目は当然給料について。

アルバイトでなくなり、社会人として雇いなおしとなったため、人並みの給料をもらっているのだ。

当然、美神が自分から言い出すなんて事はなく、雇用条件についての決定が横島の母親と美神の母親からの圧力による事なのを横島は知らない。

その場にたまたま居合わせたシロとタマモは、今でもその時の事を思い出すと動物形態になって部屋の片隅で震えてしまう。

とはいえ、元々美神も横島の正当な評価分から実際に渡していた給料との差額をちゃんと管理しており、纏めて渡したところをみると最初からそのつもりで、プライドから渡す機会を作れなかっただけのような気もするが。

 

二点目は、横島が正式にゴーストスイーパーになった事だ。

これも単純な話にはならない。

長い、それは長い横島の説得(お願い)があり、渋々「条件を満たしたら」と美神が条件を出し、その条件がとんでもない内容と量だったのだ。

具体的に言うと、AランクBランクの仕事を一人で除霊数十件(ほぼ全部の除霊で死にかける)、当然皆で除霊の仕事は強制参加(疲れでミスってしばかれる)、

Sランクの仕事を一人で一件(何故か近くに美神の霊力を感じたが)、シロと耐久サンポ42.195キロを三日間(流石のシロも倒れた)、

タマモと大食い対決(お揚げのみ)、仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、火鼠の裘(かわごろも)、龍の首の珠、燕の子安貝、etc…etc……。

途中から関係ない上に冗談も色々とあったが、なんとかその冗談以外の条件をすべてクリアしてやっともらえた許可だった。

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「何するでござるか!!」

「あんたが邪魔するからでしょうが!」

 

前髪を少し焦がされたシロがタマモに食って掛かる。

二人ともソファに立っていて、タマモはソファに雑誌を置いて反論する。

どう見てもシロが悪いが、だからといって狐火はやりすぎである。

まぁそれだけタマモにとって大事な時間だったのだろう。

 

「こら、喧嘩すんじゃねーよ。せめて外でやれ、外で」

 

仲裁というより、美神の怒りが発動するのを恐れて事前に止めようとする横島。

 

「ちょ!今回のは私は悪くないでしょうが!!」

 

「なんだと、この女狐!先に手を出したのはそっちでござろう!!先生は拙者の味方でござるよね」

 

「俺まで巻き込もうとするな!」

 

そのかいなく、ヒートアップする喧嘩。むしろ横島まで巻き込まれていく。

当然ここまで騒がれて、事務所一沸点が低いあの方が動かないわけがなく。

 

「あぁもう!うっさいわね!!

そんなに元気が有り余ってんなら、二人とも横島に修行でもつけてもらいなさい!!」

 

ピタッと止まる二人。横島はその様子を見てキョトンとし、しばらくして納得したように、苦笑の表情になる。

 

「??……な、なによ?」

 

そんな三人の様子を見て訳がわからず怒りを忘れて言いよどむ美神。

 

「あ……いやぁ……せ、拙者サンポがいいでござる!そうでござる!先生、サンポ連れてってくだされ!!」

 

「ちょ、なんなのよその下手糞過ぎる誤魔化し。私、なんか変な事言った?タマモはともかくシロは横島君の弟子でしょ?」

 

その場を誤魔化そうと横島を引っ張って外に行こうとするシロ。

どことなく、横島に対しても気まずそうだ。

それに対する美神の疑問に対して苦笑の顔をしたまま答える横島。

 

「いやぁ、実はシロに修行つけてあげたのってフェンリルの時だけなんすよ」

 

頭をかきながら言う横島に少し呆れる美神。

おキヌも、横島さんらしいですねと苦笑。

 

「あんたねぇ……師匠名乗ってんならたまには稽古ぐらいつけてやるもんよ」

 

「いや、名乗ってないですし、美神さんにそれは言われたく……ハイナンデモナイデスヨ」

 

自分自身美神にここ最近以外何か教えてもらった覚えのない事を言おうとするが、美神の一睨みで諦める。

 

「まぁ、だったらちょうど良いじゃない。たまには稽古つけてもらいなさいよ」

 

その言葉に反応しないタマモ、むしろ冷めた目で美神を見ている。

そして何処か挙動不審なシロ、先程と同じく二人の様子を見て苦笑の横島。

その様子を見てとうとう椅子から立ち上がり、三人に近づく美神。

 

「もう、何なのよあんたらは!!」

 

「あ、いや……その……拙者は「はっきりしなさい!」はいぃ!!」

 

要領を得ないシロの物言いに苛立つ美神。

そんな中タマモがやれやれといった感じで前にでる。

 

