お隣さんちのジャンヌ三姉妹   作:Eクラス

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三姉妹と食卓裁判

 藤丸家の食卓裁判。

 

 それは父さんが仕事で遅くなる日を狙って行われる、圧倒的に女性陣が有利でしかない裁判のことである。母さんとジャンヌ三姉妹の女4人に対して男はオレ1人で行われる不平等でしかない裁判というか公開処刑が今宵も開催されることになった。

 

 とりあえず、食卓に並ぶ料理を黙々ともぐもぐ食べてようと思うのであった。

 

 あー、コロッケがうめー。

 

「それでは裁判長さん。第26回、藤丸家の食卓裁判を始めたいと思いますが構いませんね?」

 

「オッケーよ~」

 

 母さんが、裁判長。

 

 お誕生日席に座る母さんはノリノリでリリィにゴーサインを出した。

 

 オレこと藤丸立香の罪状は以下の通り、意味不明である。

 

「トナカイさんはいつもおっぱいの大きな女性に鼻を伸ばす節操無しです。ここに兄を慕う『妹』がいるというのに、何故そのような行為ができますでしょうか?私は懲役3年の『妹と毎日添い寝で独り占めの刑』を要求します」

 

 リリィさん、とてもご立腹でいらっしゃるようですが、要求内容がとても可愛いらしい。

 

 しかし、まぁ、特に普通だな。

 

「あらあら~、お母さん的に刑が軽いと思うのよ~。世間的な目もあることだしー、ここは懲役5年『毎日お風呂掃除の刑』でも良いと思うわ」

 

「なんでやねん、風呂掃除なんてならねーよ」

 

「はーい。そこの被告人くん、私語は慎みなさい~」

 

「ちっ……異議あり!!」

 

「その異議も受け付けておりませ~ん」

 

 くっ、わかっていたはずだ。これは勝てない裁判だということを……論破さえできねぇ。

 

 あ、こっちのコロッケ、オレの好きなカニクリームコロッケだ!

 

「あー、裁判長。それではアタシが異議を申し立てますわ」

 

「はい、オルタちゃん。なんでしょ~?」

 

 静観していた次女のオルタが口を挟んだ。この理不尽かつ不毛な裁判で、唯一オレの弁護を時たましてくれる心強い味方だ。今回も助けてくれるって信じてたぜ。

 

「コイツ、いえ、被告人・藤丸立香くんはアタシとよく行動しているからわかるのですが、無差別に女性の胸ばかりを見て鼻の下を伸ばす節操無しではありませんのであしからず。そこのお子様の証言も被害妄想が含まれていますので、それだけで白黒付けるのは早計です」

 

 こいつ、なかなか弁が立つ相棒だぜ。

 

「そうなの~?」

 

「はい。そもそもこの男は別に巨乳好きというわけではありません。貧乳もイケる口だそうですから。罪はもっと重いのですよ」

 

「それは本当なのですか、トナカイさん!?」

 

 そんなところに食いつかないで、リリィさんや。つーか、何オレの罪を重くしようとしてるの、お前。勝手に味方だと思ったオレが悪いのか。

 

「あらあら、息子は巨乳も貧乳も可愛ければなんでもいいってわけね?」

 

「それは人聞きが悪いぜ母ちゃん。異議ありだ!!」

 

「だから、被告人に発言権はないのよ~。お座り」

 

 オレは犬ではないんだが。

 

 しかも、この裁判嫌だよ何故母親にオレの性癖を暴露されつつあるんだよ。

 

 普通じゃない……

 

「でも、オルタ。立香が巨乳貧乳どちらでもイケると言いますが、お姉ちゃんのおっぱいそこそこ自信あるんですけど、見向きもしてくれませんよ?」

 

 それは貴女の胸に手を当てて聞いてみてください。

 

 人差し指を顎に当てる仕草はもう狙ってやっているとしか考えられない。スルーしておこう。現にオルタはあざとカワイイ聖女様をスルーしている。

 

「異議ありです!!」

 

「はい、リリィちゃん~」

 

「裁判長。"正しくない方の私"は話の論点をズラそうとしております。トナカイさんが巨乳好きでも貧乳好きでも事実がどうあれそれは別に構いません。問題にしているのは、サンタな妹であるこの私を差し置いて他の女性に愛情を注ぐべきではないということです」

