武昭と竜胆が、ののに連れられて来た場所は大きな城の様な建物の横にある小さなボロい食堂だった。
「ん?なぁ武昭、ここが目的地なのか?」
「あぁ、ここに居る人は、この世界で4人しか居ない美食人間国宝の1人で伝説の料理人でもあるんだ」
「なっ!?世界に4人しか居ないって……」
「先生、買い物に行ったら懐かしい人に会ったので一緒に来ました」
ののが店に入った後に武昭と竜胆も入ると小柄なピンク色のお団子ヘアの老婆が椅子に座ってお茶を飲んでいた。
「誰じゃ?懐かしい人とは?」
「俺だよセツ婆武昭だよ」
「おぉ!武昭じゃったのか、本当に久し振りじゃのう……ん?そっちの女子は誰じゃ?」
「あぁ、彼女は俺と一緒にこっちに来た竜胆って言うんだ」
「あっ、小林竜胆って言います……なぁ、武昭……このお婆ちゃんが本当に伝説の料理人なのか?」
「まぁ、竜胆からすればセツ婆を始めて見て、そう思うのは当たり前だな」
「なんじゃ、その子はあたしゃの事を知らんのか……ってこの世界じゃないなら、そう思うのも無理はないのう」
「セツ婆、急に来てなんだけど何か食べさせてくれないかな?」
「うっふっふっ、しょうがないのう武昭は……ならセレ豚のカツ丼でもどうじゃ?」
「うん!構わないよ!ほら竜胆も席に座れよ」
「あ、あぁ……武昭が伝説の料理人って言ってたけど……」
「そうだよな竜胆も料理人だから分かるだろうけど、この店にある物全部、普通に見えるんだろ?」
「そうだぜ……伝説の料理人って言うなら、もっと高級な器具とか使ってるんじゃ……」
「確かに、そうかもしれないな……けど料理人は料理で勝負するんだ……」
「どこにでもある道具で最高のフルコースをお客さんに振る舞う……それが先生なんです……お水をどうぞ」
「ありがとうございます……うわっ!なんだこの水!?凄く飲みやすくてまるで空気みたいだ……」
「それはエアアクアって言う水で標高1万m以上の山から湧き出る水で世界でも5本の指に入るほどの喉越しなんだ」
「標高1万m以上って……武昭、もしこれって店で買うとなったら幾ら位なんだ?」
「確か……2リットルのボトル一本で12万円位じゃなかったかな?」
「えっ!?1,12万円……まさか、そんな水が無料……なのか?」
「え?お冷は普通に代金なんか掛からないだろ?ですよね、ののさん」
「はい、武昭君の言う通りですよ」
(そっか……そういや、ここは私がいた世界とは違うんだったっけ……)
竜胆は自分の常識が当てはまらない事を忘れていた。
「ほれ、話している間に料理が出来たじょ」
セツ婆は2人の前にカツ丼を置いた。
「おっ!久し振りのセツ婆の料理だ!冷めない内に食べようぜ!竜胆!!」
「あ、あぁ、そうだな……(よし、構わないで食べるぞ!)」
「「この世の全ての食材に感謝を込めて……いただきます」」
「旨んめぇー!!カツとタレとご飯がいい具合に絡んでるぜ!!」カッカッカッ
「武昭の言う通りだ!更に玉ねぎもちゃんと火が通ってるのに歯応えがいい感じにあって良いアクセントだ!!」
2人はその後カツ丼をおかわりした。
武昭は17杯、竜胆は1.5杯だった。
食事を終えて……
「ふぅ、ご馳走様セツ婆 久し振りに食べれて嬉しかったよ」
「うっふっふっ、わたしゃも久し振りじゃったからのう」
「それでお2人は……いつ向こうの世界に戻るんですか?」
「うーん、ここからIGO迄なら……時間て所だから、そろそろ行くよ」
「うっふっふっ、また来た時には寄りんしゃい、料理を作ってやるじぇ」
「その時は私も作りますから……」
「ありがとう、セツ婆、ののさん……じゃあ行くから、ほら竜胆行くぞ」
「ありがとうございました」
2人は食堂を出ると駐車場に向かった。
元の世界に帰った日の夜、竜胆の部屋の浴室からちょっとした悲鳴が聞こえたらしい……
エアアクアの値段は確かTVでこうだったとうろ覚えです。