本来の世界に帰ってきた料理人   作:北方守護

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第34話 マスターとの出会い。

武昭が捕獲してきたフグ鯨は20匹はいたが……

 

「さてと、じゃあ俺が捌くか…。まずはコイツからだな……えっと……ここからだな……」

 

「ねぇ武昭、捌くなら尻尾からより頭からの方がやりやすいんじゃないかしら?」

 

「いや()()()()()()()()()()()()()()()()コッチからの方が正しいんだ」

 

「武昭、もしかしてフグ鯨の毒袋ってその個体によって場所が違うのか?」

 

「あぁ、リョウの言う通りだ、元々フグ鯨は体長6m程の大きさなんだけど深海に来るにつれて水圧で潰れていって、これ位の大きさになるんだ。

それで味も濃縮されて旨くなるんだけど、不要な老廃物も圧縮されて……」

 

「それが毒袋になるって事か」

 

「そうだ、だから、その個体によって場所が違うから捌き方は何百通りもあるんだ」

 

「じゃあ武昭は、その何百通りの捌き方を覚えているって事?」

 

「まぁ覚えているって言うか何となく分かるって言った方が良いな……例えば」

武昭はフグ鯨の一匹を手に取った。

 

「このフグ鯨だったらこの位置にあるしコッチはここだし……コイツは……」

 

「俺にも見せてくれ……って全然分からないぜ……」

リョウもフグ鯨も見るが全部同じに見えた。

 

「けど、俺はリョウやアリスなら出来ると思ったんだけどな……」

 

「え?私やリョウ君なら出来るって、どういう意味かしら?」

 

「うーい……それはお主らが【食義】を習ったからじゃろ?」

皆が声のした方を見ると洞窟の方から白髪のリーゼントでタンクトップの上から袖なしジャケットにズボンを履いた長身の老人が立っていた。

 

「なっ!?お前は誰だ!!」

 

()ぃちゃん!久し振りだね!!」

 

「おお、武昭じゃないか、久し振りじゃのう……」

老人は武昭が駆け寄ると頭を優しく撫でた。

 

「武昭も大きいけど、より大きい人だな……」

 

「ねぇ、武昭はそのお爺さんの事を知ってるの?」

リョウが老人の大きさに驚いているとアリスが武昭に尋ねた。

 

「あぁ、この人は俺の師匠の1人鉄平さんの祖父で、初代ノッキングマスター次郎さんって言うんだ」

 

「ホホホ、今じゃノッキングマスターは鉄平じゃからワシはただの酔っ払いのジジイじゃよ」

次郎は砂浜に座ると持っていた酒を飲んだ。

 

「それで次ぃちゃんがここに来たのって、やっぱりフグ鯨?」

 

「おぉ、フグ鯨のヒレ酒は美味いからのぉ〜」

 

「だったら俺が獲ったのを少し渡そうか?」

 

「いや、それはお主達が捕獲した物じゃから結構じゃ。自分の物は自分で獲るわい」

次郎は酔っ払いながら海に入っていった。

 

「ちょ、ちょっと!そんなに酔っ払って海に入ったら危ないわよ!?」

 

「武昭!直ぐに助けに「いや次ぃちゃんなら大丈夫だよ」おいおい、そんな事言って」

アリスとリョウが慌ててる中武昭だけが平然としてたので少しすると持っていたバケツに多数のフグ鯨を入れた次郎が上がってきた。

 

「なっ!?あれだけのフグ鯨がいるなら毒化しててもおかしくないのに、全然普通のままだ……」

 

「あれ位、次ぃちゃんにとったら朝飯前だよ」

 

「うい〜それじゃワシは地上に戻るからのう……お主達頑張るんじゃぞ、経験を積んでいけば実力はついていくからのう」

次郎はそのまま洞窟から出て行った。

 

「あれが伝説と呼ばれてた人の力なのね……ねぇ武昭、私にフグ鯨を捌かせてちょうだい」

 

「あぁ、良いぜ。失敗しても気にするな初めての食材なんだから」

 

