衛宮士郎は英雄と成る【ゆゆゆ編完結】   作:読者その1

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やばい……タイトル考えるのが大変になって来た。
今回もオリジナル回。


第25話 決意

【4】

 

 

 あれから、勉強会を三時頃に切り上げ、祝勝会の為の買出しや準備などに邁進していくにつれて、士郎達の重々しい雰囲気は徐々にお祝い雰囲気へと変わり、夕方に衛宮家に訪れた樹と夏凛を交えて、祝勝会が開かれた。

 祝勝会の準備から片付けまで、殆ど友奈達に任せる結果に士郎は罪悪感を覚えたものの、友奈達に安静にする様に念を押された為、士郎に出来る事は無かった。

 祝勝会は滞りなく執り行われ、九時を回る頃には解散した。後片付けを終えて帰る友奈達に、士郎はもう一度強く安静にする様に念を押された為、士郎は日課の鍛錬を程々に行ってから眠りに就いた。

 

 

【5】

 

 

 俺は気付けば、星空が広がる草原に立っていた。

 

「これは……夢、いや、此処はーー」

「そう、貴様の精神世界だ」

 

 咄嗟に声がした背後を振り向く。其処には前に会った時の赤い外装ではなく、黒を基調とした格好をした英霊エミヤ(あいつ)が立っていた。

 

「……また、俺を殺しに来たのか?」

 

 あいつは首を横に振って答えた。

 

「いいや、昨日の戦いで私の体……と言うのも変だな。そうだな、私の霊体は酷く傷付き、貴様に危害を加えるだけの力は喪った」

「信じて、良いのか?」

「好きにしろ」

 

 嘘を吐いた様子には見えない。抑も、前回……と言っても昨日の出来事だけど、あいつと殺し合ったのも、あいつが()()されての事だった。嘘を吐く理由も見当たらないし、あいつの言った事は信じていいだろう。

 

「で?要件は何だ?お前の事だ。挨拶しに来た訳でもないんだろ?それともなんだ。俺は寝る度にこの世界に来る様になったのか?」

「ふん。私とて、貴様と毎日意味も無く顔を合わせるなど御免だ。安心しろ、この世界には私が呼ばない限り、貴様はこの世界に来る事はない」

 

 その言葉に、俺は首を傾げた。

 

「俺の精神世界なのにか?」

「貴様は、精神世界に易々と訪れる事が可能とでも思っているのか?」

「……無理なのか?」

「精神世界に訪れる為に必要な理論を語っても良いのだが……聞きたいか?」

 

 いいやと、俺は首を横に振って遠慮した。

 多分、説明されても理解出来ない。

 

「では本題に入ろう。貴様は今日一日、体の大部分を麻痺していたのだろう?」

「ああ、具体的には半身の感覚が無くて、胴体が中寄りに七センチ程ずれてる」

「やはり同じか……」

「同じ?」

 

 どういう事だろうと考えたけど、直ぐにその理由に察しがついた。あいつは此処でない世界、俺ではない俺が至った未来の英霊だ。過去に俺と同じ経験が有っても何ら可笑しくない。

 

「力になれるかも知れん。背中を見せろ」

 

 俺は言われた通り、背中を見せる。昨日の出来事を考えると無防備すぎる様な気もするけど、きっと大丈夫だろ。あいつに殺意は無い。

 それでもあいつは、俺の無防備さに呆れたように溜息を吐いて、俺の背中に触れ、

 

「トレース・オン」

 

 と、俺と同じ詠唱を呟いた。

 

「うむ。やはり、ただ閉じていた物が開いただけか。貴様の体が麻痺した原因は、眠っていた魔術刻印が覚醒し、それに全力で魔力を込めた結果だ」

「魔術、刻印?」

「魔術刻印とは先人、正確に言えば歴代継承者達が修めてきた魔術が記録された、謂わば内臓式の魔術書の事だ。それが機能する限り、自分で覚えていなくても、歴代の御業を行使することが可能と成る。貴様の父、切嗣が貴様に残した物だ。父に感謝する事だな。貴様はこの魔術刻印が触媒となり、英霊キリツグの力を引き出せた。つまり、これが無ければ昨日、貴様は死んでいた」

「きり、つぐ?それが俺の親父の名前なのか?」

 

 きりつぐ……初めて聞いた響きなのに、何処か懐かしさを感じる。

 

「……そうか、貴様は記憶を失っていたのだな。まあ、その記憶もいずれ取り戻す。貴様の記憶喪失も、体の麻痺も一時的な物だ。ふん」

「があ!」

 

 そう言うと、あいつは俺の中に何かを流し込んだ。俺は一瞬、体中に走った激痛に悶えたが、だが、その痛みは直ぐに消えた。

 

