お隣さんちのジャンヌ三姉妹   作:Eクラス

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ポッキーゲーム

 学校の保健室でポッキーゲームって普通じゃないよな。

 

 あまりに危険だ。命がいくつあっても足りやしない。ポッキーの日でもないのに、やっちゃいけないわコレ。いやポッキーの日でも保健室でやっちゃいけないんだが。風紀の取り締まりは厳重にされたし。危険、両端から食べるな。駄目、絶対……主に女子同士。特に美少女同士。

 

 というか、ベットに拘束されたオレの上に跨るオルタ達の構図がとても危険だ。一見してオレ役得じゃね?とか思ったりもしなくはないが、こんな事故現場を誰かに見られたら社会的に死ねる。身動きできないオレは真っ先に死ねるぞ。視界は暗くて何も見えないがな……一体全体どうやって視界を奪われているかを、わかっているオレが一番ヤバい状況下にいることだけは確かである。

 

 そもそも、保険医の先生とやらは何故ここにいないのか……止めてくれる大人は誰もおらず、まだ性に無知なアホ共によって禁断の百合の花が開花しようとしていた。

 

 他に決闘のやり方ぐらいあっただろうに……決闘にしてはチープ過ぎた。

 

 静寂な保健室に聞こえるのは少女2人が両端からポッキーを食べる音。そして、時々ベットが軋む音、時折2人から甘い吐息が漏れた声、おまけにオレのうめき声ぐらい。オレはアホ共の決闘の行く末を視界にとらえることはできないから、唯一情報を得られるのは聴覚のみであり、だからこそ音しか拾えないのでそれがまた情報処理していくとエロく聞こえる。

 

「ちっ、10本目も引き分けか。忌々しいな、突撃女」

 

「ど、どう?悔しいかしら、冷血女」

 

 とりあえず、ルールのおさらい。

 

 2人が向かい合って1本のポッキーの端を互いに食べ進んでいき、先に口を離したほうが負けとなる。もし、どちらも身を引かず、最後までお互いが口を離さずに食べ切った場合は引き分けとし、追加でもう1本勝負する。

 

 それが10回も続いていた。

 

 意外だった。犬猿の仲だっていうのにな、ジャンヌ・オルタはよく頑張った。アルトリアもコイツがここまで粘るとは思ってみなかっただろう。甘く見ていただろう。いろんな意味で負けられない戦いなのだ。

 

 ポッキーゲーム如きで負ける幼馴染ではない。

 

「埒が明かないな。次はもう少し攻めるとするか」

 

「ふん。かかってきなさいよ」

 

「言わずもがな。次、貴様にキスした瞬間に舌を入れてやる」

 

「「っ!??」」

 

 こ、この女、ぶっ飛んでやがるぜ......

 

 

 

 

 

 

 これ以上は過激のため以下省略。

 

 

 

 

 

 とりあえず、これだけは言わせてくれ……オルタ達が性に無知?とんでもない。オレは人生で何度目かの女って生き物に戦慄してしまった。

 

 このあと、ポッキー1箱分を全て食べ尽くして引き分けのままポッキーゲームは終了した。もうそれはドロドロで過激な戦いだったみたいだ。オレは何も見てないけどな。どうなったのかだけは全てわかっている。オルタは真っ白に燃え尽きてしまったぜ。お前はよく頑張ったさ。

 

 それに引き換えアルトリアはやりきった感を出して、光悦な笑みを浮かべていた。引き分けなのにな……

 

 とりあえず、結局は5時間目授業をサボったオレ達は教師たちに見つかり「藤丸、いい加減にしろっ」と理不尽にもお叱りをいただき、放課後に生徒指導室に呼び出されては反省文を書かされた。それで、オレは一応被害者みたいなもんだから1人解放され、クラスメイト達に背中を指さされては帰宅した。オルタ2人は保健室の風紀を乱した罪を償うために、学校のドブ掃除の刑で今も学校に居残りだ。

 

「ただいまー」

 

 もうオレのライフは0も残っていない。

 

 つまり、リビング到着した途端に活動限界を迎えるワケだけども。

 

「おかえりなさ~い。あら~?今日はオルタちゃんと一緒じゃないのかしら~??」

 

「ま、まぁ、いろいろと……」

 

「あらあら~、今度は一体全体何やらかしたのかしら~」

 

「………」

 

 す、鋭い……何かやらかしたか前提で疑う母親。というか、日頃の行いだよな!オレがオルタと家に帰ってこない時はいつもそう思われているらしかった。結局の所、黙っていても何故か学校から藤丸家に連絡が行くので絶対に母さんの耳に届くのだがな。

 

「ジャンヌとリリィは??」

 

「まだ帰ってないわよ~」

 

 そっか。平和で何よりだ。疲れてるからリビングのソファでぐっすり眠れるぜ。

 

