衛宮士郎は英雄と成る【ゆゆゆ編完結】   作:読者その1

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今更ですが、沢山の誤字報告感謝です!


第12話 決戦

【1】

 

 

 この日、久し振りに樹海化に巻き込まれた勇者部一同は、バーテックスが現れた方向を見て唖然としていた。

 

「おい、これは何の冗談だ?残り七体。全部来てるんじゃないか?」

「来てるんじゃないか、じゃなくて来てるのよ。総攻撃……最悪なパターンね。やりがいあり過ぎて、サプリも増し増しだわ」

 

 そう言って、ポケットから取り出したサプリメントを口に含む夏凛。

 

「程々にな」

「分かってるわよ。樹もどう?サプリ決めとく?」

「その表現はちょっと、遠慮しときます」

 

 そう言って、サプリの入った容器を差し出す夏凛に、樹は苦笑いをしながら遠慮した。

 

「バーテックス、何で直ぐに攻めて来ないんだろう?」

「さあ?神樹様の加護が届かない壁の外に誘き出すのが目的なのかも」

「どの道、壁の外に出てはいけないって教えがあるから、私達は此処で待ち構えるしかないわ」

 

 夏凛がそう言った後、偵察に向かっていた風が戻って来て言った。

 

「敵さん。壁ギリギリの位置から攻めて来るみたいよ」

「決戦だな。俺達も準備を始めるか」

 

 そう言って、士郎は変身しようとしたが、不安そうな表情を浮かべる樹に気付き「不安か?」と声を掛けた。樹は小さく「……はい」と頷いた。

 そんな樹に、友奈が励ますように声を掛けた。

 

「大丈夫だよ樹ちゃん。みんな居るんだから」

「友奈の言う通りよ、樹」

「樹ちゃん。勇気出して行こう」

「ふん、完成型勇者の私が付いてるのよ。何を不安がる必要があるんだか……」

 

 友奈に続いて、樹を励ます風、美森、夏凛。

 そして、樹の不安が和らいだ。そう感じた士郎は叫んだ。

 

「よし、勇者部一同、変身だ!」

「「「「はい!」」」」

「それ、私が言おうとした台詞!?」

 

 士郎の号令に従い、各々は勇者アプリを開き変身を開始した。

 赤、ピンク、青、緑、赤と色取り取りな花吹雪に包まれ、勇者に変身した。

 

「敵ながら圧巻ね」

「まあ、総力戦だからな」

「逆に言えば、こいつ等殲滅すれば戦いは終わりね」

 

 七体のバーテックスを見て、各々感じた言葉を述べる美森、士郎、夏凛。

 そんな中、樹とは別の意味で、不安そうな表情を浮かべた風が、士郎に近付いて声を掛けた。

 

「士郎……」

「なんだ?」

 

 真剣な表情を浮かべる風に、士郎も真剣な表情を浮かべて返事をした。

 

「無茶をするな、無理をするな……とは、この際言わないわ。これだけの総力戦、無茶も無理も無しに勝てるとは思ってないから……でも、これだけは約束して、死なないで」

「……………」

 

 風の言葉に、士郎は少し間を置いて答えた。

 

「承知したよ。部長」

 

 士郎の返事に満足した風は顔から不安の表情を消し去ると、何時も通りの明るい表情を浮かべて言った。

 

「よし、なら此処は、あれやっときましょう」

「あれ?」

 

 夏凛は風の言ったあれの意味が分からず、首を傾げるが、他の勇者部メンバーは風の言った意味を理解し、黙って円に状に集まり方を組み始めた。それを見て、夏凛も風の言うあれの意味を理解した。

 

「え、円陣?それ必要かしら?」

「勇者には気合が必要なんだろ?」

「なら、これも必要な物よ」

「ほら、夏凛ちゃんも一緒に!」

 

 夏凛の手を引く友奈に、夏凛は満更でもなさそうな表情で言った。

 

