どうやらISに常識人(自称)として転生したみたいです 作:凄まじき戦士
シリアスになったのは展開的に仕方なかったんや...
「...なんで箒がここにいるデス?」
「束さんがIS委員会を脅して作戦参加を認めさせたらしい...代わりに切歌がセシリアと一緒に俺たちのバックアップ、調たちがこの浜辺で待機して何かあったら動けだって」
セシリアの高機動パッケージの準備が終わり、出撃場所の浜辺に行くと白式を展開した一夏とその横には箒がいた。表情はいつも通りだが雰囲気が違っていた
「一夏、気を付けて。今の箒は嫌な予感がするデス」
「さっき千冬姉からも同じようなこと言われた。速度は作戦宙域までセシリアたちに合わせる、そこからは俺たちが先行する」
「ありがたいですわ」
「じゃあそろそろアタシたちも」
セシリアがISを展開する。ブルー・ティアーズは射撃機能を封印し、完全にスカート状のスラスターとしてのみ使うらしいデス。アタシもイガリマを展開してうつぶせになったセシリアの上に乗る。
「なかなか怖いデスね」
「前傾姿勢で私の両肩のアーマーを持ってください。イメージはバイクのハンドルですわ」
言われたとおりにすると姿勢が安定したデス。さすが代表候補生、一夏たちも準備が完了したようデス。
「織斑一夏。白式、出る!」
「篠ノ之箒。紅椿、参る!」
「セシリア・オルコット。ブルー・ティアーズ・ストライクガンナー、出ますわ!」
「暁切歌。イガリマ、行くデス!」
アタシたちは浜辺から飛び出した。そして箒以外が抱いていた嫌な予感が的中したのはこの数分後だった
『織斑先生、作戦宙域に到着しました』
[位置を確認した、篠ノ之と織斑はそのまま敵機と戦闘に入れ。オルコットと暁は宙域外で待機、何かあった場合に備えて機体間の通信はつなげたままにしておけ]
「了解デス」
作戦宙域に到達したアタシたちは速度を上げた一夏たちを見送る。今のアタシはセシリアにおんぶされているような状態で待機デス。
「切歌さんどう思います?」
「何がデス?」
「箒さんのことです」
そういうセシリアの顔は厳しい表情デス。誕生日プレゼントとはいえ世界最高の頭脳を持つ姉から専用機を譲渡、本人は一夏と一緒に戦える力が欲しい
「大いなる力には、大いなる責任が伴う...デスねぇ」
「箒さんは専用機の意味を分かってるのでしょうか?」
「箒は猪突猛進すぎますしねぇ。アタシも突っ走る時が多いデスけど、箒よりはマシだと思ってるデス」
「一夏さんたち、失敗しましたわね」
ハイパーセンサーで一夏たちの攻撃が外れたことを確認したセシリア、アタシの言ったことガン無視しましたね。ちょっと傷ついたデス
「もう一度やろうとしてますが無茶デスね。相手は完全に戦闘モードデス!」
「切歌さん!捕まってください!」
アタシたちは次の行動に移る、右手に鎌を持って左手でセシリアにしがみつく。一気に最高速度まで加速し福音に向かってジュリエットを放つ。しかしそれは避けられこっちもロックされる。放たれるエネルギー弾を鎌と両肩のアーマーではじきながら一夏に通信を入れる。
「作戦は失敗!いったん撤退するデス!」
「無理だ切歌!船がある!」
「まさか!密漁船ですか!」
一夏が指さす方を見ると船が見えた。海域封鎖に穴があったか、誰かが故意に見落としたかは分からないデスが
[織斑先生!どうしますか?]
[教師部隊と月読たちを向かわせる!それまで何とか守り切れ!]
「了解!セシリアはライフルで、一夏とアタシは...って箒!?」
セシリアに指示を出していると箒が福音に向かって攻撃する。まさかの命令無視デス!?
「箒!先生の命令聞いてたのかよ!」
「うるさい!そんな犯罪者など放っておけばいい!」
一夏が箒に向かってそう叫ぶが箒は耳を貸さない。あーもう!嫌な予感が的中したデス!