「はっきり言ってやりなさいよ馬鹿犬。何で私達が自分より弱い相手に稽古つけてもらわなきゃなんないのよ。

稽古つけてもらう?私達が稽古つけてあげる。の間違いでしょ?ってね」

 

「「「……!」」」

 

「やっぱなぁ~」

 

途中犬ではないと抗議を入れるが、タマモの言った言葉に言葉をなくすシロ。

おキヌと美神も言葉をなくすがシロとは違う意味である。

何を言っているのかこの子は……?と言う疑問の目でタマモを見る二人。

横島は予想してた答えだったのか妙に納得して笑っている。

 

「い、いや拙者、先生を尊敬しているでござるよ。拙者に霊波刀を教えてくれたのも先生でござるし……」

 

「でも、今は自分の方が強いって思ってるでしょ?馬鹿犬もなんで未だに横島を師匠扱いしてるのか理解に苦しむわ」

 

「せ、先生は……!……拙者の、師匠でござる」

 

二人のやりとりをみて盛大に溜息をつく美神。

 

「つまり、シロも尊敬はしてるけど、なんだかんだ実力に関してはそう思ってるわけね……」

 

「……」

 

沈黙で答えるシロ。

正直美神は呆れていた。こいつらは何だと。超感覚を持ってる犬神達ではないのか。

一緒に仕事をしている時、何処を見ていたのか。

馬鹿をやっているようで、常に誰のフォローも出来る位置にいて、何かあれば自分がその被害を最低限に抑えてダメージを受ける。

実力がないと出来ない事に何故気づかない。

色々問い詰めたくなり、その呆れは段々怒りに変わりつつあった。

 

美神令子はプライドが高い。

非公開ではあるが、横島は1年前にすでに自分と戦い、そして勝っている。

自分まで馬鹿にされているようで面白くない。

彼女自身そう思い込んでいる。

意地っ張りな彼女は自分が怒りを感じている理由がそれだけで無い事に気づかない。

 

おキヌも怒りを感じはしないものの、似たような感情を抱いていた。

彼女達は1年前のあの時以来彼が変わったのを敏感に感じ取っていた。

二人はそれを知らない故に気にした事もなかったのであろう。

おキヌはそう自分を納得させていた。

 

因みに横島自身は下に見られている事も、シロタマがどう思っていようとたいして何も感じていなかった。

彼にとっては二人は仲間であり、守るべき存在、彼が気にするのはただその一点だった。

 

「……予定変更よ。おキヌちゃん、今日の依頼断りの電話入れといて」

 

「はい」

 

パタパタと電話の方へ行くおキヌ。

美神はキョトンとしている三人に向かって高らかに言い放った。

 

「あんた達は横島君と手合わせよ。稽古じゃなくてコテンパンにしてもらいなさい」

 

「「「!!」」」

 

そうなると驚くのは横島、シロ、タマモの三人だ。

 

シロは流石にコテンパンとは聞き逃せないとばかりに目を鋭くさせ、タマモに至っては何を馬鹿な事をという表情。

横島は逆に慌てていた。

 

「ちょ、美神さん何を考え「やるのよ、横島君」……!」

 

抗議しようとしたが、怒るでもなく、脅すでもない、美神の真剣な物言いに何も言えなくなる横島。

 

「アンタ後から来た後輩二人に馬鹿にされてんのよ?ここらで実力の違いを見せ付けてあげなさい。

……それにね、事はプライドの問題だけじゃないの、私達はチームで仕事してんのよ?互いの実力もわかってないんじゃ連携なんてとれないわ」

 

前半はシロタマの二人を挑発するように、後半は横島にしか聞こえないように言う。

 

「でも俺は……!!……俺はそれでも守ります」

 

「……」

 

横島も美神にしか聞こえないように言う。

その真剣な眼に驚きつつも少し呆れたように耳元で囁く美神。

 

「……アンタらしくないわね。それにアンタ、独立はどうすんの?」

 

「っ!」

 

はっ、と何かに気づいた様子から苦虫を噛み潰した様な表情になる横島。

 

「そろそろあの子達にも成長してほしいんだけど?ウチの事務所の為にもあの子達を守るためにも」

 

「……わかりました」

 

シロタマは美神と横島がこそこそ話しているのを面白くなさそうにみていたが、おキヌが帰ってくる足音に気づく。

 

「美神さん、依頼のキャンセル終わりました。後、小竜姫さんに今日伺っても良いか聞いたらOKもらえました」

 

「あら、そんな事までありがとね、おキヌちゃん。ほら、アンタ等も聞いたでしょ?出かけるわよ。準備しなさい」

 