 

「要はリリィちゃんファーストをしなかった愚息を罰しろってことかしら~?」

 

「はい、刑も私だけにメリットがあるものを要求します」

 

「異議あり。そんな横暴な要求は認められません。立香が他の女にうつつを抜かして頭を悩ましているのはアタシも同じです。お子様1人の悩みではありませんので、ここは公平なジャッジでアタシにもメリットがある処分をくだしてほしいものですね」

 

「やっぱりそれが狙いだったのですか!というか、あなたいつもトナカイさんと一緒にいるのにまだ何か要求するつもりなんですか!」

 

「何よ、文句ある?」

 

「はーい、2人とも少し落ち着きましょうねー」

 

 駄目だ、こりゃ。

 

 やっぱり姉妹喧嘩が勃発した。おい、長女よ。あざとい聖女様よ。この2人を止めておくれよーと、発言権のないオレはアイコンタクトしてみるも、目の前に座るジャンヌはニコニコと微笑むばかりか「楽しいですね、立香♪」と言ってウインクしてくる。

 

 駄目だな、このあざとカワイイ聖女様も。

 

「ところでトナカイさん。この前、"駄目な方の私"とトイレでこそこそナニしていたんですか?場合によっては二人とも厳重処罰に当たるかと思いますが」

 

 駄目な方ってどっちか最早オレにはわからん。

 

「あれはアタシが先にトイレ行きたかったけど、コイツが譲ろうとしなくて追い出そうとして揉めてたのよ」

 

 あ、オルタの方ね。

 

「それで10分も揉めていたんですか?」

 

「ぐっ、何よ。計っていたっていうの!?も、文句あるなら、コイツに言ったら?」

 

 隣に座るオルタがげしげしと箸でオレの頬っぺたを突っついてきやがった。

 

 あの、ご飯粒が付いたんですけど……

 

「そんなどうでもいいことよりもお姉ちゃんの話も聞いてくださいよ。立香くんはお姉ちゃんのこと「お姉ちゃん」と呼んでくれません。これも罪ですよね?罪深いですよね?なので懲役100年『お姉ちゃんとの添い寝の刑』を希望したいのですが」

 

 などと、ワケのわからないことを言って身を乗り出し、油断していたオレの頬っぺたからシュッと効果音付きでご飯粒を奪い取って食べやがりました。

 

 そのドヤ顔も自分ではあざとカワイイと思っているのだろうか??もし、そう思っているのなら、まずはそのふざけた幻想をぶち壊さないといけないのだが。

 

「"正しい方の私"は最早何が"正しい"のかわかりませんが……あなたにも言いたいことがあります。あなた、トナカイさんが入浴時にまた洗面所に忍び込んでナニしていたのですか?何かよからぬこと企んでませんでしたか??」

 

「えー別に~……お、お姉ちゃん、リリィが何のこと言っているのかちょっとわからないですねー」

 

「いや、アホでしょアンタ」

 

 あ、標的がオレから自称・お姉ちゃんに変わった予感。ラッキー。

 

 今のうちに味噌汁を胃に流し込むぜ。

 

 母ちゃん、しめじが美味しいよー。

 

「んーと、えっと~……あ、もしかして。アレのこと言ってるのではありませんか?」

 

「はあ。アレとは何ですか……」

 

「お姉ちゃん、主に誓っていかがわしいことしようと思って洗面所に忍び込んだことなんて一度もありませんよ。もし、リリィが見かけたのがそれだとしたら、アレは"見張り番"をしていたのです」

 

「見張り番ですか?」

 

 頼んだ覚えがありませんが?発言権のないオレは首を振るしかなかった。

 

「トナカイさんが無言の抵抗を見せておりますが?」

 

「でも、見張り番しなくちゃ、誰かが立香の入浴タイム邪魔して乱入するかもしれないじゃないですか?お姉ちゃんはそれが心苦しく、姉妹よりも弟くんを守ることに決めたのです」

 

「それで私がトナカイさんとお風呂入ろうとするのを阻止しようとしたんですか?」

 

「リリィは、もういい大人なのですから。節度を持たないと」

 

 それ、アンタが言えるわけ?とオルタが代弁してくれる。そして、リリィも……

 

「ですが、私がいないと貴女が突入しようとしたわけですよね?」

 

「はっはっはっ、そんな、まさか……ね?」

 

「うわっ、この聖女様あざとさ全開でアンタをちらちら見てるわよ」

 

 言われなくてもわかってるんだが。あざとくモジモジされてるんだが!?

