次はがっつり戦闘をかくんだ。
四人はオラリオの探索を終え、ダンジョンに潜っていました。
7階層のキラーアントの群れを殲滅してルガイドがエイリルに聞きました。
「どうだエイリル、パーティーを組むと楽になるだろう」
エイリルは楽し気に答えます。エイリルは今まで一人で潜っていました。それと比べて多人数で潜るのは初めてのことで新鮮です。
「そうですねルガイド、もう7階層です。戦闘でも仲間に頼れる分、非常に気が楽ですよ」
「あたりまえよ、そもそも戦闘の度に全力で戦って疲れないわけないじゃない」
始め、エイリルは現れるモンスターを全力で打ち倒そうとしましたが、それはユフィによって止められてしまいました。
エイリルは彼女から一人で先走らないように注意されてしまいました。
「敵が来る。たぶん、ニードルラビット」
不意にリイルが言いました。彼女が見つめる先の壁から、ニードルラビットが生まれおちます。エイリルは無意識に踏み出していた右足を戻しました。
ここには仲間がいるのです。わざわざ仲間に迷惑かけたくはありません。
生まれおちたばかりのニードルラビットたちが四人を目掛けて走り出します。
個体差があるのかその速さはそれぞれ違います。
「数は三匹だな……跳躍した個体を任せた、エイリル。おそらく頭を狙ってくるからな」
実際には跳躍していませんが、ルガイドは確信をもって答えます。
リイルが一番先頭を走る個体をそれ以上の速さで蹴りぬき壁に叩きつけます。二匹目はルガイドの言った通り頭を狙って跳躍しました。跳躍が頂点に達する前にエイリル振るった斧が、ニードルラビットを打ち落とします。
「よし、戦闘終了。お疲れ様でしたってな」
エイリルが顔を上げると、三匹目は既にルガイドが振るった短槍の突きで貫かれていました。
「私、リイルが蹴り飛ばしたモンスターに止めを刺しただけなんだけど」
魔石を握ったユフィが不満そうに言います。リイルもユフィの隣で表情を少しだけ不満そうに変えました。
「取り合えずエイリルの袋に魔石をしまってくれ。いいか、今日はその袋が満杯になるまでって言っただろ?」
「そうだけど……少し余裕過ぎない? それにね、不完全燃焼じゃね……」
ユフィがパーティーのリーダーであるルガイドに言います。ルガイドはユフィの意見を聞いてエイリルに目配せして聞きました。
♢
「ブゴォオオオッ!」
深い霧の中オークぼ振るう
「まかせなっ!」
ゴブリンと似た姿の姿のインプをエイリルと全て倒し終えた、ルガイドがリイルと入れ替わるようにオークの背中を蹴り飛ばします。蹴り飛ばされたオークは俯せに倒れてしまいました。
「立たせないわよ!」
「ブゴァッ!」
両腕を使って立ち上がろうとしたオークの右腕をユフィが蹴り砕き、エイリルが左腕の肘から先を斧で切り落とします。オークはもう立ち上がれません。
ルガイドは油断なく槍の矛先でオークの心臓を貫き、引き抜くと同時に魔石を抉り取りオークを灰に変えました。
「リイル戻ってきなさい!」
ユフィがオークの膝裏を切り裂きそのまま回音波を発し続けるバットバットを蹴散らしに行ったリイルを呼び戻します。その姿は霧に妨げられて見えなくなっていましたが、すぐに戻ってきました。
「よし、全員いるな。エイリル、そろそろ満杯にっただろ」
エイリルは袋の中に手を突っ込み、まだまだ入ることを口にせず仕草で教えました。ルガイドは袋にまだまだ入ること知り、不審に思いました。エイリルの袋はカボチャが入る程度の大きさです。たしかにルガイドたちは足早に階層を降りましたが、それでも見かけたモンスターは積極的に倒し五十以上の魔石を手に入れました。ルガイドの袋なら、すでに魔石は入りきらないでしょう。
「おいちょっと袋を貸せ」
エイリルは袋をルガイドに渡しました。渡したあと、ユフィと目線が交差したのは気のせいではないでしょう。
「なんだこりゃ見た目より重いな……」
ルガイドは手渡された袋をゆさゆさと揺らし、言いました。袋は見た目よりずっと重かったのです。意を決して袋の中に腕を入れると手首まですっぽりと入ってしまいました。
「おいおい、魔道具かこの袋?」
ルガイドは実際に触れてみてエイリルの袋が魔道具だと理解しました。しかし魔道具ならば、魔力の扱いにたけたユフィは知っていたはずです。
「ユフィ! 知ってて黙ってたな……!」
ユフィは目線をあらぬ方向に向け、口笛の真似をしました。彼女はエイリルが袋をみせた時から知っていましたが、もっと一緒に冒険がしたくて黙っていたのです。
「ルガイド。血の匂いがする」
怒ったルガイドにリイルが何気なしに言いました。ルガイドはその言葉をすぐに理解してリイルに聞きました。
「下の階かリイル。何人分だ」
冷静にルガイドが聞きます。彼はその臭いが人間の血だろうと当たりをつけ、リイルにに聞きます。彼の第六感が下の階が危険だと訴えていますが、ルガイドは意図的に無視ししました。
エイリルもユフィも黙ってリイルとルガイドのやりとりを聞いています。ただしいつでも戦闘できるように準備していました。
「六人分、たぶん半分以上は期待できない」
♢
十一階層の入り口付近、そこから翼のない赤い竜が見えました。大きな竜の牙は赤く塗れています。
その大きな竜の名前はインファントドラゴンでした。エイリルは少し前に調べていたから知っています。しかし実物を見るとその大きさは予想以上でした。
「よし、作戦会議だ。どうする、戦うか?」
「戦いたいですが、もう少しポーションが欲しいです」
「難しい、致命傷を狙えない」
幸いインファントドラゴンはルガイドたちに気づいてないので、撤退は容易でした。確実に勝てるか分からない相手に、勢いだけで挑むほどルガイドたちは無謀ではありません。
「ユフィはどうだ? 個人的には間が悪すぎて、万全の準備をしたい所だが……」
ルガイドが最後にユフィに聞きました。皆がそれぞれの意見を言う中、ユフィは目を閉じて耳を澄ましていました。彼女は静かに言います。
「生きてるわ……インファントドラゴンの向こう。息をしている人間がいるわよ」
エルフ特有の聴力でそれに気づいたユフィは、続けて言います。
「魔力回復のポーション、使う事にするわね」
インファントドラゴン。インファントドドラゴンではない。