衛宮士郎は英雄と成る【ゆゆゆ編完結】   作:読者その1

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後日談、というか今回のオチ


第8話 ■■の行方

【8】

 

 

 樹海化が解けた後、勇者部一同は樹海化に巻き込まれる前の場所ではなく、社がある屋上に居た。

 

「あれ?此処は?」

 

 周囲を見渡しながら、士郎が呟いた。

 

「学校の屋上よ。そう言えば、士郎は樹海化が解けたら、此処に戻るって知らなかったんだっけ?」

「ああ」

「じゃあ、覚えておきなさい。私達が樹海化した世界から戻ってくる場所は、元いた場所じゃなくて、この社がある学校の屋上よ。因みに、私達が樹海で戦っている間、この世界の時間は止まっているわ」

 

 昨日、友奈達にした説明を士郎にする風。

 

「そっか、昨日、シロー先輩気絶してたから、知らないんだ」

「私達も、昨日は驚いたよね」

「昨日は突然居なくなった事を問い詰められて、大変だったよぉ〜」

「大赦のフォローのお陰で、今後私達が突然居なくなる時は大赦の御勤めの為って事をクラスや先生方達に説明はしてもらったわ」

 

 昨日の事を各々振り返る友奈、美森、樹、風。

 

「あ、そう言えば東郷さん!今日の射撃凄かったよぉ!滅茶苦茶かっこよかったよ!私が男なら惚れちゃいそうなぐらい!」

「そ、そう。ありがとう友奈ちゃん」

 

 先程の出来事を思い出して興奮し、美森に抱き着く友奈。そんな様子の友奈を満更でもない様子で受け入れる美森。

 

「本当に助かったわ東郷……それで」

「覚悟は出来ました。私も友奈ちゃんや樹ちゃん。先輩達と同じ勇者部部員として、勇者として一緒に戦います」

「……東郷。ありがとう。そしてごめんなさい。私がもっと早く、勇者部の本当の目的の事を……」

 

 美森の言葉に感謝し、そして謝罪をする風。

 

「風先輩。気にしないで下さい。私も部室では言い過ぎました。ごめんなさい」

「東郷……うん。これから、一緒に国防に励もう!」

「国防……はい!」

 

 美森と風が和解出来たことに、ホッと息を吐く士郎、友奈、樹。

 

「これで士郎の無茶も減るわね」

「あ、そうだ!士郎さん、足怪我してるんでした!病院行かないと!」

「そうだ!私を庇って!血がドバーッと!」

 

 士郎をジト目で睨みながら呟いた風の言葉に、士郎が足を怪我した事を思い出して慌てる樹と友奈。

 

「落ち着け二人共。もう治ってるし、痛みも無い。ほら」

 

 本当に治ってる事を証明すべく、怪我をした方の足で何回かジャンプする士郎。

 

「まあでも、一応病院には行きなさい士郎。大赦が経営する病院ならただで診察してくれる上に、勇者の事情も知ってるから」

「そんな、大袈裟な……」

「先輩。病院行かないと、一週間梅昆布茶を出しますよ」

「よし行こう!今すぐ行こう!」

 

 衛宮士郎。苦手な物は梅昆布茶。

 曰く、昆布茶のどろっとした感じが駄目らしい。

 

 

【9】

 

 

 その日の夜。

 あれから、士郎は勇者部付き添いで、大赦が経営する羽波病院で診察を受け、異常無しと診断された勇者部は解散、其々の帰路に着いた。

 そして、友奈は今日は家族と夕食を共にし、士郎と美森は二人きりの夕食を終え、片付けの最中であった。

 士郎が食器を洗い、隣に居る美森が食器を拭いて棚に戻す。その光景は夫婦でしかない様に思えるが、実際の所は二人は付き合ってすらいない。あくまで、家が隣同士で先輩後輩の中でしかない。少なくとも、今は……

 

「せ、先輩……」

「なんだ美森?」

 

 最後の食器を片付けた後、美森は士郎に声を掛けた。

 士郎は帰路の途中、夕食を作る時、夕食を食べる時、美森の口数が何時もと比べて少なかった事を気にしつつ、何時もと極力変わらないトーンを心掛けて返事をした。

 