「しょ、しょうがないわね。べ、別にやりたくてやってる訳じゃないんだからね」

「無理しなくても良いんだぞ?嫌なら俺達だけでも」

「む、無理なんかしてないわよ!……嫌じゃないから、私も混ぜなさいよね」

 

 何やかんやで、円陣に混ざる夏凛。円陣を組み終え、風は一度深く息を吸って、吐いた。

 

「ふう……」

「その息の吐き方は、自分の名前と掛けてるのか?」

「ぷっ!」

 

 士郎の問いに、思わず吹き出す友奈達。

 

「そんな訳でないでしょう!真剣な事言おうとしてんだから、茶化さない!」

 

 顔を真っ赤にして叫ぶ風。ツボに嵌って声を抑えて笑う友奈と樹。笑いに堪える夏凛。隣で風から顔を晒して、肩を震わせる美森を無視して、風は真剣な声で言った。

 

「アンタ達、勝ったら好きな物奢ってあげるから、死ぬんじゃないわよ」

 

 風の真剣な言葉に、漸く落ち着きを取り戻した友奈達。

 

「なら、私は先輩の手料理を所望します」

「え?毎日食ってるだろ?」

 

 美森の言葉に驚く士郎。

 

「あ、なら私も、東郷さんと同じ物を」

「ゆ、友奈まで!?」

 

 友奈も美森に続き。

 

「わ、私もです」

「樹!?」

 

 更に樹が続いた。

 

「そうねぇ。なら私は、美味いって評判の衛宮の和食を頼もうかしら?」

「三好もか!?」

 

 更には夏凛までもが、風が奢れる様な物ではなく。士郎の手料理を所望する。

 

「なら、私も士郎の手料理をご馳走になろうかしら」

「風が好きな物奢るんじゃなかったのか!?」

 

 その流れに乗っかる様に、風も士郎の手料理を所望し、それに突っ込みを入れる士郎。

 

「まあまあ。私も手伝いますから」

「勿論私もよ」

 

 美森と風の言葉に、士郎は溜息を吐いて諦めた。そして覚悟を決めた。

 

「こりゃ、死ぬに死ねない約束を、二つも交わしてしまったな……良いぞ。俺は勝って、お前達に料理を振る舞う。だから、お前達も絶対に生き残れ!」

 

 士郎の言葉に「了解」と答える勇者部一同。

 そして戦闘が始まった。

 美森はその場に残り、地面に寝そべってライフルを構える。友奈、風、樹、花凛の四人はバーテックスに向かって駆け抜けるが、その四人を追い越して、士郎が前に出た。

 

「ちょっと士郎!アンタは前に出ない!」

 

 風の制止する声が聞こえなかったのか、或いは聞こえていながら無視したのか、それは定かではないが、士郎は止まらなかった。

 

投影開始(トレース・オン)

 

 士郎が最初の標的としたのは、他六体のバーテックスから突出して前に出た、長い胴体に二つの足が着いたバーテックス。

 士郎はそのバーテックスに向けて、投影した干将・莫耶を投擲した。双剣は其々、バーテックスの両足の付け根に突き刺さり爆発、バーテックスの足を吹き飛ばして行動不能にした。

 その後に、遅れて到着する花凛。

 

「衛宮!前に出過ぎよ!引っ込んでなさい!」

 

 夏凛の言葉に、士郎はこう反論した。

 

「いや、前衛後衛を熟せる俺だからこそ、前に出るべきだ。援護は美森一人で十分だし、俺は体力が減れば後方に下がって援護に徹する事が出来る。此処は俺が前に出て、三好達はまだ体力を温存すべきだ」

「それだと、アンタ一人に負担が掛かるじゃない!」

「今回バーテックスは七体も居るんだ。こうでもしなきゃ、きっと勝てない。それよりも封印だ。俺は封印の儀を行えない」

 

