本来の世界に帰ってきた料理人   作:北方守護

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第14話 手助け

武昭が船に帰ると3人が駆け寄って来た。

 

「おっ、ただいま皆」

 

「武昭!大丈夫なの!?」

 

「船にいても何かの声が聞こえて来たぜ」

 

「あぁ、そいつはガウチとは別の奴だよ、ちゃんと捕獲もしてきたし……じゃあ ん?どうしたリョウ」

武昭が船のキッチンに向かおうとした時にリョウが肩を掴んで引き止めた。

 

「料理は俺がするから……武昭は()()の治療をしてろ……」

 

「え?ケガの治療って、どう言う事かしら?リョウ君」

 

「これを見てくださいよ2人共……」

 

「なっ!?なんだよ、その傷……」

リョウが武昭の上着をまくると背中に///の傷があり血が流れ出ていた。

 

「あぁ、別の奴にやられてな、よく気づいたなリョウ」

 

「足元を見れば分かる……」

リョウの言葉にアリスと竜胆が武昭の歩いてきた場所を見るとポタポタと血の跡が残っていた。

 

「そんなに出血して大丈夫なのか!?武昭!」

 

「早く部屋で休みなさい!!」

 

「ハァーッ 分かったよ」

武昭はどこか納得した表情で船室の一つに向かった。

 

船室で……

 

「おい!もっと強く引っ張るんだよ!!」

 

「分かってるわよ!けど、これ以上は行かないのよ!!」

 

「うん、それくらいで良いぞ2人共」

武昭は竜胆とアリスにケガの治療されていた。

 

「それにしても……武昭が、そんな傷を負うなんてな……」

 

「あぁ、今回の事は完璧に俺が油断したからだ……けど、俺だけで行って良かったよ」

 

「そうか……それで今回の獲物はどんな奴なんだ?」

リョウに言われた武昭は船室にガウチとアイスジャガーを取り出した。

 

「なぁ、こっちのガウチって奴は教えてもらってるけど、コッチはなんだ?」

 

「パッと見ジャガーに見えるけど………」

 

「アリスの言う通り、コイツはアイスジャガーって奴だ」

 

「もしかして……その傷って……」

 

「竜胆の考えてる通り、アイスジャガーにやられたんだよ……あぁ、あんまり触らない方が良いぞ」

 

「あら?どうしてなの、武昭」

 

「だって、アイスジャガーは麻痺してるだけだからな」

武昭の言葉に3人は慌てて距離をとった。

 

「おいっ!なんで生きたまま連れてきたんだよ!!」

 

「ん?そんなの()()()()()()()()()()()()()()

 

「食べないのに……どう言う事だ?武昭」

 

「俺を鍛えてくれた師匠が言ってたんだ……

【生き物を殺す時は食べる分だけ……

食べないのなら生き物を殺す事はしない】って……

だから俺は無闇に殺す事はしないんだ……」

 

「そうなのか……そういや勝負した時に武昭の方は食材の残りが、そんなに無かったな……」

リョウは武昭との勝負の時の事を思い出していた。

 

「俺たちは他の命を食べて生きているんだ……だからこそ俺は食材を無駄にしないんだ……」

 

「そうだよな……私たちは料理人として基本的な事を忘れてたのかもな」

 

「えぇ……どんな食材であれ私たちは使わないと駄目ね……」

 

「なぁ武昭、俺にこのガウチの調理をやらしてくれないか?」

 

「ん?別に構わないけど……急にどうしたんだ?リョウ」

 

「武昭がケガをしてるって事もあるけど……俺も何かの力になりたいんだ……」

 

「だったら!私だって料理するぜ!!」

 

「なら、私もやらしてもらうわ、構わないわよね?武昭」

 

「あぁ、俺の師匠がこうも言ってたぜ【思いたったが吉日 他は全て凶日】だってな」ニカッ パンパン

武昭は笑顔で皆の肩を叩いた。

 

「下処理くらいは俺にやらせてくれ」

 

「まぁ、それくらいなら……〔ピシュン)え?……」

 

「嘘だろ……これだけの大きさの獲物の皮を一瞬で剥ぐなんて……」

アリスと竜胆は自分達が気付かない内にガウチの処理が終わってた事に驚いていた。

 

「なぁ武昭、コイツはトドと同じって考えて良いのか?」

 

「うーん……コッチの世界なら、そうだけど……まずは味見してみろよ〔シュン〕軽く焼いて……ホラ」

武昭はガウチを少し切り分けた物を焼いて3人に食べさせた。

 

「うおっ!私も何回かトドを食べた事があるけど、それとは全くの別物だぜ!!」

 

「しかも凄く柔らかいわ!!」

 

「いや、柔らかいけど ちゃんと歯応えもあるのか……」

 

「あっちじゃ、よく丸焼きにしてたけどな」

 

「よーし、待ってろよ武昭、今、作ってやるからな!」

 

「私だって美味しい物を作ってあげるわ!」

 

「へっ!俺様の実力を見てな!!」

3人は、それぞれ調理を開始した。

 


しばらくして3人が調理を終えたので食事をしていた。

 

「竜胆の料理はガウチのハンバーグか……うん、粗挽きだから歯応えがあって美味しいな」

 

「へっ!こういう獲物の料理は得意だからな!」

 

「次はアリスの料理だけど……コイツは煮込みか……野菜にも味が染みてるな」

 

「ふっふーん 始めての食材だったけど私にかかれば、こんな物よ」

 

「最後にリョウの奴は……衣をつけて揚げたのか……これは衣にも味を付けてるんだな」

 

「ハッ!コイツをサッパリした味わいにする為にしたんだ!どうだ!?美味いだろう!!」

 

「あぁ、皆からしたら始めての食材を使って、ここまで出来るなんてな」ガツガツ

 

「あぁ、武昭 飯食ってからで良いけど……包帯を変え……ん?」

リョウが武昭の背中を見た時に出血が少ない事に気付いた。

 

「おい、武昭……もう傷が塞がってないか?」

 

「そんな事有る訳無いじゃないリョウ君」

 

「あぁ、さっき応急処置したばっかりで、そんな直ぐに塞がるわけ無いだろ?」

 

「いや、リョウの言う通りだ ()()()()()()()()()()()()()()()()()

一旦、食事を止めた武昭が包帯を外すと深かった傷が治っていた。

 

「おいおい、素人判断だけど、あれは結構な深さだったぜ」

 

「まぁ、武昭なら不思議でも無いからな」

 

「そうね……それよりも私達も食べましょうよ!」

アリスの言葉にリョウと竜胆も食事を再開した。


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