お隣さんちのジャンヌ三姉妹   作:Eクラス

5 / 16
ヴィヴ・ラ・フランス

 先日、母さんにこってり叱られた長女ジャンヌ。

 

「立香……リリィがいる前でお姉ちゃんはちょっと暴走してしまいました。下ネタ系お姉ちゃんなんて需要ないですよね、反省しています」

 

 なんて、言ってたんだけど。あまり深く突っ込んでも駄目だなと思いテキトーに流した。

 

 気にしたら負けだ。

 

 まぁ、あのあざとカワイイ聖女様も少しは反省しているようで、あれからというもの学校でも家でも過度なスキンシップがなくなった。

 

 よかった。普通によかった。でも、何か訴えてくる目が気になるけど。早いこと彼氏と仲直りしてもらいたいものだ。オレもジャンヌへの対応が甘かったのだろうから、弟離れができるよう、これからより厳しく接しようと思う。

 

 なんて、考え事をしながら体育館横の自販機でイチゴ・オレを購入しては校内をぶらぶらする昼休みのこと。

 

「はぁ、彼女が欲しい……」

 

 正直、これですべてが解決するような気がする。

 

 オレに彼女ができたら姉として引き下がらなければならないだろう。オレがジャンヌを拒むのではなく、オレがジークに何かフォローするのでもなく、そこは2人の問題なのだから2人で解決しろよ言いたい所、目下オレに彼女さえできれば、ジャンヌもあざと可愛さを装うことなくオレから距離を置いてくれればいい。

 

 それが『家族』としての在り方。それが『普通』なのだ。

 

「だったら、子犬。私が彼女になってあげるわよ」

 

「あ、エリちゃんはいいです。ごめんなさい」

 

「な、なんでよー!!」

 

 通りすがりのクラスメイトに独り言を聞かれてしまったみたいだ。

 

 とりあえず、ごめんなさいして1人になるべく、即座に退散した。せっかく、教室からオルタや不良から逃げてきたというのに、別の厄介ごとはごめんだぜ。

 

 オレはまだ見知らぬ出会いを求めて校内を彷徨う童貞なのさ……

 

「じゃあ、ボクと結婚しようよ藤丸くーん。毎日裸エプロンで起こしてあげるよー♪」

 

「あ、間に合ってます。無理です。ごめんなさい」

 

「ガーン……っ!??」

 

 不用意な独り言は控えるべきだったな。どこで誰が校舎に潜んでいて何を聞かれているのかわかったものじゃない。大人しくオルタの傍にいるべきだったか…つーか、オレのクラスメイトはこんなんばっかりだ。やだ。

 

「ふむふむ、エリザベートさんとアストルフォくんを秒殺するとは、流石ジャンヌの弟くんなことだけはあるわね」

 

「……今の見られていたんですか、王妃様」

 

「ヴィヴ・ラ・フランス!ごきげんよう、藤丸さん。たまたまだったのだけれど、偶然ここを散歩していたら面白いものが見れたわ」

 

「はいはい、ヴィヴ・ラ・フランス。別に見世物じゃないけどな」

 

 このヒトはマリー・アントワネット。ジャンヌの親友であり、顔見知りなわけだけども。いつもフランス勢のSPもどきの取り巻きが付いていて、ジャンヌと並んで自身の教室をきゃぴきゃぴさせる恐ろしい王妃様だ。王妃様っつうのも、歴史上の人物と同姓同名なだけにそんなあだ名をオレ達が勝手に名付けているだけなのだが。

 

 まぁ、アレだ……

 

 好奇心旺盛でお転婆娘なだけに、オレとクラスメイトとのやり取りは見られたくなかった。絶対にジャンヌにチクるからな。

 

「というか、1人……??」

 

「あら、ジャンヌがいないことが気になるのかしら?」

 

「いや、別に……」

 

 うふふ、と手を口に当てるマリーさん。

 

「安心して。ジャンヌもアマデウス達も近くにはいないわ。お花摘みに行くと言って抜け出してきたの。貴方と一緒ね」

 

「あー、なるほどね……」

 

 いつも誰かと一緒にいるとな……たまに1人になりたい時があるものだ。

 