「まあ、こんな物だろう」

「何をしたんだ?」

 

 俺が聞くと、あいつは背中から手を離して答えた。

 

「私の魔力を流し込んで回路を正常化させた。

 精神世界(ここ)では実感出来ないだろうが、肉体の麻痺は改善された筈だ。それも、数日経てば完治するだろう」

「そんな事、今のお前に出来たのか?」

「戦うだけの力は無くとも、干渉する程度の力は残っている。麻痺が治れば切嗣の魔術も使える様になっているだろう」

「そうか、ありがとな」

 

 俺はあいつの方を向いて礼を言った。これで憂いの一つが消えた。あいつ等を心配させずに済む。

 

「ふん。礼など要らん。忠告しておくが、もう二度と英霊としての力は使うな。投影魔術もだ」

「なんでさ?」

「今の貴様は人と英霊の境目に居る。英霊としての力と投影魔術を使いさえしなければ、貴様はまだ人の身に戻れる状態だ」

「……悪いが、それは出来ない。俺は、今の日常を守る。その為に、この力が必要な時が来るかも知れない」

「なら、貴様が持つ強化魔術と切嗣から受け継いだ魔術を極めろ。日常を守るならそれ以上の力は必要無い」

「……………」

 

 ……確かに、その通りだ。バーテックスは全て倒した。日常を守るのに英霊(この)力は過剰だ。それは分かってる。けれど……

 

「確かに、今持つ力を手放すのが怖いのは分かる」

 

 他ならぬ未来の俺だからこそ、今の俺が抱いていた不安を理解したのだろう。あいつは俺の心を代弁した。

 

「然し、その力を使い続ければ、貴様の肉体も精神も、何れ崩壊する。本来、英霊の力をその身に宿すだけでも、人の身に余る物だ。二人の英霊の力を宿すなど自殺行為でしかない。日常を守りたいのであれば、そんな高リスクな力は捨てろ」

 

 今一度問おう。貴様は、何の為に戦う?あいつは俺にそう問い掛け、俺は……

 

「世界を救う為」

 

 そう即答した。

 

「世界なら既に救った。ならば、貴様が戦う意味など無い。貴様は守ると決めた日常を守る為に戦えば良い」

「そう、だな……」

 

 少し考えれば解る事だ。日常を守るのに人知を超えた身体能力なんて要らない。伝説の武器(ほうぐ)なんて要らない。護身術と強化魔術、そして人より少し早く動ける術さえ有れば十分だ。

 

「貴様はあの男、衛宮切嗣との約束を果たした。貴様は正規の方法で正義の味方へと成ったのだ(私の様な、歪な方法ではなく)」

 

 あいつの言う通り、世界を滅ぼす人類の敵、俺達人類にとって紛いも無く悪と言える存在、バーテックス。それを相手にして、俺達勇者部が勝利を収めた。俺達は胸を張って正義の味方と名乗れる偉業を成した。

 あの月の下、父と交わした約束を果たせた。

 なら俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かった。俺は()()()()()使()()()()。俺は友奈を、美森を、風を、樹を、三好を守る為に、俺は持てる力を使う」

 

 あいつ等……勇者部の正義の味方に成る。

 

「そうか、ならそう成れる様に励め」

 

 あいつはそう言って背を向けた。

 

「最後に少し、聞いて良いか?」

「なんだね?」

「俺はあの時、二回満開をした……って事は二回散華した事だ」

「そうだな」

「一つは痛覚を失ったって事は分かる」

 

 けど、と俺は褐色に変化した腕を見る。これが、散華による影響とは考えられない。俺がそう言うと、あいつは背中を向けたまま答えた。

 

「……そうだ。肌の変色は散華によるものではない。その肌の変色も、貴様の体から剣が生えたのも、英霊システムの多用による反動だ」

 

 体から剣が生えた。その単語にあの病院での夜を思い出し、気分を悪くした。

 

「本題だ。散華で俺が失った。()()()()()()()は何なんだ?」

 

 あいつは少し間を置いて、短く答えた。

 

「……生存本能だ」

 

 そしてその答えを聞くと、俺の意識は遠のき始めた。まだ聞きたいことがあった。あいつ等、友奈達の散華は治るのか、それを聞きたかったけれど、それは叶わなかった。

 俺は体が引力に引っ張られる様な感覚を感じながら、俺の意識は現実世界に引き戻された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




勇者部を守る正義の味方に成ると決意し、英霊の力を手放した士郎。
果して、彼はこの先の困難をどう乗り越えて行くのか……

次回、加速する愉悦(仮)

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