どうも、最近感想の少なさと平均評価が下がっていく事に落ち込んでる読者その1です。
目標の真っ赤な評価ゲージは程遠い……
【7】
風と樹の二人は驚いていた。
矢を放つバーテックスと、その矢を反射させる板を巧みに使って降り注ぐ矢から逃げ惑う事しか出来なかった風と樹は樹海の根を盾にして、攻撃を凌いでる時、突然空から尻尾を千切られたバーテックスが降ってきて、板を操るバーテックスを下敷きにしたのだ。
突然の出来事に唖然としている二人の元に、友奈と美森が合流した。そして合流するや否や、友奈は二人に向かって手を振って言った。
「その海老持ってきたよぉ〜」
「いや、サソリでしょ」
「ど、どっちでもいいんじゃないかな……」
持ってきたよぉ〜の部分を聞かなかった事にして突っ込む風と、その姉に突っ込む樹。
「遠くの敵は、私が受け持ちます」
「東郷!?」
「東郷先輩!?」
その言葉で、漸く美森の存在に気が付いた風と樹。
「東郷!士郎はどうしたの?」
「先輩なら足を負傷して、安静にする様に言って来ました」
美森の言葉に、目を見開く風。
「足を!?全く、士郎の奴。約束したのに」
「お、怒らないで下さい風先輩。私を庇って負った怪我なんです。東郷さんから聞きました」
友奈の言葉に、怒るに怒れなくなった風は、怒りを鎮める。まあ、そうは言っても大して起こっていた訳ではないのだが。
「……そう、まあ良いわ。今はバーテックスよ!戦えるわよね?東郷」
美森は「はい」と頷くと、ライフルの三脚を立てて俯せになる。
「よし、樹、友奈!手前の二匹纏めて行くわよ!」
風の指示に「オッケー」とフランクに返事をする友奈と樹。
「まだ、敵は隠し技を持ってるかもしれません!不意の攻撃には注意して!」
美森の警告に「はい」と敬礼をして返事をする友奈と樹。その場を跳び去り、バーテックスに向かって行った。
「私のより、返事が良い……」
風は落ち込みながらも、バーテックスに向かって跳んで行った。
そして、先程まで無数の矢を絶え間無く放っていたバーテックスは下の口を閉じ、上の口を開け、美森に向けて矢を放った。
「撃ち墜とす」
そう呟いて引き金を引く美森。ライフルから放たれた弾とバーテックスから放たれた矢が衝突し、爆発する。
「もう、お前達の好きにはさせない」
そう呟き、数回引き金を引く。
放たれた弾は全てバーテックスに命中し、ダメージを与える。
一方の友奈達の方は、封印の儀を始め、二体のバーテックスから御魂が現れた所だった。
「よし、私が行きます!」
そう言って前に出たのは友奈だった。
友奈は御魂に高速で近付き、拳を突き出すが、拳が当たる前に、御魂はヒョイと友奈の拳を避けた。
「あれ?もう一回!」
友奈は再び、御魂に近付き拳を突き出すが、結果はさっきと同じで、拳が当たる寸前で避ける御魂。
更にもう一度、同じ事を試すが、結果は同じだった。
「こ、この御魂避ける!?」
「右に避けろ」
「え?」
背後から此処に居る筈の無い人物の声を聞き、反射的に背後を振り向く友奈。
友奈が背後を振り向いた瞬間、友奈の直ぐ横を矢が突き抜け、御魂に深く突き刺さった。
「
此処に居ない筈の人物、士郎がそう詠唱すると突き刺さった矢が爆発し、御魂は拡散した。直後に板を巧みに使って散々友奈達を苦しめたバーテックスが砂と化した。
「士郎!アンタ何で此処にいんのよ!?」
「約束は破ってないぞ。結果的にトドメを刺してしまったけど、遠距離で援護の範疇だと思うぞ?」
「し、シロー先輩!じっとしてて下さいいって言いましたよね!?」
「あ、足を怪我したんじゃなかったんですか!?」
「ん?ああ、治った。それより、もう一つの御魂を破壊するのが優先だろ?」
士郎の指摘に、三人ははっと御魂がもう一つある事を思い出し、まだ士郎に色々言いたい欲求を、無理矢理飲み込んだ。
「後で覚えてなさいよね……」
風が士郎を睨んで呟き、もう一つの御魂を破壊しようとした時だった。
残った御魂が高速で回転を始め、増えたのは。
「今度は増えた!?」
「硬かったり、避けたり、御魂ってのは面倒ね!樹!増えたなら纏めてやりなさい!」
「うん!お姉ちゃん!」
樹は「えい」と掛け声をかけた後、右手から出したワイヤーで増えた御魂を纏め上げた。
「良くやったわ!よし、トドメはわたーー」
「勇者パァァァンチ!!」
「しが……」
風が言葉を言い終えるよりも早く、友奈の拳が御魂の塊を破壊した。
「えっと、風先輩、何か言いました?」
「……何でもない」
フィニッシュを友奈に取られた風。
この後、鬱憤を晴らすために樹のプリンとアイスが犠牲となるのを、樹はまだ知らない。
「後一体!気合い入れて行くわよ!」
「「「おお!」」」
友奈、風、樹の三人は矢を放つバーテックスの封印に向かい、士郎は援護射撃を続ける美森と合流し、援護射撃に加わる。
「先輩。足はもう大丈夫なんですか?」
美森の問いに、士郎は「ああ」と頷く。
「勇者服の回復機能ってのは凄いな。全治一ヶ月は掛かると思った傷が、たった数分で治るんだから」
「それは凄いですね……ところで先輩」
「なんだ?」
美森は聞こうとした。自分が変身をしようとした時に叫んだ告白紛いの発言を、士郎が聞いていたのかを。
「……いいえ、やっぱりなんでもないです」
けれど辞めた。少なくとも、今は聞かない方が良い。そう考えて。
そしてその間も、士郎と美森は一切手を緩める事なく、性格無慈悲な射撃を続ける。そんな射撃を見て、封印の儀を始めようとしている友奈達は皆同じ事を考えた。
(((あれ?私達要らなくない?)))