「分かったわ……武昭、コレはどこに毒袋があるのかしら?」

 

「うん、コイツだったら腹のこの辺りだな……だからエラからこの辺りまで刃を入れるんだ」

 

「この辺りまでね……次はどうするの?」

アリスは武昭の指示を受けながらフグ鯨を捌いていった。

 

その後、リョウもフグ鯨を捌きたいと言ったので交代しながら捌いていった。

 

その結果……

 

「ふぅ……やっとここまで来たか……」

 

「この黒いのが毒袋ね……あれだけいたのに結構失敗しちゃったわね……」

2人の前には成功したフグ鯨が一匹ずついた。

 

「まぁ、一匹ずつでも捌けたんだ。初めてにしては上出来だよ……ここからは素手でやるぞ、まずはアリスからだ」

 

「えぇ、良いわよ……それで、どうするの?」

 

「ゆっくりと慎重に毒袋が破れない様に周りの粘膜を取り除くんだ……慌てないで少しずつ……」

 

「少しずつね……確かに、ちょっと力を入れただけで破けそうな位に脆いって分かるわ……けど、だからこそ慎重にしないとダメなのね……」

 

「あぁ、そうだそのまま手前の粘膜を取ったら手に乗せて裏の粘膜も取り除くんだ……」

 

(優しく……ゆっくりと……慌てないで……ダメよ落ち着いてやらないと……)

 

(あのお嬢が……あんなに落ち着いてるなんて……)

 

「よし、それで全部取れたぞ……けどそこからもゆっくりと手で挟んで持ち上げるんだ……」

 

「えぇ……ここまで来て、最後で失敗なんてしたくないわよ……やった、取れたわ!!」

アリスが毒袋を完璧に取り除くと同時にフグ鯨の身が黄金に光り輝いた。

 

「武昭!コレってなんなの!?」

 

「コレはフグ鯨から毒が完全に取れたって言う証なんだよ……さてと次はリョウの番だ」

 

「あぁ、頼むぜ……」

リョウは武昭の指示でフグ鯨の捌きを開始した。

 

その後……

 

「ふぅ……まさか1匹の魚で、こんなに疲れるなんて思わなかったぜ……」

 

「ハハハ、まぁ2人は休んでろよ、あとは俺が料理するから」

 

「武昭、それでフグ鯨はどこが食べれるのかしら?」

 

「あぁ、フグ鯨は毒袋以外は全部食えるぞ、疲れてるなら、ヨイショっとコレを食べてみろ」

武昭は内臓の一部を切り分けると2人に渡した。

 

「コレは内臓か?」

 

「あぁ、フグ鯨の肝だ、食べてみろ。獲れたての刺身はまた格別だぞ」

 

「武昭がそう言うならいただきます……ん!?何これ!?」

 

「たった一口分なのに疲れが吹っ飛んだぜ!」

 

「フグ鯨の内臓は各種滋養強壮に優れてて生で食べると10日間は不眠不休で活動しても疲れない程の精力が得られるって言われてるんだ」

 

「確かに……一口食べただけで、こんなになるんだからな……」

 

「ねぇ!武昭!他の部分はどうなの!?」

アリスが聞いてきたので武昭はそれぞれの部位の説明をした。

 

その後、3人はレージに乗り込んで砂浜から離れていた。

 

「いやー凄く有意義だったわ!!」

 

「あぁ、それにまさかあんな人に会えるなんて思わなかったぜ……なぁ武昭」

 

「ん?どうした、リョウ」

 

「いや次郎さんが俺達だったらいずれフグ鯨を捌ける様な事を言ってたけど……もしかしたら竜胆も……」

 

「あぁ、今俺が食義を教えたのはリョウ、アリス、そして竜胆の3人だからな」

 

「そうか……武昭、また都合があったらコッチに連れてきてくれないか?」

 

「アァーッ!リョウ君ズルいわよ自分だけだなんて!私だってコッチに来たいんだからー!!」

リョウの言葉を聞いたアリスが武昭に詰め寄っていた。

 

 

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