衛宮士郎は英雄と成る【ゆゆゆ編完結】   作:読者その1

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樹ちゃん誕生日おめでとう!なんとか間に合ったよ〜!


第四話 変化

 数時間後。

 

「「「つ、疲れた〜〜」」」

 

 訓練を終え、砂まみれになって疲れた体を温泉で癒し、夕食を終えた三人は、大赦に用意された宿の部屋で屍の様に倒れ伏していた。

 

「こ、これは、想像以上に……」

「厳し、過ぎんだろ……」

「うぅ……身体中がジンジンする〜〜」

 

 全身に巡る筋肉痛と疲労感に苛まれる三人。

 そんな三人を見て、エミヤはやれやれと、肩を竦めてぼやいた。

 

「初日からこの体たらくでは、先が思いやられるな」

「うへぇ〜、厳しいな」

「当然よ、銀。守護ひゃ……守護者様は三〇〇年もの間、バーテックスと戦い続けたお方、そんなしゅごひゃ……コホン。守護者様と並んで戦うには、まだまだ鍛錬が必要だわ」

「噛んだ」

「噛んだね〜、二回も」

「くっ〜〜〜」

 

 羞恥心に顔を真っ赤にする須美。そんな須美にエミヤは言った。

 

「私を守護者と呼び難いのであれば、名前で呼んでくれても構わない」

「そんな!守護者様の名前を呼ぶなんて、神樹様を樹木と呼ぶ様な物です。畏れ多すぎます!」

 

 仰々しい反応をする須美に、エミヤは苦い笑いを浮かべた。

 生真面目な須美の性格もあるだろうが、歴代勇者と巫女の中で須美と同じ様な態度を取る者は少なくない。寧ろ、最初の頃は皆、須美と同じ様な態度を取る。

 

「え?ワタシ、エミヤさんって普通に呼んでるけど、これって畏れ多い事だったの?」

「アハハ〜。どうだろうね〜」

「おい。目を逸らすな園子。不安になるだろ!?」

 

 現に堅苦しい言動を苦手とする銀と園子も、須美程ではないが、エミヤに畏まっている。

 こうなった理由としては、大赦が神樹と契約し守護者と成ったエミヤを、神樹と同等の存在として、敬意と信仰を向ける様に教育しているのが原因だった。

 エミヤとしては、自分の事を信仰するぐらいなら、世間の期待を背負い戦った初代。人知れず世界の為に戦った歴代勇者達の方を敬ってほしい物だと考えていた。

 

「そう畏まる必要は無い。歴代勇者の殆どは私の事を名前で呼ぶし、巫女の中にも私の名を呼ぶ者は居る。寧ろ私としては、勇者である君達が、私の事を守護者と呼ぶ方に違和感を感じる」

「そ、そうなのですか?」

 

 困惑気味に尋ねる須美に、エミヤは「ああ」と頷いた。

 

「尤も、無理強いはしない。私の名を呼ぶのに抵抗があり、守護者という名称も呼び難いのであれば、好きに呼ぶと良い」

「はいはい〜!じゃあ、私はししょ〜て呼んで良いですか〜?」

 

 エミヤの提案に、真っ先に手を上げたのは園子だった。

 

「し、師匠?」

「駄目ですか〜?」

「いや、別に駄目ではないが……」

「わ〜い!」

「性格は似ても似つかないが、いやはや……」

 

 これが血筋という物かと、エミヤは呟き。()()()()を思い出し、懐かしんだ。

 

「じゃあじゃあ、ワタシも師匠呼びに変更しても良いですか?」

 

 そっちの方がカッコイイですし、と詰め寄る銀にエミヤは気圧され反射的に「構わない」と答えた。

 

「やっり〜!」

 

 反射的に答えてしまったエミヤだったが、少年の様にはしゃぐ銀を見て「まあ良いか」と納得した。園子も満面な笑みを浮かべて喜んだ。

 

「わぁ〜、ミノさんが妹になった〜。嬉しいな〜♪」

「妹?……ああ、先に園子が弟子入りしたから、ワタシは妹弟子で、園子は姉弟子になるのか」

 

 園子の言葉に合点がいった銀は「えへへ」と頬を緩ませた。

 

「ワタシも弟は居ても姉は居なかったから、なんか嬉しいな〜」

「私もだよ〜♪ミノさん。存分に私に甘えて良いんよ〜」

「園子姉さ〜ん!」

「ミノ〜」

 

 ひしっと抱きしめ合う銀と園子。

 その様子を見て須美は「む〜」と頬を膨らませると、抱き合う二人の間に挟まった。

 

「わ!?」

「ど、どうした?須美」

 

