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【5】
士郎は三十分程気絶した後、腹部に走る痛みに顔を顰めながら玄関に入ると、其処には士郎以外の靴が二組揃っており、台所の方からは香ばしい焼き魚と味噌の匂いが漂って来た。
「あちゃー、今日は俺が作る予定だったのに……」
士郎は申し訳なさそうに呟きながら靴を脱ぎ、リビングに向かうと、其処には車椅子でありながら、器用に料理をしている美森と、完成した食事を机に並べている友奈の姿があった。
「あ、おはようございます先輩」
「……おはようございます」
二人は士郎に気付くと、一旦作業を止めて挨拶をした。
美森はいつも通りの笑顔で、友奈は何時もは明るく元気に挨拶をするのだが、今日はそっぽを向いて顔を赤く染めながら小さく挨拶をした。
「ああ、おはよう。美森、友奈」
二人に挨拶を返す士郎。
「もう朝ご飯出来てますよ」
「ああ、すまないな。今日は俺が当番なのに……」
エプロンを外して、台所から出て来る美森に士郎は謝った。
「気にしないで下さい。昨晩は先輩に台所を任せっきりにしてしまいましたから」
「悪いな。せめて食器洗いは全部俺に任せてくれ」
「分かりました。それじゃ、食器洗いはお願いしますね。さあ、冷めてしまう前に食べましょう」
「ああ」
士郎と美森、偶に友奈を交えて食事をするのが衛宮家の日常だ。
三人の家は此処、衛宮家を中心に左に友奈が住む結城家、右に美森が住む東郷家が存在する。
士郎は家族が居らず、この広い家に一人暮らし。
友奈も美森も両親が共働きであり、美森は朝も夜も一人で食事をし、友奈も稀に一人で食事をする機会がある。
故に士郎と美森は毎日食事を共にし、友奈も家に家族が居ない時は衛宮家で食事をする。
最初は車椅子の美森に気を使って、東郷家に集まろうという話になったのだが、美森自身が衛宮家の方が落ち着くという理由で、衛宮家に集まる様になっている。
「「「頂きます」」」
三人は箸を取り、食事を始めた。
士郎はちらっと友奈を見る。
視線を感じた友奈は、士郎から胸を隠す動作をして箸を進める。
(やっぱり、朝の出来事は夢じゃなかったんだな……はぁ、後でちゃんと謝らなきゃな)
士郎はそんな事を考えながら、
そして液体の掛かったご飯を口の中に運び……
「ふぁん!?」
派手にひっくり返った。
「これ、ソースだぞ!?ソース!!しかもオイスター!!とろとろご飯にオイスター!!」
士郎は口の周りから、ソースを血の様に流しながら叫んだ。
そしてはっ!と何かに気付いた様に友奈を見る。
すると友奈は顔に影を作り、口角を吊り上げていた。そして口が動く。
そしてクスクスと笑い出す友奈。
「引っかかりましたね。シロー先輩」
「ゆ、友奈……お前、まさか!?」
「そのまさかですよ。シロー先輩。私はシロー先輩が此処に来るまでの間に、醤油の中身をソースに変えておいたのです!」
なん……だと!?と驚愕する士郎。
「なんて恐ろしい事をするんだ!まるで魔王!」
「ふふふ、今朝の恨みをこんな程度で晴らせるとは思わない事ですねシロー先輩」
「ま、待て!話せば分かる!話し合おう友奈!」
手の指を動かしながら迫る友奈。後ずさる士郎。
「話し合い?そんな事で私の……む、胸を揉まれた恨みは晴れるなんて理想でしかない。そんな理想を抱いたままでしか生きられないというならば、その理想を抱いて溺死しろですよ♪シロー先輩」
「そ、それ昨日俺が言ったセリフ!」
狩る者と狩られる者。
絶体絶命のピンチを迎える士郎に。
「……友奈ちゃん」
「ひっ」
油の切れたロボットの様に後ろを振り返る友奈。其処には、修羅の様な雰囲気を醸し出した美森が居た。
「友奈ちゃん。其処に正座」
「と、東郷……さん?」
「早く!」
「はい!」
背筋を伸ばし、敬礼をした後に美森の指示通りに正座をする友奈。
「今朝に何があったかは知らないけど、食べ物を粗末にする様な行為は認められません!」
「は、はい……」
「罰として、今晩のカレーうどんは、友奈ちゃんの分だけうどん抜きのカレーうどんにします」
それは、ただのカレーである。
普通なら、それがどうした?と大した効果が無さそうな罰であったが……
「そ、そんな……馬鹿な……嘘だよね……東郷さん……そんなの……そんなのってないよ!」