 

「そういうオルタはどうなのですか?」

 

「はぁ?」

 

「立香とお風呂に入りたい~とか思わないんですか?」

 

「アンタじゃないんだから、別にもうこの歳になって思わないわよ……」

 

「そんなバカな!?」

 

 そんなバカなのは聖女様、お前だよ。

 

「じゃあ、もういいですー。オルタなんか知りませんー。ブーブー」

 

「なんなのよ、この聖女様は」

 

「味方になってくれると思っていたんじゃないですか?」

 

「あー」

 

 ブーブーと口を尖がらせて頬っぺたぷくーっとさせてる聖女様。ちょっと不細工になってもそれでもあざとカワイイんだよなー。

 

 どこまであざと可愛くなれば気が済むんだろうか……

 

「お姉ちゃんは弟くんと仲良くしたいだけなのにー」

 

「うふふ~、ジャンヌちゃんはホント昔から面倒見が良くて立香のことが好きなのよね~」

 

「それはもう世界一大好きな弟くんですから♪」

 

「わ、私だって世界一トナカイさんのこと大好きですよ!」

 

「はいはい、アンタは張り合わないの。それよりも、長女。アンタの場合、愛が行き過ぎるのよ。節度持って自重しなさいよ」

 

「でも姉弟ですよ?子供の頃は一緒にお風呂入って裸の付き合いしていたのに、それが大人になったからできないなんて、そんなのロジカルじゃないと思いまーす」

 

「うわ、開き直ったわ。こわっ」

 

「というか、それは私の台詞ですよ!」

 

「ていうか、長女。アンタ彼氏いるのにナニやってんの?って話なんだけど」

 

 ですよねー。普通じゃない。マジで。それはよくない。

 

「だって弟くんが冷たいもーん。だから、距離を一気に縮めようとしただけだもーん」

 

「もーんってなんですか。ぶりっ子キャラですか!あなたはあざといキャラのはずですよね!」

 

 突っ込む場所はそこじゃないんだよなー。

 

 母さんはニコニコと静観しているだけ。もはや、食卓裁判は崩壊した。というか、息子が困っているのを面白がっていないか、あんた。

 

 しかしだ、あれだ。

 

 料理が冷めてるぜ?オルタのコロッケ、いただきー。

 

「あっ、アンタどさくさに紛れて、なに、アタシのコロッケ取ってんのよ!?返しなさい!!あーーーーーー!!?本当に食べてんじゃないわよバカ!!デュヘインされたいわけ!?」

 

「まーまー、怒らないで、オルタ。お茶目な立香に代わって姉ちゃんのをあげますよー。はい♪」

 

「はい、じゃないですよ。何故"駄目な方の私"じゃなくてトナカイさんの方を見て言うんですか?フォローしておきましたよっていうサインですか?アイコンタクトですか?そうやってポイント稼ぎですか?どうなんですか?」

 

「それはアンタも一緒じゃない。というか駄目聖女様、アタシこんな食べさしコロッケとかいらないわよ……」

 

 もう三分の一も残っていない原型留めているのかも怪しいコロッケをもらったオルタ。よかったな。

 

「こうなったのもアンタが悪い。だから責任もってアンタが食べなさいよ。ほら」

 

 うへー、食べ残しが回ってきた。

 

「なんで2人とも嫌そうな顔をしてるんですかー?お姉ちゃん、今日は散々でしたのにこんなの悲しいです。しくしく……」

 

「嘘泣きしてもダメですよ。見てください、トナカイさんの呆れた顔を」

 

「ちっ、駄目でしたか」

 

 あざといウソ泣きから、さらっと舌打ちもできるカワイイ聖女様!?