 須美の突然の乱入に驚く銀と園子。

 そんな二人に、須美は小さく呟いた。

 

「私も……」

「え?」

「私も、守護様……いえ、師匠の弟子」

「……えっと?」

「つまり?」

 

 銀と園子の追求に、須美はトマトの様に顔を真っ赤にして呟く。

 

「私も、二人の姉妹」

 

 湯気が出るのではと思うほど、顔を真っ赤に染めた須美を見て、銀と園子は顔を見合わせて微笑んだ。

 

「うぇ!?ちょっと、銀。そのっち!?」

「よし、ワタシ達は今日から姉妹だ!」

「姉妹の盃を交わすんよ〜酒だ。酒を持ってこ〜い!」

「もう。二人共……」

 

 須美は銀と園子に抱きしめられ、困惑した。けれど、その表情は満更でもなさげな様子だった。

 そんな須美を見て、エミヤは意外そうな表情を浮かべた。

 

「ほう。君はもっと堅物な性格だと思っていたのだが。年相応の反応もするのだな」

「わ、私だって乙女なんですよ」

「……そうだな。すまなかった」

 

 須美は心外だと、むっと顔を膨らませて反論する。

 その反論にエミヤは「それもそうだな」と考えを改め謝罪した。

 そんな様子を見て、今度は園子が「むむっ」と唸ると、何かを思い付いたのか、ピカーンと目を輝かせて言った。

 

「そうだ!この機会にししょーも、私達の事を名前で呼びましょうよ〜」

「お、それ良いな!何時も君とか、君達ってばかりで、偶に名前を呼ばれた時も、苗字かフルネーム呼びだし。この機会に名前で呼んで下さいよ。お師匠〜」

「……君達が望むのなら、そうするが?」

 

 名前呼びを提案する園子と銀。

 エミヤとしても、別段断る理由も無かったので、二人の要望を聞き入れた。

 

「おお〜、じゃ、早速呼んで下さい!」

「下さい!」

「………」

 

 目を輝かせる銀と園子。須美は何も言わないが、ジィーと何かを期待する眼差しをエミヤに向けていた。

 名前呼び一つで、こうも期待されるとは思わなかったエミヤは、若干気圧されながらも、ゴホン。と咳払いをして三人の名を呼ぶ。

 

「銀。園子。須美……ああ、この響きの方が好ましいな。君達に合っている良い名だ」

「なっ!」

「え?えぇぇぇ!?な、なんか、照れますね〜」

「わぁ〜い。褒められた〜」

 

 突然の褒め言葉に、須美と銀は顔を赤くして照れた。その一方で、園子は名前を褒められた事に無邪気に喜んだ。

 

 

 

【3】

 

 

 

 翌日。

 合宿二日目となるこの日は、昨日の鍛錬とは打って変わって、座学から始まった。

 

「くっ〜。合宿中なら勉強せずに済むと思ったのにぃ……」

「そんな訳ないでしょ、銀。勉学は学生の本分だもの。御役目も大事だけど、私達の本分も同じくらい大事よ」

「うぅ〜。須美は真面目だな……」

 

 須美に注意され、机に項垂れていた銀は、仕方なしとばかりに起き上がった。

 

「須美の言う通りだな。尤も、今日学習してもらうのは学校で学ぶ一般科目ではないのだが」

「そうなのですか?」

「ああ、今日学んでもらうのは、今後の戦いで重要となる情報だ。この情報は命の今後の戦いや、君達の生存率に直結する重要な物なので心して聞く様に」

 

 そう言ってエミヤは、座ったまま眠る園子に軽い手刀を喰らわせる。

 

「あたっ!」

 

 園子は頭に走った痛みで目を覚ました。

 

「うぅ……痛いよ〜」

「自業自得だ。全く、銀と須美の姉弟子を名乗るのであれば、もっと示しの付く行動を心掛けてほしいものだ」

「は〜い。すみません」

 

 涙目で謝罪する園子を横目に、エミヤは授業を始めた。

 

「では、先ずはバーテックスの形態からだ」

 

 それからエミヤは、各種バーテックスの形態を描写した資料を交えて、解説した。

 バーテックスには複数の形態があるが、その基調となるのは星屑と呼ばれる無数の小型バーテックス。

 その無数の星屑が融合する事で、バーテックスは中型、大型と進化を重ねる。

 先の戦いで戦ったバーテックスは、現段階では最終形態とされる大型バーテックスで、私達が戦うのはこの大型だ。

 大型バーテックスは全部で十二種類。黄道十二星座と拷問具をモチーフにした姿を形取っており、それぞれ違った特性を有する。

 先の戦いで戦ったのは水瓶座をモチーフとしたアクエリアス・バーテックス。無数の水弾と強力な放水が厄介だが、殺傷能力は低く、脅威度はそこまで高くない。

 

