「この里に人が来るなんて何年ぶりかしら? 来てもどいつもこいつもろくでもない連中だったから怖がらせて追い返していたけど、あんた達は違うみたいね」
彼女には、
あたしたちが何をしにここへ来たか、
全部お見通しみたいだった。
「私はシャルル。魔導士ギルド、妖精の尻尾のシャルルよ」
「あっあたしはルーシィ。星霊の魔導士よ」
「そう、魔導士ね。ワタシはメモル。この里の、生き残りだった。
「生き残りって、いったいこの里で何があったの!?」
「教えてあげるわよ。そのためにこんな姿になってまで存在してるわけだからね」
彼女は、
メモルはこの里で起こった出来事を語ってくれた。
それは、
やっぱり何百年も前の話だった。
「この里は、巨大なワラキアの影に閉じ込められていた。絶対的な力を持つワラキアに、人間が対抗する術はなかった。ただ幸いというべきか、ワラキアは人間を滅ぼしたりはしなかった。ワラキアは百年に一度目を覚まし、食糧を得ると再び眠りにつく。だから人間は大人しく食糧を与え、里の脅威を払って来た」
「まさか、食糧っていうのは――」
「人間の女よ」
「「!?」」
「人間の女を食らい、その魔力を取り込むことで、ワラキアが命を繋ぐ。この里には、そのための生贄となるべく運命づけられた女たちがいた。『御伽の巫女』、里の者はそう呼んでいた」
彼女の話は
マーシィが教えてくれた言い伝えとよく似ていた。
「ワタシは、その最後の『御伽の巫女』だった」
「そんな!? じゃあ、あなたはワラキアに……」
「いいえ、ワタシは、逃げ出したのよ。ワラキアの所から、走って…走って……」
メモルの声は震えていた。
彼女の声は、
まるであたしたちに過去を目で見せるかのように、
強く、
何かを訴えているようにも感じられた。
「でも崖から落ちて、ワタシは、気を失ってしまったの……。目が覚めた時にはもう、ワタシの生まれ育った里は、滅ぼされた後だった」
「生き残ったのは、あなただけなの――?」
「もう一人、もう一人いたわ。ワタシは彼を逃がそうと、この体をワラキアに捧げることにした。彼は山の中に逃げて行って、それからどうなったかは……」
彼女が知っているのは、
そこまでだった。
彼女の話はマーシィの昔話に似ているようで、
でも大きく食い違ってた。
「まずワラキアそのものについて!」
シャルルの風を切る音に負けないよう声を張るのは、
なかなかに大変なんだけど、
それでもあたしは黙っていられなかった。