おキヌは何も言われてないが、恐らくこうなると思っていたのか、妙神山の修行場を使用していいかの許可を取っていた。

シロもタマモも渋々ではあるが、あそこまで言われたらやはり納得できないのか出かける準備を始める。

その様子を見て、自分の右手に視線を落とし、見つめる横島。

何かを決意したようにその右手をギュッと握る。

 

「……」

 

その様子を横目で見る美神だった。

 

 

 

 

 

 

 

何時間もかけて山を登り、たどり着いた5人の目の前には大きな門構えに鬼の顔が二つへばり付いている光景があった。

 

「よぅ鬼門、また来たぞ。開けてくれ」

 

「おぉ横島、おぬし等か。待っておったぞ、話は聞いておる故入るが良「ヨコシマ~!!」ブゥ!!」

 

久しぶりの来訪者に小竜姫から話を聞いていた鬼門達は快く横島達を迎え入れようとするが、

いきなり門が内側から力技で開かれ、そこから黄色い物体が飛び出して、横島に体当たりをかます。

鬼門達は開かれる勢いのまま壁に激突して気絶しているようだ。

 

慣れた様子で高速タックルをしっかり受け止める横島。

そんな横島の受け止めた先には小学生にしか見えないような少女が嬉しそうに横島に抱きついていた。

その様子は仲の良い兄妹にしか見えず非常に微笑ましい。

 

「よっ、パピリオ。いい加減そのタックル出迎えやめろよ。いつか死んじまう」

 

言葉とは裏腹に笑顔で少女に話しかける横島。

 

「な~にいってるでちゅか。ここ一ヶ月パピリオが突っ込んでも微動だにしなくなってまちゅよ!ヨコシマもやるようになりましたね」

 

「慣れだよ慣れ。頼むから他の人にやるなよ?」

 

「ヨコシマ以外にはやらないでちゅ!!」

 

「正しいが納得いかん!!お前は何か俺に恨みでもあんのか!!」

 

「ないでちゅ!ほら、文句言ってないでさっさと行くでちゅ!」

 

「言い切るな!!納得いかーん!!」

 

じゃれ合いながら門を潜る二人。

そんな微笑ましい風景を見て和んでるおキヌ。

誰?といった表情のタマモ。

そこは自分の立ち位置だと、パピリオを睨むシロ。

そんな三人とは違い、美神は驚愕の目で二人を見ていた。

 

パピリオは魔族であり、その力も霊圧も半端ではない。

そんな彼女が、手加減しているとはいえみぞおち付近に突進してきたらどうなるか。考えるのも恐ろしい。

 

実際横島もだいぶ前に自分と来た時は突進を受け、彼方へ飛んでいき気絶していた。

元々体力が尋常でない横島でもそれだったのが、今は微動だにしない?慣れでそんな事にはならないだろう。

ただの筋力でそんなことは人間には不可能、ということは力を上手く流している?だとしたらどんな繊細なコントロールを行っているのだ、あの一瞬で。

恐らく横島はここに何回も来て修行をしている。しかも私達には内緒でだ。

そんな事を思った美神は非常に面白くなさそうに妙神山の門を潜った。

 

結論から言うと美神の予想は当たっていた。

彼はたまに、パピリオに会いに行くと言う名目で(実際それもあるが)妙神山に修行に来ていたのだ。

美神の言うだいぶ前とは凡そ1年前、それ以外ではそれぞれ別々に来るか、たまたまパピリオが居ない時に来るかのどちらかだったので、美神がこの光景を見るのは久しぶりだったのだ。

ちなみに、たまたまパピリオが居なかった時に事務所全員で来た事があるので、シロもタマモも妙神山と小竜姫の事は知っている。

 

 

「のぅ、右の。ワシ等扱い酷くないかのぅ」

「言うな左の。何処でもワシ等の扱いはこんなもんじゃ」

「「はぁ~……」」

 

 

歩きながらパピリオと横島の会話は続く。

因みにパピリオは横島に肩車をしてもらっているので、頭の上だ。

 

「そういえば小竜姫様はどうしたんだ?」

 

「神界にいってまちゅ、何だか呼び出しを受けたみたいでちゅよ」

 

「保護観察中のお前置いて?大丈夫なのか?」

 

「今は猿のおじいちゃんもいまちゅから」

 

「そういやここにはゲーム猿も居たんだったな。くっそぉ~、小竜姫様にとびかかる予定が……!!」

 

「なんつぅ予定立ててるでちゅか。パピにとびかかりまちゅか?」

 

「俺に犯罪者になれと?」

 

「何を今更……ルシオラちゃんの年齢忘れたでちゅか?

