本来の世界に帰ってきた料理人   作:北方守護

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第17話 修行 その3

3人が武昭から食義の修行を受け始めて3日程経った頃……

 

「うん、だいぶ炎が保つ様になってきたな……」

 

「ハァハァハァ……けど、本当に変な考えをしたら直ぐに消えるな……

それにお嬢も出来る様になるなんて思わなかったっすよ……」

 

「もーうリョウ君、私だってこれ位出来るわよー」

 

「とか言いながら、着いたり消えたりが早かったじゃん」

 

「竜胆さんだって、私と変わらないじゃないですかー」

 

「はいはい、口喧嘩はそこまでにして朝食にしますよ」

武昭は3人に箸と茶碗を渡した。

 

「武昭、今朝の朝食はなんだ?」

 

「あぁ、そこに壺があるだろ」

武昭が指した先に一つの壺が置いてあり中には米粒の様な物が詰まっていた。

 

「これって……お米なの?」

 

「いや、そいつはタマゴ入りご飯って言ってご飯の中にタマゴが入ったご飯なんだ」

 

「へぇー美味そうじゃん、じゃあ「ちょっと待った!」んあ?なんだよ武昭ー」

竜胆が手を入れようとしたのを武昭が止めた。

 

「そいつも修行の一環だから箸で取ってもらう。食べたい分だけな」

 

「なぁ、聞きたいんだけど……これって何かあるのか?」

 

「何かって……何がだ?リョウ」

 

「修行って事は何かあるんだろ……俺達じゃキツイ事が……」

 

「別に何も無いよ……()()()()()()()()()()()()()取ったら俺が調理してやるから」

 

「そうなの、だったら私が一番にやってあげるわ!」

 

「あっ!ズルいぞ!!」

 

「そうだ、言い忘れたけど……「キャッ!?何!一個割れたら周りのも割れてってるわよ!?」やっぱりな……」

武昭はアリスが挑戦して失敗する事が分かってる様な口ぶりだった。

 

「おい!やっぱりって、どういう事だよ!!」

 

「そいつは凄い割れやすくてな一粒割れるとその割れた破片が当たっただけでも連鎖的に周りのも割れるんだ」

 

「じゃあ、どうすれば良かったんだ?」

 

「一粒ずつ丁寧に取れば大丈夫だったんだ、別に割れても食べられるから朝食は無しにならないぞ」

武昭は壺を持って朝食を作りに向かった。

 

朝食を終え、3人は礼の訓練をしていたが水を掛けられ濡れていたが着替えを済ませていた。

 

「チッキショー……また水浸しだぜー」

 

「けど、前よりかは濡れなくなってきてる感じがするわ……」

 

「だけど濡れてる事には変わりないですけどね」

 

「よーし、次の修行はコイツだ。皆こっちに」

武昭は3人を呼ぶと真っ直ぐに立たせて頭の上にプリンが盛られた皿を乗せた。

 

「そいつはプリンラクダと呼ばれてる動物のプリンで凄くデリケートなんだ、だから」

武昭が近くに合った皿をちょっと動かすと乗っていたプリンが崩れた。

 

「次はそれを崩さない様に5分、そのままでいてもらう……5分経って無事だったら食べて良いぞ。

よーいスタート」

 

「5分とは言うけど……結構辛いぜ……アッ」 竜胆15秒

 

「私なら5分くらい平気……キャッ」アリス20秒

 

「動かないって……5分って、こんなに長いのか……チッ」リョウ30秒

 

「まぁ、最初から長くは無理だからな、どれ昼食にするぞ、3人は顔を洗ってこい」

 

 

昼食を食べる場所に行くと大きなボウルの中に多数の細長い白い物が泳いでいた。

 

「昼食は白魚そうめんだ、コイツも食べたいだけ取ってくれ」

 

「コイツも取りにくいんだろ?武昭」

 

「流石にここまで来ると分かってきたみたいだな、けどコイツにはこれで取ってもらう」

武昭は今までとは違う箸を置いた。

 

「そいつは氷樹と呼ばれる物で出来た箸で物凄く滑りやすいんだ」

 

「確かに……今までの箸が普通に……うわっ!」

 

「ちゃんとした握り方じゃないとずっと掴みづらいぞ」

 

「そうは言うけど武昭はこれで掴めるの!?」

 

「あぁ、普通に出来るぞ、ホラ」

アリスは武昭が普通に出来た事に唖然としていた。

 

「俺も最初は苦労したんだ、けど頑張ってここまで出来る様になったんだ皆も頑張れよ」

 

「よーし、俺も武昭に追いついてやるぜ!」

 

「あっ!待ちなさいよリョウ君!」

 

「おいっ!先輩よりも先に取るな!!」

3人は白魚そうめんを取り始めた。

 

その日の夜……

 

「フゥ……ちょっと、喉が乾いたぜ……ん?あそこは……」

竜胆が水を飲みに台所に行くと武昭の部屋から微かな光が見えていた。

 

「私達に黙って何か夜食でも食べてるんじゃ……なっ!?」

竜胆が隙間から覗くと周りに数十本のたいまつくしを立てて座禅をしている武昭の姿があった。

 

「おいおい……あれって、どれだけの数やってるんだ……」

 

『フゥ……3時間の座禅が終わったか……次は……コイツだな』

武昭は土の入った鉢を取り出すと一粒の種を植えて座禅を始めた。

 

「ん?あれって……まだ私達がやってない修行か?……嘘だろ……」

 

『うん、ローズハムが咲くのが、ちょっと遅かったな……まだまだか……』

竜胆が見てると鉢から直ぐに芽が出てハムの花が咲き武昭はそれを食べていた。

 

『また、向こうの世界から危険な生物が来るかもしれないんだ……

だからこそ俺がやらなきゃ……』

 

「武昭……そうか……」

竜胆は何かを思うと寝室に戻った。

 

 

 

 


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