土曜日の朝のこと、リリィはうちに来て学校の宿題をしていた。
勉強嫌いな姉共と違ってリリィは偉いな。今日の午後から友達と公園で遊ぶ約束をしているらしいから、それまでに終わらせたいんだとさ。とても良い心掛けだよな、オレも助力しよう。わからないところがあったら、なんでも答えてやるからな。トナカイの手も借りたいとはよく言ったものだ。
オレはマグカップを片手に隣で待機した。遅めの朝食にハムエッグトースト食べて、コーヒーを飲んで。リリィの様子を見てみると漢字ドリルと睨めっこしているのだ。
おいおい、最高の朝かよ。
このお子様が宿題に奮闘する光景はいつ見ても癒されるぜ。次女がここにいたら「このロリコン野郎」と罵ってくるだろうが……しかし、尊い。だから、意地悪したくなるんだよなー。
頬っぺたつんつんしてみようか。つんつんとな……
「むぅー」
むぅー…だってさ。
なんだよ、それ。つんつんしただけなのに、反応がクソ可愛すぎるんじゃありませんか。邪魔しないでくださいって頬っぺたを膨らまして流し目で訴えかけくるんだけど。でも、ちょっと嬉しそうにしているリリィたん。構ってもらえて嬉しいんだろ。そう思ったらもっとツンツンしたくなるんだけど。宿題の邪魔しちゃ駄目なんだろうけど、兄としてサイテーかもしれないが、駄目だもう我慢できない。
頬っぺたモチモチ赤ちゃんのような肌触りが何より癖になってしまう。こんな頬っぺた、長女や次女じゃ味わえないぞ。
これはカワイイ妹が持った兄の宿命みたいなものなのだから是非もないよネ。
「つんつん」
「もぉ……」
「ほれ、つんつん」
「ぶぅー……っ」
「ははっ、冗談だ。ほら、リンゴ食うか?」
「当たり前です。対価はちゃんと支払って貰います」
可愛いな―、可愛すぎるぞこの生き物。
小皿に乗ったリンゴをフォークに刺して、リリィに「あーん」してあげる。“くし形切り”のやつな。それで、ちょっとは機嫌直してくれよな。
「で?宿題はどんな感じなんだ?」
「難しいですよ。これが小学生の今の宿題か!?って、トナカイさんは腰を抜かすと思いますよ」
「つっても小4レベルのドリルだろ?たかが知れてる……って」
と言って、ちょこっとドリルを拝借して絶句。
・
・
・
・
「そうか。最近の小学生はいろいろ進んでるだな……」
一石二鳥とか簡単なやつじゃないんだな。男女の情交とか小4に教えちゃ駄目だろ。
オレはドリルを閉じてそっと返すのであった。
「トナカイさんの世代が遅れているだけですよ。今の小学生はこれぐらいこなしては、さらに3か国語ぐらい余裕なんですからね」
「マジですか!??」
「とにかく、宿題中なので邪魔しないでください。ツンツンも禁止ですっ」
「ほーい」
つーか、オレいらなくね?トナカイの手借りる間もなく宿題は終わりそうだ。
だから、暇を持て余したオレは次に頬っぺたを摘まもうと思った。無性にそうしたかったのだ。
「むぎゅ」
「………っ」
こんなにもっちり肌を放っておく方が悪だろうか。
わかりやすく、声付きでリリィの頬っぺたを軽く摘まんでやった。しかし、リリィは我慢してドリルに専念している。スルーされた。
我慢対決かな、お兄ちゃん的にスルーはショックなので、次は引っ張ってみた。どこまで伸びるかなー?
「むぎゅ~」
「………っ」
「びよよーんで草」
「うぅぅぅううぅううう………っ」
「……って、うそうそ冗談だって」
「むぅーーーー………っ!!」
ポカポカ叩かれた。両手でポカポカ。何をしてもリリィは可愛いな。
「ほら、リンゴもう1つやるから怒るなって」
「それだけじゃ足りません。そっちのゼリーもっ」
「はいはい」
涙目だが、それもカワイイとしか言いようがない。
オレの朝食のデザートがことごとくリリィに胃袋に投入されてて草。コンビニで売っているようなカップゼリーを開封しスプーンですくってやる。
「ほら、リリィ。あーんしろ」
「こんなことで許されると思ってるんですか、まったく……」
なんて文句垂れてるけど、しっかり「あーん」はするんだな。照れ隠しに怒ったフリするリリィたん。やばたん。
「最近トナカイさんは“駄目な方の次女”に似てきてたと思うのです。イジワルです」
それはリリィが可愛いから仕方が無いんだが。
リッチなブラックを飲んで大人の余裕を見せるオレ。しかし、内なるオレはリリィの頬っぺたをツンツンしたいと疼いている。などと、今か今かとタイミングを計ろうとしていたのだが……
「立香ー、リリィちゃんの邪魔しちゃだめよ~」
「あ、はい。すみませんした……」
リビングで通販番組を見ていた
注意勧告が出てしまったものは仕方が無い。
あと1回が限界だろう。タイミングだけは間違えるなよ、オレ。
「リリィ、オレンジジュースも飲むか?」
「むっ……」
「欲しいだろ??それともコーヒー飲むか??」