あ、その小竜姫から伝言でちゅ『急に呼び出しを受けまして、留守にして申し訳ありません。お話は伺いました。いつもの修行場を使用して構いませんので』でちゅ」

 

「ほい、了解~。相変わらず律儀な人やな~」

 

「胸が終わってる人は真面目にならざるをえないんでちゅ」

 

「……それ絶対本人の前で言うなよ?」

 

先頭を歩くパピリオと横島。

話している内容がわからずおキヌに視線をうつすシロとタマモ。

 

「ねぇおキヌちゃん、ゲーム猿って誰の事?」

 

「それより、あいつは何者でござるか!拙者の先生にじゃれ付きおって!それに魔族の匂いがするでござるよ!」

 

それに苦笑しながら答えるおキヌ。

 

「彼女はね、訳あって妙神山に預けられてる魔族のパピリオちゃんって言ってね、凄く良い子だから二人とも仲良くしてね。

後、ゲーム猿って呼ばれてた方は、……孫悟空って言ったらわかるかしら?」

 

「え”?!」

 

「なんと?!」

 

歩きながらあごに指を当てて考えた後、おキヌの口から出てきた名前に二人は驚いているようだ。

当然である、誰もが知っている様なビッグネームがこんな身近で聞けるとは誰も思うまい。

 

「ね、ねぇ……それってまさか本物の孫悟空じゃないわよね?西遊記の」

 

「あら、そーよ。言ってなかった?二人が来た時は会わなかったんだっけ?」

 

オドオドと言葉を選んで質問するタマモにあっさり答える美神。

二人ともあごが外れんばかりに驚いている。

 

「でも、横島君が言った通り、ゲームばっかやってるただの猿よ」

 

大した事ないわよと、目の前でひらひらと手を振りながら言う美神。

そんな行動を取りながらも、小竜姫からの伝言で、先程の自分の推測が間違ってない事を確信する。

 

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これはひょっとすると……想像以上に差をつけられたかしら?

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そんな、美神にしては珍しく、横島を認める様な、自分のプライドを無視する様な事を考えていると、後ろから声をかけられた。

 

「ゲーム猿で悪かったのぅ」

 

サー、と美神の顔から血の気がひく。

ゆっくりと後ろを振り向くと、中国でよく見る道着を着てメガネをかけた猿が、笑顔のままキセルを加えて美神を見ていた。

 

「どうした?ただのゲーム猿に何の遠慮をしとる?」

 

「や、や~ね、冗談に決まってるじゃない!老師もご冗談が通じないんですから!ホ、ホホホホホ」

 

不思議そうにする老師に苦しい言い訳をする美神。

やがて、老師がニヤリと笑ってキセルを手に取り、一息煙を吐く。

 

「まぁいいじゃろ、それよりそっちの二人は初めてじゃな。

犬神が二人とは……相変わらず御主の事務所は非常識じゃの」

 

「あ、アンタが斉天大聖……」

 

「た、タマモ!し、失礼でござろう!!武神である老師に向かってそのような口を……」

 

ガチガチに緊張している二人、それでも老師にアンタと言えるタマモは流石である。

 

「ほぅ、そっちの嬢ちゃんはもしや、白面金毛九尾の狐か?懐かしいのぅ妲己、いや玉藻前だったかの」

 

「へぇ……、私あんたに会った事あるんだ。でも、今の私は転生してタマモを名乗ってるの、記憶は戻ってないわ」

 

言われて驚きはするものの、冷静に返すタマモ。

シロは、タマモと老師が転生前とは言え、顔見知りと聞いて、目を見開き、驚愕している。

 

「それは難儀じゃったの、……とりあえず小僧の後を追わんと見失うぞ」

 

遠い目をして、もう一度キセルを銜えた老師の言葉にハッとする四人。

遠くでパピリオを肩車したままドンドン進む横島を見て、慌てて追いかける。

 

「人界……いや三界唯一の文殊使いに、世界最高のGS、世界最高のネクロマンサーに、フェンリル関連の人狼、おまけに白面金毛九尾の狐か……、相変わらずとんでもない連中じゃ」

 

追いついた四人が横島にからむ姿を楽しそうに見ながら呟く老師だった。

 

 

 

所変わって

 

 

 

「あ~、んっとなぁ~、ホントは俺が自分に自信が持てるまで、お前らに教えれる事なんてなかったつもりなんだけど、相手の潜在能力探らずに見た目で油断したり、俺の勝手なエゴで怪我されたり危険な目にあわれるの嫌だからさ、……今回はマジでいかせてもらうぞ」

 

朗らかな笑顔から(ヘラヘラとも言う)目を細めて真剣な顔になる横島。

 

「あんの馬鹿!シリアスな横島はGSとして価値が無いって言ったでしょうが!!」

 

