衛宮士郎は英雄と成る【ゆゆゆ編完結】   作:読者その1

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第21話 延長戦

【1】

 

 

 旅行から帰った後、士郎達勇者部一同は風に呼び出され、家庭科準備室兼ね勇者部の部室に集まっていた。

 

「つまり、バーテックスに生き残りが居て、戦いは延長に突入した。そう言う事だな?」

「ええ。だから、私達にこれが返って来た」

 

 そう言って風が視線を向ける先には、スーツケースに入った五つのスマホ。それはただのスマホではなく、友奈達が以前使っていたスマホ……つまりは勇者システムを搭載した特殊スマホである。

 士郎はスマホを開き、その中にある勇者アプリを開く。すると、昨日まではロックされて使えなかった変身機能がアンロックされていた。

 昨日立てた仮説が正しかった事に、士郎は苦笑いを浮かべながら、スマホ画面を閉じる。

 

「本当、いきなりでごめん……」

「謝るな。風もさっき知った事なんだろ?」

「うん」

「なら、風先輩を責めるのはお門違いですよ」

「東郷さんの言う通りです!風先輩は悪くないです!」

「まあ、仮に風を責めても、生き残りを倒すのに変わりはないでしょう?私達は敵の総攻撃だって、殲滅したんだから今更、バーテックスの一体、二体、追加で倒せって言われても問題ないわ」

【勇者部五箇条。なせば大抵なんとかなるだよ!】

 

 誰一人として、風を責め立てる者は居ない。

 皆、ありがとうと風は感謝の気持ちを伝え。よしと窓を開いて叫んだ。

 

「何時でも来いバーテックス!讃州中学勇者部が相手だぁぁぁぁぁ!」

 

 と、息巻いた物はいいものの、結局夏休みの間にバーテックスが襲来する事は無かった。

 

 

【2】

 

 

 一ヶ月以上あった夏休みが終わり、二学期に突入して二日目の放課後。

 部室には本を読む樹。煮干しを頬張る夏凛。修理依頼が来ていた扇風機を直す士郎。そして両手を組んで待ち人を待つ風の姿があった。

 暫くして、コンコンとドアがノックされる。風は一瞬キタ!と表情を緩ませるが、直ぐに威厳ある表情に戻す。

 

「結城友奈入ります!」

「東郷美森入ります!」

 

 敬礼をしながら部室に入る友奈と美森。風はゆっくりと友奈達の方を向き、低い声で答える。

 

「うむ。よく来たな。結城中尉。東郷中尉」

「は!長官もお元気そうでなによりです!」

「うむ。衛宮大尉。お茶を淹れたまえ。アベンジャーズ計画の概要を説明しよう」

 

 風の言葉に、士郎は思わず作業の手を止めた。

 

「おい、なんだそのキャラ」

「んー。西暦の時代に流行った映画のキャラ」

「三〇〇年以上も昔のキャラじゃない。何処で知ったのよ……」

「いやぁ〜、昨日古いDVD屋に行ったらそんな映画があってさ、その中の眼帯キャラをリスペクトしてみたんだけど」

「気に入っているんだな。眼帯(その)キャラ」

「まあねぇ、士郎もどう?」

「遠慮しとく」

 

 そう言った直後、士郎の目の前に鎌の様な尻尾を生やしたイタチの様な精霊が現れた。

 

「うぉ!?びっくりした」

「ああ、ごめんごめん。そいつ好奇心旺盛で勝手に出て来ちゃうのよ」

「確か、風の二体目の精霊だったよな?」

「ええ、名前は鎌鼬よ」

 

 更に共鳴する様に美森の端末から青坊主、刑部狸、不知火、そして四体目の精霊、川蛍が飛び出した。

 

「美森のは何時見ても賑やかだな」

 

 そう言って近付こうとすると、精霊達に強く睨まれた。

 

「全員整列!」

 

 その号令で、横一列に並ぶ美森の精霊達。

 

「訓練されてるな」

 

 そう呟くと、目の前を鏡から植物を生やした精霊が横切った。樹の二体目の精霊、雲外鏡である。

 

【私のも出て来ちゃいました】

 

 更に友奈の精霊も出て来る。

 

「あわわ、牛鬼と火車まで!?牛鬼、他の精霊食べちゃ駄目だからね!」

「大赦が新しい精霊を使える様にしてくれたのは良いけど……ちょっとした百鬼夜行ね」

「今昼間で、列をなしてないけどな」

「も、もう文化祭の出し物、これで良いんじゃないんですか?」

「良くないわ、友奈ちゃん」

「だよねぇ……」

「それよりもこれ、どうやって収拾つけるんだ?」

 

 

【3】

 

 

 それから、精霊達は一時間程部室を飛び回ると、満足したのか、一体、また一体と主の端末へと戻った。

 

「ようやっと、端末に戻ったわね」

 

