水着PU2を回せ!!
おっ、金回転だ!クラスはルーラーだ!!
来るよね!バニ上来るよね!!
え…………違う。まさかのジャンヌ!??
ジャンヌンウヌヌヌウウウウウウウ!!!
少女は旗を掲げる。
何のために?と訊かれたら、彼女は「お姉ちゃんが正しく弟くんを導くために」と答えるだろう。それがたとえ、6時間目の終わりのチャイムが鳴り終わった時であろうとも。
少女は教卓に立ち旗を掲げた。
「聞け、この
我が真名はジャンヌ・ダルク。主の御名のもとに、貴公らと共に放課後5組の教室に進撃を開始する!!」
「はいはい、バカ言ってないで席に着きなさい。そんなこと私がさせるわけないでしょうに問題児共。HR始めるわよー」
「で、ですよねー」テレテレ///
「うふふっ、ジャンヌったらお茶目さん♪」
「「「………」」」
2年1組では担任マルタ先生のHRが始まりまーす。
〇
何か、寒気がした。背中がゾクッとした。
オレの第六感が告げている。さっさとHRを終わらせて教室から離れろとな。マリーさんからの忠告もあったことだし、気を引き締めなければならないようだ。たぶん、また誰かの血が流れるだろう……
オレは帰る準備をして、オルタに一声かけて教室からおさらばしよう。オルタは「勝手にしたら」なんて無愛想もいいところで顔すら合わせてくれなかったが、まぁそれは今は置いておくか。家に帰ってアイツの好きなプリンでも買って渡してやればいいさね。今はそっとしておこう。
教卓では生徒のバカ騒ぎを眺めてニコニコしている担任の先生から「今から愛のロマンス?オーケー、お姉さんも一枚噛ませてボウヤ。ちょっと、こっそり後を付けて見守って冷やかすだけだゼ」的なアホな発言いってたが、今日は丁重にお断りしては教室を出ようと前側の扉に手をかけた。
そして、オレが扉を開けるよりも先に勝手に扉は開いた。
少し、思考が追いついていない。いや、少し考えればわかる。教室側に位置するオレが開けるよりも先に廊下側から誰かが扉を開けたということを。そして、嫌でも知る。オレの思考が追いつかないというか速度が低下していく現実を目のあたりにしたのだから。
自称お姉ちゃんのジャンヌが目の前に立っていた。
待ち伏せ……そんな言葉が脳裏に過る。1組の方がHRを終えるのがほんの少し早かったようだ。動揺しては駄目だ。奴に弱みを見せるな。怯むな怯えるな。一歩引きさがるな。しかし、その判断が間違いだと気づく暇もなく、奴はそんな一瞬を突いてオレの腕を掴んだ。
「立香、今日はお姉ちゃんと一緒に帰りましょう♪」
「あわわわわ……」
奴はまだ諦めていなかった。これから『弟』の告白イベントがあると知っていながら、寧ろ妨害しようと力強くオレの腕を片手でガッチリ掴んだ。そして、容赦なく問答無用で引きずられていく。廊下に引きずられて下駄箱へ目指して、見苦しくもクラスメイトやその他大勢に指差されながら、ラブレターの返事をすることもできずに家に帰ることになるんだ。
最悪だ。
オレは勿論のことだが、今のやり取りを見ていたジークもドン引きだ。先生なんて「おっ、修羅場ってやつニャー」と笑っていたが笑いごとじゃないからな。オルタからも目を逸らされオレはドナドナ~と連れていかれる。
「この、ジークと帰れ!!」
勿論、オレも黙っていては男が廃るってもんだから抵抗をしてみるが、この
「やだ。立香たらジーク君と3人でだなんて、なんて大胆……」
「え、何が……」
オレ、もう困惑。
「2人で帰れって言ったんだけど!??」
「あ、そっちですか」
「そっち以外にどっち!??」
「もう、お姉ちゃんと久しぶりに帰れるからと言ってはしゃぎ過ぎですよ。ほら、手を繋ぎたかったんですよね?うふふ♪」
「こんの握力ゴリラめ……」
「もっと握りしめて欲しいんですか??えいっ♡」
「ギャー!??」
オレはこの姉に勝てる気がしない。
「立香、泣かないでください。男の子でしょ?」
「ぐすっ、だってさー……」
オレは最後にささやかな抵抗を試みた。
そう、嘘泣きだ。
「泣き止むまでシゴきますよ?」
「でジマ……」
顔は笑っているが目がマジだった。だから、オレは即座に嘘泣きをやめた。というか、嘘泣きってバレていた。
そして、いつの間にか下駄箱前に到着した。駄目だ、打開策が何にも思い浮かばない。本当にこのまま家に帰るだなんて絶対にできない。しかし、ラストチャンスはここしかないだろう。ジャンヌが先に上履きから靴に履き替えた。そして、次にオレの靴が置いてある場所まで移動して、ここに全てを賭けるしかなさそうだ。
「ジャンヌ、ごめんな」
「何がですか……」
ジャンヌは声のトーンを落とし足を止めた。
「後輩とヤったって話し、アレ嘘だから」
「別に立香が誰とシたって私には関係ない話ですよね……」
「でも、お前それ真に受けて今日のラブレターの件もあって、不純異性交遊だって頭にキてたんだろ?オレのこと想って怒ってくれたんだろ?」
