お隣さんちのジャンヌ三姉妹   作:Eクラス

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暖かい目でよろしくお願いします


おはよう、オルタ

 オレは藤丸立香(ふじまるりつか)

 

 女っぽい名前がコンプレックスなだけの、それ以外はどこにでもいる普通の高校二年生。そして、「普通でつまらない」と言われた悲しきエピソードを持つぐだ男です。はい。

 

 しかし、オレは声にして言いたいことがある。

 

 普通の何が悪い。

 

 普通のどこがいけない。

 

 というより、悪目立ちするより普通でいたいだけなのだ。普通過ぎてつまらなくて彼女ができないのだとしたら、そんな幻想はぶち壊して、しかし、不良に目をつけられない程度に普通でいたいと思う。

 

 そもそも、オレが普通でなかったら世界の理は歪んで、焼却された未来を取り戻すためにタイムスリップとかして過去を旅していたんじゃないだろうか……そんな気がする。

 

 しかし、そんな大事件が起こるはずもなく、奇跡の1つも起こることもなく、いつものように安心して普通の朝を迎えた。

 

「朝よ、ぐだ男。早く起きなさいっ」

 

 

 

 

 

 いつも通り幼馴染に顔面を踏まれる朝を迎えた。

 

 

 

 

 

「ジャンヌ~、昨日の件だけどぉ……むにゃむにゃ……オルタには内緒だぞー……むにゃむにゃ…………ふごっ!?」

 

 なんて、寝ぼけてみたら、さらに足の裏で顔面踏まれた。ふみふみ……と、きた。

 

 普通さ、人が寝てるベッドに勝手に上がって、人を跨いで足蹴にする奴はいないぜ。

 

「おい、貴様。その薄汚い足をどけろー……むにゃむにゃ」

 

「朝っぱらからアタシを煽るようなことをしたアンタが悪いんじゃなくて?」

 

「ご、ごめんよー……むにゃむにゃ」

 

 確かに、沸点の低いこいつを煽ったのはオレの失策だった。ここは寝ぼけながら謝るのがベスト。して、顔面ふみふみはご褒美ではないので、こいつの足を手で払いのけて寝返りをうって、仰向けからうつ伏せの態勢に入り、一種の抵抗を試みた。

 

 じゃあ、次は後頭部をふみふみされた。

 

「なんでもいいから早く起きなさいっての。また学校遅刻するわよ」

 

「ぐっ……あと5分」

 

「あっそ。じゃあ、5分の間ずっと踏んづけるけど、いいのよね?」

 

「じゃあ、後頭部じゃなく、背中とか腰とかを優しくお願いします」

 

「アタシはマッサージ師じゃないっての」

 

「でも、お前にはその才能が備わっているんだぜ?毎日されているオレが言うんだ、間違いない。オルタ、これからも毎日よろしくなっ」

 

「アンタ・・・・・・それって、まさかプロポーズとかじゃないでしょうね!?キモっ」

 

「なんでやねん!?」

 

 嫌味のつもりで言ったんだが!?どんな解釈したらそうなる。そもそもオレ達はただの幼馴染みだし。

 

「な、なんでもいいわよそんなこと!それより、早く起きなさい!」

 

「うげっ・・・・・・」

 

 こいつ、何かを誤魔化そうと後頭部を踏むのを止めて、布団をひっぺ返し、うつ伏せのオレを足蹴にベッドから落としに掛かった。

 

 オレはベッドのシーツにしがみつき抵抗してみせた。落ちたくない。落とされてたまるものか・・・・・・せめて、あと5分。

 

「というか、アンタいつになったら1人で起きれるようになるっていうのよ。いつまでもガキンチョで恥ずかしくないのかしら?」

 

「あ、じゃあもう起こしにこなくていいです。特にお願いした覚えもないんだがな!」

 

「い、言ったわね!言ってはいけないことをついに言ってしまったわね!毎日甲斐甲斐しく朝起こしに来る幼馴染みに向かって言う台詞とは到底思えない事を言いやがったわね!?」

 

「ふっ、ついに言ってやったぜ・・・・・・ふごっ!?」

 

 また、後頭部を踏み付けられた。この隙を見逃すほど奴は甘くなかった。オレの抵抗も虚しくベッドから落とされてしまった。

 

 ふっ、完敗だ。今日もオレの負けだ、セニョール。

 

 しかし、奴の怒りは収まらなかったらしく追撃がオレの顔面をまだ襲う。勿論、オレは奴の振り下ろした足を両手でガードしてみせるのだがな。

 

「そもそも、別に起こしてくれなくても1人で起きれるしな」

 

「嘘おっしゃい。もう7時半回ってるんですけど?アタシがここで起こしてやってギリギリなのよ?」

 

「でも朝ごはん抜きにしたり、うん子するの諦めたりしたら間に合うだろ?」

 

「女子の目の前でウンコとか言うんじゃないわよ!」

 

「まぁ、なんでもいいから落ち着けって。カリカリしなさんな」

 

「カリカリさせたのはアンタよね?」

 

「カリカリしたくなければ、朝起こしに来るのをやめればいいだけの話さ」

 

「アンタ、本気でそれ言ってんの?」

 

「ジャンヌかリリィに頼むから大丈夫だ」

 

「あの2人はダメって前にも言ったでしょうが!特にあの女は駄目なの!」

 

「はいはい、わかったからそろそろ足に力を入れるのやめてくんない?」

 

「アンタが起きるまでやめないわよ」

 

「もう起きてるんですが!?」

 

 顔面を踏みつけようとしている幼馴染みの足を受け止めるだけで精一杯。ここから、立ち上がれってか・・・・・・こいつ、まさか冷酷な魔女か何かか!?

 

「あと、あのチビも駄目よ」

 

「リリィは別にいいだろー」

 

「アンタ、それで何回も寝坊したじゃない」

 

「でしたねー」

 

 三姉妹の末っ子も何回か起こしに来てくれたこともあるんだけど、オレが中々起きなくて根負けして、そのまま一緒に寝てしまっちゃうパターンなワケよ。

 

 それは長女も然りなんだけどな。

 

「そもそもの話なんだけど・・・・・・」

 

「何よ?」

 

 オレがこいつに朝起こしに来るのを遠慮してもらいたい理由。

 

「そもそも、お前、今日もパンツ見えてるぜ?」

 

デュヘインするわよっ!?

 

 毎日オレを起こしに来る幼馴染みのジャンヌ・ダルク・オルタ。家が隣で、ちょっと風変わりな名前で、そこそこ美人で、外国人で、ドSで、ツンデレ要素も含んでて、ラブコメよろしく王道の展開かと思いきや、普通を望むオレにはちとハードルが高いんだよな、これが。

 

 否が応でも仰向け状態なんだから、ヒトを跨いで顔面をフミフミしようとしたら、そりゃ毎日スカートの中見えるでしょJK。

 

 いや、でも、今日の今日まで黙っていたのは、普通の健全な男子だから是非も無いよな。




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