まるで、この世の終わりかの様な表情を浮かべる友奈。効果抜群であった。まあ、これは友奈に限った話ではなく、香川県民ほぼ全員に効果抜群な罰である。
それは兎も角、一方の士郎は取り敢えず助かった事に安堵し、脱力するが……
「それから先輩」
「は、はい!」
美森の声に、脱力した体に力を入れ直す士郎。
「友奈ちゃんの胸を触ったってのは……どういう事ですか?」
口は笑ってるのに、目が全く笑ってない美森に恐怖する士郎。
そして士郎は悟る。美森は救いの女神などではなく、死神だったのだと。
【6】
結局あの後、友奈も士郎も両者等しく、美森にこってりと叱られた事により、三人は何時もより三十分遅く学校に着いた。
まあ、勇者部の活動として、登校時間の一時間前に部室に集合するのが日課となっているので、学校には遅刻していない。
「へぇ……つまり、寝惚けて友奈の胸を揉んでしまったのと、仕返しで友奈が醤油とソースを入れ替えた事で二人揃って東郷に怒られたんだ」
「ああ、そうなんだけど……」
現在の勇者部部室の図は以下の通りである。
正座する士郎。
その前に仁王立ちで士郎を見下ろす風。
今朝の事を思い出して顔を真っ赤にして俯く友奈。
友奈を慰める美森。
風の隣に立っている樹。
「裁判長、判決」
検察官風の言葉に、裁判長樹は間を空けず判決を言い渡す。
「
「と言う訳で、今度のかめやは士郎の奢りね」
「ま、待ってくれ!弁護士、弁護士を呼んでくれ!」
「はぁ……しょうがないわね。弁護人、異議は?」
弁護士美森は答える。
「有りません」
「なんでさ!」
「嫁入り前の胸を揉んだのよ。当然の判決だわ」
「そうです。おねぇ……検察官の言う通りです」
被害者友奈。
検察官風。
裁判長樹。
弁護人美森。
全員女であるこの部室に、被告人士郎の味方など居る筈もなかった。
士郎は何を言っても無駄だと悟ると、はぁと溜息をついた。
「分かったよ。今度かめや行った時は俺の奢りだ。けど加減はしてくれよ……特に風」
「なんでよ!」
「お前、何時もうどん十杯くらい食べるだろ!幾ら何でも財布の中身が足りないよ」
「失礼な!そんなに食べてないわよ……精々九杯よ」
「ほぼ変わんないよ……お姉ちゃん」
「んぐっ、そんな事よりも、依頼よ、依頼!士郎。アンタにまた電化製品修理の依頼が来てるわよ」
話題を無理矢理変えた風だったが、誰も話題を掘り返す様な事はしなかった。
「またかよ。今度は何だ?」
「生徒会からよ。なんでも扇風機が壊れたんだって。昼休みにでもちょちょいと直しに行ってあげて。そしてさり気無く部費アップの交渉もお願いね」
「はぁ……了解したよ」
【7】
そして時が流れ昼休み。
士郎は風に言われた通り、生徒会室に来ていた。
「それで?壊れた扇風機ってのは?」
「ああ、これなんだが、去年から動かなくなってな。もしかすると天寿を全うされたかもしれんのだ」
「おいおい。天寿を全うされてたら、流石の俺も直せないぞ」
「ああ、だが一応見てくれないか?讃州中学のブラウニーと呼ばれる衛宮で無理なら諦める」
「はあ、分かったよ。少し集中したいからちょっと一人にしてくれないか?」
「ああ、分かった」
そう言って、士郎が話していた男子生徒が生徒会室から出て行くのを確認すると、士郎は扇風機に手をかざして呟いた。
「
士郎の手に昨晩と同じく青白い線が浮き出ると、それは扇風機に浸透し、扇風機の目に見えない内部構造まで隈無く伝染していった。
暫くして、扇風機の内部構造や故障箇所を確認した士郎は再び呟く。
「
すると、青白い線はブレーカーの落ちた電球の様に消え去った。
「よし、これなら問題無いな。修理しても来年か、再来年には天寿を全うするだろうけど、今年か来年の夏までは持つだろ」
誰に言う訳でもなく士郎は呟くと、工具箱からドライバーを取り出し、扇風機の修理を始めた。
ぶっちゃけ、士郎を三年にしたのって、美森に先輩って言わせたかっただけなんだよね♪
いや、だってさ、美森って桜と似てるじゃん。胸とか、髪とか、イメージカラーとか、料理が出来るとことかさ、これってもう、桜ポジションにするしかないじゃん?
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