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【4】
その夜。旅館に戻った勇者部一同は、次々と部屋に運ばれて来た料理を見て、呆然と立ち尽くしていた。
今、勇者部一同の目前には人数分の蟹や鯛の刺身を始めとした、高級料理の数々がテーブルに並び、その光景に皆唾を飲んだ。
「え、えっと……部屋間違ってませんか?俺達にはちょっと、豪華過ぎる気が……」
「いいえ、とんでも御座いません。どうぞ、ごゆっくりお楽しみ下さい」
士郎の問いに女将は笑顔で答えると、洗礼された動作で頭を下げ、襖を閉めた。
「私達、好待遇だね」
「此処は、大赦絡みの旅館みたいだからね」
「お役目を果たした、ご褒美って所じゃないかしら?」
「つ、つまり。食べちゃって良いと?良いのよね?良いのでしょう?」
【お姉ちゃん。涎出でるよ】
襖が閉まったのを皮切りに、友奈達が口を開き、各々座布団に座った。位置は奥から順に友奈、士郎、美森。その反対側には奥から風、樹、夏凛。
「はむ。うん、このお刺身の歯応え、堪りませんなぁ〜。お、こっちは喉越しが良いねぇ〜」
「おい友奈。頂きますが先だろ?」
「あ、そうだった。ごめんなさい」
フライングして、食事を始めた友奈を注意する士郎。
普段なら、これに美森も加わって注意するのだが、味を感じない友奈に対して、遠慮する事なくご馳走を楽しめる様にする為の、友奈なりの配慮と分かっている故、美森は何も言わなかった。士郎も普段より優しい声で注意していた。
「食い意地張ってるわね、友奈」
【お姉ちゃんにだけは、言われたくないと思うな】
「樹、どう言う事よ?」
「そのままの意味だと思うわよ」
風達も友奈に気を使う事をせず。何時も通り振る舞う。
「それじゃ、改めて」
士郎は両手を合わせる。
友奈達も士郎に続いて手を合わせ、士郎は「頂きます」と、日本の伝統的な挨拶をする。
「「「「頂きます」」」」
【いただきま〜す!】
士郎に続いて挨拶を済ませると、各々我慢していた食欲を解放する。特に風はパクパクと箸を止める事なく、次々と料理を口に運んだ。
それから記念の為にと、滅多に口に出来ないであろう料理や、勇者部一同で思い出の写真を撮った。
「場所的に私がお母さんするから、ご飯お代わりしたい人は言ってね」
暫くして、ご飯の器が空になり始めた頃、美森が杓文字を片手に、釜の蓋を開いて言った。
「東郷が母親か」
「厳しそうね」
「門限を破る悪い子は、柱に縛り付けます」
美森の言葉に、ひっと夏凛が短い悲鳴を上げた。
「まあまあ、美森。そこまでしなくても」
「貴方は甘いんです。この子の為になりません」
「夫婦か」
「ふ、夫婦!?」
夏凛の突っ込みに、美森は顔を真っ赤にして固まった。
「夫婦……夫婦ねぇ……私達も、何時か結婚して、家庭を持つのかしらね」
「結婚って、私達まだ中学生よ?」
「気が早くないか?」
「そんな事無いわ。私は来年、友奈達は二年後、樹は三年後には、一応は結婚出来る年になるのよ。もしかしたら、年上の彼氏が出来て結婚、なんて事も有り得なくはないわ」
風の言葉を聞き、そう言われれば、そうだと。友奈達は考えた。
「結婚、結婚かぁ……風はどんな人と結婚したいんだ?」
「ふぇ!?えっと……そうね……家事が出来て、強い人……とか?」
士郎の問いに風は顔を少し染め、士郎をチラ見しながら答えた。そしてそんな風を見て、美森は目を細め……
(前々から疑っていたけれど、この反応は間違いない。風先輩は先輩の事が好き……つまり、
そう確信した。
ならば、先手必勝!美森はそう考え、私は先輩の様な男の人が良いです。そう言おうとしたのだが……
「わ、私は、せ、せ……」
「せ?」
結果はご覧の通り。美森は顔を蟹の様に真っ赤に染め上げ、言葉にしようとした事は口に出せなかった。
「せ、戦時日本の活躍。そして戦後日本の血の滲むような努力によって、復興する日本の歴史を熱く語れる人……か、その話を聞いてくれる人が良いです」
「あはは……美森の旦那になる奴は、幸せ者だろうけど……大変そうだな」