目を吊り上げ、横島に文句を言おうと身を乗り出す美神。

それに待ったをかけたのは隣にいるパピリオだった。

 

「何を言ってるでちゅか?あいつはもうすでに煩悩なしで霊力を操れるようになってまちゅよ。まぁ煩悩あった方がブースト入るのはかわりまちぇんが。……やれやれ、あんたも犬とキツネの事言えまちぇんね」

 

「は?」

 

呆れた様に溜息をつくパピリオ。片目を瞑ってやれやれと両手をあげてあげている。ちなみに、ここに来た経緯は説明済である。

続けて言葉を紡ぐパピリオ。

 

「よく見てるでちゅ。あんたが教えなかった基礎を教わって、それからも力を求めたヨコシマの力を」

 

眼を細めて横島達を見るパピリオ、美神とおキヌもそれにつられて彼らを見る。

 

 

「とりあえず二回戦うから。あ、二対一な」

 

「嘗められたものね」

 

当然のように二対一を提案した横島に対して憤りを隠そうともしないタマモ。

シロはまだ躊躇いがあるのか、無反応。

 

「まず一回目だが、卑怯な敵を想定してくれ。ま、ホントは自分でその辺りも警戒して欲しいんだが、今回はサービスだわ」

 

「もう稽古つけてるつもり?いいからかかってきなさいよ」

 

狐火を出して戦闘体勢をとっているタマモ。

シロも腹をくくったのか霊波刀を出して構える。

 

「これから俺は敵だからな、本気でやれよ。殺される可能性も考えて本気で来い」

 

「言われなくて、も!」

 

狐火を横島に放つタマモ。

閉鎖空間に巨大な火柱があがる。

火柱のある場所は言わずもがな先程まで横島が立っていた場所である。

 

「はい、おしまい!ヨコシマの癖に調子乗るからよ」

 

「せ、せんせ~!!」

 

その光景をみて、やりすぎたかと思いつつも横島なら大丈夫だろうと、勝ち誇っているタマモ。

シロは涙を流しながら火柱に向かって叫んでいる。こちらも少し余裕があるところを見ると本気で命の心配はしていないようだ。

 

「シロ、俺は敵だって」

 

「「!!」」

 

突然シロの後ろで発せられた声に、ばっと振り向こうとする二人。

 

「はいストップ!」

 

いつの間にかシロの後ろに立つ横島の言葉につい反応して止まるシロ。

タマモはすでに横島とシロの方を向いている。

そして――

 

「はっはっはっは!!これが見えるかタマモ!下手な抵抗は止して降参するんだな!!」

 

彼の手から伸びる栄光の手はシロの首元に添えられていた。

その様子はまさに人質をとる犯人そのものだった。

 

「「だあぁぁ」」

 

ついこけそうになる二人。遠くで美神もこけている。

おキヌとパピリオは苦笑いだ。

 

「アンタ何考えてんのよ!!」

 

「せ、せんせぇ~、いくらなんでもこれはあんまりでござるぅ~」

 

タマモとシロの抗議が入るが横島も耳を貸さない。

 

「なぁに言ってんだ、最初に卑怯な敵つっただろ。油断してるお前らが悪い。で?どうすんだ、本物の敵で卑怯な魔族がこんなことをしてきたらどうする?タマモ」

 

正論である。

にしても先程までの雰囲気が台無しである。

 

「くっ……、狐火じゃシロまで巻き込んじゃう」

 

「味方のピンチだし、降参するか?」

 

「するわけ……ないでしょ!!」

 

また真剣な顔になる横島に少し気圧されつつも、挑発に飛び出すタマモ。と同時に横島の不意をつこうと振り向くシロ。

 

「馬鹿野郎……!!」

 

「「え?」」

 

タマモの足が止まる。

二人が横島の真剣な呟きに疑問を抱く前に、タマモの視界にはシロの背中から光り輝くものが飛び出しているのが見えた。

 

「か……かはっ……」

 

シロの口から赤い液体が落ちる。

まさか本当に刺すとは微塵とも思っていなかったのだろう、タマモの顔は蒼白だ。

 

「あ……あんた……なにを、何、してんのよ!!!!」

 

顔色が白から赤へと変化する。

怒りと勢いに任せて、横島へと突っ込む。

それを見て顔色も変えずにシロの腹部から栄光の手を抜いて、タマモへとシロを突き飛ばす。

 

「!!」

 

急ブレーキでシロを受け止めようとするタマモ。

 

「はい、終わり」

 

真後ろでする横島の声に背筋が冷える。疾い。

気づくとタマモは背中に横島が乗った状態でうつ伏せに横たわっていた。

横島の手には『重』の文殊が握られている。

 

