衛宮士郎は英雄と成る【ゆゆゆ編完結】   作:読者その1

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第20話 旅行の終わり

【6】

 

 結局あの後。女性陣の信頼あって、士郎も一緒に寝る事となった……それは良いものの、次は士郎がどの位置で寝るかと言う問題が発生した。

 士郎に対して恋心を抱いているのは美森と風、それと姉に遠慮して、一歩退いているものの、士郎に対してのアプローチはしている樹を合わせて三人。

 因みに士郎に対して、友奈は頼りになる先輩。夏凛は戦友という認識である。

 それはさておき、士郎の隣で寝たいものの、恋する乙女達はそれを言い出すだけの勇気は無かった。故に、寝る布団の位置はクジ引きで決める事になり、結果は士郎は美森と友奈に挟まれる位置で寝る事になった。

 さぁ、後は寝るだけ……とは当然ならず。風が口を開いた。

 

「女五人が集まって、旅の夜」

「一応、俺も居るんだけどな」

「細かい事は気にしない、気にしない。こんな時、どんな話をするか、分かってるわよね?夏凛」

 

 え?と話を振られた夏凛は一瞬驚き「そうねぇ」と話題になりそうな事を考えた。

 

「厳しかった修行の体験談とか?あれは、三年前の勇者選定試験の時ね……銀って言うライバルが居てね。先代剣の勇者としての座を巡って争ったわね……あ、勿論、正当な手段でよ」

「違う!あと、語り出さなくていいから」

「日本という、国のあり方についてとかですか?」

「それも違う!」

「料理が上達するコツの話とか?」

「う、それは聞きたいけど、違う!」

【私も聞きたい。どうしたら、うどんを上手く作れるのか】

「うん……それはちょっと、俺には荷が重いな……」

【そ、そんな……】

「ま、まあ、こんな夜は恋バナ。ですよね?風先輩」

「そ、それよ!友奈。恋バナ!即ち恋の話よ!」

 

 漸く求めていた答えに辿り着き、テンションが上がる風。

 

「で、では、誰かに恋をしてる人ぉ……」

 

 友奈は苦笑いをしながら、勇者部一同に問いを投げかけたが……

 

「「「「「……………」」」」」

 

 友奈の問いに答える物は居らず、沈黙だけが流れた……まあ、当然と言えば当然である。

 士郎、友奈、夏凛には意中の相手は居らず。残る美森、風、樹の三人の思い人はこの場に居る士郎である。素直に答えられる筈も無かった。

 

「ま、まあ。勇者とかでみんな忙しかったからな……ね、寝るか?」

「そ、そうですね」

「うん。もう夜も遅いですし……」

 

 そんな短い会話の後、部屋の電気が消された。

 その直後、美森が怪談話を行い、勇者部一同を震え上がらせる事件が発生したが、その後は何事も無く、一人、また一人と眠りに就いて行った。

 ただ一人、士郎を除いては……

 

(……眠れない)

 

 左を見渡せば、既に寝息を立てている友奈の寝顔。視線を少し下の方は向けると、何度か寝返りを打った所為で着物がはだけており、鎖骨と胸の谷間が目に映る。士郎は咄嗟に視線を外し、反対側を見ると、今度は美森の横顔が目に映った。

 友奈とは違い、美森は寝返りを打った様子は無く。仰向けの姿勢で規則正しい寝息を立てていた。そしてこれはやはり男の性か、士郎は無意識の内に、美森の呼吸と共に上下する山に視線が移っていた。

 

「で、でけぇ……」

 

 士郎が思わず、そう呟いてしまった後。罪悪感と自己嫌悪に苛まれながら視線を天井に固定して、目を瞑った。

 それから士郎が眠りに就いたのは、かなりの時間が経った後であった。

 

 

【7】

 

 

 それは体に染み付いた習慣故か、士郎は早朝六時頃、自然と目を覚ました。

 上半身を起こし、軽く伸びをした後、士郎は隣で俯せになって、寝息を立てている友奈を見た。

 

「うぅ……暑い……」

 

 そんな風の寝言に釣られ背後の方を振り向くと、風に抱き付いて眠っている夏凛が目に映る。

 普段の夏凛の態度から絶対に有り得ないだろう光景を目にして士郎は少し驚いたが、同時に微笑ましく思い、口元が緩んだ。

 そんな二人の隣で、保護欲を唆る表情で寝息を立ている樹を一目見た後、美森が寝ていた布団の方を向いたが、其処に美森の姿は無かった。士郎は美森が何処に行ったのかと周囲をもう一度見渡すと、直ぐに窓際の椅子に腰掛け、外の様子を眺めている美森を見付けた。

 士郎は布団から起き上がり、美森の元へと歩み寄った。

 

「早いな、美森」

「あ、先輩。おはようございます」

「ああ、おはよう」

 

 美森と挨拶を交わした後、士郎は美森の前に置いてあった椅子に腰掛けた。ふと外の様子を眺めると、昨日海水浴を満喫した海と、其処から昇る朝日が目に映り、その眩しさに顔を顰めて美森の方に向き直す。

 すると、美森が握っている物に目が行った。それは二本の白い線が入った緑色のリボンで、毎日欠かさず美森が髪に結んでいる物だった。

 