「当たり前じゃないですか、そんなの……それにマリーにはラインでイチャイチャだなんて許されるはずがありません」
「うっ……でも。オレさ、いつもながら煩いと思ってたけど、ちょっぴり嬉しかったんだ。お前がオレのこと真剣に『家族』として怒ってくれてんだなーって。だからさ、オレもお前とちゃんと向き合って言葉にして伝えないとわかってもらえないと思うから言うぞ」
「………」
ジャンヌの目は真剣だった。
だから、オレはジャンヌの『弟』として、言葉を告げる。
「オレは今からラブレターをくれた人に会いに行く」
「立香……」
「会って、話し合って、どういう人か見て、ちゃんと答えを出す。オレがどういう人間かも話すし、ジャンヌやオルタのこと、リリィも家族のこともそうだし、クラスの連中も、他の連中も、ちょっと誤解を招きそうなトラブルメーカーな後輩がいることだって話して、お互い知った上で答えを出したいとオレは思ってる」
「………」
「オレはもうガキじゃないんだ。あんたの弟を信じろ。だから、心配するな。お……」
「お?」
「お、お姉ちゃん……」
「ズキュゥゥウウウウウンッ!!?」
言いたくなかったワードを言って、ジャンヌのハートが何か矢みたいなもので射抜かれた。聖女様は胸を両手で抑えてはのけ反り、よろけた。それぐらいに効果抜群のワードだったのだろう。
「り、立香……い、今、ななんて!!?」
「うっ……」
「もう一回お姉ちゃんって言ってみてください!!お願いプリーズちょーやばみーです!!」
「………」
たぶん『お姉ちゃん』以外のオレの台詞とか頭の中から全部吹っ飛んだろうなと思う今日この頃。肩を揺さぶられ『お姉ちゃん』ワードをお願いされるわけだけども。
絶対、もう言わない。
「お姉ちゃんってもう一回言ってくれないとこの手は放しませんよ!!」
「うっ……」
結局、最悪だ!!
「ほーらほら、もう一回言ってみてください!!ラブレターの子が待ってるんですよね!!」
「ぐぬぬ……」
「あーいいんですかー?お姉ちゃんって言わないと……んー、そうですね。こうしましょう。お姉ちゃんも付き添いでラブレターイベント参加しますよ!お姉ちゃんの紹介も自分でしますね♪」
「お姉ちゃんそれは絶対にダメだぞ!?」
「キャー立香がお姉ちゃんって言ってくれました!!もう好き好き好き好き好き好き今日の晩御飯のおかず多めに乗せときますね!!」
「お、おぅ……」
お気に召してなりよりだ。
しかし、ちょろいなこのお姉ちゃん。お姉ちゃんと言っとけばご機嫌取りができることがわかった瞬間だった……とか、愚かにも『お姉ちゃん』を過小評価してしまった瞬間だった。
「それじゃ立香、行きましょう♪」
「え、どこへ……」
「どこって、ラブレター貰った人の所に決まってるじゃないですか♪」
「え、いやそれは1人で行く約束じゃ……」
「あれ?約束した覚えはありませんよ??」
「なん……だと……」
「お姉ちゃんと呼んでくれたからといって前言撤回するとは公約してません♪」
「そんなバナナ……」
「なので、お姉ちゃんも同席します。立香がそこまで言うならお姉ちゃんが直々にお相手さんとお話しましょう!任せてください!!」
「………」
ふっ、ドヤ顔のあざとカワイイ聖女様を久しぶりに見た気がするぜ。オレは膝から崩れ落ちた。orzこんなポーズである。
しかし、
「ジャンヌ。もうよすんだ……」
「ジーク君!??」
ジークというイケメンがジャンヌの暴走を止めに入った。今のやり取りに流石に見かねたのだろう。オレが自力でジャンヌの魔の手から逃れるのならそれに越したことはなかったんだが、無理だと判断したのだろう。
流石、ジャンヌの彼氏だぜ。
「ジーク。あとを頼むぞっ」
「あぁ、わかった」
「あっ、待ちなさい立香っ!!話はまだ終わってませんよ!!」
オレは四つん這いからのハイハイして、猛ダッシュで来た道を引き返した。ジャンヌは靴を履いているがオレは上履きだ。時間稼ぎはできるだろう。校舎の中を駆けて裏手から回って伝説の桜木の下を目指した。
それに、ジークも時間稼ぎをしてくれる。奴はできる子だとオレは知っていた。
「ジャンヌ……もうほどほどにするんだ。『弟』から『お姉ちゃん』と言われて良かったじゃないか。今日のところは諦めて……ぐっ」
「ジ、ジーク君……??」
「ジャンヌ……す、すまない……ごほっ(血)」
「え、ジーク君……っ!?」
ジークは突然左手で口を押させて吐血した。吐血して、膝をついた。
あまりの突然のことにジャンヌは困惑した。
「ジ、ジークくん!?だ、大丈夫ですか!??」
「ぐっ、誰か。救急車を頼む……」
「ジーク君!しっかりしてください……ってあれ?この血……まさか、ケチャップですか??」
「………」
「ジ~ク君?」
「す、すまない。時間稼ぎだ……」
流石ジーク!!でかした!!
〇
そして、こうしている間にオレは辿り着く。
伝説の桜木の下に待つ少女の元へ。
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