「あれで、脅威度が、そこまで高くない……」

「ま、マジか……」

「あれ以上の強敵が居るって事ですか〜?」

 

 園子の言葉にエミヤは頷き、順に説明を開始した。

 近距離攻撃も遠距離攻撃も行える。万能型の乙女座。ヴァルゴ・バーテックス。

 高い耐久性を有する板を複数操る。鉄壁の蟹座。キャンサー・バーテックス。

 バーテックスの中でも、最も高い殺傷能力を持つ蠍座。スコーピオン・バーテックス。

 強力な一矢による遠距離攻撃と、千の矢による範囲攻撃を得意とする射手座。サジタリウス・バーテックス。

 地震を引き起こす山羊座。カプリコーン・バーテックス。

 極めて高い再生能力と、増殖能力を有する牡羊座。アリエス・バーテックス。

 強力な怪音波を鳴り響かせる牡牛座。タウラス・バーテックス。

 速度と機動力に秀でた双子座。ジェミニ・バーテックス。

 自身を高速回転させる事で竜巻を引き起こす天秤座。ライブラ・バーテックス。

 地中を水中の様に泳ぎ、神出鬼没な攻撃を行う魚座。ピスケス・バーテックス。

 圧倒的火力で蹂躙する獅子座。レオ・バーテックス。

 全ての説明を終えた頃、須美達三人は強張った表情を浮かべていた。

 

「バーテックスの弱点は一つ。御魂という核を破壊する事だ。逆に言えば、御魂を破壊しない限り、如何なる傷を与えようと、内包する星屑によって再生する」

「おお!」

「当然ながら、御魂の位置は巧妙に隠されている上に、御魂その物もかなりの強度を誇る。並大抵の攻撃では傷すら付かない」

「おお……」

「効果的な戦法は二つ。バーテックスの再生限界まで損傷を与え続け、御魂を露出させる方法だ。しかし、この戦法は時間が掛かる上に、リスクが高い」

 

 現実的では無いなと、エミヤは次の戦法を述べた。

 

「もう一つは、私の宝具を持ってバーテックスの御魂を撃ち抜く事だ」

「ほうぐ?」

「それって、先の戦いでエミヤ先生が使った不思議な矢?の事ですか?」

「ああ、バーテックスを一撃で仕留めた奴!」

 

 須美達の反応に、エミヤは「そうだ」と肯定し、その詳細を話す。

 

「宝具とは、過去に逸話を残した英霊達が使用した武器や、逸話が物質化した奇跡だ」

「「んん?」」

「つまり、伝説の武器や必殺技って事ですか〜?」

「その認識で合っている」

「おお!それならワタシにも分かるぞ!」

「つまり、織田信長でいうと圧切長谷部や三段撃ち。佐々木小次郎でいうと物干し竿や燕返しが宝具に当たるという事ですね!」

「そうなるな」

 

 エミヤが頷くと、三人は「わぁ!」と目を輝かせた。

 

「んん。興奮するのは理解出来るが、この話はまた今度にしよう。今は授業中だ」

「は!私とした事が、取り乱しました」

「ちぇ〜。もっと話聞きたかったのに……」

「残念〜」

「そうがっかりするな。授業が終わり、時間が余れば、君達の質問に好きなだけ答えよう」

 

 がっくしと肩を落とした三人だったが、エミヤの提案にやる気を取り戻した。

 

「少し話が脱線したが、要するに、ある程度ダメージを与えさせすれば、私の宝具でバーテックスの御魂を破壊出来る訳だ」

「はいはい!最初から、師匠の宝具でバーテックスを倒せないんですか?」

「もう。忘れたの?銀。御魂の位置は巧妙に隠されているのよ」

「あっ!そうだった……」

 

 もう!と不満げな表情を浮かべる須美。

 

「須美の言う通りだ。前述した通り、御魂の位置は巧妙に隠されており、それを発見するのは困難だ」

「今までの経験則から、御魂の位置を割り出せないんですか〜?」

「無理だな。御魂の位置は固定されていない。体の中心部に位置する事もあれば、体の端に位置する事もある。恐らく、バーテックスの体内を移動しているのだろう」

「うへぇ〜。弱点が移動するとか、そんなの有りかよ」

「大変そうだね〜」

「そうね。何処を攻撃すれば良いのか分からないもの」

 

 三人の言葉に、エミヤは言動には出さないものの、内心では同意した。

 