と。実際には、精霊を持たない士郎は封印の儀を行えないし、美森もこんな離れた距離から封印の儀は行えないので、友奈達は必要なのだが……それでも、友奈達は自分達の存在価値に疑問を抱かずにはいられなかった。
暫くした後、友奈達の手によって封印の儀が始まり、バーテックスの上の口が大きく開き、その中からは矢ではなく、御魂が現れた。
「出たな」
「これで終わらせる!」
美森が引き金を引くが、そこで初めて、美森が弾を外した。
いや、正確には御魂が動いた事により外れたと言うべきである。動かなければ、そのまま美森が放った弾丸は御魂の中心部を正確に射抜いていた筈である。
「……屈辱」
「気にするな。誰だって外す時は外す」
奥歯を噛み締めて悔しがる美森に、士郎はそう声を掛けて慰めた。
美森は今度こそと、スコープを覗き、目を大きく見開いた。
御魂がバーテックスの体の周りを回り始めたからである。それも超高速でありながら、ただ周囲を回るたげでなく、不定期に進行方向を変え、上下左右に回っていた。
「ちっ」
美森は舌打ちをしながら、引き金を引く。
だが、弾は御魂に当らずに空を切る。
その後も二度、三度と先程まで正確無慈悲な射撃を続けていた美森とは思えない程、ライフルを乱射する美森……半ばヤケになっていた。
「落ち着け美森。ありゃ、無理だ」
そんな美森を落ち着かせる為に、士郎は美森の肩に手を置いて言った。
「……先輩でもですか?」
「ああ、単純に高速回転するだけなら、問題なかった。多分美森もな」
「そんな。ただ回転するだけでも、私じゃ多分……」
「美森に無理なら、俺でも無理だ」
「え?」
「俺と、美森の射撃技術にそれ程の差は無い。いや、どちらかと言うと、美森の方が俺よりセンスがある」
「そんな。謙遜です」
お前もな。と吐き出しかけた言葉を飲み込んだ士郎。
「謙遜なんかじゃないさ。美森は俺よりも凄い」
「いいえ、凄いのは先輩の方です!」
「いいや、美森だ!」
「先輩です!」
「美森だ!」
両者一歩も譲らず、互いを褒め合う二人。暫し睨み合い、やがて二人は同時に微笑んだ。
「啀み合ってもしょうがない。二人共互角って事で手を打とう」
「不服ですが致し方ありません。それで?先輩は何か打つ手があるんですよね?」
「……なんで分かった?」
「女の勘です」
美森の答えに、士郎はふっと息を吐いた。
「そりゃ、敵わないな。ああ、あるさ。逃げ惑う敵を確実に射抜く武器が。
そう詠唱すると、士郎の手に血の様に真っ赤に染まった魔剣が現れる。士郎はその魔剣を弓に番え、弓を引く。すると、士郎の周辺に魔力の風が吹き荒れる。
そして、十分に力を蓄えた士郎は矢を放った。
「
士郎が放った矢は、当然の如く御魂に当たる様な軌道ではなかった。それもその筈、士郎は
本来、矢を引き、
「え?」
隣で士郎の放った矢の行く末を見守っている美森が、驚きの声をあげた。
それもその筈、御魂を大きく外れた筈の矢が、まるで意思を持ったかの様に、御魂の方へと大きく旋回したからだ。
「せ、先輩。あれは?」
思わずスコープから目を離し、士郎の方を見て尋ねた美森に、士郎は先程放った矢の説明をする。
「あれはフルンディング。射手が健在かつ、狙い続ける限り、標的を追い続ける追尾の魔剣だ。正直言って、あれを使うのは反則してるみたいで嫌だったんだけどな」
そう言って頬を掻く士郎。だがその目は、御魂から目を離さない。
逃げる御魂。それを追うフルンディング。速度は変わらない。だが。
「
御魂とフルンディングの距離が数メートルまで近付いた頃、士郎が壊れた幻想を使用した事で決着が着いた。
士郎はフルンディングで御魂を射抜くのではなく。壊れた幻想による爆発で御魂を破壊する手段を選んだのであった。
そしてその選択は正しく、御魂はフルンディングの壊れた幻想によって、破壊され、光となった。
「……終わったな」
光と化す御魂と、砂と化すバーテックスを見て、士郎はそう呟いた。
全てのバーテックスが撃破され、樹海化が解ける頃、士郎の左手に浮かんだ花弁の枠は、
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