「明日、一緒に冒険しようぜエイリル」
豊饒の女主人でミアハ・ファミリアの現状を話し合った後、ルガイドたちはエイリルに言いました。
お腹いっぱいにまで食べて上機嫌だったエイリルは深く考えず了承しました。
「いいですよ、ルガイド」
そう言ってエイリルはルガイドたちと別れました。それから青の薬舗に向かう帰り道で、エイリルはミアハに会いました。
「エイリルじゃないか。今は帰りか?」
そう言って爽やかな笑顔を浮かべるミアハの腕には、紫色の太い根っこのような物が沢山入った紙製の袋が抱えられていました。
「そうですよ、ミアハ様。それは貰い物ですか?」
「うむ、そうなんだ。この付近に野菜を売っているタルゴさんがいるだろう、その娘のエルマちゃんからの貰いものなんだ」
タルマちゃん、と聞いてエイリルは青の薬舗の常連である麦色の髪の女の子を思い出しました。週一のペースでポーションを一本だけ買っていく、変わった女の子です。
「ああ、いつも頬が赤い女の子ですか。そういえば頼まれた
「おお、それはありがたい。明日にはそれを使って試作品を作ってみよう」
二人はそんな他愛のない会話をして青の薬舗を目指しました。
♢
朝、鳥の囀りを聞いてエイリルは目覚めました。いつもより遅い目覚めでした。
「今日は……一緒に冒険でしたか…?」
エイリルはいつもより重い体を引きずって、軽く準備運動をします。それから防具を着けて壁に立て掛けていた斧と
下の階の青の薬舗の店頭ではナァーザとミアハが店を開く準備をしていました。
「おはようございます。ナァーザさん、ミアハ様。」
「おはよう、エイリル。今日は遅いのね」
「ああ、おはよう。今日は休憩……ではないか」
エイリルは昨日の約束の事を話しました。すると二人は、いい友達だねと同じことを言いました。エイリルは二人がどう判断してそう思ったのか気になりましたが、ルガイドたちがいい友達なのは事実なので深くは聞きません。
「そういえば昨日言った試作品ができたぞ」
ミアハは会話の最中にそう切り出して、六本の赤いポーションをエイリルに渡します。
「これが試作品ですか。普通のポーションと違う色をしていますね」
エイリルはポーションの入った細長い瓶を揺らしました。瓶の中の液体は少しだけ粘度があるように見えました。
「本当に変わったポーションですね」
「うむ、赤い血のようなポーションだ。しかし効き目は上がったぞ」
エイリルは赤いポーションを魔道具の袋にしまいました。
「だが、蜂蜜のような粘りがあるのだ。飲みやすいように薄めはしたが、まだ飲みにくいかもしれん」
「粘り、ですか。どうせならもっと粘度を高めて軟膏にでもしますか?」
何気なく言ってエイリルは青の薬舗を後にします。店に残った二人は軟膏と聞いて、ポーションの粘性を高める方法を互いに話し合いました。
♢
噴水の端に座ってルガイドたちを待っていますが、一向に現れません。約束を反故にされたかと一瞬だけ思いましたが、エルフのユフィがいるのに約束を反故されるわけがありません。エイリルは自分が早すぎたのではないかと思い、立ち上がります。しょうがないのでダンジョンで時間を潰すことにしたのです。
そう考えて歩き出そうとして、誰かに肩を掴まれました。
「ちょっと待てエイリル。まさかと思ったがお前早すぎだろ」
振り返ると冒険の準備を整えたルガイドたちがいました。
「いえ、普通に間違えただけですよ。やはり習慣は抜けませんね」
「習慣っていったい何時から潜ってるのよ」
「5か6時くらいですよ、」
「5時ねぇ、かなり早いじゃない」
ユフィが声を荒げず言いました。それを見てエイリルは思います。もしかして寝ぼけているんじゃないかと。普段のユフィなら声を荒げるだろうとエイリルは思っていたからです。
「もしかして寝ぼけていますユフィ?」
「寝ぼけてない、寝ぼけてないわよ……エイリル」
「悪いなエイリル。ユフィもリイルも昨日、夜遅くまで起きていたらしんだ」
ルガイドの言葉を聞いてリイルを見ました。リイルは立ったまま目を閉じています。寝ているかと思い、近づくとリイルは目を見開きました。
「ごめん、エイリル。寝てた。少しだけ散歩に付き合って、そしたら目が覚めるから」
そう言ってリイルはエイリルの手を握って歩き出しました。エイリルはダンジョンのあるバベルを見て、名残惜しそうにリイルについていきます。
「まあ、オラリオを探索したことはなかっただろエイリル。少しだけ散歩して、午後から冒険すればいいさ」
ゆっくりと歩きながらルガイドが言います。それでもエイリルは名残惜しく思いましたが、とりあえずルガイドの言う通りにしました。