「故に、合理的な戦い方は、バーテックスに一定のダメージを与え、内包する星屑の数を削る事だ。ダメージを与えても、再生する事から無意味と思える攻撃でも、再生には内包する星屑を消費する。星屑の数が減れば、御魂の隠匿効果も低下し、私の心眼(能力)で御魂の位置を割り出す事が可能となる。そうすれば、御魂に宝具を命中させる事など造作もない」

「「「おお!」」」

「まあ、銀の言う通り、最初から宝具を使い、バーテックスを倒す事も出来なくはないのだが」

「そうなんですか?」

 

 エミヤの言葉に銀だけでなく、須美と園子も意外そうな表情を浮かべた。

 

「ああ、より強力な宝具を使うか、宝具を二回使えば可能だ」

「え?宝具って連発出来る物なんですか!?」

「可能だ。生前の私では精々一発。神樹と契約した後も撃てて二、三発が限界だった。しかし、死後守護者と成り、神樹から提供される膨大な力。魔力を得た私に宝具の使用限界回数など、無いに等しい」

 

 おお!と目を輝かせる三人に、エミヤは釘を刺す様に「だが」と続けた。

 

「私に魔力を提供するのは神樹だ。神樹が私に魔力を提供した分だけ、現実世界が受ける神樹の恵みが減る事になる。場合によっては、バーテックスが樹海を枯らすよりも、私が宝具を連発する方が、現実世界へ与える被害を上回る事もある」

「「「……!」」」

「成程。つまり、宝具の使用は最低限にする必要がある。そう言う事なのですね」

「バーテックスを倒しても、現実世界に被害が出たら意味無いもんな!」

「私達が頑張らないとだね〜」

 

 三人の言葉にエミヤは頷いた。

 

「宝具は極力使わない方が望ましい。しかし、御魂の強度や負傷のリスクを減らす為にも、一戦に一度は宝具を使わざる得ないだろう。宝具無しでバーテックスを倒すのは至難の技だからな」

「「「ゴクリ」」」

「ん〜。そうなると。ししょーには魔力を温存してもらって、私達が中心となって戦う方が良いのかな〜」

 

 園子の言葉にエミヤは頷いた。

 

「ああ、そのつもりだ。今後は君達勇者組に主力と成って戦ってもらう」

「私達が、主力……」

「ワタシ達がバーテックスにダメージを与えて、師匠の宝具でトドメって事ですね!」

 

 責任重大だ。と顔を引き締める須美と銀。

 

「神託では、次のバーテックス襲来は十三日後。だが、前回は神託よりも早いタイミングでバーテックスが襲来した事を踏まえ、今日明日にでも、バーテックスの侵攻がある物だと考え、鍛錬に励んでもらう。覚悟は良いか?」

 

 エミヤの問いに、三人は一度顔を見合わせて頷くと、エミヤの方に向き直って答える。

 

「「「はい!」」」

 

 昨日は厳しい鍛錬。今日はバーテックスの恐ろしさを知って尚、怯む様子を見せない三人。

 その表情、その在り方を見て、エミヤはこの瞬間。須美、園子、銀の三人を少女ではなく、立派な勇者なのだと、初めて()()()

 

「その気概良し。では一時間の昼休憩を取った後、浜辺で鍛錬だ」

「えぇ!?今日は鍛錬無しなんじゃ……」

「そんな事は一言も言っていないが?まあ、銀が座学を望むのであれば、希望通り勉強漬けの一日でも良いのだが……」

「鍛錬でお願いします!」

 

 ビシッと背筋を伸ばし、敬礼をする銀。そんな銀に呆れた視線を向ける須美と、アハハと微笑む園子だった。

 

 その後、一時間の昼休憩を終え、エミヤ達四人とサポート役として合流した安芸を交え、昨日同様の内容で鍛錬が行われた。

 しかし、その鍛錬は前日よりも苛烈さを極め、その夜の三人は泥のように眠った。

 

 それから二週間。

 須美、園子、銀の三人は大人でも根を上げるであろう過酷なスケジュールの下、鍛錬を続けた。

 

 そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーチリン。

 

 第二の敵が現れた。




どうも、出来ればゆゆゆが放送される土曜日投稿目指してるんですけど、中々執筆速度とスケジュールの折り合いが付かない読者その1です。
この一週間で高評価とお気に入り登録者数が伸びて感謝感激です!

そんな訳でようやっと、次の戦いが始まります。
執筆速度だけじゃなくて、物語の進行速度も遅いな……。
連載再開時に誓った週一投稿の目標は何処へ……。

この作品が面白い。続きを読みたいと思った方は励みになりますので、高評価と感想をお願い致します!
読者その1にモチベーション向上バフと執筆速度向上バフが掛かります!
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