衛宮士郎は英雄と成る【ゆゆゆ編完結】   作:読者その1

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ちょっと閑話挟みます。


閑話1 犬吠埼風

【1】

 

 

 あれは二年前、私が中学一年の十月頃での出来事だった。

 大赦の人間が私達の家に来て、瀬戸大橋の事故で両親が死んだ事を知らせた。

 その話を聞いた時、初めは頭が真っ白になって、混乱した。

 大赦の人間が帰った後、私は混乱する頭を整理しながら、樹に両親が死んだ事を告げ、その日は樹と二人で一晩泣き続けた。

 

 次の日、両親の葬儀を終えた頃、再び大赦の人間に会い、私に二つの選択肢を提示した。

 一つ目の選択肢は孤児院に入る事。けど、そうすれば樹と別々に暮らす事になるかも知れない。両親には兄弟は居なかったし、両親、私達にとってお爺ちゃんとお婆ちゃんに当たる人も全員他界しているから、本来は孤児院に入る以外の選択肢は無かった。

 けれど、私にはもう一つの選択肢が有った。それは勇者候補生に成る事。勇者候補生に成る事で、私達は大赦の保護下の下で今の家で生活を続けられる様になるし、生活費も支給される。私は直ぐに勇者候補生に成る事を選び、勇者のお役目やバーテックスの事を知った。

 そして勇者候補に成って一ヶ月ちょっとが過ぎた頃、

 

「犬吠埼風。明日、貴方のクラスに衛宮士郎と言う男子生徒が転校して来ます。貴方はその生徒と友人になりなさい」

 

 それが私の最初の御役目だった。

 

 

【2】

 

 

「えっと、訳あってこの学校に転校して来た衛宮士郎です。趣味はガラクタ弄りと家事です。宜しくお願いします」

 

 翌日、大赦の人間が言った通り、衛宮士郎という男子生徒が私のクラスに転校して来た。衛宮の席は私の隣で、衛宮が席に座って直ぐ、私は声を掛けた。

 

「私、犬吠埼風。宜しく。()()

「ああ、宜しく。()()()

 

 それが、私と衛宮が最初に交わした言葉。

 その日の私は衛宮と親密な関係を構築する為、休み時間と放課後を使って、衛宮に学校を案内した。

 その次の日からも、私は衛宮と友人としての関係を築いて休み時間に色々と話したり、放課後には他のクラスメイトを交えて遊びに行ったりした。

 友人以上、親友未満くらいの親密度を維持しながら、私達は学校生活を送っていた。その関係が深くなったのは、衛宮が転校して来て一ヶ月が経過した頃の事だった。

 午前の授業が終わり、昼休みに入った時、その日は何時も昼休みを共に過ごしてる友達が、皆何かしらの用事で何処かに行って、衛宮と二人きりで昼休みを過ごす事になった。

 

「はぁ、もう直ぐクリスマスか……」

「もうそんな季節なんだな」

「ええ、そうよ。折角のクリスマスなんだし、樹にちゃんとした物を食べさせてあげたいのよぉ……でも、今月、そんな贅沢する余裕無いのよねぇ……」

「樹って、確か犬吠埼の妹だったよな?」

 

 そうよと、私は机に項垂れながら答えた、

 

「そんなに生活に困ってるのか?」

「ううん。別に普通に生活する分には問題無いのよ。ただ外食が多くて、贅沢する余裕が無いってだけよ」

「自炊はしないのか?」

「私のこれを見て、自炊してると思う?」

 

 私は売店で売ってる一〇〇円ちょいのパンを指差して、聞いた。

 

「……思えないな」

「ぐっ」

 

 私が聞いた事とは言え、衛宮の言葉に少し傷付いた。

 両親が死んでから、私の食生活は朝は食パン一袋。昼は売店で売ってる一〇〇円のパン二つ。休日の場合はカップ麺。夜はコンビニ弁当か、外食のどちらかだ。

 そんな事を衛宮に言うと、衛宮は呆れた様子で私を見ていた。

 

「しょ、しょうがないじゃない。料理を教わる人なんて居ないんだし、私だって、樹にちゃんとした料理食べさせてあげたいわよ」

「なら、俺が料理を教えようか?」

「え?アンタ、料理出来るの?」

「……この弁当、誰が作ってると思ってる?」

 

 衛宮は色取り取りで栄養バランスが取れた弁当を指差しながら訪ねた。

 

「親じゃないの?」

「お生憎様、俺も犬吠埼と同じで、親も親戚も居ない。これは自前だ」

「……衛宮って、由緒正しい家の産まれてじゃないの?」

「全然、そんな事ないぞ。結構古い家には住んでるけど、一般家庭の産まれだ」

 

 驚いた。衛宮が私と似た境遇だったのもそうだけど、私は衛宮の事を大赦の中で影響力の高い名家の人間だと思ってたから、私に与えられた役割は衛宮の付き人なり、取り巻きなりに成る事だと思ってたから……

