武昭が3人に食義を教えてから数日経ったある日の事、武昭は遠月学園に来ていた。
「うっす久し振りですね学園長 それで今日は何の用ですか?」
「うむ、今日お主を呼んだのは久し振りに料理を作ってもらおうと思ったのじゃ」
「良いですよ、料理人は食べたい人がいるなら作るだけですからね それで何か希望はありますか?」
「ふむ……あるのなら向こうの世界の食材を使ってほしいのじゃ」
「はい、分かりました、じゃあ作って来ますけど……この後の予定とかは大丈夫ですか?」
「ハハハ、お主の料理を食べる為ならば時間など幾ら掛かっても構わぬ」
「そうですか、なら厨房に行って作りますか」
武昭は用意された厨房に向かった。
厨房に向かった武昭は今、自分が持ってる食材を確認した。
「うーん……今日の料理は……よし、あれにするか」
「あら?貴方は誰かしら?」
武昭が調理を始めようとした時に厨房に長い金髪の女性が入ってきた。
「あぁ、俺は紫水武昭、学園長に頼まれて料理を作りに来たんだ……
聞きたいんだけど、あんたはアリスの知り合いさんか?」
「え?貴方はアリスを知ってるのかしら?」
「あぁ、ちょっと薙切インターナショナルにいた事があってな」
「そう、私は薙切えりな アリスとは従姉妹なの」
「なるほど、どうりでアリスに似てる訳だな 俺の事は武昭って呼んでくれ、その方が呼ばれ慣れてるんだ」
「そう、分かったわ武昭さん、けど貴方がお爺様に料理を作りに来たと言ってましたが、それほどの腕前なのですか?」
「腕前か……まぁ、それなりの実力はあるかな?」
「そうなの……まぁ、お爺様が呼んだのでしたら、大丈夫なのでしょうけど」
えりなはどこか上から目線で武昭を見ていた。
「まぁ、初対面だから訝しむのも分かるけど、あんたも料理をするなら俺の料理を食べてもらうぜ」
「面白いじゃない、まぁ私の口に合う物が作れたらよ」
「よしっ、言ったな じゃあ作らせてもらうか……そうだ何かアレルギーみたいな物はあったりするか?」
「いえ、何も無いわよ」
「そうか、なら……コイツを使うか」
武昭は調理台にグルメケースを置くと中からストライプサーモンを出した。
「あら?そんな色の魚は初めて見るわね……それに、そのケースも……」
「そうか、そりゃ地球は広いんだから初めて見る魚もいるだろ?(向こうだったら普通にいるんだけどな)
おっ、メスで金色イクラが入ってたか」
「ちょっと待ちなさい!!それはイクラなの!?」
「あぁ、驚くのは後にして、まずは調理をさせてくれ(まずはイクラをほぐして醤油バッタの醤油に漬け込んでおく)」
(見た目は初めて見たけど身は普通のサーモンと一緒ね……それにあれは醤油に漬け込んでるのね…)」
「身は塩を振って焼いて、頭と骨はアラ汁に……ご飯は羽釜があるからコイツで炊くか」
「焼き魚とイクラ……それにご飯……もしかして鮭とイクラの親子丼を作るのかしら?」
「あぁ、ちょうど材料があったからな……あとは、今ある野菜で浅漬けを作るか」
武昭は野菜を違うグルメケースから出す適当な大きさに切って塩を振って軽く置いておいた。
「凄い手際ね……いつの間にか洗い物を入れた殆どの作業が終わってるわ」
「料理って奴は片付けまでする事だって俺は考えてるからな……おっと、魚も焼けてご飯も炊けたみたいだな」
武昭は焼けた魚の身を細かくほぐし丼に盛ったご飯の上に真ん中を空けて載せて空いた所にイクラを盛るとお椀にアラ汁を注いだ。
「よし、これで鮭とイクラの親子丼セットの完成だな」
「黒いご飯の上に赤い鮭の身と金色のイクラを載せたのね……けど問題は味よ」
「そうだな、俺は学園長に持って行くから食べててくれ」
武昭が出来た料理を持って学園長室に向かうと厨房にはえりなだけがいた。
学園長室で……
「うむ、またお主の料理を食べれるとは思わなかったぞ」
「まぁ、まずは冷めない内に食べてください」
「そうじゃな、ではいただきます……むっ!?これは……」
宗右衛門が一口食べると吹雪の雪原の中に立っていて地面から芽が出て直ぐに成長していき空が晴れたと同時に何処からか現れた多数の鮭に乗り流されている幻が見え現実では上半身の着物がはだけていた。
「おはだけが出たって事は美味しかったんですね」
「そうじゃ、吹雪が急に晴れたと思ったら多数の鮭に乗っておったわ……」
「その米は漆黒米と言って極寒の地でしか育たないんですよ、それにその鮭はストライプサーモンとそれから取れた金色イクラです。
ストライプサーモンは綺麗な水の所に群れで生息してるんです」
「なるほど……じゃから、あの様な景色が見えたのか……」
「そうだ、さっき、えりなって言う女生徒に会ったから同じ物を食べさせました」
「なんと!そうか……そうじゃ、お主は住む所が無いと言っておったからこちらで用意させておいたぞ」
「ありがとうございます、なら俺は場所を確認してきます」
「これが鍵と地図じゃ、そこに泊まるのも向こうに帰るのもどちらでも良いぞ」
「わかりました、それじゃ」
武昭は食べ終えた食器を持って学園長室を出て行った。