 疲弊した表情で呟いた風。その様子に苦笑いしながら、士郎は話題を振った。

 

「それにしても、敵は何時来るんだろうな」

「そうね。私の感だと、来週辺りかしらね?」

「実は敵の襲来は気の所為!とか?」

「だったら、良いんだけどな」

 

 心底、気の所為であってほしいの願う風と士郎だったが、その直後に鳴り響いた樹海化警報を報せるアラーム音によって、その願いは儚く散る事となった。

 

「どうやら、気の所為じゃないみたいだな」

「感を外したわね。風」

「何よ、夏凛だって外してるじゃない」

「それにしても、このタイミング……」

「狙ってたのかな?」

【神樹様は演出家だった?】

 

 その直後、勇者部一同は最早慣れ親しんだ光に包まれ、樹海に立った。

 

 

【4】

 

 

 樹海に巻き込まれて十分程の時が経ち、美森はスマホ画面を見て呟いた。

 

「敵は一体。後数分で森を抜けます」

「敵は双子型。てっきり隠された十三体目のバーテックス。蛇使い型……なんて物を想像してたんだけどねぇ」

「でもでも、双子型って、確か樹ちゃんが倒した奴だよね?」

「きっと、双子型って事だから、二体でワンセットのバーテックスなんだろうな」

 

 士郎は概ね、自分が立てた仮説が正しかった事を確信すると同時に何故、前回の戦いで二体揃って現れなかったのか疑問に思った。

 疑問に思ったが、同時に倒すべき敵に変わりはない。色々と考えるのは後にして、今は戦いに集中しようととも考えた。

 

「まあ、何にしろ。一体だけなら楽勝ね!」

「今回の敵で延長戦も終わり」

「気合い入れて行くわよ!」

 

 風の号令に、勇者部はおお!と声を揃えて拳を上げる。

 

「と、言ったは良いけど。士郎。アンタは留守番ね。変身も許さないわ」

「なんでさ?」

「アンタ、忘れたの?アンタは私達と違って、勇者に変身するだけで、何かしらのリスクがあるかもって話」

 

 うっと返す言葉に詰まる士郎。

 

「そ、そうだった!シロー先輩。絶対変身しちゃ駄目ですからね!」

「そうです!今回の敵は一体。いいえ、例え一体だけじゃなくても今後、先輩は変身するのは禁止です!」

「少し過保護過ぎないか?」

「そんな事ないわ。衛宮。アンタは此処で私達の華麗なる戦いを見てなさい」

 

 友奈達の有無を言わせない姿勢に、士郎は説得は無理だなと諦めた。

 

「分かったよ。俺は観戦するよ」

 

 士郎のその言葉に、友奈達は満足そうな表示を見せ、勇者に変身すると、バーテックスの方へと向かっていった。

 士郎は誰も居なくなった所で、呟いた。

 

投影開始(トレース・オン)

 

 すると、その手には干将・莫耶が現れる。士郎は自身が投影した干将・莫耶の構造を見る。

 

「基本骨子。基本材質……両方共、勇者の時に使ってた物と変わらない」

 

 そう呟くと、士郎は投影した干将・莫耶を消して、()()()()()()()友奈達の方を見ると、友奈と夏凛がバーテックスを殴って、動きを止める瞬間が鮮明に見えた。距離にすれば四キロ近くは離れている。にも関わらず、士郎は友奈と夏凛の表情まで目視する事が出来た……()()()()()()()()()()にも関わらずにだ。

 バーテックスが起き上がり、再び走り出そうとすると、三本の短剣がバーテックスの足に突き刺さり、前のめりに倒れた。更にバーテックスの頭が撃ち抜かれ、封印の儀が始まる。

 封印の儀によって無数の御魂が出現し、周囲一帯を埋め尽くす。だがそれを、炎を纏った友奈のキックにより焼き払った。

 一連の流れを見届けた士郎は、目の力を抜いた。すると、視力は一般人程度にまで戻った。

 

「強化とは違う。これは、そう……()()()()()()()()()様な感覚だ」

 

 そんな事を呟いた後、士郎は現実世界に戻った。

 けれど、現実世界に戻った時、其処に友奈と美森の姿は無かった。

 

 

【5】

 

 

 現実世界に戻っても、友奈と美森が居ない上に、二人に連絡が付かない事で勇者部は慌て学校中、町中で二人を探し続けたが見付からず。日没により、捜索は後日改めてと言う事になり解散し、士郎が家に到着した頃、黒塗りの車から降りる友奈と美森を発見した事により、友奈、美森行方不明事件は解決した。

 士郎は友奈と美森に何処で何をしていたのか聞こうとしたが、疲弊しきった様子の二人を見て、行方不明になっていた間、何があったのかは明日説明してもらう事にして、その日は何時も通りの夜を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろ武器(ストック)の貯蔵も十分とは言えなくなってきたな……

次回はオリジナル回

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