「一回目はとりあえず終わりな」

 

淡々とタマモの背に座って言う横島。

その様子に憤るタマモ。

 

「アンタ!!自分が何やったかわかってんの?!」

 

「何がだ?」

 

呆ける横島。

その様子にぶちぎれるタマモ。

涙を浮かべて足掻くがどうにもならない。

その様子に苦笑して、先程まで自分とシロが居た方面を指指す横島。

横島を睨んでいたタマモは自然と指の先に視線をやる。

 

――と、そこには先程横島に人質に取られた時と変わらぬ姿で、呆然と立ち尽くすシロがいた。

当然腹部に穴も開いてない。

ぽかーんとシロを見た後、自分が受け止めようとしていたシロを見る。

横たわった血だらけのシロが霞んで行く。そこに残ったのは『幻』と書かれた文殊だった。

 

「――アンタ」

 

「俺がお前ら傷つけるわけ無いだろ」

 

笑いながら『重』の文殊を消す横島。

その瞬間に横島を弾き飛ばして跳ね起きるタマモ。向かう先は当然――。

 

「どわあぁぁ!!待てタマモ!もう一回目は終わりだって!!ちょ!当たる!!

やめて!その!どわぁ!狐火!!」

 

先程と違う意味も含んで顔を真っ赤にしたタマモが横島を追う。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ」

 

「そ、その辺にするでござるよ、タマモ」

 

仁王立ちして肩で息をするタマモを、珍しく宥めるシロ。

タマモの目の前には、ぷすぷすと煙を上げる真っ黒の物体Yがあった。

 

「シロ……、止めんの遅い……」

 

物体Y改め横島の涙ながらの台詞もスルーされる。止める遅さも考えると、シロも結構怒っていたのだろう。

 

「あのなぁ、怒るのは勝手だけど、俺は最初に『卑怯な敵を想定してくれ』とも『これから俺は敵だからな』とも言っただろ」

 

やれやれ、と立ち上がる横島。すでに怪我はない。

う、と詰まる二人。

 

「まぁ、知ってる人物である俺が相手だから今回は仕方ないとしても、さっきのタマモの行動は最悪だろ。

仲間が人質にとられてんのに後先考えずに突っ込む馬鹿がいるか。

お前なら幻術なり少し隙を作るなり出来るだろ。隙さえ作っちまえばシロが何とかするかもしれないしな。

場合にもよるけど、最悪降参しちまえよ!そこから隙をついて反撃できるかもしれないし。もしかしたら二人とも命だけは助けてもらえるかもしれないだろ。

あとシロも、敵が人質とって調子乗ってる時に一切お前の方見てないし油断してんだから隙をつけただろ。相手のペースに乗せられてどうする。

隙をつくタイミングも最悪だ。タマモが無謀な特攻して、敵が人質にしか頼れない時、お前まで動いたら殺される可能性が一番高いだろ。

あぁなっちまったら、もうとにかく霊的防御に徹しろ。

それ以前に二人とも一撃目で油断しすぎ。ただでさえ火柱で敵が見えないんだから油断すんな。シロなんかは気ぃつけてりゃ、匂いで俺が後ろに居るの察知出来るだろ。

――とまぁ、ほとんど小竜姫様の受け売りで、俺なりにアレンジ(卑怯とかな)しただけどな。

とりあえず、一回目の戦いで俺が伝えたかったのは、油断すんなってのと、いつでも最悪を想定して戦えってところかな。

――仲間は失いたくないだろ?」

 

最後に二人の頭に手を置く。

横島の言う事に何も言えない二人、突っ込みどころも多少あるが、言っている事に間違いはないのだ。

油断が仲間や自分の死に繋がる事は、幻とは言え今体験したところだ。

最後の言葉の時、悲しみと優しさが混じった顔をした事が少し気になりながらも二人が口を開く。

その意味を知っている三人は複雑そうな表情だ。

 

「拙者、勉強になったでござる。これからも自分の力に過信せず精進するでござる」

 

「まぁ、今回の負けは認めるわよ。教わる事もいっぱいあったし、アンタの特殊な強さもわかったわ。

でもシロの剣術だったり身体能力的な話はやっぱり稽古なんてつけられないでしょ?まだアンタのちゃんとした力は見れてないわ」

 

「言うと思ったよ。次はそれも含んで見せるよ」

 

苦笑しながら、もう一度タマモとシロから距離をとる横島。

 

 

 

 

