「シン隊が壊滅!?何をやっとるか!敵は寡兵だ物量で押し潰せ!後方のジムも全部出せ!手加減するな!」
シマダイ少将は狼狽していた。
ジオン残党の秘密協定破りの突然の襲撃に対しての狼狽もあるが、防衛隊のジム10機以上が瞬く間にやられたことに対する狼狽と言う部分が大きい。
「前線のジムは下げろ。部隊をここ、司令部に集結させろ!」
「しかし、閣下!それではドックのファントムクォーツ隊が!」
シマダイ少将の命令に幕僚の一人が意見を述べた。
「知ったことではない!書類上存在してない部隊など知るか!」
そんなことはシマダイ少将にもわかっていた。しかし、他派閥に構っていられるだけの余裕など等にこの旅団にはなくなっていた。
「私はゴップの饅頭を食ったのだ!それは貴様も同じのはずだぞ!」
シマダイ少将は意見を述べた幕僚を指差して叫んだ。
この部隊の幹部は全てゴップの饅頭、即ちゴップのからの賄賂を受け取っていた。
ジオン残党にファントムクォーツ隊を葬ってもらって、ゴップに恩を売りジャブローに舞い戻るというシナリオすらシマダイ少将のなかではできていた。
幕僚は黙り混んだ。
「少将閣下、お取り込みの所、申し訳ない。」
連邦軍服姿の男が話し出した。密かに室内に入っていたようだ。
「これは、アーサー大尉。どうされた?」
このアーサーという大尉はゴップの命を受けてやって来た男である。その肩書き上、シマダイもアーサーの行動には口出しできない。
「閣下、私も出ましょう。」
アーサーも簡潔に用件を話した。
シマダイも反対出来ない。
「……わかりました。どうぞ、ご自由に出撃なさってください。」
「ありがとうございます。」
その言葉の後にアーサーは部屋を出た。
「良いのですか、閣下。あのような若造に好き勝手させて!」
幕僚の一人が叫ぶ。
「構わん。ゴップの息が掛かった男だ。そんなもの側ににあってたまるか。ここは私の旅団だ。」
シマダイ少将はそう答えた。
「アーサー出るぞ。準備はいいか?」
「バッチリです大尉殿。」
格納庫でアーサーの部下のマーリン技術曹長は元気に答えた。
マーリンは騎士の甲冑を思わせる外見をもつモビルスーツをいじっている。金と銀そして十字架をあしらい、左腕に盾、右腕に質量サーベルを持つその機体は伝説に聞く騎士王アーサーを思わせる。
「よし、ではクルセイダーガンダム出るぞ!」
そのモビルスーツに乗り込んだアーサーはそう叫んだ。
「コーン、戦況はどうか?」
主力に合流したダンシは状況の説明を求めた。
「それが…」
コーンは言葉に詰まった。常に優秀で冷静な部下にの動揺にダンシも又、戸惑った。
しかし、その戸惑いは瞬く間に納得へと変わった。
「二本角の二体目か…」
ジオン残党の前には高い搭を有する司令部施設を背後に立ちはだかるガンダムがあった。
「今度のは随分と豪勢だな。」
先程の黒のガンダムとは明らかに違う機体である。
次の瞬間、そのガンダムはスラスターを踏み込み瞬く間にジオン残党の懐へと飛び込んだ。ザクの放つマシンガンをものともせずに。加熱された質量サーベルが振られるとダンシ隊のザクが真っ二つになった。
「これは、強敵よ。」
ダンシは燃え盛るザクの残骸を背に赤く照らされるガンダムを見てそう呟いた。
ダンシのザクが他のモビルスーツを制して前にでる。
「なかなかの使い手ですね。」
クルセイダーガンダムに乗るアーサーもそう呟く。
この決闘において先手を打ったのはダンシだった。
ダンシのザクは間合いを詰め、ヒートホークで切りつける。クルセイダーガンダムは大きな十字架が刻まれた盾でその攻撃をいなすと、質量サーベルで突きを繰り出した。オレンジに光、熱を帯びる特殊合金のサーベルをダンシのザクは紙一重でかわす。クルセイダーガンダムは盾でザクを押し出し、再び距離を取る。
再び猛者二機の静かな睨み合がはじまる。
連盟、ジオンどちらのモビルスーツ達ももはや外野であり、この高度な戦いに加わる一分の隙も掴めずにただ呆然と傍観している。
永久に終わることが何のではないかというこの沈黙はあっさりと打ち砕かれた。
司令部施設の後方より大きな爆発と共に爆煙が立ち上ぼった。司令部後方の河川に隣接するヘリウム3の貯蔵タンクが破壊されたのだった。
「やったか。」
ダンシはそう叫んだ。
ダンシ隊はここにいる機体が全てではなかった。
実はズゴック2機のとゴック1機の別動隊を密かに河川に潜ませていたのだった。
川岸にある燃料貯蔵庫の守備隊を減らし、敵の目を川とは反対の方向に釘つかせることこそダンシ隊陸上隊の真の目的だったのだ。
「ダンシ隊、引くぞ!」
そう叫ぶとダンシ隊は煙幕を撒き散らし、ゆっくりと闇夜に消えていった。