 士郎の言葉に夏凛は舌を打ち、八つ当たりをする様に刀を地面に突き刺し、封印の儀が始まった。

 出現する御魂。だが、やはりと言うべきか、御魂はただでは壊されないと言わんばかりに、ドリルの様に高速回転を始めた。

 御魂に刀を投擲する花凛だが、刀は弾かれて地面に突き刺さる。

 

「此処は私に任せて下さい!」

 

 士郎と花凛に合流した友奈、風、樹。

 友奈がそう叫び、御魂を殴って回転を止める。

 

「東郷さん!」

 

 友奈が美森の名を叫んだ直後、美森の射撃により、御魂は破壊された。

 

「ありがとう。東郷さぁぁぁん!」

 

 美森が居る方に向かって、手を振る友奈。

 取り敢えず、一体目を難無く倒せた事に安堵する士郎だったが、直ぐに違和感を感じた。

 

(待て、簡単過ぎる。前回三体同時にバーテックスが襲来した時、バーテックスは連携して襲って来た。なら、バーテックスは連携する知恵が有る。にも関わらずだ。何故、このバーテックスは叩いてくれと言わんばかりに突出して来た?)

 

 士郎がそこまで考えた直後、士郎達の周りから耳を塞いで蹲る程の鐘の音が鳴り響いた。

 

「くっ!そういう事か!」

「き、気持ち悪い」

「こ、このくらい……勇者なら……やっぱり無理」

「の、脳が震える!」

 

 バーテックスが鳴り響かせる騒音に、戦う力を失う士郎達。そんな状況を打破すべく、鐘の音が届かない程遠くにいる美森は、戦闘不能に陥らせる程の音を鳴り響かせるバーテックスを狙撃しようとするが、そんな美森を大きな揺れが襲った。

 

「くっ、地面の中に敵が!」

 

 まるで水中の様に、地中を潜りながら地面を揺らすバーテックス。美森は標的を変え、先ずは地震を起こすバーテックスを狙撃しようと試みるが、揺れの所為で標準は上手く定まらず。定まった頃には敵は地中の中だった。

 

「まるで潜水艦ね。鬱陶しいわ」

 

 そして鐘の音により、行動不能だった士郎達の方で進展があった。

 

「お、音はみんなを幸せにするもの!こんな音は、こうです!」

 

 樹がそう叫び、騒音を鳴り響かせるバーテックスの鐘をワイヤーで拘束、戦闘不能に陥らせる程の音を止ませた。

 

「樹!よし、先ずはアンタ達からよ!」

「風!一撃で三体纏めて御魂を破壊するから、時間稼ぎ頼む」

「了解!」

 

 鐘の音が止み、戦闘を再開し始めた勇者部一同。

 

投影開始(トレース・オン)

 

 士郎が詠唱すると、その手に赤い稲妻が走り、疲弊しきった前回とは違い、体力に余裕がある今回は、スムーズに赤い魔槍を投影した。

 

「はぁぁぁ!」

 

 風は身の丈以上ある大剣を更に巨大化し、戦闘不能となった間に、近付いて来たバーテックスを二体纏めて斬り裂いた。

 士郎は「よし」と呟くと、魔槍に魔力を込め始めた……その直後だった。風に斬られた二体と、鐘の音を鳴り響かせたバーテックスが後退を始めた。

 

「あわわわ」

 

 そして鐘の音を鳴り響かせたバーテックスとワイヤーで繋がっている樹が引っ張られ、不味いと思った士郎は、咄嗟に樹と繋がっているワイヤーを魔槍で斬り解いた。

 

「あ、ありがとうございます」

「どういたしまして。奴等、何を始めるつもりだ?」

 

 士郎がそう呟いた後、一際大きいバーテックスの元に集まったバーテックスは、まるで士郎の言葉に答える様に、()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




死亡フラグを乱立させた士郎、果たして士郎は生き残れるのだろうか……

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