貧乏神系高校生の学園生活   作:- 鴇時 -

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1話

力を込める。強く、強く、自分のありったけの力を込める。

父はいつも言っていた。

全力で挑めば超えられぬ困難などない、と。その言葉を信じていままで生きてきた。だから、いま目の前にある困難も全力で挑めば超えられぬわけが無い。そう強く言い聞かせる。

 

.........。

 

「はーい、終了でーす! お疲れ様ー! 鉛筆置いて、テストは後ろから回収ー!」

 

終わった。終わってしまった。

 

高校に入学して最初の中間テスト。この結果でこれからの学校生活が大きく変わると言っても過言ではない大切なテスト。この日のために勉強した。この日のために部活の先輩に勉強を教えてもらった。この日のために日課の時間を削った。

 

気が付いたのはテスト終了10分前だった。たった1つ、答案の答えがズレていることに気が付いた。

テスト自体は簡単だった。ただ運が悪かった。それだけだ...。

テスト後も放心していた僕に友人が話しかけてくる。

 

「よー、燈テストどうだったよ?」

 

幸乏 燈、それが僕の名前だ。ちなみに彼は透 明。この高校に入って最初にできた友人だ。

 

「1つ答案ズレてた...」

 

「うげー、そりゃ災難だったなー! 先輩にも聞いてあれだけやっててそれはないわ。不幸にも程があるだろ」

 

「うるさい...。で、明はどうだったの?」

 

「んなもん、そこそこでやったに決まってんだろ。受験がないからこの学校に入ったんだし、赤点さえ取らなければそんな勉強に力入れなくていーだろ」

 

「能天気すぎて羨ましい...。僕、もう既に内申が大変なことになってるから、テストくらいいい結果出さないと詰むんだよね」

 

「あー、そういえば毎回巻き込まれてたなぁ」

 

この高校に入学してから僕はヤンキーに絡まれ、女の子に蹴っ飛ばされ、墓石を壊した犯人扱いされ、女の子に声をかけられたかと思ったらいつの間にか保健室の窓を割ったことにされ、部活見学に行ったら人魚に生気を吸われ、学校に忘れ物を取りに行ったら、上から狼男の先輩が落ちてきて......ここまでたった1ヶ月の出来事だ。

ここの先生は大雑把なのか、何故かいつも騒ぎの現場にいるだけで僕の責任にされるせいで、僕の内申はもうズタボロだ。

僕の保護者がこの学校の関係者ということもあって、このままでは保護者が呼び出されることになりかねない。

だからこそ僕はテストくらいは頑張りたかったのだ。

 

「まあ、それも無理だったけど」

 

「まあまあ、ため息吐くなよ。とりあえず当分テストはないんだしさ。それに、たまたま騒ぎに巻き込まれたかもしんないけど、さすがにそうそう騒ぎなんて...」

 

明はそう言いかけてチラッと教室の端をみる。そこにはとても高校生とは思えない小さな女の子がちょこんと座っていた。

 

「騒ぎなんてないだろうからさ」

 

「いやいやいや、やめて、それフラグじゃん。うん、確かに仙童さんとは話すよ? 席が近いしね。勉強も教えてもらった。彼女は頭がいいからね。それで学級委員長たちから目をつけられているのは知ってる。だからって騒ぎ巻き込まれるなんてないからね?」

 

「お前そこまで言っておいて...。うん、まあ頑張れ」

 

僕はその言葉に、返事のかわりに1つため息を吐き、往生際悪くテスト問題をみて復習するのだった。

 

 

 

改めて自己紹介といこうじゃないか。僕の名前は幸乏燈。貧乏神だ。神という名前がついているけど、別にみんなが崇める神様ではなく、元々は地域に根付いた土地神のようなものを更に薄くした名前だけのものだ。昔は取り憑くだけでその相手の血筋の人間を不幸にすることが出来たそうだけど、いまの僕にそんな力はない。

 

そんな僕が通うこの高校は私立陽海学園。僕みたいな人間ではない存在、妖が通う高校だ。基本的には人間が通うことは出来ない。何故なら人間はこの学園を知ることは出来ないからね。

なんで妖が学校に通う必要があるかだって? そんなの簡単だ。妖は人間と住む場所をわけられるほど生活域を持っていないからね。共存して暮らすしかない。だけど、人間の学校に通うとなると、どうしても種としての常識の違いなどがある。だからこそ人間と共存して通うための学校が必要になる。この学園はそういう機能をもっているわけだ。

なんでそんなに説明口調なのかって?

 

「それ先輩がいいます? 来年の入学生向けにパンフレット作れって言ったの先輩じゃないですか! しかもしっかりわかっているか説明までしろって!」

 

「ああ、そうだったかな。まあ、いいんじゃないか? 僕ならもっと上手くできるけどね」

 

ここは僕が入った部活、生徒会だ。彼は生徒会長の金城北都先輩。むちゃくちゃ頭が良くて、中間テストでは大いに世話になった。

 

「でも残念だよ。僕が時間を割いて教えたのにそれが全部無駄になるなんてね。だから罪悪感を抱いて雑用を買ってくれたんだろう?」

 

むちゃくちゃ頭はいいが、性格は悪い、頼りになる先輩だ。

 

「わーってますよ! アホなミスで教えてもらった時間無駄にしてすいませんでした!」

 

生徒会、と言っても様々な妖がおり、校則で生徒の妖としての正体を知ることが禁じられているため、何か特別なことはない。要は学校の雑用係だ。

いまはこうして北都先輩から雑務を押し付けられているが、その横で僕の数倍の書類を捌いているので文句は言えない。

 

「ああ、そうだ。何故か幸乏の責任になっていた墓石と保健室の窓の件、事故で処理をしておいたから。この学校、テキトーすぎる教師が多いからな、たまたま居ただけでっていうのはよくあるんだ」

 

訂正、神だった。名前だけの僕なんかとは比べものにならない神だった。

 

「たまたまぼくのところに書類がまわってきたから処理したけど、基本的には生徒会員として、生徒の模範になるべきだからね。そこ、わかっているよね?」

 

そう笑顔で言った先輩は、いつの間にか処理を終えた書類を職員室へ運ぶ雑務を指示し、帰って行った。

内申目当てに生徒会に入った僕だけど、正直ここに入って良かったと思う。優しい先輩、雑務とはいえ充実した仕事、回避出来る内申事故、内申。

 

「で、この書類、何往復しなきゃいけないの?」

 

無駄に広いこの学園で、生徒会室は何故か校舎の端、職員室はむちゃくちゃ遠い。どう考えても数回では運べない書類を前に、ちょっとだけ生徒会に入ったことを後悔するのだった。

 

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