お隣さんちのジャンヌ三姉妹   作:Eクラス

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藤丸立香の青春

 ふあ~…あー、ねみぃ。

 

 なんて、欠伸をしながら登校する今日この頃。

 

 オレの名前は藤丸立香(ふじまるりつか)。聖英学園に通うどこにでもいる普通の男子高校生だ。彼女いない歴イコール年齢と定番だったり、ラノベ主人公よろしく普通に幼馴染はいるものの一線を越えることは一度もないという素晴らしいまでの『普通』を体現したかのような日常生活を送っている。

 

 世間では10連休のGW間近と浮足立っていたり、オレもそれに触発されて浮足立っていた。

 

 何故浮足立っているかは明白で、とても簡単なことである。それは何故ならオレにも春がやって来たからだ。カレンダー的に春は終わりを迎えているが、オレ自身は少し遅めの春が到来したのだ。

 

 オレはラブレターを貰った。

 

 藤丸立香の青春の物語は今日ここから始まる。

 

 え、お前なに綺麗な形で初めからやり直そうとしてるんじゃないかって?まったくそんなことないさ。朝幼馴染に起こされたりここまでの道のりの全てがプロローグでしかなく、ここからが本編開始でしかないということ。それは決して問題ない事のはずだ。人それぞれのモノの味方、考え方の問題だ。

 

 わかるかな、諸君。勝ち組になれば、こういうやり方もできるということだ。今までの汚点をなかったことにして、綺麗なモノ(都合の良いモノ)だけを残して新しく物語を綴っていくことだって可能なんだよ。

 

 春の終わりを迎える今日この頃をオレは幼馴染と学校に登校して、そして、オレの下駄箱にラブレターが置いてあること。それがオレの青春の物語の始まりなんだよ。きっと……

 

「下駄箱にラブレターだ……やったぜ、ははっ」

 

 ラブレターなんて人生で初めて貰ったぜ。

 

 下駄箱の中にある上履きの上に、そっと、丁寧に手紙が入っていたのを手に取った。これを春が来たと言わずしてなんというか。ラブレターじゃなければオレはGWを迎えないからな。

 

 というか。

 

 というか、今どきラブレターは時代遅れだろうか。

 

 否、そんなことはないさ。

 

 いつの時代になろうと女性からラブレターを貰えたら嬉しいものだ。そこにラブロマンスな神様はいるのだ。知らんけど。

 

 現状確かなことは、可愛らしい女の子っぽい柄のラブレターの封筒を使っていて、ハートマークのシールで施されて封されていることと、宛先人がオレであることだけは確定している。もうオレへのラブレターは決定したも当然だ。

 

 まぁ、差出人が誰なのかは手紙を読んでからのお楽しみってな。

 

 しかし、あまりの嬉しさに声に出したのがマズかったな。なんか、幼馴染の2人がオレの肩をそれぞれ片方ずつ掴んでは決して逃がさんというのがヒシヒシ伝わってきた。そして、目が泳いでいた。

 

 ふっふっふ、動揺してるな?実に良い気分~!!

 

「ふん、ソレが本物だったらモテない男子全員を敵に回すってことよ。覚悟できてるのね……??」

 

「オルタ。まだそれがラブレターなるものと決まったわけじゃないです。な、何かの間違いですよね?」

 

「んなワケあるか。ほら、オレの名前が書いてあるぜ」

 

「「ま、マジで……」」

 

 幼馴染というのは、誠にめんどくさいキャラクターである。後々変に話がこじれないように宛先人がオレであることだけは確認させた。

 

 中身はこいつらでも見せないがな。

 

「ま、まぁ、アンタが変な女に好かれるのは今に始まったわけじゃないけど……どうせ、また変な女絡みよきっと」

 

「オルタに立香。何故お姉ちゃんの方を見るのですか??」

 

 そ、それは……

 

「と、というか、そのドヤ顔やめなさいよ。うんち君の癖にラブレターなんて生意気よ!!」

 

 おい、うんちネタやめろよ。

 

 なんのために、これまでの汚点を綺麗さっぱりにして、オレの物語を一から始めたいのかわからないじゃないか。

 

「きっと、それ、イタズラとか呪いの類の手紙ですよ。立香」

 

 このあざとカワイイ聖女様はもっと酷かった。

 

「ねぇ、当然今から開けて中身見るわよね?」

 

「いや、あとでこっそり見るつもりだけど」

 

「期待させて悪いんだけど、ラブレター大作戦ドッキリ!大成功~☆なんてハメられたら精神的ダメージでかいわけだし。アンタも慰められるのも早い方がいいでしょ?」

 

「そうですよ、お姉ちゃんがアフターケアしてあげますから。とりあえず、ソレをお姉ちゃんに渡してください。立香」

 

「……ちょっと何言っているかわからないんだけど」

 

「もし、それがラブレターだとしても、まずはお姉ちゃんに話しを通してもらわないと困ります。差出人が弟くんに相応しいお相手かどうか、見極めるのも姉の務めですので」

 

「いや、流石にアタシはそこまでは言わないけどさ……」

 

 オルタは顔を引きつった。

 

 姉の異常さに加担しかけたことに気づき、掴んでいたオレの肩から遠慮気味に手を放した。が、聖女様。こいつはオルタとは逆にさらに強く掴んで離さないみたい。力はバーサーカー並みで肩にがマジでゴキゴキミシリって言ってんですけど。下駄箱を背に押し付けられ逃がさないと言わんばかりだ。