「肌身離さずだな。そのリボン」

「はい。私が事故に遭った時、握り締めてた物だったらしいので……誰の物かは分かりませんけど。とても大切な物……そんな気がするんです」

 

 リボンを大事そうに握りしめながら、そう語る美森。その表情は誰かを思い出して、懐かしむような顔をしていた。

 

「確か、その事故が原因で、記憶を喪ったんだっけ?」

「はい。二年前の出来事です」

「二年前か……」

「先輩が記憶を喪ったのも二年前でしたよね?」

「ああ」

「先輩が喪った記憶と、私が喪った記憶。何か関係性があるんですかね?」

「さぁ?同じ二年前でも、時期がずれてただろ?」

「私は瀬戸大橋の事故で、先輩はもう少し前でしたっけ?」

「ああ、詳しい時期は分からないけど。確か、瀬戸大橋事故の前だった筈だ」

「やっぱり、偶然ですかね?」

「……そうだな。この話はこの辺で良いだろう」

 

 士郎はこれ以上考えてもしょうがないと考え、話題を変える。

 

「美森は、海を見てたのか?」

「はい……考え事をしてました」

「考え事?」

「はい……ねぇ、先輩」

「なんだ?」

「バーテックスって、十二星座がモチーフなんですよね?」

「そうだな。序でに言えば、拷問器具もモチーフになってるな」

 

 分かり易い例を挙げるなら、樹が倒した小型のバーテックス、双子型が良い例だろう。

 双子型は両手と首がギロチンの拘束具の様な物で繋がれていた……と、其処まで考えて、士郎は疑問に思った。

 双子型って言う割には、あのバーテックスは一体しか居なかった。双子型って言うなら、二体で一対だったり、分裂したりしても良かったんじゃないか?寧ろ、そうじゃない方がおかしいんじゃないか?と。

 

「先輩?どうかしましたか?」

「ん、ああ、何でもない。続けてくれ」

 

 戦いは本当に終わったのか?と士郎は不安に駆られるが、それは今考えてもしょうがない事だと割り切り、美森の言葉に耳を傾けてる。

 

「……星座って、他にも一杯有りますよね?」

「ああ、成る程。言いたい事は分かった。本当に戦いは終わったのか、もしかすると、また敵が攻めて来るんじゃないか。そう言いたいんだな?」

 

 

 はいと頷く美森を見て、士郎は美森は俺よりも速く、こんな不安に駆られてたんだなと考え、美森を安心させる為の言葉を紡ぐ。

 

「大丈夫さきっと、大赦は問題ないって言ってるんだ。俺達はその言葉を信じるしかないだろ。それに、俺達を死のウイルスから守ってくれた、神樹様も着いてるんだし」

「そう……ですね」

 

 士郎の言葉に、美森の表情が少し柔らかくなった。

 

「何故、バーテックスが俺達の方へと攻めて来るのか、何故、俺達が居る地域から遠い太平洋側から攻めて来なかったのか、美森は分かるよな?」

「はい。結界にわざと弱い部分を通していたから……」

「その理由は?」

「神樹様は恵みの源でもありますから、防御に全ての力を使うと、私達が生活出来なくなるから。それに、敢えて勇者として選ばれた私達が住む地域の結界を弱くして、敵を通す事で、素早くバーテックスを倒せるからです」

「そうだ。つまり神樹様にははっきりとした意思がある。そうは思えないか?」

 

 はっと気付いた様子の美森。言われてみればそうだと、考える。そんな美森を見た士郎は微笑んで言った。

 

「だから大丈夫だ。美森の耳も、友奈の味覚も、風の左目も、樹の声も、きっと治る」

 

 気付けば士郎は、美森の直ぐ側に移動して、美森の頭を優しく撫でていた。

 

「……その中に、先輩は居ないんですか?」

 

 その心地良さに美森は身を任せながら、訪ねた。

 

「ん?俺か?俺は痛みを感じないだけだからな。別に治らなくても、困りはしない」

「駄目です!」

 

 美森の大声に士郎は驚き、手を止めた。美森はその事を少し残念に思いつつ、自分の頭に乗った手を両手で包み、ゆっくりと自分の頭から離すと、士郎の目を見て言った。

 

「先輩も、ちゃんと治りましょう。痛みは、生きてる証なんですから……」

「そうか……そうだな。悪い」

「自分を疎かにしないで下さい。私も、皆も悲しみます……」

「ああ、ごめんな」

 

 泣きそうな表情を浮かべながら言った美森に、士郎は謝った。それから、二人の顔が朝日に照らされると、二人は目を庇いながら朝日を眺めた。

 

「また、来たいですね」

「ああ、そうだな。また来よう」

 

 二人は約束を交わし、旅行は終わりを迎える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




士郎も所詮は思春期の男子。
一歩間違えれば美森の胸(誘惑)に負け、社会的バットエンドを迎えていた未来(ルート)も存在する……















あれ?なんか強○が和○に変わって、目覚めた犬吠埼姉妹を合わせて乱○騒ぎに成る未来(ルート)が視えた気がするんだけど?これが衛宮士郎(エロゲー主人公)の補正だとでも言うのか!?
くっ、別に羨ましくなんてないんだからね!

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