「お母さんこれからスーパーだからお留守番よろしくね~」

 

「あいよー」

 

 ソファにダイブして寝るぞー。

 

「それとあなたの部屋に後輩の女の子が来てるわよー。うふふ~」

 

「は?」

 

 母よ、それを先に言おうぜ。

 

 うふふ~、じゃないだろ。オレがいないのに男子の部屋で待たせるとか。後輩の女子?誰それ?うっ、頭が………嫌な予感しかしない……

 

 オレはダッシュで2階へ駆け上がった。

 

「あっ、お邪魔してますよー。センパイ♪」

 

「やっぱりお前だったか、BBちゃん……」

 

 オレの部屋にいたのは小悪魔系後輩のBBちゃん。

 

 フリーダムというか我が物顔でベッドに寝転がっては漫画を読んでいて、こっちを振り向きやしない。足をゆっくりとリズム良くバタ足しては、次のページをめくっていた。

 

 なんというか、人を小バカどころか完全に見下したその態度に腹立たしくも思うのだがな……オレはそれよりも、バタ足する度にスカートの中が見えてしまっていて、そっちの方が気になっていた。

 

 というか、今まで何でオレはこの子の存在を忘れていたのだろう……たぶん、屋上から保健室に運びベッドに拘束したのはこの子だと思う。というか、この子しかいない。

 

 だから、オレは最大限の警戒した。こんな危険人物を一時とはいえ、存在を忘れてしまっていたことに警戒しないわけがなかった。

 

「へー、この物語の主人公くんは密航者であるヒロインちゃんを助けてしまったがために、なんやかんや世界を巡る戦争に巻き込まれていくんですね。センパイもいつか自由な空飛びたい系男子だったりするんですかー??」

 

「別に。物語自体は面白いと思うけどな。オレ自身、空より地に足付けときたいタイプの人間だぜ。そもそも、密航者を助けるとか、まずない」

 

「うわーロマンもクソもないつまらない人間ってことですねー。はい、BBちゃん知ってましたワラ」

 

「………」

 

 喧嘩売っているのだろうか。買っていいだろうか。今なら勝てる気も無きにしも非ず。ラスボスのオーラを醸し出す生意気な小娘を後ろからガツンと一発、ね。

 

「じゃあ、質問変えますけど…センパイがもしこの漫画のような主人公だった場合、密航者がBBちゃんだったら命がけで守ってくれますかー?」

 

「それは……」

 

「えー、その間はなんですかー?BBちゃんショックでーす。即答でオレが守ってやるぜってキメ顔で言って欲しかったんですけどー」

 

「ごめんな。BBちゃんなら主人公に守ってもらわなくても自分の力で世界の1つぐらい救えると信じてるから」

 

「ここにきて後輩最強説が浮上中!?センパイはいつもBBちゃんにドライだけど実は評価されていた!!これ、BBちゃん的にとてもポイント高いですよー♪」

 

 さて、オレはデスクの椅子に座って警戒は怠らない。

 

 くだらないやり取りかもしれないが、後輩の機嫌をなるべく損なわないようにしないといけないからな。いつ襲られるかわかったものじゃない。だって、そうだろ?保健室のベッドに拘束したのは九割九分五里コイツだぜ?

 

「それよりもさ、BBちゃん。オレ、お前に聞きたいことがいくつかあるんだけど」

 

「あーはいはい。センパイ的には早く本題入って欲しいんですよね。わかってますよ、そんなこと。でもでも、せっかちな男は嫌われますよー?」

 

「それでもいいさ。教えてくれよ、BBちゃん。なんで、今日あんなことをしたんだい?」

 

「それは、いつも言っているじゃないですかー。BBちゃんはセンパイ専用の後輩なんですよ。センパイのためにひと肌脱いであげたんです」

 

 そう言ってBBちゃんは次のページをめくった。

 

 相変わらず、顔は合わせてくれない。先輩想いの後輩の態度じゃないのだけはオレにだってわかる。だが、敢えて訊く。

 

「オレのため?」

 

「はい、センパイのためです♪センパイは彼女欲しかったんですよね?」

 

「だから、お手伝いしましたってか?」

 

「はい♪全力でサポートしてあげたつもりでーす☆」

 

 また、次のページをめくる。

 

「でも、せっかくあんな面白おかし……おっと失礼。とても素敵なシチュエーションまで用意してあげたというのに、このセンパイときたらヘタレちゃんでBBちゃんちょっとガッカリしました」

 

「ガッカリさせて悪かったな……」

 

「でもでも、そのおかげでポッキーゲームなんて面白いもの見せてもらえましたので、今回はBBちゃん個人的にお腹いっぱいです♪」

 

「どこからか見ていたんだな……」

 

「それは勿論。センパイある所に後輩ありですから…具体的には先輩たちが使っていたベッドの隣のベッドの下に隠れて一部始終観察していたわけですけど♪」

 

