さくらと不思議な箱の国   作:不協和音

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異世界編になります。p(^-^)q


さくらと巫女と迷走劇

 暗闇の中で宙を廻る4つの木箱。響く声。

 ――封印の鍵を、集めよ

(あなたは誰? 箱の鍵を、探してるの?)

 次には、箱は消え一面に目映い光の渦が現れ…意識はジェットコースターでも乗っているように流れる。

 そこで、夢は終わった。

 

 気がつくと、さくらは身を縮こまる形で狭い空間に横たわっていた。

「ほえ? あれ、私…どうしたんだっけ?」

 頭がぼーっとしており、記憶も曖昧だ。何か夢を見たような気もするが覚えていない。しかし伝わる硬く冷たい触感からベッドではない事は分かった。

 すると、それがスイッチになったように今朝の記憶が蘇ってきた。

「そうだ、チアの練習――」

 慌てて起き上がろうとしてゴンッと頭をぶつける。

「はうう……」

 おまけに足にはローラースケートを履いたままだ。

 バランスが悪くて当然。

 薄暗い視界で見回すと、どうやら木箱の中らしい。

 一瞬、閉じ込められているのかと怖くなったが…恐る恐る頭をぶつけた天井を押し上げると、あっけなく持ち上がり…蓋は空いた。

「…………」

 まず視界に入ったのは、とても距離を感じる天井。何メートル、もしくはそれ以上の単位がありそうな奥行きを感じた。次に視線を下ろすと周囲もすごく広い…そして綺麗な大理石を思わせる磨き上げられた壁と床。教会を連想させる神聖な空気に、さくらは驚く。

 だが、そんな彼女を前に驚愕している他者が居た。

 背格好はさくらと同じくらいで、純白を基調とした装束を纏っている。長く美しい銀髪の美少女だった。

「Wer bist du? Wie sind Sie an diesen Ort gekommen…Was machst du da!?」

「えっ!?」

 声音も甲高く年相応なソプラノだったが、馴染みのない単語に、さくらは戸惑う。

「Jemand! Jemand bitte kommen! Ich bin ein Eindringling!!」

 少女が続けて悲鳴に似た声で叫ぶ。すると直後、簡素な甲冑を纏った女性の兵士が五人奥の荘厳な扉から走り込んでくる。

 いずれも顔立ちの調った女性たちは手に細身の槍を持ち、二人は少女を護るように側に立ち…三人が、銀色の刃を向けて、さくらを取り囲む形に陣を組んだ。

「Geholfen!」

「Raus!!」

 怒鳴りながら刃先を動かす。

(箱から出ろってこと?)

 でも、とさくらはどこか冷静な頭で考える。

 言葉は通じない。それは相手の言葉を理解できない時点で判る。そもそも彼女達から向けられる敵意の視線は話し合おうとする気配じゃない。いきなり殺されたりすることはないとしても、危険なことに変わりはない。

(どこかも判らないところで、命の危機はないよぅ)

 さくらは、なるべく相手を刺激しないように両手を挙げてゆっくり立つ。

 すると、誰からともなく息を呑む空気が伝わる。

「Schwarzes Kostum…!?」

(コスチューム?)

 かろうじて聞き取れた単語は、そう聞こえた。

 だが今重要なのは、一瞬相手に芽生えた動揺だ。

 さくらは意を決して箱から飛び出した。足にはローラースケートを履いたままなので脚力に加速して三人の間をすり抜け――

「ごめんなさいっ!」

 銀髪少女を守ろうとしてか、槍をクロスさせた二人の女兵士をかわす目的で、跳躍。組み合わされた柄を踏み台に、持ち前の運動神経と身体能力で銀髪少女の背後に着地する。

 チアの練習がこんなところで役立つとは思いもよらなかった。あとは扉を抜けるだけだったが…逃げるなら交渉や通訳は必須。

「一緒に来て!」

「Was!?」

 この場で唯一無害そうな銀髪美少女を抱える。

 不思議と重いとは感じないまま、扉を破り、さくらは長く続く回廊を走った。




捕捉。
周囲の人間(魔族)が話している言語は、一応ドイツ語です。
マ王の作中で大賢者様が「ドイツ語に似た言語」と申してましたので。
あと、一応なのは、記述する上で一般的なアルファベットしか使えず、完全なドイツ語にはなっていないからです。こちらは扱っている端末の不備なのでごめんなさい。
たぶん次回辺りからは言語表記が共通になると思うので、少しだけ辛抱してください。
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