本来の世界に帰ってきた料理人   作:北方守護

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第21話 氷の女王(裏)とあの世界へ

武昭が学園長に料理を持って行った後の厨房で、えりなが椅子を出して料理を食べようとしていた。

 

「それでは食べてみようかしら……んん!?これは……」

まずは米を食べて、その味に驚いていた。

 

「私も何回か色米は食べた事はあるけど……この米は今までの中で1番だわ……それに……」

次に細かくしたサーモンに箸を伸ばした…

 

「これも見た目は普通の鮭なのだけど……魚にある独特の臭みが無い……

しかも、味付けは私が見てた限り塩のみだけだったけど、それが逆に魚の旨さを引き出している……

金色のイクラ……川魚のヤマメから取れるとは聞いた事があるけど……あれは確かに鮭だったわ…」

えりなは箸で少しイクラを掬うと口に入れた……

 

「とれたてを醤油に漬けただけなのに味がちゃんと染み込んでいる……

しかも適度な硬さがあるのに皮は柔らかくて中からエキスが出てくる……」

最後にえりなは米と鮭、イクラを一緒に食べた……

 

「はぁ……米の甘さ、鮭の塩味が互いに引き立ってあって、イクラの歯ごたえがいい感じにしてくれる……

そして……最後に、このアラ汁がちゃんとしめてくれる」

えりなは自分が大平原に立っていて空から海に太陽の光が差し込まれそこから海に泳ぎ出す幻を見ていた。

 

「さすがにお爺様に呼ばれるだけはあるわ……」

 

「えりな様?ここにいらしたのですか」

えりなが余韻に浸ってると厨房に赤紫色のショートカットに制服を着た女生徒新戸緋紗子が入ってきた。

 

「あら、緋紗子、どうかしたの?」

 

「はい、そろそろ仕事の時間が近づいてましたので」

 

「そうだったの、ありがとう教えてくれて……そうだ、あなたに1つ頼みたい事があるのだけど」

 

「はい、どの様な事でしょうか?」

 

「紫水武昭という人物の事を調べてほしいの」

 

「紫水武昭……ですか?」

 

「えぇ、今さっきお爺様に呼ばれて料理を作ったのだけど、私にも料理を振舞ってくれたの」

 

「なっ!?えりな様に料理を振舞っただと!?そんな、どこの馬の骨とも分からない者の料理を食べて大丈夫ですか!!」

 

「大丈夫よ……けど、その料理は私が初めて食べた物だったわ……」

 

「えりな様が、その様に仰られるとは……分かりました、調査が終わり次第お教えします」

 

「ありがとう緋紗子……では、仕事に向かいましょう……」

えりなと緋紗子は厨房を出て仕事に向かった。


一方、武昭は学園長から言われてた住所に来ていた。

 

「ふーん、ここが俺の住む所なんだ」

住所の場所には二階建の一軒家が1棟あったが周りに木々や草花が多量に生い茂っていた。

 

「おぉ、学園の施設の一部だからと考えてたけど中々の家だな」

武昭は鍵を開けると家内を確認した。

 

「うん、電気水道、他のライフラインも問題はないか……とりあえずは家電を買わないとな……」

 

「おっ!誰が、こんな所にいるかと思ったら武昭じゃねぇか!」

武昭が声の人物を確認すると制服姿の竜胆がいた。

 

「よっ、そういや竜胆もここの生徒だったっけ」

 

「そうだぜ、それよりもこんな所に居てどうしたんだ?」

竜胆の質問に武昭が軽く事情を説明した。

 

「そうだったのか、じゃあ買いに行こうぜ!私なら、それなりに案内出来るからよ!!」

 

「そうか、なら案内してもらおうかな」ピピピ

2人が出掛けようとした時に武昭の通信機に通信が入った。

 

「悪いな竜胆、ちょっと待っててくれ、はいこちら武昭ですけど」

 

〔あっ、武昭君、私リンだし〕

 

「あっ、リンさんですか、どうしたんですか?」

 

〔うん、今日連絡したのは、武昭君に関係ある事なんだし〕

 

「俺に関係ある事って?」

 

〔そう、実はそっちの世界とこっちの世界の移動が自由に出来る様になったんだし〕

 

「えっ!?そうなんですか!!」

 

〔そうそう、こっちの技術者が研究して世界転移を自由に出来る様にしてくれたんだし〕

 

「けど、何か条件みたいなのは無いんですか?」

 

〔条件としては重量と転移する出入り口の設定だね〕

リンは武昭に設定条件を話した。

・転移可能重量は人物、物質などを合計して500kgまで。

・転移可能の入口として周囲半径300m内の何も無い広場。(サバンナの草原や砂漠の中でも可能)

・出口はグルメ世界のIGO内の一室。

・今の時点では、そこ以外での転移は不可能。

・但し、以前のガララワニやガウチの様な自然転移とは違う物とされている。

との事だった。

 

「そうだ、時間の流れとかはこっちと変わらないんですか?」

 

〔うん、こっちで1日過ごすとそっちでも1日進んでるよ〕

 

「そうですか……リンさん、その出入り口を設定するのに俺はこっちで何をすれば良いんですか?」

 

〔武昭君がマンサム会長から貰った通信機に扉のマークみたいなの無いかな?〕

 

「あっ、ありましたけど……これは気になってたんですよね」

 

〔じゃあ、それを……〕

リンは武昭に設定方法を教えた。

 

その結果……

 

「よし、こんな物だな リンさんこっちは準備出来ましたよ」

武昭は庭の木々を伐採し草刈りなどをして出入り口に必要な広場を作った。

 

〔そう、だったらそこの中心部で通信機のボタンを押すと自動的に設定して、こっちの世界に来れるよ〕

 

「分かりました……あぁ、竜胆も「当たり前だろ!?」まぁ良いか……リンさん、こっちの人も1人連れてって大丈夫ですか?」

 

〔うん、こっちは問題ないよ〕

 

「はい、じゃあ行くから竜胆、俺のそばに来い」

 

「あぁ!分かったぜ!!(向こうの世界にはどれだけ旨い物があるんだ!!)」

竜胆が自分に抱き着いたのを確認すると武昭は通信機のボタンを押した。

 

その瞬間、通信機から光が発生し武昭と竜胆を包み込み、消えたと同時に2人の姿が無かった。

 


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