「うふふ、一緒にお花摘みに行っていたジャンヌをジークさんに押し付けてはあたふたしていたし、アマデウス達は今頃大騒ぎして私を探している頃合いかしら」

 

 そして、人を引っ掻き回すのが得意なお茶目な人だ。敵に回すとある意味恐ろしい。

 

「オレ、今こうしてあんたと一緒にいるのを遠慮したいんだが……」

 

「あら、私は貴方ともう少しお話していたいのだけど。ジャンヌを遠ざけるために彼女欲しいんでしょ?」

 

「いや、それについては忘れてくれよ。というか、ジャンヌとかに絶対チクるなよ~??」

 

「それは約束できかねないわ。この時間、どこか2人きりでお話できたら別なのだけども」

 

「………」

 

 駄目だ、オルタと一緒に教室にいたらよかった。オレ、絶対後でマリー親衛隊とかワケわからない連中に殺される。

 

「あぁ、愛しのマリー。キミはどこに行ったんだい?」

 

「マリアー!!どこだーい!!」

 

「アントワネット王妃!!どこですかー!!」

 

 うわ、いつもの3人組の声がした。しかし、今日はそれだけじゃない。

 

「まさかとは思うがマリーさん、あの例の男と一緒にいるなんてことはないよな?」

 

「例の男ってジャンヌ様の弟君??」

 

「あぁ、2年5組の外国人たらしのシスコン野郎だ!」

 

「駄目よ、マリーちゃんがあんな男の毒牙に掛かってはいけないわ!!」

 

「そうだ皆、奴の毒牙で僕たちのマリアが奪われてしまう前に取り戻そう!」

 

「おい、そのジャンヌ様から啓示だ!!マリー様と弟が一緒にいる可能性が高いらしい。そんな気がするって!!」

 

「女の勘って奴ね!!」

 

「だったら……フランス祖国のために、剣を取れ!同志たちよ!!見つけ次第処刑せよ!!」

 

「「「「うおーーー!!」」」」

 

 なんだか大事になってるじゃねーか!??

 

 こえーよ、似非フランスの1組の連中。マリー親衛隊だけじゃなく、他の連中たちも勝手なことばっかり言いやがって……というか、ジャンヌがどうのこうのって…………

 

「もしかしたらジャンヌの嫌がらせかもしれないわ」

 

「意味がわからないのですが……!!」

 

「さっきも言ったでしょう。私、ジャンヌとお花摘みに行くと見せかけて、ジャンヌにも罠を仕掛けたって」

 

「あぁ、ジークにジャンヌを押し付けたんだろ!!今のあの聖女様にしたら逆効果だよな!!」

 

「えぇ、きっとその仕返しよ」

 

「………」

 

 じゃあ、取るべき道は1つ。オレとマリーさんはここで何事もなかったかのように、お互い別の道を歩いていけば問題解決だ。

 

「うふふ、私は今ここで大声で彼らを呼ぶこともできなくはなくてよ?」

 

「ふっ、詰んだか……」

 

 オレ達が別々の道を行くという選択がここにはなかった。

 

 クソったれのこんちくしょう。オレはマリーさんの手を引っ張り、直感に従い彼らの死角をかい潜り抜けて、別棟の屋上まで逃げ切るのであった。

 

 とりあえず、ここは立ち入り禁止エリアで人は寄り付かない。普通なら扉は鍵で閉まっているが、先日にジャンヌが屋上扉前で壁ドンしたことが原因で壊れたのか開いてしまったので利用させてもらうだけだ。まさか、立ち入り禁止エリアに誰かがいるとは思わない。

 

「愛の逃避行みたいで何だか楽しいわ!」

 

「お気に召したのなら何よりで……って、おい貴様。ベーゼはやめろ……やめ……や……」

 

 お互い走って息切れしては屋上の地べたに寝転んだ。2人して笑った。お嬢様なマリーさんには新鮮だったらしく、興奮してベーゼしようとしてきたので、それは丁重に……いや、オレは乙女のように顔を赤くして抵抗した。

 

 この人、誰構わず好きになった相手にこんなことしてるからなー……困った人だ。

 