 な、なるほど。この子、こわっ。

 

「BBちゃんはセンパイのためなら、たとえ火の中水の中草の中森の中でもお手伝いしますよ♪センパイが彼女欲しいと希望するならBBちゃんが彼女候補を探してきますし、次々センパイの貞操を襲うようにそそのかしてあげますよ。センパイがハーレム学園を満喫したいというなら、学園の男子生徒を闇討ちしてでも男子人口を徐々に減らしてあげますよ。今からなら3年生に進級した時にクラスの八割を美少女達にすることだって朝飯前です♪ギャルゲー、エロゲー、オレTUEEEEしてみませんか?」

 

「いや、そんなことしなくていいから……」

 

「え。センパイってお〇ん〇ん付いてますか?男ですか?ハーレムお嫌いですか??」

 

「………」

 

 それは男子高校生にとって魅力的で恐ろしい提案なのかもしれない。これが夢だったら願わくばそういう選択肢もあったのかもしれないが……だが、これがリアルだ。

 

 そんなことやってしまえば、大切な人たちが悲しむだけだ。

 

 だから、オレにはいらない。

 

 そんな提案は拒絶する。

 

 だというのに……この後輩ときたら…………

 

「あっ、センパイ。次の巻、本棚から取ってくれますー?」

 

「………」

 

 さっきまでの提案などどうでもいいかのように、先輩をあごで使いやがる。本当に世話のかかる後輩だ。

 

 オレは先輩らしく本棚から次の巻を取り出し渡してあげた。しかし、それはブラフ。オレが警戒を少し解いて射程圏内に近づけるための口実にしか過ぎなかった。右腕を掴まれて引っ張られてベッドに引きずり込まれて仰向けのまま組み伏せられてしまった。

 

 BBちゃんはやはり先輩のオレを小馬鹿にしていた。

 

「油断しちゃ駄目じゃないですかーセンパイ。ほんと、弱っちくてどうしようもなくイジメたくなる生き物ですよね、センパイって。でも、まぁ、そこがBBちゃん的にはポイントが高いんですけど。とりあえず、私達もポッキーゲームをしてみませんか?」

 

「え、何故に……」

 

 先輩のオレは当然の困惑。

 

「BBちゃん、生まれてこの方センパイみたいなちっぽけな生き物とポッキーゲームなんてしたことないからですよ♪」

 

 BBちゃんは人を小馬鹿しながら器用にどこからか1本のポッキーを取り出しオレの口に刺した。

 

 目が「ポッキーゲームやらないとブタさんにしますよー?」的なこと言っていそうで怖いので大人しく従おうと思う。出会って間もない頃に脅されたことあるんだ。笑顔で「ブタ男にしてあげましょうかー?」って。そんな笑顔を今もしてらっしゃる。

 

「そりゃじゃあ、ポッキーゲーム。スタート―♪」

 

 BBちゃんがもう片方の端を咥えてポッキーゲームが唐突にスタートした。

 

 といっても、BBちゃんがパクパク食べていって迫ってくるだけなんだがな。顔を逸らすと後が恐ろしい。後輩女子とオレの部屋で何してんるんだろうなと思いながらも、唇と唇が接触する瞬間まで大人しくしていた。

 

 そして、2人が接触してゲーム終了。

 

 目を開いて少しビックリしていたのはBBちゃんの方だがな。

 

「さ、最後、自分から来ませんでしたか?センパイ」

 

「やられっぱなしは性にあわねーから」

 

「センパイのそういう所が女性を勘違いさせるんですよ。昔から……この女垂らし!」

 

「………」

 

 それはあんまりだ………いや、待て。サラッと流そうとしたが、BBちゃんはオレの昔のことなんて知らないはずだ。今年4月に知り合ったばかりで1ヶ月も経っていない……

 

 危ない、騙されるところだった。

 

 というか、知り合って1ヶ月も経っていない後輩女子とオレの部屋でポッキーゲームしたらアウトだろJK。また食卓裁判になる可能性も無きにしも非ず。

 

 で、BBちゃんはこう言った。

 

「でも、本当によかったんですか?三姉妹のためにファーストキス取っておいたんじゃ??」

 

「ファーストキスなら、とっくに終わってるけどな」

 

「ガーン。それは私のデータにありませんでした!いつの間に!!」

 

 まぁ、ガキの頃の話だ。

 

「ぐぬぬ、センパイはこのBBちゃんを本気にさせましたね!」

 

「えと……」

 

 ちょっとやり過ぎたか!?

 

「はい♪だから『普通』な学園ラブコメものを送れるだなんて思わないでください。覚悟してくださいねセ・ン・パ・イ

 

 本当に……この後輩ときたら…………

 

 オレ、いつフラグ立てたんだろう。




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