「箒さん戻ってください!」
「ふん!福音は私がやる!」
セシリアの制止も聞かずに、箒は二刀流での攻撃を始める。福音も最初は防御をしていたが徐々に回避し始める。
「くっ!なぜ当たらない!?」
箒は福音に避けられ続けてイライラし出した。いくら機体の性能が良くても操縦者が未熟ならば宝の持ち腐れデス。
しかも、その余波がこっちにやってくる。福音から出される光弾をそれぞれの武器ではじいたりして防御するが掠める攻撃でSEは減っていく。
「一夏、SEの残量は?」
「3割ちょっとだ」
一夏は既にエネルギー切れに近い状態になりつつあある。これ以上喰らえば確実にヤバイ、密漁船に逃げる様に指示を出してもこの状態ではさすがに無理デス。
「ぐあっ!」
箒の苦痛の声で顔を向けると福音の攻撃を喰らい吹き飛ばされる紅椿だった。
「セシリアは引き続き密漁船の護衛を!一夏!」
「わかってる!」
吹き飛ばされた先は密漁船、当たれば無事では済まない。最悪な事に福音は箒にとどめを刺そうと無数の光弾を放ち、しかも羽根の間では砲撃用のエネルギーのチャージも始めている。まともに食らえば全滅は免れないデス!
アタシと一夏は一直線に箒へと向かう。このままでは密漁船と箒が危ないし、無事ではすまない事はわかっていた。だがここで見殺しにする訳にはいかない。
「うおおおっ!!」
若干速かった一夏は勢いのまま箒を蹴飛ばして福音と密漁船の間に入る。
「ぐあああっ!!」
一夏の悲鳴と共に白式の装甲が破壊される。光弾を受けた一夏は海へと落下する。福音はさらにチャージしていたエネルギーを解き放とうとしていた。
(これは、捨て身で止めるしかないデス!)
「セシリア、調が来たらフォローよろしくデス...」
「切歌さん!?」
そう伝えてアタシは歌う。絶唱を
「Gatrandis babel ziggurat edenal.
Emustolronzen fine el baral zizzl.
Gatrandis babel ziggurat edenal.
Emustolronzen fine el zizzl.」
世界から色がなくなる感覚。全身が悲鳴を上げる。落ちていく一夏とそれを受け止めようとしている箒を庇うように鎌を巨大化させてビームを受け止める。しかし
「あああああああ!」
装甲がひび割れ、目から血涙が流れ始める。あまりの激痛に叫びながら耐える。喉が枯れ、ビームの衝撃がなくなって安堵すると体から一気に力が抜ける。視界が赤い、体も重く鉛のようデス...
(密漁船は無事...なんとかなったデス...)
密漁船を見て、思わず笑みがこぼれる。重力にひかれて海へと落ちていく
意識が落ちる寸前
海の冷たさと、必死な表情でアタシを引き上げる調の姿を見ながらアタシの意識は暗闇へと沈んだ。
(あ、そういえばこのまま死んだらどうなるんだろう?再就職ならぬ再転生?もしくは緑の死神としてあの世に就職?)
とどーでもいいことも同時に考えていた
「姉さん...」
どこかを呆然と見ながらつぶやく調。作戦失敗が通達された後、2人は臨時の緊急治療室へと搬送された。他の専用機持ちは千冬たちのいる臨時の司令室で待機している。
「山田先生、お二人の容態は?」
セシリアが尋ねると先生は首を振る。
「織斑君は全身やけど、暁さんはやけどに加えて絶唱のバックファイアにより全身がボロボロです...」
それを聞いた調は立ち上がる。そして部屋の隅でうずくまっている箒の胸ぐらをつかんで立ち上がらせ、右手を大きく振りかぶった。
「落ち着け月読」
「いやです、離してください」
「殴っても何も変わらん。冷静になれ!」
それでも箒を殴りかかろうとする調を必死に止める千冬。今の調は箒を殺しかねないと判断したからだ。
「それでも!私はっ!」
「気持ちはわかる!それで暁たちの容態が回復するわけじゃない!」
「ですが!」
箒から強引に引きはがされた調は尻もちをつく。千冬は真耶を含めた教師陣に命令を下す。
「作戦は失敗だ。以降、状況に変化があれば招集する。それまで各自待機しろ。山田先生、篠ノ之を別室に連れていけ。そいつは次の招集まで謹慎処分にする」
「は、はいっ!わかりました」
真耶は千冬に言われて箒を連れていく。教師陣や他のメンバーが散り散りになり、セシリアは調の肩に手を置く。
「大丈夫ですわ、調さん。切歌さんはお強いですもの」
「うん...」
「それに、しばらくすればいつもの調子で目が覚めますわ。それまで私たちでできることをいたしましょう」
「うん...ありがとうセシリア」
そういった調の目には気力がみなぎっていた。
一方その頃
「なあ切歌」
「なんデスか?」
「ここどこだ?」
「一夏、その言葉をそのまま返すデス」
「だよなー」
撃墜されて昏睡状態の2人はよくわからない場所にいた
セシリアがまとも枠におさまっている?
この作品の絶唱は絶対防御発動ギリギリまでエネルギーを使って発動するものです。
エネルギー補給の手段があったり、瞬間的な攻撃などの使用には問題はないですが今回のような状況だと危険です。