「喉が渇いたわ。ちょっと、ソレ恵んでくださらない?」

 

「マリーさんがいいなら……」

 

 オレの飲み差しのイチゴ・オレ。

 

 でも、この人キス魔だからあんまり関係ないか……

 

 そして、ひと口飲み返却された。オレに残りを飲む勇気を誰かくれ。

 

「ふう。ジャンヌったら、毎日こんなことを貴方と楽しんでいるのね」

 

「毎日こんなことしてたら普通に死ねるって……」

 

「うふふ、そうね。でも、なんだかジャンヌが羨ましいわ。ジャンヌが貴方を本当に弟のように可愛がるのもわかる気がするんだもの」

 

「……マリーさん、そのジャンヌのことなんだけど」

 

 やっと2人きりになれたのだ。

 

 ジャンヌの親友に相談できる機会はなかなかない。特にあのめんどくさい親衛隊がいない今がチャンスである。オレは話した。学校でのジャンヌでなく、あまり知られていない家での聖女様のことを。

 

 行き過ぎな『家族』への愛情のことを……お互いは大事な『家族』と思っているが認識のズレを感じること……だから、オレが彼女を作ったら少しは距離を取ってくれるかなと思ったこと……ジークとも早く仲直りしてほしいこと。

 

 で、お悩み相談係のマリーさんの回答はこうだ。

 

「たぶん貴方が彼女を作っても『家族』の愛は変わらない。ジャンヌはジャンヌよ」

 

「それって、つまり……??」

 

「ジャンヌが彼氏作ったが変わらなかったように、貴方が彼女を作っても何一つ問題は解決しないってことよ。ジャンヌは貴方のことが可愛くて、そして、とても大切なヒトだから」

 

「そか………」

 

 いや、待て。オレは今納得しかけたが、流石に彼女ができたらお風呂特攻とかはやめさせるべきだろ。そこだけはやめさせるべきだろ……とか思うのだが。

 

「ほんと、手のかかる■■■■ね」

 

「だから、何故ベーゼしようとしてくる!?」

 

「うふふ、青春を謳歌し恋に悩める男の子に嫌がらせしようと思って♪」

 

「なんだよ、それ……」

 

 なんか、引っかかる言い方したよな、今。聞き慣れないワードもあるし。よくわかないけど。

 

 それと、マリー親衛隊の皆さん達の声が徐々に大きく近づいてきていることがわかった。勘づかれたか……それともジャンヌの啓示なのか。

 

 どうやら、タイムリミットのようだ。

 

「もう。今からがいい所だったのに」

 

「オレの貞操は奴らに守られた……!?」

 

「ふふっ、バカなヒト……この続きはまた今度しましょう?ライン教えてくださらない??」

 

「あ、はい……」

 

 こうして、マリーさんのラインゲットした。

 

 やったね、親衛隊に知られた日がオレの命日だ……

 

「一応、私から3つほど提案はできるわ。今度、私とデートしてくれたら教えるわね」

 

「そんな、今言ってくれよ……っ!!」

 

 デートなんかしたら絶対に処刑される。

 

 マリーさんは、それは恐ろしくも超ド級の投げキッスをしてくださり立ち去っていった。親衛隊がここに駆けつけるよりも早く立ち去ってくれて助かったのだが……どこぞのあざとカワイイだけじゃない美少女の投げキッスでオレはノックダウンした。

 

 仰向けで倒れたまま、残りのイチゴオレを飲み干した。

 

 マリーさんって反則級だよな。

 

「はぁ、普通に彼女が欲しい……」

 

 オレだって健全な男子高校生だぜ……って話。

 

 なんか、モヤモヤして、こう、悶々としたので、5時間目は授業はここでサボることを決めた。

 

 なーんて、今日を終われたらよかったんだけども。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、私が彼女(仮)になってあげましょうか?セ・ン・パ・イ♪」

 

「げっ、BBちゃん!?」

 

 オレの望む『普通』の日常は、1人の小悪魔系後輩女子によって振り回されることもあるってことを、このあと改めて知ることになる。




ご感想・ご意見はカルデア当局までm(_ _)m
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。