「あの、その、今日の……今日、私が変身した時の事……覚えて、ますか?」

 

 緊張した様子で、言葉が途切れ途切れになりつつも、なんとか言葉を紡いだ美森。今は士郎から目線を逸らし、顔を真っ赤にしている。

 そんな様子の美森に、士郎は申し訳なさそうに、頬を掻きながら答えた。

 

「……すまん美森。あの時はバーテックスの攻撃を凌ぐのに精一杯で、美森の方を見る余裕が無かった」

「……そ、そうですか」

 

 返って来た答えに、美森は若干ショックを受けつつも、安堵した。頭に登った血も徐々に下がり始め、速くなった鼓動も落ち着きを取り戻し始めた。

 

(……まあ、あんな勢いで告白しても……でも、唐変木な先輩からの告白は期待出来ないし、いっそ、この場で告白するのも……いえ、でもそんな破廉恥な事(こくはく)なんて、出来る訳ないじゃない!は!私は既に破廉恥な事をしてしまってるわ!)

 

 徐々に加速し始める、美森の思考回路。

 

「でも」

 

 そんな思考回路を、士郎は次の一言でショートさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美森が()()()()()って言ってくれたのは、聞こえた。嬉しかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉に美森は、思考を停止(ショート)した。

 やがて士郎の言葉を徐々に理解すると、落ち着きを取り戻した鼓動が、再び鼓動が高鳴り、血液が顔に集中する。

 

「俺も大好きだよ。美森」

「はうっ」

 

 ボシュと頭から煙を出す美森。

 

「そ、それは……つまり、わ、私達は……りょ、りょ、りょ、りょ」

 

 今にも消えそうな声で「両想い?」と言葉を続けようとして、続かない美森。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勿論。友奈も、風も、樹も、みんな大好きだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 だが、そのヒートアップした思考は、まるで大量の冷水を頭から被せられたかの様にヒートダウンしていった。

 

「ん?勇者部のみんなが大好きって事だろ?」

 

 その瞬間、美森は理解した。

 士郎が受け取った大好きの意味はLOVEではなく、likeだという事を。

 その事を理解すると、美森は拳を握り引き絞った。

 

「せ、先輩の馬鹿ぁぁぁぁぁ!」

「ぐぼぉ」

 

 そして士郎の眉間、人中、鳩尾へと三段突きを放った。

 

「な、なんで……さ」

 

 美森の三段突きにより、士郎はKO。地に倒れ臥す。

 美森は顔を真っ赤にしながら、車椅子を操作して家に帰って行った。

 そして、美森の居なくなった部屋で、士郎は薄れ行く意識の中で呟く。

 

「ま、まさか、美森の言ってた大好きって……そう言う意味、なのか?」

 

 そう呟き、ガクッと気を失う士郎。

 美森は知らなかった。衛宮士郎という人間が、それ程鈍い人間ではないという事を……士郎が好意を向ける人間が()()()()()()、既に二人は恋人関係になってても、可笑しくなかったのだと。

 だが、士郎はその好意を()()()()()()()()()()()()()、その好意を愛情ではなく、友愛だと勘違いするのも、仕方がないとしか言いようがない。

 これは誰が悪いとも言えず、ただ言えるのは、複数の人間から好意を向けられる士郎を好きになってしまった、美森の不運を嘆くしかないだろう。

 そして、今回の出来事で士郎は美森に好意を向けられ、告白されたのだと気付いたのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 美森から受けた三段突きにより、士郎は病院で解散して以降の、()()()()()()()()()()()

 つまり、それは美森が変身時に叫んだ告白を友愛による物だと勘違いしたままの士郎であり、告白だと気付き、ちゃんと答えを出そうと決めた士郎は、()()()()()()によって殺されてしまったのであった。

 仮に、美森が士郎に三段突きを見舞わなかったならば、二人が恋人となった美森ルート(みらい)も存在したのだが……それを知る者は居ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




と言う訳で、自らフラグを折ってしまった美森さんでした。

次回、赤い服に身を包んだ二刀使いが登場!

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