 

「さあ。早く。今ポケットに入れたソレを渡してください。お姉ちゃんが優しく言っている今しかないですよ。痛い目見たくなければですけど」

 

 こわっ。

 

 ニコニコしているが目は笑っていない。

 

 久しぶりにキているらしい。こんなことで、オレがラブレターを貰うだけでコレだ。姉にあるまじき態度だぜ。ほんと怖い。狂気を久しぶりに感じた。いや、あれだ……

 

 あぁ、違う。

 

 何故、ジャンヌが怒っているのかは、なんとなく察することができた。ただ、今言うと話が拗れてオルタまでギャーギャー騒がれるのは面倒だから割愛させてもらうが。

 

 ジャンヌは……この人は、オレのことがとても大切なんだ。ただそれだけなんだ。それだけでバーサーカーになれるんだ……結局のところ、自分で言っててよくわからなくなってしまった。

 

 とりあえず、オルタに助けを求めるが横に首を振られた。もう勝手にすれば?とお手上げのようだ。何とも言えない顔をされた。困惑しているようにも見えるし、このバーサーカーもどきの長女をどうすることもできないようだ。触らぬ神に祟りなしと言うかのように。しかし、後ろを見てみろよ。登校してきた2年5組のクラスメイトや他の連中が下駄箱前で渋滞を作っていた。上履きに履き替えたい野次馬たちの憐れみとか非難とか妬みとか面白がったいろんな感情が混ざった視線を向けている。

 

 なんだよ、この展開。せっかく気持ちリセットして青春をスタートしたかったというのに。このままだとバッドエンドか……まいったな。

 

 などと、途方に暮れかけそうな、そんな時だった。

 

「ヴィヴ・ラ・フランス~♪ご機嫌よう、ジャンヌ」

 

 それは愛?

 

 否、救世主のマリーさんの登場だ。

 

「マリー、おはようございます」

 

「あらまぁ、ジャンヌったら朝から弟くんとがっつりラブなのね」

 

「違うの、聞いてくださいよマリー。この子ったらラブレターを貰って、でも、お姉ちゃんに何も相談しないつもりなんですよ」

 

「まーまー、落ち着いてジャンヌ。弟というのはそういうものでなくて?よくあるいつもの反抗期じゃない」

 

「でも、今日という今日はそういうのじゃないんですっ」

 

 泣きそうになるジャンヌをマリーさんは苦笑いして頬を撫でた。そして、こう告げた。

 

「ほんと、可愛い人。ねえ、ジャンヌ…このままだと予鈴が鳴ってしまうわ。だから、この件は教室に行ってからにしましょう。勿論、私も協力するわ。だから、教室で何をそんなに怒っているのか話してくれないかしら??……それに、ラブレターの定番は放課後に呼び出して告白したりするものでしょ?」

 

「え、えぇ……」

 

「ほら、まだ猶予はあるわよ。だから今はココをどきましょ?皆の邪魔になるわ」

 

「あ、ごめんなさい」

 

「………」

 

 何故、マリーさんの言葉だけは素直に通じるのだろう…とオレは困惑。

 

 ふっ、オレはマリーさんに勝てないや。

 

「立香。今日という今日はお姉ちゃん、怒ってますからね。お昼休みに伺いますから逃げたら承知しませんよ。プンプンっ」

 

「………」

 

 なんて言っているが、今日の5時間目は体育なので昼休みは昼食パパっと終わらしてトンズラ決め込むつもりだべ。といっても、1組との合同体育で女子も外で授業だろうからグラウンドで会うんだけども。そんでもって放課後は皆まで言うまでもないがな。

 

 聖処女様はオレを横目に流して自分のクラスへ向かうのであった。

 

 そして、その場に残されたオレ達―――オレとオルタとクラスメイトや別のクラスの者達、又はものの珍しさに野次馬と化した先輩後輩たち―――はこの騒ぎに駆けつけた先生に注意されることになるだろう。

 

 ほら、見てみろ。いつものように拳を作っては「いつでもシバくぞ?お??」と顔芸して指の関節をボキボキ鳴らすジャージ姿の元ヤンのマルタ先生がやってきた。

 

「ほら、こんな所で何してるの?予鈴鳴るわよ、その前に教室へ入りなさい……って、またお前か藤丸!!今度は何をしでかしたんだ!!え、なに??下駄箱にラブレター??わっはっはー、リア充はさっさと教室に入れぇええええ!!」

 

「オレだけ扱いおかしくね………??」

 

「「「「「………」」」」」」

 

 マルタ先生は2年1組の担任だったり、2年女子体育の授業を受け持ち、尚、生徒指導の先生でいつも問題児を鉄拳制裁して更生させる凄腕美人教師!カッコイイ!!

 

 しかし、教室に入れとか言いながら拳骨ぐりぐりヘッドロックは駄目でしょう。動けないどころか脳天かち割れるぜ、これ。

 

「いつもいつもお前って奴はぁあああああああああああああああ!!!」

 

「先生っおっぱいがあばばっばばばばっばばばっ!??」

 

 そりゃないぜ。

 

 ラブレター貰っただけで何でこの仕打ち……

 

 そして、逝く前にこれだけ言わせてくれ。

 

 マルタ先生のおっぱいは何度味わっても…………良きかな。がくっ。

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、ラブレターだが

 

 一目惚れでした。少し前から気になってました。だから、放課後、伝説の桜木まで来てくれますか?待ってます―――――と、それだけ書かれていた。




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