「あの二人にはいい勉強になったでしょうね。私や横島君の横で仕事してんのに、トリッキーな戦いに慣れてないんだから。

実戦経験もつくし、今回の思いつきは意外と収穫かもしれないわね。

ただ、私が言った思い知らせてあげなさいってのは、こういう意味じゃないんだけどね~」

 

戦いの様子を見ていた美神がぼやく。

正直あの二人に見て欲しかったのは、自分とタメはれる程の横島の実力だったのだ。

 

「それは、ヨコシマも理解しているみたいでちゅよ。ホントは戦いたくないんでちゅよアイツは。一瞬美神を見て苦笑いしてたでちゅからね。

これからでちゅよ、ヨコシマの実力は」

 

 

 

 

二人から十分距離をとって、自然体で居る横島。

 

「さっきのは卑怯な敵を想定した戦いだったけど、二回目は――自分より強い相手との戦いを想定しろ」

 

「「!!」」

 

二人に対して霊力を乗せた睨みをきかせる横島。

美神の威圧感に似た横島のそれに圧倒される二人。

 

「あ、あいつってこんな霊力あったの?美神くらいはあるじゃないの」

 

「せ、拙者は知らないでござる」

 

「アンタの師匠でしょうが!」

 

「そんな事言ったって知らんものは知らんでござる!!」

 

冷や汗を流しながら、顔を向けずに罵り合う二人。

 

「協力しなくてええんか?お前ら霊力も力も人間より高いんだから。意外で固まるのはわからんでもないが、それじゃ勝てるモンも勝てんぞ」

 

少しプライドが傷つけられたのか、シロの眼が真剣なそれに変わる。先程の戦いにも思うところがあったのだろう。

 

「犬塚シロ、参る!!」

 

「あ、バカ!!」

 

タマモの制止も聞かずに霊波刀で横島に斬りかかるシロ。

それをいつの間にか出現させていた霊波刀で受ける横島。

止められた事に驚き、一瞬反応が遅れるもすぐ次の斬撃をうちこむ。

それも何処に来るかがわかっているかの様に横島に止められる。

 

「ならば!」

 

斬撃による乱舞。受け止められる度に違う角度から斬りかかる。

それをすべて逆の角度から打ち払う横島。

シロが上段から攻めると横島が下段から迎え撃ち、下段から打ち上げると同じ速度で上段から打ち払われる。

上下左右何処から攻めても斬撃は横島に届かなかった。

 

「人狼のスピードについていってる……」

 

その様子を呆然と見ていたタマモが呟く。

それに返事をするかのように横島が口を開く。

 

「いや、スピードについていってるわけじゃないぞ。

これはシロの癖とか、視線。後は俺が偶に斬りかかるフェイントを入れてシロの斬って来るコースを誘導してるだけだ」

 

「!余所見を、しないで戴きたいでござる!!」

 

打ち合いの最中にタマモの相手をされた事を馬鹿にされたと思い、一度下がって突きを横島に繰り出すシロ。

 

「おぉ、悪い。そんなつもりは無かったんだ。

……よしシロ、初めて師匠らしい事をしてやろう」

 

その突きを軽々と弾く。それから2、3歩下がる横島。

その横島の言葉に歓喜を表したいも今は戦闘中、すぐに振りかけた尻尾を抑えて構えなおすシロ。

 

「霊波刀はな、密度を上げるとこれくらいは出来るんだ」

 

横島が霊力のコントロールを研ぎ澄ますと、手にした霊波刀が手元から物質化していく。

シロもタマモも美神でさえも驚いて眼が離せない。おキヌはぽかーんとしている。パピリオのみがニヤリと笑っている。

数秒で、横島が手にしていた霊波刀の見た目は完全に刀になっていた。

 

「避けろよ?」

 

言ってシロに向かう。

そのスピードは相当速いもので、シロは咄嗟に自分の霊波刀で受けてしまう。

 

「わ!馬鹿!!」

 

横島の霊波刀を受け止めたと思った瞬間、止めたところからまるで豆腐でも切るかのように真っ二つに切れるシロの霊波刀。

そのまま霧散してしまう。

目を見開くシロ、しかしそれどころではない。

 

「なっ!!」

「どっせい!!って、のわぁ!!」

 

目の前で自分の霊波刀が消えてしまい、迫る横島の霊波刀に眼を瞑るシロ。

遠くでパピリオと美神が身構える姿があるが間に合うタイミングではない。

横島の言う事を守らなかった事に後悔しつつ衝撃を待つシロ。

最後に横島の声が聞こえた気がしたが、すぐにシロの身体を衝撃が襲った。

 

――ドカ――

 

しかしその衝撃はシロの想像していたものではなかった。

咄嗟の常識はずれの反応で、霊波刀を消し去っていた横島。

ただし、勢い付いた身体はシロと衝突していた。

結果――

 

「せ、せんせぃ。拙者、まだ心の準備が……」

 

シロを押し倒す形になっていた。

 

――ビキッ――

 

4箇所から何かが凍る様な音が鳴る。

 

「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!不可抗力や~!!シロも余計な事言うな~!!師匠を殺す気かぁ!!