結局、美森は言おうとした言葉を誤魔化し、士郎は頬を引きつらせた。
【士郎さんは、お嫁さんにするなら、どんな人が良いですか?】
「俺か?そうだな……」
顎に手を当てて考え込む士郎。そんな士郎を美森、風、樹の三人は真剣な表情で、友奈と夏凛は興味深そうに見詰めた。
「……特に無いかな」
「えぇ……」
時間を掛けてやっと出た答えに、女性陣は不満の声を上げた。
「そんな訳で無いでしょう。なんか有るでしょ?料理出来る人とか、女子力ある人とか」
「結婚とか、そんなの考えた事なかったんだよ。だから、いきなり聞かれて、なんて答えたら良いのか、分からないってのが本音かな」
「成る程。じゃあ、この中の誰かが将来、シロー先輩と夫婦になる未来が、あるかも知れないって訳ですね!」
「うん?まあ、そうだな」
「じゃあ、じゃあ、私達の中で結婚すらなら、誰が良いですか?」
「えぇ!?それを聞くか?」
「良いから答えなさい」
「そうです。あくまでも、例え話ですから」
「早く吐いた方が身の為よ」
【さあ、早く吐いて下さい!】
友奈の爆弾発言から、女性陣に畳み掛けられた士郎は困り、頭を掻いた。
「そんな事言われてもなぁ……」
士郎は悩んだ末に……
「うーん。みんな魅力的だから難しいな……多分、この先誰と付き合って、結婚しても、きっと、幸せな家庭を築けると思うからな」
上手く誤魔化すように答えた。士郎は我ながら、良い感じに誤魔化せたかな?と友奈達を見たが、友奈と夏凜は不満げな表情を浮かべていた。
「なによ、はっきりしないわね。スパッと誰か選びなさいよね」
「そうです!誰が一番なんですか?」
士郎は参ったなぁと呟き、どうするか考えた所で、美森と風から助け船が出された。
「まあまあ、友奈ちゃん。夏凜ちゃん。落ち着いて……これ以上先輩を困らせるのは」
「そ、そうよ。無理強いは良くないわ……」
(あ、東郷先輩とお姉ちゃん……逃げた)
そんなこんなで、この会話は終了した。
【5】
それから温泉を堪能し、寝る準備を始めた頃。士郎達は漸く、ある問題に気付いた。
本来、その問題は旅館に来た時に気付かねばならない問題だった。だが、士郎達勇者部は人類の存亡を賭けた戦いが終わり、高級旅館での宿泊や、海水浴の楽しみに気を取られていた故に、問題に気付くのが遅れた……部屋が二つではなく、一つしかないという問題に……
現在、勇者部が止まっている部屋には和室が一部屋しかなく、テーブルなどを退かし、布団を六枚引ける程度の広さはある、のだが……それは友奈達と士郎が共に寝床を一緒にする事を意味する。
これが家族なり、小学生なりなら、問題は無かった……然し勇者部は皆、思春期真っ只中の中学生。普通に考えれば間違いが起こってもおかしくない。
「えっと……俺は窓際のソファーで寝るよ」
「そ、そうね……それが良いわね」
「男女七歳にして席を同じにせず、食を共にせずと言いますしね……」
「前半は兎も角。私達さっき、衛宮と食を共にしたじゃない」
「えぇ?なんでなんで?別に一緒でも良いじゃないですですか」
【いや、流石に私達中学生ですし……】
「樹の言う通りよ友奈。私達が寝ている間に、士郎が狼に成って、襲ってくる危険があるわ」
「え!?シロー先輩狼男だったんですか!?」
「う、うーん。友奈ちゃん。それは合ってる様で合ってないわ」
「そうよ友奈。士郎は……いいえ、男はみんな狼。夜になったら狼に変身して、私達の様な若い女に襲い掛かるのよ」
「えぇ!?」
【そうだったんですか!?士郎さん!?】
「樹は兎も角。なんで、友奈は意味が分からないのよ……」
風の言葉に、友奈は守る様に美森の前に立ち、拳を構え、樹は士郎から距離を取る様に後退した。二人の反応に士郎と、そうさせた張本人である風は思わず苦笑いを浮かべ、夏凛は呆れた様子で呟いた。美森は友奈に守られている事が嬉しいのか、或いはピンク色の妄想をしているのか、顔を赤くしていた。
毎日投稿してると、後書きに書く事も無くなりますね……
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