 

「というか、リリィ。何故、トマトを残すのですか?」

 

 さらっと矛先がいたいけな少女に向いた。こわっ。

 

「そ、それは……」

 

「好き嫌いしてちゃ、成長できる所も成長しなくなりますよ。私達みたいになれませんよ」

 

 胸張ってアピールする容赦のない聖女様。

 

 そもそもトマトで大きくなるものだろうか……

 

「でも、トナカイさんは小さくても大丈夫って言ってくれましたし」

 

 いや言ってないんだな、これが。オレはまだ一言も自分の好みを発言していないんだがな。

 

「リリィ、小さいより大きいに越したことはありません。立香も然りです」

 

「聖女様はそろそろ口を閉じた方がいいんじゃない?」

 

 ほんと止めてくれよ、オルタえもん~。

 

「そもそも、トマトで胸はデカくならないわよ。それよか、牛乳飲みなさいよ。アンタ、牛乳も飲めないお子様だものね」

 

「うぅ~、牛乳はもっと嫌いです……」

 

「リリィちゃん、今度おばさんがおっぱいが大きくなる方法を伝授してあげるわよー」

 

 あんたもさらっとお子様に何言ってんだか。

 

「でもね、子供の時は好き嫌いなく、牛乳もトマトも食べなきゃ駄目よ~?ねぇ知ってるかな、トマトには"リコピン"っていう最強ワードの栄養素が含まれていて、とても素晴らしい野菜なのよ~。子供のうちはしっかり栄養取らないと駄目って話、ちょっとずつ克服していきましょ~?」

 

「そうですよ、リリィ。トマトを食べていたら風邪なんか引きません。無敵なんですよ。なので、私の分もあげますから、頑張って食べて栄養価付けてくださいね」

 

 そう言って、ジャンヌは自分の分のミニトマトの残りを全部、隣のリリィの皿に移し替えた。

 

 あざとい笑顔で惨いことしやがるぜ……

 

「ふえ~ん、トナカイさーん!!」

 

「あー、リリィ。泣くな……一個だけ頑張って挑戦してみようか。残りは全部食べてやるからさ」

 

「アンタってほんとコイツに甘いわね。まー、今のは流石にアタシもドン引きしたけどさ……」

 

 こうして、オレとリリィの間にまた絆が深まった気がした。

 

 食卓裁判もこの流れからは再開できないだろう。有耶無耶に、ミニトマトの件で借りもできたことにより、これにて第26回目の食卓裁判は終了することになった。

 

 特にオチもなく、ただただ賑やかな食事であって、だけど、これが『普通』でいつもの藤丸家の食卓だというように終われそうだ。

 

 めでたし、めでたし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 などと、聖女様は笑顔で問屋を下ろさないのでした。

 

「ところで、話戻すのですが、立香はまだ童貞ですか?」

 

「え、今それ聞く?」

 

「ア、アンタ・・・・・・気は確か?」

 

「お姉ちゃんは立香くんのことが心配で……てへっ」

 

 てへっ・・・・・・じゃなくて、オレはあんたの頭の中が心配だ。

 

 せっかくいい感じで終わりかけてたじゃん。何故蒸し返す。やっぱり昼間のあれが原因か・・・・・・

 

「今その話関係なくない?」

 

「その、今じゃないと駄目な気がして……」

 

「そ、そっか……」

 

「はい♪」

 

「あらあら~……」

 

「トナカイさん。トナカイさん。ドウテイってなんですか?」

 

「お子様のアンタが知らなくていいことよ……」

 

「さあ、オレもよくわからないぜ。ドゥカティの聞き間違いだろ……おっ、そんなことよりミニトマト食べれたんだな。リリィは偉いなー」

 

「えへー。意外と甘くておいしかったです」

 

「だろ?それじゃ、ご馳走様だな」

 

「はい、ご馳走様なのです♪」

 

 オレとリリィとオルタは食器を下げて、二階のオレの部屋へ退散。

 

「ジャンヌちゃん」

 

「は、はい……」

 

「ちょっと、おばさんと大事なお話しをしましょうか?」

 

「あははは……ですよねー」てへぺろ

 

「・・・・・・」

 

 一階では、久しぶりにジャンヌが母さんに説教されるのであった。

 

 あとから、聞いた話、あのあざとカワイイ聖女様は母さんの前で"てへぺろ"したらしい。

 

 母さんにやっちゃダメだろ。

 

 外は嵐。雷鳴が家の中まで轟いていた。




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