――つぅか、大丈夫か?シロ」

 

跳ね起きて、純粋にシロの心配をする横島を見て4つの氷点下が収まる。

一つだけものごっつ黒かったのは気のせいだろう。それがパピリオと美神の隣から発生していたとしても、気のせいだったら気のせいだ。

 

「だ、大丈夫でござる。それにしても凄いでござるな、拙者の霊波刀を斬ってしまわれるとは……」

 

差し出された手に掴まって起きながら感心するシロ。

 

「単純に出力が違うからな、というか集束度が違うんだよ」

 

「しゅうそくど、でござるか」

 

「まぁ、簡単に言えばどんだけこの形に霊力を集めたかだな。俺、元々霊力のコントロールは得意でさ。それはそうと、シロはさっきので終わりな」

 

「クーン……」

 

事実横島が必死で攻撃をやめてなければ自分は少なくとも重傷を負っていたであろう事に、

うな垂れながらも負けを認めざるを得ないシロ。

最後に頭をポンと軽く叩いて振り返る横島。

 

「で、タマモはどうす」

 

「たぁ!」

 

「っと!」

 

振り返った瞬間にタマモの爪が眼前に迫っていた。

不意打ちに関心しつつも避ける。

めげずに連続で爪での攻撃を繰り出してくる。

シロと違い、フェイント等を織り交ぜている。シロには悪いがコイツの攻撃の方が避けにくい。

――でも比べちゃ悪いけど、まだ小竜姫様と比べると甘いな。

 

「ほ、ほ、ほ。流石に疾いし、上手いな」

 

少し頬を緩めて言う。

 

「油断!」

 

「!」

 

一瞬で狐火を横島に複数投げるタマモ、しかし横島はそれをサイキックソーサで全て相殺してしまう。

 

「油断はお前だったな」

 

言われてタマモが手元を見ると、自分の腹にいつのまにか霊波刀が伸びて刺さる寸前で止められている状態だった。

 

「……まいった」

 

 

 

 

 

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「ま、煩悩があると更に霊力が上がるのは今でも彼らしいですけどね」

 

「小竜姫、いつのまに戻ってたでちゅか」

 

美神達が声に振り替えると小竜姫が立っていた。

しょうがない人です、とぼやく小竜姫に対して、驚きを隠せない美神。

 

正直横島の実力がここまでとは思っていなかったのだ。

実力があるのは知っていた。シロタマが軽く見過ぎているから揉んでやれ程度の気持ちだった。

しかし、これでは自分も彼の力を軽く見ていた事になる。

意地っ張りな美神だったが、横島の実力はある程度認めていた。

しかしそれでも自分と同等か、少し自分より上くらいなものだと思っていたのだ。

これでも相当凄い。(実力という意味でも、美神が認めるという意味でも)

 

それがどういう事だろう、いつの間にこんなに差をつけられたのだろうか。

そう思い至って――背中を冷たいものが流れる美神。

もう若い世代の時代か……、自分がいつまでもトップで居られるわけがないか。

開いた口が塞がる。

 

――そして獰猛な笑みに変わる。

 

私は美神令子だ!そんなに大人しく引き下がる性格はしてるわけが無いだろう。

上等だ、前にも言ったが後輩に出し抜かれて黙ってるわけにいかないのだ。

 

その様子を横目で見て、苦笑しながら小竜姫は続ける。

 

「あなたがちゃんと基礎から教えていたらもっと早く成長してたかもしれないんですよ?

本当に驚きました。初めて彼がここで修行をしたいと言った時、最難関の修行コースが終わっているので普通の修行しか出来ないと言うと、それでも良いと言うので始めてみたら何も基礎を知らないのですから。あなたは今まで師匠として何を教えていたのですか」

 

「ア、アハハ~……」

 

頭を掻きながら、裏返った声で気まずそうに笑う美神。

 

「ハア……、気の練り方の基礎すら知らない者が、妙神山の最難関コースをクリアしたなど初めてのことで、老師なんて色んな意味でショックを受けたらしくしばらく引き篭もってしまいましたからね」

 

「老師はいつも引き篭もってんじゃないの」

 

それを言われると反論が出来ないのか、苦笑いの小竜姫だった。

 




教師になる前の模擬戦と同じような流れですね。
そして文字数多くなってしまった。。短編とはいったい。。。
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