「私がブラック飲めないとでも?もうお子様じゃありませんよ!」
「じゃ、飲んでみな」
オレの飲み差しだが渡してあげると、恐る恐る一口飲みんでは、
「うぇ…やっぱり苦いです」
「そっか…じゃ、オレンジジュース取ってくるからちょっと待ってな」
まだブラックは駄目だったみたい。リッチなんだけどなー……オレは席を立ち冷蔵庫からオレンジジュースを取り出してお子様用のコップに注いでやった。
止めを刺すなら今か……
「ほら、オレンジジュースだぜ」
「今に見ていてください。10年後には克服してみせますからねっ」
「はいはい、期待して待ってますよーからの両方の頬っぺたつんつん攻撃ー」
「ぶふっ!?ひ、人がジュース飲んでる時に何してるんですかーーー!?」
隙だらけだった無抵抗のリリィの頬っぺたを両側からツンツン攻めてやった。そしたら見事ジュースをちょっと噴き出した。狙い通りで、それはもうブサ可愛いのなんのその。
リリィは激おこぷんぷんしているがな。
「わかりました。そっちがその気ならこっちにも考えがありますから」
「へー、それは面白い。またつんつんされるのが関の山だぜ?」
「その余裕も今の内ですよ。トナカイさん」
ずずぃっと詰め寄ってくる。息がかかるほどの至近距離。ニヤリと笑い足をこついてくる。嫌な汗が背中に流れた。オレは眠れる獅子を呼び起こしてしまったのかもしれない……っ!?
「トナカイさん、昨日の件ですが……あの約束は無かったことにしましょう」
「な、なんのことを……いや、まさかBBちゃんのことか!?」
まさか、そういうことか……
昨日、放課後に突如乱入してきたBBちゃんは、あれからすぐに帰っていったわけだけども……帰りしなに玄関先でリリィと出くわしていたのであった。
一番顔合わせさせたくなかった組み合わせだったのだがな。あの時はBBちゃんも「カワイイ妹さんですね、食べちゃうぞ☆」ぐらいしか冗談言わなかったし、リリィにもちゃんと説明したわけだけども。
オレはリリィにこう言ったのだ。長女と次女には黙っててくれとな……そして、その約束が無効になってしまった。
「そうですよ。BBちゃんって人です。なんですか、BBって。改めて訪ねますが、あだ名で呼ぶ中なんですね」
「き、昨日も言っただろう。ただの後輩だって」
「本名は何て言う方なんですか?」
「さ、さあ?」
「さあ……って、本名も知らない後輩を家にあげたのですか?ヤバくないですか?」
「確かにヤバいな……」
家に入れたのは母さんだけども。
言われてみれば普通じゃない。
「で、そのBBさんとやらと何してたんですか?エッチなことですか??」
「い、いや、オレの持ってる漫画について話してただけだよ。BBちゃんが漫画貸して欲しいっていうからさ(嘘)」
「百歩譲ってそういう話の流れだとしても、本当にそれだけなんですか?」
「も、もち…の、ろん」
ポッキーゲームをしたとか言えない……っ
「ふーん、でも、やはり信じられませんね。昨日、あの後こっそりトナカイさんの部屋確認したら、ベッドから知らない女の人のニオイ、たぶんBBさんのニオイがプンプンしてましたよ」
「そんなバカな!?アイツそんなニオイきつかったか……っ!??」
「なんですか、その反応は。正直に言ってみてくださいよ!後輩のBBさんとベッドで何してたんですか!!何もやましいことなければリリィにも同じことできますよね!!さあ、今からトナカイさんの部屋で実践してもらいましょうか!!それとも食卓裁判しますか!!」
「あわわわわわ……っ」
女の子って怖いね。
オレの両方の頬っぺたをむぎゅっと可愛らしく掴んでは力の限り引っ張ってきた。
まだまだお子様だと思っていたリリィもすっかり姉たちに似てきて逞しくなっちゃって……そんなにぷんすかぷんすか頬っぺた膨らましちゃって……リリィ、恐ろしい子っ!!
「ふっ、今日はオレの負けだ……リリィ」
「それじゃ罪を認めるんですね……やっぱりエッチしてたんですか!!?」
「ふっ、お子様なリリィには10年早いお話ってことぜ草」
「またそうやって子ども扱いする!!私はもうロジカルな大人なのですからね!!」
「じゃあ、今から2階で昨日してたこと実践してみるかい?」
ポッキーゲームだけどな!!
「そ、それは……」
「わはは、できるはずないよなー!!はいそこで油断しない、隙だらけだぜツンツン攻撃!!」
「ふぁっ!?や、やりましたねーーー!!」
オレもお返しに頬っぺたを両側からつんつんしてやった。つんつんして、むぎゅっとして、サンドイッチして、欲望の限りモチ肌ほっぺたをこねくり回してやったわ。リリィの宿題もそっちのけで頬っぺたこねくり合戦は続くのでしたとさ。
つーか、高2が小4相手に何してんだろ。
いろんな人から怒られた。
ご感想・ご意見はカルデア・ハワイ支部までm(_ _)m