 

「んで?どうする?」

「え?何が?」

「何がって……料理の事だよ。何なら、今日から教えてやっても良いぞ」

「え、そう?じゃあ、お願いするわ」

 

 衛宮の提案は、私にとって渡りに船だったので、私はその提案を受け、その日から料理教室が始まった。

 

 

【3】

 

 

 料理教室初日。この日は学校帰りに何時も通うコンビニではなくて、スーパーでカップ麺じゃなくて食材を買って家に帰った。勿論、衛宮と一緒に。

 

「樹、ただいまぁ〜。さぁ、衛宮。上がって上がって」

「えっと、お邪魔します」

 

 私と衛宮が玄関に入ると、樹が奥から顔を覗かせた。何時もならお帰りお姉ちゃんって言ってくれるんだけど、この日は衛宮が居る所為か、物陰に隠れてこちらをじっと見つめていた。

 

「えっと、君が犬吠埼の妹で良いのかな?」

「は、はい。犬吠埼樹です」

「こら樹!ちゃんと前出て挨拶しなさい!」

 

 私が樹を怒鳴りつけると、衛宮はいや、良いんだ。犬吠埼と私を宥めると、衛宮は樹の下に歩み寄って自己紹介をした。

 

「そうか、樹ちゃんか……俺は衛宮士郎。君のお姉さんに料理を教えに来たんだ」

 

 そんなやり取りを終えた後、私と衛宮はキッチンで材料を広げた。

 

「よし、作るのはハンバーグ。初めて作る料理にしては少し難しいかも知れないけど、俺が付いてる」

「宜しくね、衛宮先生」

「それじゃ、先ずは玉ねぎ半分を微塵切りにするんだけど、包丁は使えるか?」

「そ、そんぐらいは使えるわよ!」

 

 嘘である。この時の私は家庭科の授業ですら、包丁をまともに使った事すら無かったけど、思わず見栄を張って使えると言ってしまった。

 

「なら、俺が指示を出すから、その通りにやってくれ。先ずは玉ねぎを半分に切って、半分を微塵切りだ」

 

 衛宮の指示に従い、私はぎこちない動作で玉ねぎを半分に切って、次に半分を微塵切りにしようとして、止められた。

 

「はいストップ。犬吠埼が包丁を使った事がない事がよく分かった」

「ど、どうして、そう思うの?」

「包丁の持ち方が違う。いいか、包丁の握り方はただ柄を握るんじゃない。親指と人差し指で刃元の中央をしっかりと握り、残りの3本の指で柄を握るんだ」

 

 衛宮は私の指を動かして、正しい包丁の握り方に直すと、私の背後に立って手を握る。

 

「うぇ!?え、衛宮何するの!?」

「何って、犬吠埼の動きを補佐するんだよ」

 

 か、顔が近い。こんな近距離で異性と関わる事がなかったから、緊張する。

 

「続きをするぞ。半分に切った玉ねぎの面を下にして、端から細かく切り込みを入れる」

 

 衛宮は私の混乱はつゆ知らず、私の腕を動かして玉ねぎを切って行く。

 

「切り込みを入れ終えたら、半回転させ、包丁を斜め横、又は横から切り込みを二、三度入れる。ちょっと難しいからゆっくりな、手を切らない様に気を付けろよ」

 

 この辺りからさきの事はよく覚えてない。けど、衛宮に言われた通りに作業を行い、気付いた時にはハンバーグが完成していた。

 

「よし、完成だな」

「……これ、本当に私が作ったの?信じられないんだけど」

 

 目の前に広がるハンバーグは、形が崩れる事もなければ、焼き過ぎて焦げている訳でもない、誰が見ても歴としたハンバーグ。

 手を抜いていた訳じゃないし、ぼんやりとしか覚えてないけど、真剣に作った。けど……

 

「ここまで、完成度が高いのが作れるとは思わなかったわ……」

「ああ、俺もだ。犬吠埼は筋が良い」

「……その犬吠埼って言うの辞めない?風で良いわよ」

「そうか?なら、俺の事も士郎で構わないぞ、風」

「なら、遠慮無く。士郎、ありがとね。私だけじゃ、こんなハンバーグ作れなかった」

「どういたしまして。冷める前に食べてしまおう」

 

 私はそうねと呟き、ソファーの影から私達を覗き込んでいる樹に声をかける。

 

「樹、何時まで其処に隠れてるつもり?ご飯出来たわよ。こっちに来なさい」

 

 この日、人生で初めて作ったハンバーグは、とても美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




料理描写は苦手だ……何せ、作者自身が料理出来ないからな!
明日も閑話を挟んで、明後日本編に戻ります。それ以降は最終話まで閑話は有りません。
現在アニメ11話部分執筆中!

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